失敗しない散骨葬選び

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散骨葬について

散骨葬とは、遺骨を粉末状にして海や山などに散布する埋葬方法です。単に散骨と呼ばれることもあります。散骨葬は自然葬の一種として、世界的にも実施する国が増えているといいます。

今回は近年広がりを見せている埋葬方法の変化の中でも、特に注目されている「散骨葬」について解説をしていきます。

散骨葬が注目される背景

散骨葬が注目される背景として、従来の「お墓を守る」という考え方の変化が挙げられます。

現在は同じ土地で一生を過ごす人が減り、さらにその子孫まで同じ土地に住み続けるのは少数派といえるでしょう。こうしたライフスタイルの変化から、自然葬や手元供養が浸透してきています。

また、都市部を中心に墓地の場所が確保できないため、埋葬が難しくなっているといった事情もあります。

散骨葬を規定する法律はない

現状で散骨葬を規定する法律はありません。埋葬の方法を規定した法律として「墓地埋葬法」が挙げられますが、これには「地表より下」に勝手に遺骨を埋めることを禁止することのみが記載されており、散骨についての記載はありません。

散骨葬の種類

散骨葬は人々の願望に合わせて広がりを見せており、海や山だけでなく、宇宙でも行えるようになっています。散骨葬の種類とその概要を紹介します。

海洋散骨

海洋散骨とは、遺灰を海に撒くことで故人を弔う葬送で、海が好きな人に選ばれています。海洋葬と呼ばれることもあります。遊泳地域や漁業が行われる地域は避け、遠洋で行われます。

山岳散骨

山岳散骨とは、遺灰を山間部に撒くことで故人を弔う葬送です。登山家のあいだで親しまれ、遺灰を山頂で撒くための「弔い登山」も行われています。基本的には私有地や公有地は避け、国有地で行われます。

宇宙葬

宇宙葬とは遺骨を宇宙へ向けて打ち上げる、新しい散骨の方法です。例えば、人工衛星で遺灰を宇宙空間へ送る方法が挙げられます。遺灰は一定期間を宇宙空間で過ごし、大気圏に再突入した際に燃え尽き流れ星となります。

その他にも月での散骨などがあり、夢のある埋葬方法といえるでしょう。ただし、費用は高額で、打ち上げる遺骨のグラム数によっても変動しますが、数百万円単位の金額が必要となることが多いようです。

バルーン葬

バルーン葬は、バルーンのなかに遺骨を詰めて空へ放つ方法です。バルーンは上空で気圧によって弾け、遺骨が飛散する仕組みになっています。

バルーン葬は広義の宇宙葬に含まれますが、こちらは30万円ほどで執り行えるようです。

散骨葬の注意点

散骨葬を行う際は、法律や周辺住民などに気を配らなければいけません。散骨葬の注意点を解説します。

遺骨とわからないよう粉状にする

火葬で焼きあがった遺骨をそのまま撒いてはいけません。刑法190条「死体損壊罪」として罪に問われる恐れがあるからです。そのため、遺骨の原型がわからないくらいに粉末状にした上で散骨する必要があるのです。遺骨の一片が2ミリメートル以下が目安となります

また、散骨したあとに土をかぶせてしまうと、墓地埋葬法の「地中」に該当し、やはり触法行為となる恐れがあるので注意しましょう。

自治体による制限

自治体によっては、散骨葬を制限しています。散骨をする際には、該当地域の各自治体に問い合わせて、問題がないか確認しましょう。

周辺の住民への配慮

散骨を行う際は、その周辺地域の住民が不快な思いをしないよう心がけましょう。

例えば海での散骨(海洋散骨)においても、漁業や観光地への配慮が求められています。また、周囲の目に配慮して喪服を着用しないなどのマナーもあります。

最悪の場合、民事上の争いにまで発展する恐れがありますので注意しましょう。

散骨の流れ

散骨の種類はいくつかありますが、いずれにも共通する散骨までの流れを解説します。

家族・親族の同意

まずは、家族や親族に散骨葬について同意を得ましょう。とくに遺骨を砕く、遺骨を撒くといった行為に抵抗感を持つ方は少なくありません。生前のうちに納得してもらえるよう、準備しておきましょう。

一部散骨か全て散骨するか

散骨葬は遺骨をすべて散骨するだけでなく、一部のみを散骨して、残りを既存のお墓に埋葬するなどの方法があります。

散骨葬はお墓参りの場所が曖昧になるため、残された家族・親族に戸惑いが生まれる場合があります。一部の遺骨を自宅供養して、故人を偲ぶ手段を残しておくのもよいでしょう。

場所の選定

散骨を行う場所についても入念な下調べが必要です。思い入れのある場所であっても、条例の定めや周辺住民への配慮などから、散骨を行えるとは限りません。

海であれば船のチャーター、山であれば所有者の調査など、散骨場所の選定には確認事項が多くあります。

まとめ

ライフスタイルの変化や墓地の問題を背景に広まっている散骨。方法も多様化しており、同じ散骨でも海や山、果ては宇宙と故人の嗜好に合わせた場所で執り行うことができます。

一方で、現状では法的にグレーゾーンであることからも、マナーを含めて注意して実施する必要があります。