過去帳は自分の先祖を知ることが出来る大切な記録

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過去帳とは

過去帳とは、先祖代々の生きていたときの名前(俗名)と戒名、亡くなった年月日と当時の年齢が記入される帳面です。

この記事では、過去帳の記入方法や歴史、新しく過去帳を作成する方法について解説していきます。

過去帳の記入方法

過去帳の記入に関しては誰が行っても問題ありませんが、業者やお寺にも依頼できます。

業者に依頼する

業者に頼む場合は「1霊のみを書いてもらう」「家系図をさかのぼってすべて書いてもらう」などの選択肢があります。

業者によって金額は異なりますが、1霊あたり1000円ほどが相場となるようです。家系図を遡って書いてもらう場合、10~20万円程度が必要となります。

業者への依頼は、新たに過去帳を作成する場合が中心となるでしょう。過去帳の作成については後述します。

お寺に依頼する

戒名をつけてもらう際に過去帳への記載を依頼すれば、別途お布施を用意する必要はないでしょう。ただ、改めて別の機会に過去帳への記載をお願する場合にはお布施が必要になります。

お布施の金額は「お気持ちだけで」と言われた場合、5000円~1万円程度をつつめばよいでしょう。

新たに過去帳を作成する方法

自身のルーツに興味を持つなどして、新たに過去帳を作成する場合の方法・手順について解説します。

戸籍の取得

まずは本籍地を管轄する市区町村から、保存されている先祖の戸籍を取得します。戸籍法では、請求する戸籍の直系尊属や直系卑属ならば取得できると定められているので、その範囲で収集を行います。戸籍は一番古いもので、明治19年まで取得できます。

なお、基本的に戸籍は役場に保管されているものですが、戦災・災害による焼失や、廃棄されている可能性もあります。

また転籍が多い場合、戸籍の取得作業は役場ごとに繰り返し行う必要があります。正確に戸籍を取得するのにも判読技術が必要であり、根気のいる作業となるため、前述のとおり代行業者も存在します。

こうした業者は、調査から家系図の作成まで請け負い、デザインにも力を入れた家系図の作成してくれます。

明治時代の戸籍を取得できたら、おおよそ幕末までの家族の歴史がわかることになります。

戒名を調べる

先祖の名前がわかったら戒名を調べます。まずは戸籍を取得した市区町村のなかで、菩提寺を探さなければなりません。

お墓のあるお寺がわかっていれば早いですが、それがわからない場合、宗教・宗派からお寺を探し出したうえで、そのお寺の過去帳から亡くなった年月日と名前だけを手がかりに戒名を調べなければいけません。

過去帳の作成

本名と戒名を合わせて、過去帳の作成を進めます。前述のとおり、おおよそ明治生まれの代までは調べられる可能性が高いでしょう。

過去帳の歴史

過去帳は「点鬼簿」「霊簿」とも呼ばれます。700年前後に編纂された『続日本紀』に「点鬼簿」と記されており、この頃には過去帳が生まれていたと考えられています。

また、1200年代に書かれた『平家物語』には「後白河法皇の長講堂の過去帳」と記されており、これが過去帳という名称が歴史上で初めて記されたものとされています。

過去帳は鎌倉時代後期に「時衆」(現在の時宗)で重視され、過去帳に記載されることによって「往生」するとされました。とくに時宗の僧侶である他阿真教によって、1279年6月から記された『時衆過去帳』は、国の重要文化財として知られています。

檀家制度と過去帳

1635年の寺社奉行設置と寺請制度が契機となり、檀家制度の確立とともに過去帳は全寺院に備えられるものとなりました。これにより「仏教を信仰し、必ず菩提寺を持ってその檀家となること」が義務付けられました。

江戸時代に入るとより効率的かつ厳しく管理されるようになり、過去帳は菩提寺が「檀家に何人の家族がいて、いつ亡くなったか」を確認するためのものとなります。

菩提寺には檀家の過去帳が制作・保管され、檀家のほうでも個別で過去帳を持つようになりました。当時の過去帳が現存すれば歴史的資料となりますが、災害や戦争などで多くは焼失しています。

浄土真宗における過去帳

浄土真宗は、位牌と過去帳の考え方が大きく異なります。浄土真宗では「仏様を信じ、尊び、拝むと決めた時点から、その人は仏になる」という「即身成仏」の考えを持ち、遺族による追善供養は必要ないとされています。加えて、故人はすぐに仏様になるのだから、位牌に入れる魂はないと考えられています。

そのため浄土真宗では、戒名を「法名」と呼び、位牌もありません。先祖の生きた証を辿るものとして過去帳や法名軸が存在し、これを位牌の代わりにして仏壇に飾ってもよいとされています。

ただし、過去帳や法名軸は「記録」のためにあるもので、信仰やお祈りの対象ではありません。浄土真宗における信仰の対象は、あくまで仏様です。

まとめ

過去帳は「故人の記録」の意味を持ちますが、位牌にも故人の俗名と戒名、亡くなった日・年齢を記します。ただ、この2つの性質は大きく異なります。

位牌は「故人の魂が宿っているもの」「亡くなってしまった人そのもの」であり、遺族が祈りを捧げるための役割があります。

その点で過去帳はあくまで過去の記録であり、家系図的な意味合いが強いものなのです。