失敗しない位牌製作

仏壇・位牌

お葬式には様々な準備や手続きが必要になります。やっと終わったと思うのも束の間、お葬式が終わった後にも行わなくてはいけないことが多々存在します。その中でも多くの人が思い浮かべるのが、「位牌」を作ることではないでしょうか。とはいえ、「お葬式やお墓については色々覚えていても、位牌についてはあまり覚えていない」「どうやって作ったのか忘れてしまった」「そもそも位牌を作るのは今回が初めて」という方が多いのも事実です、今回はそんな「位牌」について製作の手順を、1からお伝えいたします。

位牌とは

故人を祀るため、戒名や法名を記して仏壇や寺院の位牌壇に安置する木製の牌のことを位牌と呼びます。日本には禅宗と共に鎌倉時代に伝来し、江戸時代に一般化したと言われています。数え方は、「柱」です。

お葬式に使われる位牌は3種類

お葬式に際して使われる位牌には、野位牌、仮位牌、位牌の3つがあります。それが

野位牌とは白木で作られた最も簡素な形の位牌です。葬儀の際には住職の机の上や、棺の上に置いてあります。野位牌は「骨壺の表札」としての役割で、式で使われた後に、お骨と一緒にお墓の納骨堂に納めます。お墓の中にあるお骨が多くなってくると、それが一体先祖の中の誰であるのか分からないという事態が起きてしまいますが、お骨と一緒に野位牌を置いておくことで、こうした事態になることを防いでいるのです。

仮位牌は「仮」という文字が表しているように、最終的に塗りにする前の、魂を仮に移すための位牌です。野位牌と同じように白木を使って作られていますが、形は野位牌とは異なり、多少の装飾が施してあります。仮位牌の役割は、「塗りの位牌が完成するまで、魂の拠り所となること」です。仮位牌は式中祭壇の中心に据えられます。最終的にはこの後説明する塗りの位牌を作ることになるのですが、式が終わって塗りの位牌が出来上がるまでには少しタイムラグが出てきてしまいます。このタイムラグができてしまった間、亡くなった方の魂を移し替える仮の位牌が、仮位牌なのです。基本的には塗りの位牌は四十九日忌までに作られることが多いので、仮位牌の役目はそれまでとなります。

本位牌は葬儀後、仏具店などに頼んで作ります。仮位牌から魂を移し替える都合上、四十九日忌に合わせて作られることが多いです。本位牌には様々な種類があり、地域や風習によってデザインが異なります。また地域によっては塗りの位牌は作らずに、仮位牌をそのままお仏壇の中に備える土地もあります。これは、まだ漆塗りの位牌が貴重で高価だった頃の名残です。

位牌の歴史

「位牌」という概念が日本に普及したのは江戸時代のことですが、古くは中国で祖先を祀る祭事に使われていた「位版」に起源があると言われています。鎌倉時代にはそれが日本に伝わってきたと言われていますが、一般にはすぐには浸透しませんでした。他の文化や風習と同じく、入ってきた当初は高貴な身分の人々や、武家の間で浸透したようです。江戸時代になって庶民の間にも位牌という概念が普及しました。なぜ日本人に概念が定着したのかには諸説ありますが、日常の中で先祖を大切にしようという日本人の精神性にマッチしていたと考えるべきでしょう。日本人の先祖を思う気持ちが位牌に現れていると言えるでしょう。

位牌は必ず作るもの?

位牌の普及に伴って、今では日本のどこに行ってもお仏壇の中には位牌があるのが当たり前になりました。しかし実は、位牌は必ず作らなければいけないというものではありません。仏教のメッカであるインドでは、位牌はほとんどの場合作られません。これは、仏教の概念でもある輪廻転生の概念によるものです。

日本の仏教は大陸から渡ってきた儒教の影響も受けており、日本における位牌の概念は儒教の影響が大きいとする説もあります。しかし現実に即していうならば、先祖供養のために日常的にご先祖を拝める依代を日本人が求めていたとみるべきでしょう。従って、必ずしも作らなければいけないものではありませんが、先祖を思う気持ちの現れとして作るのは良いことだと言えます。

位牌の種類

本位牌には主に3つの種類があります。それが塗り位牌、唐木位牌、繰出位牌です。塗り位牌が多くの家庭の仏壇で見られる位牌のタイプです。漆を使って黒く塗り上げられており、金の縁取りがされています。

