増加する「納骨堂」の選択
納骨堂は天候に左右されることがなく、従来のお墓のように墓石や墓周りの掃除や手入れも必要ありません。
そのため納骨堂はメリットが目立つことから最近は選ぶ人も増え、新しく購入したり、墓じまいで一般墓から納骨堂に移す人もいたりします。
しかし、納骨堂にもデメリットも存在するため、注意しておきましょう。
納骨堂には仏壇式、自動機械式、墓石型、ロッカー式など様々な種類があります。
今回は、ロッカー式の納骨堂について解説していきます。
ロッカー式納骨堂の基本情報
ロッカー式納骨堂というのは、納骨堂の種類の1つで、名前からわかるようにロッカーのような形をした納骨スペースにお骨を保管するタイプです。
メリットは利便性、安さ
ロッカー式納骨堂は、お墓を建てるよりも安くできる方法として昔から存在しており、現代の納骨堂もその部分を継承しています。
安さと省スペースでの特徴から、駅前などの交通の便のいい場所にマンションのように高層化した建物に作られることも多いです。
屋内のため、維持管理も比較的簡単であり、天候に左右されずにお参りができることが大きなメリットといえるでしょう。
デメリットは「お墓らしさ」が希薄なこと
納骨堂は昔から存在していたとはいえ、一般的には「お墓に入る前の一時的に保管するための場所」という考え方がまだ根強く残っています。
実際にそのような使い方をしている人も少なくありません。
そのため、ロッカー式納骨堂を正式に供養する場所として、家族や親族の中で意見がわかれてしまうこともあるでしょう。
安価なロッカー式納骨堂の場合、ロッカーがずらりと並んでいるだけということもあるため、その前で手を合わせても供養をした実感が感じられない、と思うかもしれません。
少し費用は高くなりますが、個別のスペースが用意されている納骨堂を選ぶことも可能です。
しかし、遺骨を出すことができない、できたとしても追加で費用がかかるなどといったこともあるため、事前によく確認して選ぶ必要があります。
ロッカー式納骨堂の現状
ロッカー式納骨堂は近年人気が高まっていますが、一番の理由は「人々のお墓への考え方や求める価値観が変わってきた」という部分でしょう。
人気が高まって来ていることでの変化や、その理由について紹介していきます。
ロッカー式納骨堂は全国各地で増加中
ロッカー式納骨堂に限らず、機械式や仏壇式などの納骨堂が全体的に人気が高まって来ているため、各地で納骨堂が増加しているのが現状です。
その反面、従来の野外の墓地にあったような一般墓は減少傾向にあるため、時代の主流が一般墓から納骨堂に変わりつつあると見ている人もいます。
ロッカー式納骨堂の場所は「利便性」が重視される
納骨堂が増えてきていることや、墓じまいなどの理由で納骨堂にうつる人が一定数いることなどが重なり、納骨堂の間でも価格や機能などの競争が発生しています。
そのため、多くの納骨堂は公共交通機関などが整備された、お参りに行きやすい場所に建てられることが多く、主要駅の前などは特に人気が高い場所となっています。
田舎や山中のお墓参りで毎年苦労をしているという人は、特にこのような利便性の部分に惹かれて納骨堂を選ぶことが多いようです。
費用の相場は約20万円
ロッカー式納骨堂の特徴の1つである安さの部分は、こだわりを持たなければかなり大きなメリットになります。
一般的に墓地の土地を買ってお墓を建てるとなると、安くて100万円前後、全国平均にすると120~150万円になるため、とても大きな買い物になります。
それに対してロッカー式納骨堂の全国平均の相場は15~20万円となっているため、6分の1ぐらいまでおさえることも十分可能です。
その分のお金をお葬式を理想通りのものにするために使うなどすれば、満足度が高いお別れにできるでしょう。
ロッカー式納骨堂の今後の展望
ロッカー式納骨堂は約10年前までは「お墓に入れる前のお骨を保管しておく場所」というイメージから、特にお寺側もサービス内容などに力を入れることはありませんでした。
しかし、近年は人気が高まっていることで状況が大きく変わってきています。
ロッカー式納骨堂は最近増加傾向にあり、人気も高まって来ていますが、これから先はどうなっていくのでしょうか。
人々のお墓の事情や考え方などをふまえながら、現時点で予想されることを紹介します。
ロッカー式納骨堂の利用者は増え、サービスも充実していく
正式な納骨先としてロッカー式納骨堂を選ぶ人が増え、他の形式の納骨堂も人気の高まり見せることから、お寺側もさまざまなアイデアやサービスを提案する傾向が起こっています。
そのため、見た目の寂しいロッカーだけが並ぶような納骨堂は数が減り、利用者の要望に合わせて見た目や機能を充実させることで、納骨堂のお墓らしさやお参りをした実感が少ないという部分を改善していく流れが予想されます。
