失敗しない宇宙葬について
自然葬の人気・関心が高まっていますが、宇宙に散骨できるサービスがあることをご存じでしょうか。
人工衛星で流れ星として供養したり、宇宙の果てを目指したりとプランもさまざま。実際に宇宙旅行へ行くよりも安価に済むのも魅力です。
今回は宇宙葬の概要やデメリット、流れなどを解説していきます。
宇宙葬とは
宇宙葬は自然葬の一種であり、海や山へ散骨するのと同様に、遺灰を宇宙へ打ち上げて散骨します。遺骨をパウダー状にしてから、遺灰の一部を専用のカプセルに入れて宇宙に打ち上げる方法が取られます。
ここで言う「宇宙」とは、国際航空連盟が定めた「カーマライン」のことで、地上から100km上空にある宇宙空間と大気圏の境界線を指します。このカーマラインを越えて弔うのが宇宙葬と呼ばれます。
宇宙葬のプランの種類
宇宙葬はいくつものプランがありますが、基本的には遺灰の一部を納めたカプセルをロケットに搭載して宇宙に打ち上げる点で共通しています。
人工衛星プラン
遺灰を人工衛星に搭載して打ち上げるプランです。打ち上げられた人工衛星は最長240年にわたって軌道を周回します。アプリなどで遺灰を搭載した人工衛星の位置を確認できるサービスもあります。
宇宙探検プラン
遺灰を宇宙探査機に搭載して打ち上げるプランです。探査機は宇宙の果てを目指して飛び、宇宙探検を続けます。
月面供養プラン
遺灰の一部をカプセルに納め、ロケットに搭載して月に運びます。月をお墓に見立てて弔うという考え方で、月を見上げることがお墓参りとなります。
流れ星供養プラン
遺灰の一部を納めたカプセルを人工衛星で打ち上げ、地球のまわりを数カ月から数年かけて周回します。やがて人工衛星は大気圏に突入し、流れ星となって燃え尽きることから「流れ星供養」と呼ばれます。
バルーン葬
バルーンに遺灰を入れて上空まで飛ばし、散骨する供養です。バルーンは高度30~35kmの上空で破裂し、散骨されます。
カーマラインよりも低い高度であるため、厳密には宇宙葬ではないのですが、広義の意味で宇宙葬に含まれることが多いプランです。
宇宙葬の多くは海外まで行く必要があったり、費用が高額だったりしますが、バルーン葬は国内でも実施されており、費用も手ごろです。
宇宙葬が選ばれる背景
高額な費用がかかる宇宙葬ですが、なぜ人気が高まっているのでしょうか。
宇宙への憧れ
一般人も宇宙旅行ができる時代となりましたが、まだ気軽に行ける料金ではなく、訓練も必要となります。その点で宇宙葬は宇宙旅行ほど高額ではなく、訓練の必要もありません。シニア世代の「宇宙へ行きたい」という夢を叶える最後の方法といえるでしょう。
子や孫にお墓参りの手間をかけたくない
遠方へのお墓には時間と労力がかかるため、「子や孫に面倒をかけたくない」と都市部へのお墓の引っ越しを試みる人が増えています。
その点で宇宙葬は、空を見上げることが故人を偲ぶことになります。もっとも手軽なお墓参りといえるでしょう。
宇宙葬のデメリット
宇宙葬には高額な費用以外にもいくつかのデメリットがあります。これらを踏まえたうえで実施を検討してみましょう。
宇宙葬で散骨できる遺灰は一部だけ
宇宙葬は、遺灰のすべてをカプセルに納められるわけではありません。残った遺灰は手元供養やお墓に納骨するなど、別途対応を考える必要があります。
遺灰を回収できない
宇宙葬だけではなく他の散骨でも言えることですが、遺灰を撒いてしまえば回収はできません。
宇宙葬で供養されるのは遺灰の一部とはいえ、親族が散骨に抵抗感を覚えている場合は慎重に対応する必要があります。
実施までに時間がかかる
宇宙葬は個人で行うものではなく、複数名が集まった後に実施されるものがほとんどです。そのため、規定の人数が集まるまでは実施できません。
また、ロケットの打ち上げスケジュールも決まっており、さまざまな要因で延期・中止となることも少なくありません。
宇宙葬に必要な準備
まだ一般的とは言い難い宇宙葬を執り行うには、相応の準備が必要となります。
親族との話し合い
宇宙葬を希望する場合、まずは親族と話し合いをしましょう。遺灰が撒かれてしまうことに、抵抗感を覚える人は一定数存在するからです。遺骨(遺灰)をどうするかは遺族の心のよりどころにも関係するので、慎重に考える必要があります。
残りの遺灰をどうするか決める
宇宙葬では一部の遺灰しか散骨できないため、残りの遺灰をどうするか決める必要があります。お墓への納骨や手元供養など、あらかじめ対応を考えておきましょう。
業者の決定
最後に、宇宙葬を行う業者を選ばなければいけません。料金や散骨の方法、スケジュールや打ち上げ場所などの条件から決定しましょう。
現地での見送りができるプランなどもあるので、親族にも共有しておくとよいでしょう。
まとめ
現在、アメリカで行われている宇宙葬のうち、利用者の約2割が日本人と言われています。今後、技術が進歩すれば宇宙葬の価格は下がり、広く普及することで、実施までの時間のデメリットも解消されてくるかもしれません。
一方で、気を配るべきは親族の感情です。本人が宇宙葬を望んだとしても、周囲に受け入れてもらえない可能性があります。
宇宙葬は乗り越えるべきハードルは数多くありますが、一般人が宇宙旅行を体験する手軽な方法でもあります。宇宙への憧れを捨てきれない方は、検討してみてはいかがでしょうか。