日本では仏教や神道の信仰が多く、キリスト教式の葬儀に出席したりお墓参りをしたりという経験がない方も多いのではないでしょうか。 キリスト教のお墓は、日本で多い仏教式のお墓と異なる点があります。建てる前に知っておくと役立つ幾つかの点をご紹介します。
●キリスト教のお墓の特徴
キリスト教では、死者は最後の審判の日に肉体に戻り復活するという思想に基づき「土葬」を行うのが本来の姿ですが、日本では多くの自治体で土葬が禁じられているため火葬を行います。
世界的にも火葬が増えてきたこともあり、カトリックでも2016年にローマ法王が火葬を認める指針を明らかにし、遺灰を教会の管轄地に収めるよう指示しています。その場合、亡くなった人は天に召されると考えるため、かならずしもお墓は必要ではなく、納骨堂に遺骨を納めるスタイルも普及しています。
お墓を建てる場合でも、先祖代々をまつる仏教とは違い1人で1つの墓が基本となります。キリスト教にもカトリック、プロテスタント、聖公会、正教会など多くの流れがあり、どのグループでも墓石の素材やデザインに制約はありませんが、十字架が刻まれるのが一般的です。墓石は仏教のものと比べ石の高さが低めで「オルガン型」「プレート型」などと呼ばれます。
墓石に刻む文字にも特徴があります。日本の仏教では墓碑の正面に「〇〇家代々墓」など家(いえ)の名前を刻むことが大半ですが、キリスト教では故人の名前や洗礼名のほか、聖書の一節、賛美歌などが刻まれます。線香を供える習慣がないので香炉はありません。その代わりに、ろうそくを立てる場所を設けます。
●キリスト教と仏教のお墓の違い
まず、仏教とキリスト教では死後の世界についての考え方が異なります。日本の仏教では先祖を「仏」として崇拝し、お墓は「肉体の魂が眠る場所」で、自宅の仏壇の位牌が「精神の魂が眠る場所」だと考えています。このため、彼岸やお盆など決められた日にお墓参りや法要を行い、先祖代々のお墓を継承して守ってゆく慣習が根付いています。
一方、キリスト教では、死は新たな人生の始まりであり、死後の魂は地上に留まることなく「天国に召される」「神の元へ凱旋する」と考えます。
ですから、お墓は故人の魂が眠る場所ではなく、あくまで故人に思いを馳せるための「記念碑」という意味合いになります。また、先祖を「仏」として崇拝する思想もありませんので、お墓で供養を行うという感覚はありません。もちろんキリスト教でも故人を偲ぶ追悼式や集会は行いますが、それらの催しは教会などお墓以外の場所でも行われます。
●キリスト教のお墓を建てる場所
一般的には、生前の所属教会の墓地、公営の霊園、宗教を問わず利用できる民間の霊園が候補となります。カトリック系や聖公会では生前の所属教会が所有する墓地に建てるケースが多く、プロテスタント系各派は統括団体の日本基督教団が管理する墓地を利用するのが一般的です。教会の墓地に埋葬を希望する場合は、その教会で洗礼を受け信者になる必要があります。