生前葬とは?
生前葬とは、本人が生存しているうちに行われる葬儀のことを言います。
これまでお世話になった方に直接感謝の気持ちを伝え、今後の新たな人生に向けた一区切りのイベントとして行われますが、最近では何人かの有名人が生前葬を行ったことで認知度が高まり注目を集めています。
とはいえ、一般人が生前葬を行うことはまだ少なく、生前葬がどういうものであるのかイメージがつかなかったり、普通の葬儀との違いや生前葬の目的などもわからないため、具体的なイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。
そこでこちらの記事では、生前葬と普通の葬儀はどこが違うのか、なぜ生前葬をするのかといったことから、生前葬のメリット・デメリット、そして実際の流れを紹介します。
生前葬の特徴
生前葬の大きな特徴は、葬儀の主催者が自分であるということです。通常の葬儀では故人が参加することはできませんが、生前葬は自分の葬儀に本人が喪主として参加することができるのです。
そのため、生前葬を通して日頃お世話になっている人に対し、普段伝えられないような感謝の気持ちを伝えることができるうえ、儀式そのものの自由度が高いため、主催者の意向次第で様々な目的の葬儀を行うことができます。
例えば、漫画家である久米田康治さんの場合、漫画賞受賞といったような幸運な出来事続きであったため、反動で何か不幸な事が起こるのではないかということから「厄払い」の意味合いで生前葬が執り行われました。
またタレントである浜田ブリトニーさんの場合、自分が元気なうちに周囲に感謝の気持ちを伝えると同時に、「死」について考える機会を提供したいという主旨で生前葬が行われました。
このように、生前葬は単なる儀式ではなく形式にとらわれないイベントのようなものであり、人生に1つの区切りをつけて普段お世話になっている周囲の人に感謝の気持ちを伝えると同時に、残りの人生どう生きるかということを考える機会にもなります。
生前葬を通常の葬儀の代わりのように捉えると仰々しい感じがしてしまいますが、どちらかというと一種のお祝いやセレモニーという感覚に近いといえます。もちろん死をテーマに扱う以上は決して軽々しく行うものではありませんが、本来の葬儀のように厳粛な儀式とは別ものであるといえます。
一般的な葬儀との違い
前述のとおり、生前葬は従来の葬式と目的の違いがあります。
従来の葬式は遺族が喪主となり、残された人たちが故人をしのび弔うための儀式でしたが、生前葬は本人が喪主となって周囲の人に日頃の感謝を伝えるための行事です。
生前葬という特別な場を設けることで、日頃伝えづらいような感謝の言葉や自分の考えていることを伝え、家族や友人に心の内を知ってもらうきっかけになるのです。
このような本人の普段伝えられない思いを周囲に伝えることができるのは、生前葬ならではといえます。
とはいえ、生前葬はまだ一般的にそこまで広く浸透しているわけではないので、行う際は家族や招待者への充分な配慮が必要です。
例えば、生前葬には一般の葬儀のように喪服を着用するという決まりはありません。そのため、服装は主催者側からの指定するか、会場にあったフォーマルな服装でも問題ないということをきちんと伝えましょう。
また、一般的な葬儀と違って香典が必要なく、会費制で行う場合が多いので、この点についても周知しておく必要があります。
このように、生前葬を行う趣旨について理解してもらうのはもちろんのこと、葬儀での服装や香典はどうすればいいのかなど、招待者が迷うことのないよう招待状にきちんとした説明を記載しておくことが大切です。
生前葬を行うメリットは?
