宇宙葬とは?
葬儀の在り方が多様化しつつある今、「自然葬」という葬儀方法が広まりつつあります。
自然葬とは遺骨を自然に還す方法であり、樹木葬や海洋散骨などが知られていますが、その中でも特に注目を集めているのが「宇宙葬」です。
名前の通り、遺灰の一部をロケットで宇宙に打ち上げるというもので、広大な宇宙にロマンを求める方などの想いに答える供養の方法として各社が提供を開始しています。
そこで今回は宇宙葬の歴史や日本での現状についてご紹介していきます。
宇宙葬の歴史
宇宙葬の考え方自体は古くから存在しており、その起源は1997年にまで遡ることができます。
最初に宇宙葬を開始したのは、アメリカ・テキサス州に拠点を置くセレスティス社であり、セレスティス社は1997年に24人分の遺灰を載せたロケットをカナリア諸島から打ち上げました。
この中にはSFドラマ「スタートレック」の生みの親であるジーン・ロッデンベリー氏の遺灰も含まれていました。
宇宙葬の種類
自然葬の一種として関心を集めている宇宙葬ですが、実は以下の三種類に分類することもできます。
それぞれ打ち上げ方法や散骨場所が異なるので、宇宙葬を考えている人はしっかりと確認しましょう。
バルーン葬
バルーン葬とは、ヘリウムガスを充填した大きな風船に遺灰を格納して、空に向けて飛ばす方法の総称です。
地上から17~50Km程度離れた成層圏に到達するとバルーンが割れて、遺灰が空中に散骨されることになります。
一般的に「宇宙空間」と区分されるのは上空100Km以上なので、成層圏までしか飛ばないバルーン層は厳密には宇宙葬ではありませんが、方向性としては同じと言えます。
また、ロケットを飛ばす必要がないので、費用も20万円~とリーズナブルですし、申込みから実際の打ち上げまで全て日本国内で完結することも可能です。
流れ星供養
流れ星供養とは、遺灰を納めたカプセルを人工衛星に載せて宇宙空間に打ち上げる供養方法のことです。
打ち上げられたカプセルは地球の周回軌道に到達すると、90分に1周の周期で地球を周回し続けます。
数か月から数年が経つと人工衛星は大気圏へ再突入するので、遺灰は最後に流れ星となって燃え尽きます。
ロケットの打ち上げが必要なので、アメリカを中心にサービスが展開されていますが、日本人でも代理店を通せば申し込みことはできます。
月面供養
月面供養では遺灰を搭載した月着陸船を発射して、月面に着陸させることになります。
搭載できる遺灰は直径2mmのマイクロチューブ1本分ですが、月を見上げれば世界中どこからでも供養することができます。
その分、他の宇宙葬よりも相場は高くなっており、最低でも120万円~は見積もっておきましょう。
こちらも流れ星供養と同じく、ロケットの打ち上げはアメリカで行われますが、代理店を経由すれば国内からでも申し込み可能です。
宇宙葬にはこんなサービスも
宇宙葬には色々な種類がありますが、実際には遺灰を打ち上げるだけでなく、より故人や遺族に寄り添ったサービスが提供されています。
具体的には以下のようなサービスが各社から提供されているので、ぜひ利用を検討してみてください。
記念映像や証明書のプレゼント
一般的に、ロケットや人工衛星の打ち上げはアメリカで行われるので、遺族が気軽に立ち会うことは難しいです。
また、バルーン葬についても決められた場所でしか打ち上げれないので、遠方に住んでいると参加できない場合があります。
そこで宇宙葬を提供している葬儀会社は、打ち上げの風景を映した記念映像や、打ち上げ成功を証明する証明書などの発行を行っています。
追跡サービス
流れ星供養は打ち上げられた人工衛星に搭載されたカプセルが、数か月から数年間かけて地球の周回軌道を回ることになります。
アメリカで展開しているエリジウムスペース社は、人工衛星に付与された追跡IDを用いて、人工衛星がどのような軌道を辿っているかモバイルアプリ上で確認できるサービスを提供しています。
宇宙葬は日本でも行える?
宇宙葬の多くはアメリカ国内で行われており、まだまだ日本では普及が進んでいないのが現状です。
しかし、日本に居住していても宇宙葬を行うこと自体は可能ですので、その方法をご紹介していきます。
宇宙葬を実施するまでの手順
宇宙葬を提供している会社の大部分はアメリカを拠点としているので、ロケットや人工衛星の打ち上げもアメリカで行われます。
これらに参加する場合は、まず窓口となる国内代理店を探す必要があります。
直接申し込むこともできますが、英語でのやり取りになりますし、国外送金が発生する場合もあるので、代理店を通した方が無難です。
また、打ち上げを観覧できるビューイングツアーを提供している会社もありますが、それらに参加するための渡航費や滞在費は遺族負担になります。
宇宙葬の注意点
宇宙葬は宇宙への想いを実現できるロマンに溢れていますが、まだまだ新しい葬儀方法なので事前に注意すべき点もあります。
まずは、しっかりと注意点を確認して後から後悔することがないようにしましょう。
実施までに時間がかかる
宇宙葬は実施するためのコストが大きいので、数十人分の遺灰をまとめて打ち上げることが多いです。
また、打ち上げには色々な企業や組織との調整も必要になるので、スケジュールを指定することはできません。
そのため、遺灰の送付から打ち上げまで数ヶ月以上かかるケースも見られますし、場合によっては打ち上げ自体が失敗することもあります。
仮に打ち上げが失敗したとしても、それに対する補償や再打ち上げを行わないという内容が契約書に記載されている場合もあるので、不安な人は事前に契約内容をしっかりと確認しましょう。
全ての遺灰を使用するわけではない
よく勘違いされることが多いですが、宇宙葬を選択したとしても全ての遺灰を宇宙に送れるわけではありません。
ロケットに搭載できるのは数グラム程度なので、それ以外の遺灰については従来のように先祖代々のお墓に納骨するなどしなければいけません。
いずれにせよ残った遺灰の供養方法については、生前の段階からしっかりと考えて、家族と情報共有しておきましょう。