はじめに
終活を進める中で自分の葬儀について考える機会は多いですが、できるだけ家族に負担なく自分の理想どおりの葬儀を実現したいと考える人も増えています。
そんな中、最近では葬儀の生前契約が注目されています。
生前契約は「自分の葬儀を自分自身で決められる」というこれまでにない画期的なシステムですが、まだ一般的に広く認知されているわけではないため、どのような手続きをすればよいかわからないという人も多いでしょう。
そこでこちらの記事では、生前契約とは何かを説明したうえで、手続きの流れや生前契約のメリット・デメリット・注意点について解説します。
生前契約に興味がある方は、ぜひこちらの記事を参考にしてください。
葬儀の生前契約とは?
生前契約とは自分自身の葬儀の内容を生きているうちに決め、葬祭業者と契約しておくことです。
かつては葬儀といえば故人の家族が喪主となって主催することが一般的でした。しかし少子高齢化の影響もあって一人暮らしの高齢者は増加しているため、亡くなった後に葬儀をしてくれる家族がいないという人も増えており、また家族がいたとしても葬儀にかかる手間を考えると、迷惑をかけたくないと考える人も多くいます。
そこで近年では、葬儀の生前契約によって自分で葬儀の内容をあらかじめ決めておくという生前契約が注目されてきているのです。
かつて日本では生前に自分の死について語ることが敬遠されがちでしたが、近年では終活という言葉が徐々に普及してきたこともあり、その就活の一環として葬儀の生前契約をするという考え方も少しづつ受け入れられるようになってきています。
生前契約の手続き方法
生前契約では通常の葬儀と手続きの流れが異なる部分も多いので、ここでは手続きの方法について詳しく解説します。
見積もりや資料請求
生前契約は将来の葬儀に対する契約という点で未確定の部分が多いため、信頼できる業者選びがとても大事です。まずは気になる業者に資料請求し、見積もりをとったうえであなたの意向に合った業者を選びましょう。
また生前契約は履行されるまでの期間が長く信頼関係がとても重要なので、業者選びは慎重に行う必要があります。
そのため業者を選ぶときは単にサービス内容を確認するだけでなく、実際に相談して葬儀の内容や予算なども伝えることで、きちんと信頼関係を築きましょう。
比較検討して納得の上、契約手続き
資料請求や見積もりを依頼するときは複数の業者を比較検討し、納得したうえで契約を締結してください。
また契約にはいくつかの種類があるため、ここで代表的な契約を3つ紹介します。
まずは葬儀や埋葬に関する事務の代理権を与える「死後事務委任契約」です。死後事務委任契約をすれば契約者が亡くなったあとの様々な事務処理を代理で行ってもらうことができ、こちらの契約をすれば身寄りのない人でも安心することができます。
次に「生前事務委任契約」です。これは元気なうちから財産管理や日常生活の支援を依頼する契約であり、生前契約では死後だけでなくこのような生前のサポートもお願いすることができるのです。
そして判断能力が衰えてきた場合にするのが「任意後見契約」です。これは、あらかじめ契約によって代理権が与えられた範囲内で本人に代わって法律行為を行ってもらう契約です。
以上のような死後事務委任契約・生前事務委任契約・任意後見契約がセットになっている契約もあれば、この中のいくつかを自由に選べるところもあるので、本人の希望に合わせて適切な契約を締結するようにしましょう。
生前契約するメリットは?
生前契約には様々なメリットがあるので、ここでは生前契約のメリットを紹介します。
身寄りがない場合でも安心できる
少子高齢化や核家族化が進行により一人暮らしの高齢者の数が増加していますが、そういった高齢者は子供がいない、もしくは子どもがいても仕事で離れて暮らしているので迷惑を掛けたくないなどの理由で、「おひとりさま」となることも多くあります。
おひとりさまの高齢者は自分が亡くなった後の葬儀や遺品の処理など、不安なことがたくさんあるものです。
そんな人でも生前契約をしておけば亡くなったあとの葬儀や遺品整理などを任せることができるし、生前事務委任業務によって日常生活をサポート・入院・施設入居の際の身元保証人になってもらうこともできるので、自分の将来や死後のことも含めて安心することができます。
遺族への負担を軽減できる
家族が亡くなった後に遺族がしなければならないことはたくさんありますが、生前契約をすればそのような遺族の負担も減らすことができます。
家族が亡くなったとき、喪主となる遺族は葬儀の段取り・親族とのやり取り・そして参列者への挨拶状など、短期間のうちに様々なことをしなければならず悲しんでいる余裕もないほど葬儀の対応に追われるため、遺族にとっては大きな負担が掛かります。
また葬儀を取り仕切ることに慣れている人は少ないので、葬儀社の言われるがままに葬儀を行ってしまうことも多く、色々なオプションをつけられて必要以上に費用がかさむということも多いです。
そこで生前契約をしておけば、本人が葬儀の段取りを決めて事前に内容が確定させることができるので、亡くなった後に遺族が慌てて葬儀社を手配する必要もなく遺族の負担は大きく軽減されるのです。
また時間に余裕もあるのでじっくり考えることができ、不要なオプションを付けられたりすることなく必要なもののみ最低限で行うよう手配できるので、金銭的負担も抑えることができます。
理想に近い葬儀ができる
生前契約であれば葬儀について考える時間がたくさんあるので、本人や家族がきちんと納得いくまで葬儀社と打ち合わせをすることができるのです。
そもそも通常の葬儀では本人が内容を決めることはできないので、本人も家族と一緒に自分の葬儀の内容を考え、必要なものとそうでないものを見極めながら自分で契約を結ぶことができるのは、生前契約ならではといえるでしょう。
生前契約するデメリットは?