駅前でお墓参りという風習の一般化
駅前に納骨堂があるということは、単純にお参りの往復にかかる時間や、労力の負担が軽くなるだけではありません。
駅前や交通の便のいい場所というのは、必然とお店や商品が集まりやすくなるため、お参りに必要な花や線香などの道具も、低コストで入手しやすくなるメリットがあります。
山中のお墓のすぐ近くに花屋があっても採算は出しにくいですが、人通りの多い場所でなおかつすぐそばの納骨堂にお参りに行く人が買いやすい花屋があれば、お店側も経営にめどがたちやすいと考えるでしょう。
このような納骨堂の周囲や店の動きが、今後のアクセス性の良い場所にある納骨堂のメリットを、更に大きくしてくれるでしょう。
ロッカー式納骨堂を選ぶための準備
ロッカー式納骨堂を選ぶためには、具体的にどのような準備をしていくのが望ましいかを紹介していきます。
急いで決断をしてしまうと、大きなお金を無駄にしてしまうだけでなく、大切な人の遺骨を静かに納めておくことができないため、しっかりと準備をしておくことが大切です。
まずは周囲の人と意見の一致を
ロッカー式納骨堂にするか迷う場合は、まずは自分の家族や周囲の人との意見交換をすることから始めましょう。
納骨堂やお墓の考え方には人それぞれの価値観があります。
金銭的な事情など複雑な要素が絡んでくることから、特定の人の意見のみで決定してしまうと、迷惑に感じる人や不満を持つ人が出てきてしまうこともあります。
まずは、それぞれの考え方を聞いてみたうえで、納骨堂やロッカー式に反対意見がないことがわかってから、各自の要望をかなえられるロッカー式納骨堂を探してみるといいでしょう。
そのためには、事前に大まかなメリットとデメリットをよく理解しておき、説明できることが重要です。
契約内容と現場の雰囲気をよく確認すること
ロッカー式納骨堂は納骨スペースの容積、お参りのために各自に用意される空間、費用の支払い方法など、事前に確認しておくべきポイントがいくつもあります。
これは一般墓を購入するときにも同じことが言えますが、一般墓の場合は親や祖父母の代の人に購入経験者がいれば話を聞くことが可能でしょう。
しかし、納骨堂の場合は、購入経験者がなかなかいないと考えられます。
そのため、実際に現場に行き、納骨堂を目で見て、納得のいくまで探してみるのが良い選択となるでしょう。
終活でロッカー式納骨堂を考えてる人への提案
終活を進めて行くなかで、お墓をどうするかは重要な部分となるため、しっかりと準備をして自分も家族も満足できるようにしたいものです。
満足のいくロッカー式納骨堂を選ぶために、できる提案をいくつか紹介します。
周囲の人とよく相談を
お墓選びは納骨堂に限らず、まずは関係する人にしっかりと相談をすることが第一でしょう。
自分の要望と、お参りに来てくれる人の考え方を重要視して、後継者が維持管理をしてくれるところまで想像して、計画をたてることが大切です。
相談をしていくにつれて、自分自身や周りの人の考え方が変わってくる可能性もあるので、1度の相談ではなく時間を空けて複数回機会を作るとなおよいでしょう。
現場に足を運ぶこと
お墓は自分自身のお骨が入る場所となるので、一度も正確な確認をせずに購入してしまうのは、家をパンフレットだけ見て購入して引っ越してしまうようなものです。
そのような無計画なやり方をしてしまっても、自分自身は入ってしまえばそれでおしまいですが、維持管理をしたりお金を払ったりする家族や後継者がいることを考えれば、そのような選択はするべきでないというのがわかります。
必ず現地に足を運んで、実物を見て考えることと、そこで感じた疑問点は納骨堂を管理する担当者や家族としっかり確認して、安心して残る人に任せられるようにしましょう。
比較すること
最近は納骨堂は全国各地に増えているので、利便性ばかりを優先して近場ばかりで考えずに、比較対象を少し遠くまで広げてみるのも有効でしょう。
価格やサービスの内容だけでなく、その場所の雰囲気や周囲の環境まで含めて、広い視野で考えられるといいでしょう。
まとめ
ロッカー式納骨堂や他のタイプの納骨堂は、今後さらに増えて行くと考えられます。
ロッカー式納骨堂に限らず、納骨堂を代々受け継いでいくお墓にするというのは、家族や親族全員の納得を得られるのは難しいかもしれません。
確かにロッカー式納骨堂には多くのメリットがあり、魅力的な選択肢になります。
しかし、従来通りの一般墓も含めて「お墓の意味」という重要な要素を忘れないことが大切です。
後継者だけでなく親族やお墓参りに来てくれる人などを含めて、改めてお墓に求めている価値観を再確認してからロッカー式納骨堂を選ぶといいでしょう。
そのような話し合いの時間を用意するためにも、早い段階から終活の一環として活動を始めてみることも視野に入れることが必要です。