唐木位牌は唐木を使った木目が出ているのが特徴です。近年人気となっている家具調の仏壇などと相性がよい位牌です。繰出位牌は中に何枚か板が入っており、先祖を一度に1つの位牌にまとめて供養することができる位牌です。板の大きさは、商品ごとに異なります。小型のお仏壇の場合、亡くなる方が増えてくると位牌がお仏壇の中に入りきらないという状態が起こります。こうした時に便利なのが繰出位牌です。

現在はお仏壇にもモダンな家具調のものが増えてきています。それに伴ってこの3種類以外にも、よりおしゃれな位牌も出てきています。ちょっとしたオブジェのような形をしていたり、クリスタルで出来ている位牌なども登場しています。仏壇との相性でどの位牌にするか決めるのも良いでしょう。

位牌製作の際に注意すること

位牌を作る際、、一般的にこうしたほうが良いと言われているルールが存在します。

位牌の大きさ

位牌の大きさは、仏壇の中に入るかどうかということだけが基準ではありません。もし先祖の位牌が既にお仏壇の中にある場合には「同じ」もしくは「少し小さめ」に作るのが良いとされています。

これは先祖に感謝と尊敬の気持ちを込めて、先祖よりも大きくするべきではないとされているのです。逆に今回が位牌を作るのは初めてという場合には「今後の大きさの基準」となります。事前に大きさをしっかりと把握して作るようにしましょう。

レイアウト

既にご先祖の位牌がある場合には、文字のレイアウトを把握しておきましょう。全く異なるレイアウトで作ることは、あまりおすすめしません。心配な方はスマートフォンのカメラ機能で、写真を撮っておくと便利です。なお、忘れがちなのが「位牌の裏側」の確認です。必ず両面確認、もしくは写真を撮っておくようにしましょう。

彫りなのか、書きなのか

本位牌に文字を入れる方法には「彫り」と「書き」という2つの方法があります。現在は「彫り」で作られることが多いのですが、地域によっては「書き」で戒名が記入されている位牌も見られます。自宅の位牌がどちらで文字が入れられているのか確認しておきましょう。

文字の色

位牌の文字の色には「金」「白」「青」など、様々な色が使われます。こちらもあまり変えることは望ましくありませんので、先祖の位牌に合わせて作りましょう。

位牌を作るまでの流れ

以上のことを参考にしながら、最後に位牌の発注の流れをお伝えします。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 戒名の確認
  2. 自宅にある位牌の確認
  3. 仏具店や葬祭会館で位牌を選ぶ
  4. レイアウトや文字について正確に伝える
  5. スケジュールに注意して発注
  6. 四十九日忌などの節目の際に魂の移し替えを行う
  7. お仏壇の中に納める

戒名の確認

まず手元にある仮位牌に書いてある内容を確認しましょう。仮位牌には住職によって、既にレイアウトと戒名が書かれています。これがわからないと位牌に記入する名前が分からなくなってしまいます。

自宅にある位牌の確認

自宅にある位牌を確認しておきましょう。確認する項目は先述してある「大きさ」「レイアウト」「文字」「文字の色」です。もしもここで住職が仮位牌に書いた内容と、過去の位牌に違いがある場合には住職に確認してください。住職に無断で位牌の内容を変えてしまうのは、良くありません。

仏具店や葬祭会館で位牌を選ぶ

確認が済んだら、実際に店頭に行って位牌を選びましょう。位牌の値段は幅が広いので、予算との相談になります。京都や会津といった名産地のものは値段が高めに設定されています。

レイアウトや文字について正確に伝える

いよいよ発注の段階になったら、レイアウトや文字に間違いがないようにしましょう。発注の際に1文字でも間違ってしまえば、せっかく頼んだ位牌も作り直しになってしまいます。物によっては買い直しということになるので、念には念を入れて確認をするようにしましょう。

スケジュールに注意して発注

レイアウトや文字に間違いがないことを確認したら、本位牌を使う四十九日忌などの日程に確実に届くように、日付を指定して発注します。

四十九日忌などの節目の際に魂の入れ替えを行う

四十九日忌などの節目の際に、仮位牌と出来上がった本位牌を両方持っていき、住職に魂を入れ替えてもらいます。役割の終わった仮位牌は、この時に住職に引き取ってもらいましょう。

お仏壇の中に納める

最後に仏壇の中に本位牌を納めて完了です。位牌を製作する場合にはご仏壇の中を一度確認しましょう

まとめ

位牌作りの基本は「先祖に習うこと」。何度も確認し、間違いがないようにしましょう。長い間見守ってくれるご先祖様の依代となる物なので、しっかりと良いものを作りましょう。

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