知っておきたい老人ホームの基礎知識

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はじめに

近年の高齢化に伴い、高齢者向けの住まいも多様化してきました。多くの場合、自宅は高齢者が安全に住むようには造られておらず、要介護の状態になった際に改装するか施設への入居が必要になることがあります。

本記事では、いまは自立した生活ができていても将来に不安があったり、すでに介護が必要になったりしている人と家族の方のために、各老人ホームの基本的な情報と選ぶ際のポイントを解説します。

介護施設は大きく分けると2種類

老人ホームは大きく分けると「公的施設」と「民間型」の2種類に分かれます。

まず、公的施設は行政機関が運営しているため、民間型より費用が安めとなっています。また自立の方より介護が必要な方を優先的に受け入れる施設が中心です。

対して民間型は、各事業者が経営しているため、施設によって費用が大きく異なります。ご予算や老人ホームに求める環境を整理して、ご自身にあった施設を選びましょう。

要介護の人向けの施設

はじめに、在宅介護が難しく、施設への入居が必要な方向けの施設から紹介します。各施設の特徴を記載していますので、ぜひ参考にしてください。

特別養護老人ホーム 

費用面を考えると最も低料金なのが特別養護老人ホーム(通称:特養)です。

以前は待機者が多いことで有名でしたが、2015年から要介護3以上と入居要件が改正され、待機者数は減少傾向にあります。待機期間は地域差が大きく、短いところで1~2ヶ月、長いところでは1年以上の施設もあります。

· 原則65歳以上で要介護3以上の人が入居対象
· 常に介護が必要な重度の人向けで公的施設のため低料金
· 原則として終身にわたる介護を提供し看取り対応が可能
· 食事、入浴、排泄などの身体介護サービスを常駐スタッフが提供する
· 地域によっては待機者が多く入居まで時間がかかる
· 必要性が高いと認められた人から入所となる(申し込み順ではない)
· 入居時費用なし、月額利用料5~15万円(所得に応じた減免制度あり)

介護老人保健施設

介護老人保健施設(通称:老健)は、医療ケアやリハビリを必要とする高齢者を受け入れる公的な介護保険施設です。医師、看護師、作業療法士や理学療法士が常駐しています。

介護老人保健施設と特別養護老人ホームは混同されがちですが、老健は介護とリハビリを受けながら自宅復帰を目標としているのに対し、特別養護老人ホームは入所期間の制限がなく長期利用が可能な部分が大きな違いです。

· 原則65歳以上で要介護1以上の人が入居対象
· 要介護の高齢者に自宅復帰を目標にしたリハビリを提供する
· 食事、入浴、排泄などの身体介護サービスを常勤スタッフが提供する
· 医師や看護師による医療ケアを提供する
· 3~6ヶ月の一定期間で退去することを前提としている
· 入居時費用なし、月額利用料5~15万円(所得に応じた減免措置あり)

介護医療院

介護医療院は2018年4月の第7期介護保険事業計画に則り、新たに法制化された施設です。

介護ケアと医療ケアの両方を提供できることが大きな特徴。医師、看護師、介護職員、リハビリ職員など医療機関に準ずる専門職員が常駐しています。

· 原則65歳以上で要介護1以上の人が入居対象
· 長期療養が必要な人向けで介護サービスと医療サービスを提供する
· 医療ケアが必要という理由で他の施設で断られた場合も対応可能
· ターミナルケアや看取りに対応
· 入居時費用なし、月額利用料6~17万円(要介護度が高くなるほど費用もあがる)

介護付きケアハウス

ケアハウスは比較的低料金で日常生活のサポートが受けられ、地方自治体や社会福祉法人などが運営しています。特定施設は介護保険法で定められた基準を満たし、自治体からその指定を受けたケアハウスを指します。

· 原則65歳以上で要支援1以上の人が入居対象
· 自治体から特定施設入居者生活介護の事業者指定を受けている施設
· 介護度が上がっても退去の必要なし
· 常駐スタッフが食事の提供、各種介護サービス、安否確認などを行う

民間型の施設

次に、民間型の施設の特徴を紹介していきます。

介護付き有料老人ホーム

有料老人ホームは高齢者が生活しやすいように配慮された住宅に、必要なサービスを付加した施設。中でも介護サービスが付く施設が、介護付き有料老人ホームです。

· 主に60歳以上で要支援1以上の人が入居対象
· 自治体から特定施設入居者生活介護の事業者指定を受けている施設
· 介護度に応じて定額でサービスを提供する
· 認知症や看取りに対応 している施設が多数

