キリスト教の葬儀は何を行う?
まずは、葬儀を執り行う遺族側が何をするのか、何を準備するのかについてご説明したいと思います。
キリスト教のなかでもカトリックの場合は、亡くなる前から儀式が始まります。カトリックでは、死者を見送ることよりも、「どのように死を迎え入れるか」を大切にしているからです。そのため、病者が重篤な状態になった段階で神父に連絡します。そして、臨終を迎える際に神父が病者の額などに聖油を塗ります。
亡くなったあとは、葬儀会社に遺体のお迎えや安置などお願いしていることもあると思います。ただし、キリスト教の葬儀に慣れていない葬儀会社も多いため、可能ならば神父に立ち会ってもらうといいでしょう。
キリスト教で通夜は行われませんが、日本独自の風習にならって「通夜の集い」または「前夜祭」を執り行います。喪主は仏式とほとんど同じで、配偶者や息子など、故人ともっとも縁の深い親族が務めます。
通夜は身内のみで執り行われ、カトリックでは聖歌(プロテスタントでは讃美歌)を歌って神父による聖書朗読や説教の後、全員でお祈りをして献香や献花を実施。通夜の後には、通夜ぶるまいとしてお菓子やお茶を頂きながら故人を偲びます。
通夜にあたる「通夜の集い」や「前夜祭」を執り行った翌日は、葬儀となります。葬儀は一般の参列者も一緒に故人を偲びます。仏式と違い、通夜は身内だけで行ない、葬儀は参列者とともに行います。
カトリックの葬儀
カトリックでは、死後に故人は神に委ねられ、キリストの再臨と死者の復活が願われます。葬儀は、故人の罪を神に詫びて許しを請い、永遠の安息を得られるように祈る儀式とされています。
カトリックでは、聖職者は「神父」と呼び、礼拝のときの歌は「聖歌」と言います。ここでカトリックの葬儀の流れを見ていきましょう。
入堂
聖歌とともに神父が入堂します。その際、参列者は起立で迎えます。棺は入口にいったん安置され、神父によって聖水と祈りが捧げられます。
その後、神父に続いて棺と遺族の入場です。
開会の辞
神父が棺に聖水を注ぎ、献香をします。その後、神父によって開会の辞が述べられて、葬儀が始まります。
葬儀のミサ
遺族が奉納したパンと葡萄酒によるミサで、故人が神に受け入れられることを祈ります。
・言葉の典礼:神父による聖書の朗読と説教が行われ、参列者全員で祈りを捧げます。
・感謝の典礼:遺族が祭壇に、肉と血を意味するパンと葡萄酒を捧げ、信徒が神父から聖体(パン)を受け取ります。
これは、聖体拝領といって、故人が永遠の命を得られるように祈るという意味があります。
この葬儀のあとに告別式が行われますが、告別式は遺族側の進行で行われます。キリスト教では故人が礼拝の対象になるわけではありませんので、遺影は置かずに遺体に手を合わせることもありません。
カトリックの告別式の流れ
次にカトリックの告別式の流れを見ていきましょう。
入堂・聖歌
葬儀と同じように、聖歌とともに神父が入堂します。
聖歌斉唱
参列者全員で聖歌を歌い、告別式が始まります。
弔辞・弔電の紹介
故人の略歴と弔辞・弔電の紹介をします。
献花
祭壇に花を捧げます。献花を行う順は、喪主、遺族、親族、一般参列者です。
遺族の挨拶
喪主が挨拶をします。参列者が多い場合は献花の前に喪主の挨拶が行われることもあります。
プロテスタントの葬儀の流れ
プロテスタントでは、亡くなると天に召されて神に仕えると考えられています。葬儀中の祈祷は、故人の冥福を祈るものではなく参列者全員に神の祝福があるように祈るものであり、神への感謝と遺族を慰めるという意味合いもあります。
プロテスタントでは、聖職者は「牧師」と呼び、礼拝のときの歌は「讃美歌」と言います。
入場
オルガン演奏の中、牧師を先頭にして棺と喪主と遺族が入場します。この時、参列者は起立して迎えます。
聖書朗読・祈祷・賛美歌斉唱
牧師が聖書を朗読して祈祷を捧げ、参列者は黙祷します。その後、全員で賛美歌を斉唱します。
