葬儀の生前契約とは
最近では遺族の負担を減らすために、自身の葬儀について事前相談や生前契約を行うことが一般的となっています。
事前に葬儀社で葬儀内容を相談しておくことで、おおよその参列者や祭壇プラン、その他オプション品などから費用を把握できます。
さらに葬儀の事前相談から一歩進み、実際に葬儀の契約を結ぶことを「生前契約」といいます。
契約時に葬儀代金の支払いまで済ませ、葬儀信託契約を扱う金融機関に入金する場合もあります。契約には、家族など本人以外の同意が必要です。
生前契約を済ませておけば、遺族が行うことは葬儀の日時の決定と契約内容の確認といった、最低限の打ち合わせだけになります。
なお「生前契約」は、介護福祉サービスや、亡くなった後の身の回りの整理などさまざまな場面で使われますが、ここでは「葬儀の生前契約」に絞って解説をしていきます。
生前契約を結ぶべき状況
生前契約は自身の葬儀について決める場合と、家族が行う場合の二通りがあります。それぞれ生前契約を結ぶべき状況を解説します。
本人が行う場合
自分の葬儀について生前契約を結ぶことで、自分の意思通りの葬儀を執り行えます。とくに、以下のような境遇の方は生前契約を検討すべきでしょう。
・家族に経済的・心理的負担をかけたくない
・自分らしく最期を演出したい
・親族が高齢で頼れる人がいない
・身寄りがない
・家族仲が円満でないため、トラブルを避けたい
一人暮らしで身寄りがない方には、葬儀以外の死後の事務手続きや財産整理まで済ませておく生前契約が注目されています。
葬儀や埋葬に関する事務の代理権を与える「死後事務委任契約」を結ぶことで、死後の雑事がスムーズに解決できます。また、希望通りの内容で葬儀が行われるように「公正証書遺言」を作成する場合もあります。
家族が生前予約を結ぶ場合
家族が生前予約を結ぶ場合は、主に本人が入院中などで死期迫っているケースです。
以下のような状況で、家族による生前契約が結ばれています。
・病気や事故で余命宣告を受けた
・喪主が遠方に住んでおり、いざというときにすぐ打ち合わせができない
・葬儀費用が心配
生前契約のメリット
生前予約を結ぶことで、遺族の負担を経済的にも精神的にも軽くできます。具体的なメリットを以下に解説していきます。
冷静な状況で打ち合わせできる
死後の慌ただしさや取り乱した状況で打ち合わせを行うと、葬儀会社に勧められるまま必要のないオプションを注文してしまうことがあります。生前の落ち着いた状態で打ち合わせを行うことで、本当に必要な物だけにお金をかけられます。
質素な葬儀を執り行いやすい
「家族になるべくお金を残してあげたい」と考える場合は、生前契約を結ぶべきでしょう。遺族が葬儀プランを決める際、周りに親族などの目があると、必要以上にお金をかけてしまうケースが多々あります。
その点、本人が生前契約を結んでおけば、質素な葬儀でも「本人の意向」として、誰もが納得できます。
自身の希望とおりの葬儀にできる
「好きなアーティストの曲をかけてほしい」「お気に入りのユニフォームを飾ってほしい」など、細かい演出まで携われるのが生前契約のメリットです。
余生を安心して過ごせる
事前に葬儀の準備を済ませておくことで、余生を安心して過ごせます。金銭面でも、慌てて葬儀費用を準備することもなくなります。
生前契約を結ぶ際の注意点
メリットの多い生前契約ではありますが、いくつか注意点もあります。
葬儀が希望通りにならない場合もある
生前契約を結んでも、実際の葬儀が希望通りにならないことがあります。例えば、感染症の拡大で葬儀の形式が変わる、物価の高騰などが原因として挙げられます。また、依頼した葬儀会社の倒産なども考えられます。
契約時と状況が変わることも
多くの参列者が来ることを予想して契約を結んでも、「交友関係が狭まる」「周囲の高齢化」などの理由から、参列者が契約時の予想よりも減る可能性があります。参列者が減ることで、質素な祭壇や小さいな式場でもよかったという事態になることも少なくありません。
逆に、少人数でのお葬式を望んで小さな式場を選んでも、実際には交友関係の広さから参列者が溢れてしまうこともあります。
遺族が葬儀社へ手配してしまう
生前契約を結んでいても、契約したことを共有しておかないと遺族が葬儀社へ手配してしまうことがあります。生前契約を行っていることは家族に伝えておき、エンディングノートや遺言書などに記しておくのもよいでしょう。
想定外の支払いが生じることも
契約時に支払いを済ませていても、葬儀後に支払いが発生することもあります。例えば、時期によっては火葬場が込み合うこともあり、遺体の保管費用が想定よりも掛かる場合などが挙げられます。
生前契約の際のポイント
注意点やメリットを踏まえた上で、生前契約のポイントを解説していきます。
葬儀会社の選び方
生前契約を結ぶ際は、要望を伝えやすく安心できる葬儀会社を探しましょう。まずは複数社で相見積もりを行い、サービス内容や価格を比較したうえでどこへ依頼するか決めるとよいでしょう。
また、契約の見直しや更新ができるかもポイントです。参列数者の増減などのさまざまな変化により、「葬儀プランを変えたい」と思うことも少なくないからです。基本的に返金は難しいですが、「参列者が減ったぶん料理の数を減らし、そのぶん質を上げる」といった、状況に応じた対応をしてくれる葬儀会社がよいでしょう。
数年に一度は葬儀プランの内容を確認し、必要に応じて変更できるのが理想です。
追加費用を想定しておく
見積もり以外にも、お寺へのお布施や参列者数の変更などによる追加費用が掛かることを想定しておきましょう。別途、追加費用を準備しておくと安心です。
喪主の選び方
喪主を選ぶ際は、より自分の意向を理解してくれる人物を選びましょう。生前契約を結ぶ際は、親族に相談し、契約内容の意図を共有しておくことが大切です。
注意点は、本人の意思だけでなく、家族の意向もくみ取ることです。しっかりと話し合い、家族全員が納得する葬儀を考えましょう。
もし契約時までに家族との話し合いができない場合、料金の支払いは葬儀後としているところを選ぶと良いでしょう。前払い金を払ってしまうと、家族間で意見が異なったときにトラブルになります。
細かな希望はエンディングノートに
葬儀にまつわる細かな希望は、葬儀会社に伝えたことも含めてエンディングノートなどに書き留めておいた方が確実です。
具体的には「もしもの時は誰に知らせるか」「誰にどんな役割をお願いするか」「葬儀でしてほしいこと」「その後の供養の方法」などをまとめておくとよいでしょう。
まとめ
葬儀の生前契約を結ぶことによって、家族の経済的・心理的負担を軽くし、自分らしい葬儀の演出ができます。
一方で、葬儀会社の選定や追加費用の想定など、事前の準備は綿密に行う必要があります。元気なうちからじっくりと考え、万全の準備を整えておきましょう。