生前葬を行うことにどのようなメリットがあるでしょうか。
こちらでは、生前葬のメリットについてを紹介します。
遺族の負担を軽くする
人の死は突然訪れるため、通常の葬儀で喪主となる家族は、急いで葬儀の段取りを決めて親族とのやり取りをしたり、参列者への挨拶状を作成したりしなければならず、身近な人を失った悲しみに浸る余裕もないほど葬儀の対応に追われることになります。
この点生前葬をしておけば、実際に亡くなった後の葬儀では家族や親族などの親しい方だけで集まり、火葬式などごく簡易に済ませることができます。
そのため、葬儀の段取りをする手間や費用などの点において、遺族の負担を軽減することが出来るのです。
感謝の気持ちが述べられる
生前葬の特徴は本人が参加できるということで、直接親族や友人に挨拶をするこができるのが大きなメリットです。
通常の葬儀の場合、当然ですが故人が自ら参列者にお礼を伝えることはできません。そうすると、お世話になった人に対してきちんと感謝の気持ちを伝えられず、ある日突然の死によりそのまま気持ちを伝えることができずに終わってしまうという可能性があります。
しかし生前葬を行えば、自分の言葉で感謝の気持ちが伝えられ、何も言い残すことなく最期を迎えられるというメリットがあります。
また身近な人だけでなく、会う機会が少ない人を招く機会にもなり、家族や親族はもちろん仕事関係の人など自由に招くことができるので、これらの人にも直接感謝の気持ちを伝えることができます。
理想の葬儀ができる
生前葬は決まった形式がないため、どのような葬儀にしたいのかを自分で自由に決められます。
通常の葬儀では、専門家である葬儀社の言われたとおりに行ってしまうため自分で思うような葬儀ができず、無駄な費用がかかることもあります。
しかし生前葬は自由度が高いため葬儀の形は本当に様々で、どういった目的で生前葬を行うのか、どういう内容にするかということまで本人の意思で自由に決められるうえ、費用も自分の意思で調整することができるから無駄にお金がかかる心配もありません。
生前葬を行うデメリットについて
生前葬には様々なメリットがある反面、デメリットもあります。
そのため、生前葬をするかどうかはこれらのデメリットも踏まえたうえで決めましょう。
遺族にとって二度手間になる
生前葬は本人が喪主となって行うため、遺族の葬儀の負担が減ることがメリットではありますが、必ずしも遺族の負担軽減につながるとは限りません。
生前葬を行う場合に見落としがちですが、生前に葬儀を行ったとしても実際に亡くなったときには最低限火葬を行う必要があります。
生前葬はあくまで本人が日頃の感謝を周囲に伝えるイベントのようなものなので、故人をしのび、遺族や親族を慰める葬儀とは目的が異なりますから、生前葬を行ったからと言って葬儀をしなくても良いということにはなりません。
また生前葬は無宗教で行われることが多く、その後の埋葬や法要のことも考えると、やはり死後にお寺などでお葬式をすることが多いのです。
さらに故人が社会的地位のあった人であれば、弔問客が多く訪れるのでもう一度葬儀を執り行わざるを得ず、結局は二度手間になってしまうのです。
このように、生前葬をしたからといって葬式を全くしないということにはならず、生前葬をすることで必ずしも遺族の負担が軽減できるとは限らないのです。
そのため生前葬を行うときには、「火葬のみで安く済ませても良い」「小規模な家族葬にしてほしい」などあらかじめ家族と意思を共有しておき、金銭面も考慮した上で死後の葬儀での負担を極力減らせるよう配慮することも大事なことです。
周囲の理解が得られない
生前葬はまだそこまで広く認知されているものではないため受け入れられない人もいて、生前葬そのものを不謹慎であると考える人もいます。
特に家族の理解は不可欠なのですが、先ほど言った通り生前葬を行う場合には結果的に家族の負担が増すこともあるため、同意を得られない場合もあります。
そこで生前葬を行う際にはまず、身近な家族にきちんと相談したうえで、葬儀の際の家族の負担を減らすことが大切です。
また、招待客への配慮も忘れてはいけません。生前葬に参加した人はまだあまり多くはないため、生前葬に招待する場合には服装や香典など、招待された側が困らないよう具体的な配慮が必要です。
生前葬を行うときは、開催の趣旨を明確にすることが重要なポイントです。生前葬そのものの認知度がそこまで高くない以上、きちんとした目的を決めて周知しなければ、参加者に不満の残るようなものになってしまい、本人にとっても不本意な結果に終わってしまいます。生前葬を行いたいと考える理由を明確にし、本人も参加者も納得できる内容にしましょう。
生前葬を行う流れは?
生前葬は内容も自分自身でプランニングが可能なので決まった型はありませんが、ここでは一般的な流れを紹介します。
開式の案内
主催者である本人によるあいさつのスピーチから始まります。
まずは「本日は、お忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます」といった定型的な挨拶から始まり、なぜ生前葬を行おうと思ったのか、その理由などを簡単に述べます。
その後進行の流れを説明するといったような形で、開会の挨拶としては大体このような流れになります。
家族の代表者挨拶
続いては家族の挨拶です。ここでは本人に対する気持ちなどを家族の側から伝えます。
乾杯
乾杯では、主催者の今までの活動を労うという意味での乾杯をします。
スピーチや余興
このあたりは本人の意向が反映されるところが大きく、本人次第で自由な形式により行われます。
例えば、思い出となる写真のスライドショーや友人・親族のスピーチ、手の込んだ食事や自分の趣味の披露など、自由な形でその人なりの会にすることができます。
本人挨拶
最後のあいさつですが、通常の葬儀と違い生前葬では生きているうちにみんなに挨拶ができるため、日頃お世話になっている周囲の人に感謝の気持ちを述べます。また、人によっては今後の人生の過ごし方や自分が考えていることなどを話し、会を締めくくることになります。