牧師による説教
牧師が故人の略歴や人柄などを紹介した後、説教をします。
弔辞・弔電の紹介
弔辞と弔電の紹介をします。プロテスタントでは、故人を弔うというより思い出を語る内容なのが一般的です。
祈祷・祈り・賛美歌斉唱・献花
オルガン演奏の中祈祷をした後に、牧師が祈りを捧げ、全員で賛美歌を斉唱します。
その後、献花を行います。献花の順番は、牧師、喪主、遺族、親族、一般参列者です。
キリスト教の葬儀に参列するときのマナー
では、実際にキリスト教の葬儀に参列する側のマナーなどについてお話しします。
供花
供花とは故人に供えるお花で、仏式と同じように主に近親者や親しい関係にあった人によって送られるものです。キリスト教の場合は、生花をアレンジしたバスケットフラワーを送ることが一般的です。
バスケットフラワーでは明るめの色合いの花を使ったり、百合や白いカーネーションの使ったりします。また、キリスト教ならではのアレンジとして、十字架やハートの形などもあります。
キリスト教の場合は供花に名前を書かないのが一般的ですが、遺族にとっては名前を書いておいてもらったほうがいい場合もあるので事前に確認をしましょう。
また、供花は葬儀が始まる前までに故人の自宅に届くように手配をしましょう。ただ、供花は辞退される場合もありますので、事前に遺族に確認をとってください。
服装
参列するときの服装は、仏式と同じもので問題ありません。男性は喪服やダークスーツ、女性は黒のスーツやアンサンブル、ワンピースなどで参列します。靴やバッグも黒でそろえ、派手な時計やアクセサリーは避けましょう。
キリスト教の女性信者は黒いベール付きの帽子をかぶるのが正装ですが、信者でない場合は必要ありません。また、キリスト教の葬儀で数珠は必要ありません。
御花料
キリスト教ではお香を焚かないので香典は渡しませんが、代わりに御花料としてお金を包みます。包む金額は故人との関係性によって変わります。
以下は、御花料の相場です。
・両親:5~10万円
・兄弟姉妹、その配偶者:3~5万円
・祖父母:1~3万円
・おじ、おば、いとこ、甥、姪:1~3万円
・友人、会社の関係者:5,000円~1万円
御花料は百合の花や十字架が描かれた熨斗袋か白無地の封筒に入れます。表書きはカトリックとプロテスタントで少し変わります。
・カトリックの表書き:御花料、御ミサ料、献花料、御霊前
・プロテスタントの表書き:御花料、忌慰料(きいりょう)、献花料
受付のときやご遺族に対するお声かけ
キリスト教と仏式では死に対する考え方が違います。キリスト教では、神のもとに旅立ち天国で新しい命を得る喜ばしいこととしてとらえられています。
なので、ご遺族に声をかけるときは「お知らせ頂きありがとうございます。安らかなお眠りをお祈り申し上げます」と伝えましょう。仏式で使われる「ご愁傷様です」や「ご冥福をお祈りいたします」という言葉は、キリスト教の葬儀では避けた方がいい言葉となります。
葬儀中のふるまい
葬儀中の聖歌や賛美歌の斉唱は、絶対に参加しなきゃいけないというものではありません。聞いているだけでも問題はありませんが、事前に歌や祈りの一節が書かれた紙が配られますので、できるだけ参加しましょう。
また、キリスト教の葬儀では献花を行います。献花の手順は次の通りです。
・両手で花を受け取ったあと、遺族に一礼をして献花台に進む
・茎を祭壇に向けて献花台に捧げる
・右手で花側を持ち、左手で茎を持つ
・一礼して黙祷をする
・前を向いたまま数歩下がり、遺族に一礼して席に戻る
まとめ
日本では馴染みの薄いキリスト教の葬儀ですが、参列する機会があるかもしれません。キリスト教の葬儀は仏式の葬儀と違う点がいくつかありますが、どちらも故人のための大切な儀式であることは同じです。
失礼に当たることがないようマナーを守り、心を込めて参列をしましょう。