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)は、2011年に「地域包括ケアシステム」拡充のために作られました。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた土地で自分らしい生活を続けられるよう包括的なサービスが提供される体制を指します。

サービス付き高齢者向け住宅は、民間事業者によるバリアフリー対応の賃貸住宅で、自立あるいは要支援・要介護高齢者を受け入れています。サービス付き高齢者向け住宅のうち、特定施設(介護型)は自治体からその指定を受けた施設で、介護スタッフによる生活支援や身体介護を受けられます。

· 主に60歳以上で要支援1以上の人が入居対象
· 自治体から特定施設入居者生活介護の事業者指定を受けている施設
· 常駐スタッフによる安否確認や食事の提供を行う
· 看護師の常駐や協力医との連携があれば看取りにも対応
· 入居時費用0~数十万円、月額利用料10~30万円

グループホーム

認知症と診断された方が、グループで生活する施設です。少人数のグループで、それぞれができる家事を分担して共同生活を送り、認知症の進行抑制を図っています。

· 原則65歳以上の要支援2以上で認知症の診断を受けた人が入居対象
· 施設と同一市町村に住民票がある人が対象
· 5~9人を1つのユニットとし家庭的な共同生活を送る
· 看護師配置が義務付けられていないため医療行為が受けられない施設もある
· 入居時費用0~数十万円、月額利用料10~20万円

自立している方向けの施設

次に、自立している方を対象とした施設を紹介します。基本的に介護は必要ないけれど、スタッフの目が届く安心出来る環境で生活したい方は、ぜひ参考にしてください。

ケアハウス

家庭の事情や経済状況などにより独居生活が難しい人で、条件を満たした高齢者が入居できる地方自治体や社会福祉法人が運営する施設です。食事の提供があるA型、食事の提供がなく入居者が自炊するB型があり介護が必要な人は入居ができません。また、所得制限があり一定以上の所得がある人は入居できず、月額利用料も所得に応じて決められます。

· 60歳以上の自立している人が入居対象(夫婦はどちらか一人が60歳以上なら可)
· 所得が月額34万円未満であること
· 低額で利用できるため人気が高く施設によっては待機期間が長い
· 入居時費用0~数十万円、月額利用料は所得に応じ5~15万円

住宅型有料老人ホーム

食事、洗濯、清掃などの生活支援サービスが付いた高齢者住宅で、介護サービスは提供されないため、要介護となった場合は外部の介護サービス事業所と契約します。この住宅型有料老人ホームには、訪問介護やデイサービスが併設されている施設もあります。

· 主に60歳以上の自立から要介護の人が入居対象
· 食事や見守りなどの日常生活で必要なサービスを提供
· 介護サービスが必要になった場合は外部の事業者と契約が必要

高齢者施設を選ぶポイント

高齢者向け住宅として提供されている、それぞれの施設の特徴を解説してきました。ここで、施設を選ぶ際の3つのポイントをお伝えします。

入居条件

高齢者向け住宅には様々なタイプがあり、どのような住宅を選んだらよいのか迷うことが多いでしょう。大きく分けると①現在要介護状態か、②現在自立しているか、により入居できる施設が異なります。

また、入居要件に合った要介護状態が変化した場合、①退去となるのか、②そのまま入居を続けられるのか、も考慮するべきポイントです。例えば、要介護3以上で入居ができる特養は、リハビリなどで介護度が下がると退去の対象になる場合もあります。

逆に、自立した人が入居条件の高齢者向け住宅の中には、入居者が要介護状態になった際には他の施設を探さなくてはいけないケースもあるので注意が必要です。

予算

高齢者向け住宅の入居時費用と月額利用料は、費用負担のごく少ないところから高額なところまで、非常に幅が広くなっています。

入居者の財産や収入により大きく左右されますので、予算的に見合うかどうかを考慮しなくてはいけません。

立地

生まれ育った土地から離れることは、高齢者にとって大きなストレスになる場合があります。多くの施設は共同生活の場となり、他の入居者と慣習や言葉(方言)が違いすぎると、居心地がよくない場合も。

そのため、なるべく慣れ親しんだ環境を大きく変えない施設が理想です。

まとめ

老人ホームは施設により、受け入れいている対象者や環境が大きくことなります。まずは、ご自身に合った施設のタイプを判断するところからはじめてみてください。

また実際に施設を探す際は、インターネットで調べたり、地域のケアワーカーの方に相談したりするのがおすすめです。また検索結果ではわからない建物やスタッフの様子は友人、知人や近所の方、親戚の人たちの口コミ、評判も参考になります。そして契約する前に、必ず見学もしくは体験入居をして、ご自身に合った施設か確認しましょう。