知っておきたい遺産分割のルール

相続

遺産分割とは

遺産分割とは、被相続人が亡くなり財産の相続が開始されて、どの相続人にどれぐらいの割合や誰に何を相続するかを実際に決定する作業のことを指します。
しかし遺産分割は、お金が絡んでいるという特性からわかるように、かなり激しい争いになることも珍しくありません。

財産を相続できる人やその割合などには法的な決まりが細かくありますが、基本的な部分をまず確認してみましょう。

遺産分割の基本

まずは相続を受けられる人や、相続分など基本的な部分について見ていきましょう。

相続を受けられる人とそうでない人

相続は法的に受けられる権利を持つ人とそうでない人が決められています。
権利を持っていない人は、故人が遺言で財産を譲る旨を明記しているといった事情がない限り、どんなに近しい立場であっても相続に参加することはできません。

相続人になれる人は「法定相続人」と呼ばれて、血のつながりのある人がその対象になります。
相続順位という優先順位も存在しているので、自分がどの順位であるかなどを確認することから始めましょう。

法定相続人が複数いる場合に財産分割は発生する

法定相続人が「誰もいない」もしくは「1人しかいない」場合には財産分割は発生しません。
複数人いる場合には話し合いで決定できればいいですが、場合によっては裁判所の判断で答えを出すことにもなります。

法定相続分

法定相続人とその人が受けられる相続の割合は法的に決まっています。
しかし、均等に分けたりそうでない場合などもあるため、あくまでもおおまかな決まりと考えておきましょう。

子どもや直系卑属が複数いる場合は、その条件にあたる人全員で与えられた割合をさらに分け合うことになります。

配偶者のみが相続人の場合…全て
配偶者と子供が相続人の場合…半分ずつ
配偶者と直系尊属が相続人の場合…配偶者が3分の2、直系尊属が1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合…配偶者が遺産の4分の3、兄弟姉妹が1/4

上記のように、主に配偶者が最優先かつ大きな割合を受けることも知っておきましょう。

遺産分割の現状

遺産分割は法的な仕組みができているため、正確な準備を進めていればそこまで大きな問題にならないで済みます。
しかし現状は、うまく話がまとまることが少ないのも事実です。

そういった遺産分割の現状についていくつか紹介します。

裁判所で毎年10万件以上が財産で争っている

遺産分割はしっかり準備をすれば争うことを防げるのですが、準備をしている人の割合がとても少ないため、話し合いが必要になる事例は非常に多いです。

その証拠として、全国各地の財産相続を専門とした弁護士事務所では、家庭裁判所での財産相続に関する手続きは全体の10%を超え、件数では毎年10万件以上となっています。

遺言が最も重要

遺産相続は被相続人が亡くなった時点から開始されるという決まりがあるため、被相続人が生前に自分の財産をどう処理するのかを明確にしたものがあるかどうかで、作業や話し合いが大きく変わってきます。

最も効力が強く優先して準備すべきは「遺言書」で、正式に認められるものがあればその内容を行使することが最優先となります。

しかし、現在相続に関する遺言書を準備している人は全体の2割以下という調査結果も出ているように、遺言書は多くの人が準備をしていないため、必然的に話し合いが必要になるケースが増えているといえます。

放棄する人がいても話し合いは重要

相続は「受けない」という選択肢も認められているため、法定相続人が複数いる場合、放棄をした人がいればそれだけ状況は大きく変化します。
放棄をするかしないかだけでも大きな問題といえるでしょう。

遺産分割への準備

遺産分割の話し合いは、お金が絡んでいるという特性からわかるように、かなり激しい争いになることも珍しくありません。
時間がかかればそれだけ関与する人達に大きな負担がかかるため、準備をできる部分は生前の元気なうちにやっておくのが望ましいでしょう。

相続問題を未然に防ぐためにできる準備をいくつか紹介します。

遺言書の作成

遺産分割の話し合いをスムーズにさせるために最も重要なのは、故人が生前に残しておいた意思表明です。
意思表明や相続人への意思疎通の方法はいくつかありますが、法的な執行力を考えれば、遺言書の作成が最も効果的であるといえます。

遺言書には書式や書く内容などに決まりがあるため、それに反していると執行力が発揮されません。
遺言書には「直筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、どれも作成方法や注意点が違うので、自分のやり方に合ったものを選ぶようにしましょう。

法定相続人を明確にしておく

法定相続人は、血縁関係者であれば親や甥などまで範囲が広がることもありえます。
相続を受けるかどうかの熟慮期間は、自分に相続の権利があることを知った日という決まりがあるように、後からその事実を知った人が話し合いに参加するだけでも話が長引くことにつながります。

相続を拒否した場合や遺言で相続したいと記されていた場合には、最初の時点では関与しない人にも話が及ぶ可能性もあります。
まずは関係することが決まっている人、その可能性がある人に当事者意識を持ってもらうことが大切でしょう。

終活でできる遺産分割の準備

終活を考えている人は、財産分割を受ける側ではなく被相続者の側ですので、相続の中心人物になる意識をまず持つようにしましょう。
準備なども自分から率先して行い、関係者との意思疎通や準備を正確に進めるといった、自分にできることを可能な範囲で行えばより良い終活になるでしょう。

終活で遺産分割を考えるときに、気をつけておきたいポイントをいくつか紹介します。

遺言書の作成を正確に

終活のときは、遺言書の作成はとても重要なポイントですので、必ず正確に行いましょう。

遺言書の存在を周囲に知らせておくことで、最優先となる意思決定材料の存在を知らせるというのも1つの手です。
しかし、事情があって内容を漏らしたくないという場合には、秘密証書遺言もあるので、それを作っておくといいでしょう。

遺産を前もって片付けておくことも有効

相続はお金や権利の譲り渡しに関係して、様々な法律や税金のやりくりが必要になるため、時間をかけて熟慮しないと納得がいかないことも珍しくありません。
財産の片付けをしてできるだけスマートな状態にすれば、準備も相続の執行も全て楽にすることが可能です。

専門家と相談を

遺産の相続には、法的な手続きや専門家の審査などが必要になる場面も数多く存在します。
例えば家の資産価値の査定や、遺言書の書式が正しいかの判断など、専門家に相談しないと正確なことがわからない部分もあるでしょう。

そのため、前もって信頼できる専門家を見つけておいたり、かかる費用を節税に当てられるかどうかを考えたりすることで、有意義な相続にすることができるでしょう。

まとめ

遺産分割は、必ずしもスムーズにいくとは限りません。
お金や権利が絡んでくることから、個人間の話し合いでは決着がつけられないことも多々あるでしょう。

家庭裁判所で話し合いを行い、調停や和解といった形で決着をつけるには、費用や労力の面で見ても大きな負担となります。
準備が不十分であると、残された法定相続人がこういった作業をしなければいけないという自覚を持ち、責任を持って準備を進める姿勢が重要です。

財産分割において重要な「被相続人の意思」を最も尊重できる手段は、遺言書を作成しておくことです。
特定の人に特定の権利を相続するといった、相続内容の指定も基本的には遺言書で行うため、本人の意思を正確に執行してもらうためにも遺言書は重要です。

タイトルとURLをコピーしました