生前契約には様々なメリットがありますが、その反面デメリットもあります。
ここでは、そんな生前契約のデメリットを紹介します。
契約が履行されないこともある
生前契約の特徴は、亡くなった後に本人が契約の履行を確認出来ないという点です。家族がいれば良いですが、身寄りのない高齢者の場合には本当に希望通りの葬儀が行われたかを確認するすべがないので、葬儀社がきちんと契約を履行しないということも考えられるのです。
この対策としては、契約通り葬儀が行われるよう「公正証書遺言」に自分の意思を残していたり、契約の中に第三者機関のチェックを盛り込むよう相談するという手段があります。
家族から反対を受けることもある
亡くなった後に葬儀を取り仕切るのは家族なので、生前契約をするならきちんと家族に相談しなければなりません。故人が生前契約をしていたことを家族が知らないと、亡くなった後に葬儀社と家族の間でトラブルになることも考えられるのです。
また葬儀の内容次第では家族に負担を強いることになるし、場合によっては本人が思ったとおりの葬儀が実現されないことも考えられます。
そういったことにならないようできるだけ早いうちから家族とは情報共有しておき、家族の負担を最小限に抑えましょう。そのうえで自分らしい葬儀を行えるようじっくり話し合い、双方が了解を得ながら生前契約を結ぶことが大切です。
依頼した企業が倒産することもある
生前契約はまだ本人が生きているうちに結ばれるものなので、実際に契約が履行されるのが数年後になるということもあり、そのときまでに葬儀社が倒産しているというリスクがあります。
そうなると結局亡くなったときに家族が急いで葬儀社を探すことになり、家族の負担が掛かかるうえ自分の思った通りの葬儀を実現することもできなくなってしまいます。
民間企業である以上倒産のリスクを完全に避けることはできませんが、経営状況や口コミなどは最低限確認し、倒産のリスクがないかどうかはできる限り検討するようにしましょう。
葬儀の生前契約はこんな注意点も
これまで説明してきたメリット・デメリットに加え、生前契約には注意したほうが良い点がいくつかあります。
最後に生前契約の注意点を紹介するので、この点もきちんと確認しておきましょう。
契約の見直しができるか確認しておこう
死はいつ訪れるかわからないため、生前契約を結ぶ場合には実際に葬儀を行うのが10年以上先になってしまうということもあり得ますが、そうなると葬儀に対する考え方の変化や家族の意向などにより葬儀の内容を変更したいと思うこともあります。
そのため、生前契約において当初の契約内容を見直して変更できるかどうかということはとても大切なことです。
業者によっては契約の見直しがいつでもできるところもあれば、契約の更新時以外に変更できないこともあるため、契約の際にどの程度自由に契約を見直せるのかは必ず確認しておきましょう。
また、契約の時点で内容についての説明があるので、注意深く担当者の話を聞き、わからないところは質問するなどして契約内容はきちんと把握しておくことが大事です。
信頼できる企業か確認しておこう
生前契約をする業者とは長い付き合いになるので、信頼できる業者かどうかということはきちんと確認しておきましょう。
生前契約は履行時期が未確定であるため、将来希望通りのサービスが受けられることやサービスの質が確保されていることの保証はないので、事業者が信頼できるかどうかは大事なポイントです。相談時の担当者の話が丁寧で信頼できるかどうかをよく吟味しつつ、インターネットを利用して業者のことを調べ、実際に利用した人の口コミなども参考にして判断しましょう。
また、生前契約では解約するときに解約金がかかるかどうかも重要です。
そのため契約書にじっくりと目を通し、解約するときに支払ったお金がきちんと返ってくるかどうかを確認しましょう。悪質な業者の場合、高額な解約金を説明なく条項に加えているということも考えられるので、充分注意する必要があります。