自宅供養とは
遺骨の全部、もしくは一部を身近に置いて供養することを「自宅供養(手元供養)」といいます。2006年にNPO「手元供養協会」が発足し、自宅での供養が提唱され、今日に至っています。
「自宅供養(手元供養)」では、単に遺骨を自宅に安置するだけでなく、アクセサリーとして身に付けるといった方法が取られ、供養のかたちは多様化しています。
遺骨のすべてを自宅で供養する場合
将来的にもお墓への納骨の予定がない場合、自宅に供養のスペースを設けて遺骨を安置します。ただ、納骨の時期に決まりはないので、後々にお墓へ納骨しても問題はありません。
骨壷について
葬儀社が提供する骨壺は納骨用なので、自宅供養の場合は別に骨壺を選ぶのもよいでしょう。自宅供養用の骨壺はデザインも豊富なので、故人のイメージに合ったものやインテリアにマッチするものが見つけられるはずです。
また、主に東日本で用いられる大型の骨壺だと、自宅で安置するには不便かもしれません。遺骨を粉砕して小ぶりな骨壺に収める場合は、粉骨を行う専門業者があるので、まずは葬儀社や仏具店に相談してみるとよいでしょう。
法律上の問題
自宅で遺骨を安置することに、法律上の問題はありません。ただし「墓地、埋葬等に関する法律」では、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。
つまり、自身の土地であろうと、家の庭などにお墓を作って納骨してはいけないということです。
遺骨の一部を自宅供養する場合
遺骨の大半を墓地へ納骨しつつ、一部は自宅で供養する「分骨」も手段のひとつです。
分骨で供養するの場合、火葬場で納骨用の骨壺と分骨用の小さな骨壺などにそれぞれ遺骨を納めてもらいましょう。
遺骨・遺灰の一部をアクセサリーにする
自宅供養の品として、小さな骨壺のほかにも、遺骨・遺灰の一部をアクセサリーとする方法があります。ペンダントやブレスレット、指輪などに入れることで、常に身に付けていられるわけです。
価格は2~5万円のものが中心で、さまざまなデザインから選べます。また、遺骨そのものをアクセサリーとして加工する方法もあります。こちらは費用が10~100万円と高額になり、完成までに数ヶ月ほどかかることもあります。
自宅供養のメリット
近年では、「形にとらわれない供養をしたい」「故人の望む方法で供養したい」といった希望が増えてきました。自宅供養もその典型であり、精神的な面以外にもメリットがあります。
・遺骨を身近に置くことで心の癒しとなる(グリーフケア)
・費用面での負担が少ない
・宗教観や社会通念にとらわれない供養ができる
自宅供養のデメリット
自宅供養はまだ認知されているとは言い難く、周囲の理解を得にくいこともあります。
・家族など周囲の理解を得られず、反対される場合がある
・遺骨を管理する人が亡くなった場合、遺族が対応に困る
自宅供養で失敗しないための準備
自宅供養をするための最大のポイントは、周囲の理解を得ることです。自宅供養のために前もって済ませておくべき準備について解説します。
自宅供養を独断で行わない
自宅供養でもっとも大切なのが「話し合い」です。自宅供養を独断で行うと、親族との思わぬトラブルに発展する恐れがあります。
例えば、自宅供養を望む人が複数いた場合は「遺骨の取り合い」に繋がりかねません。遺骨の所有者を規定する法律はなく、法的に「喪主のもの」「子どものもの」と断言できないのです。
そのため、遺骨の取り扱いについて、遺族で意見が分かれることも少なくありません。遺族間で争いにならないよう注意しましょう。
周囲の理解を得る
遺骨が家にあることに抵抗感を持つ人は少なくないため、親族や友人への配慮も必要となります。周囲には自宅供養にしたい理由を説明して、理解を得られるように努力することが大切です。
遺骨を管理する人が亡くなった後
自宅供養を行う人が亡くなった際、安置している遺骨や形見などをどうするか考えておかなければいけません。自宅供養を行う人は、エンディングノートや遺言書に自身の死後の遺骨の扱いなどについて、希望を書いておきましょう。
まとめ
昔から遺骨を手放せずに自宅で供養する人は、一定数存在しました。とくにつらいお別れをした方にとっては、自宅供養はグリーフケアの一面もあります。
一方で、家に遺骨があることに抵抗感を持つ人は少なくなく、周囲の理解はしっかりと得なければいけません。
経済的な理由や宗教観などを含めて理由を深めることが、失敗のない自宅供養につながります。