失敗しない山岳散骨

お墓

山岳散骨とは

山岳散骨は自然葬の一種で、山間部で散骨をする葬送のかたちです。

山岳散骨の歴史は古く、平安時代から執り行われていたといわれています。840年に現在の京都にある小塩山で、淳和天皇の遺骨が散骨されたという記録が残っています。

登山家のあいだでも山岳散骨は親しまれており、登山仲間の遺灰を山頂で撒くことための「弔い登山」が行われています。

また、東北を中心に「津波によって亡くなった方を海に散骨するのは心が痛む」という心情から、山岳散骨が選ばれることもあるそうです。

山岳散骨と樹木葬の違い

山岳散骨と同じく、自然に還ることを目的に山などで行われる自然葬に「樹木葬」があります。

両者の大きな違いは、山岳散骨が遺骨を撒くのに対し、樹木葬では墓地に遺骨を埋めるという点です。

樹木葬は樹木や植物を墓標の代わりとして遺骨を埋葬する供養であり、一般的なお墓と同じように墓地内の土地を購入する必要があります。

一方で、散骨は墓地以外でも執り行われます。この点で、お墓の区画や墓石などを購入しないことから、費用を抑えて供養ができるのも散骨の特徴といえるでしょう。

山岳散骨のメリット

山岳散骨のメリットは故人の希望を叶えるだけでなく、経済的な負担を軽減する一面があります。

経済的負担が少ない

先にも述べたとおり、散骨は経済的な負担を抑えることができます。墓石や墓地の区画は高額であり、これらの支出をなくすことで負担は大きく軽減されます。また、年間管理費や檀家としてのお布施も不要となります。

なお、自分で散骨を行う場合はおよそ3万円程度で済みます。業者に依頼する場合でも、粉骨から散骨代行、諸手続きまで含めても10~25万円程度が相場となるようです。

故人らしい供養

山岳散骨の魅力は、故人らしい供養となることでしょう。「最期は自然に還りたい」「山が大好きだった」といった故人の思いを満たしてくれます。

山岳散骨の流れ

山岳散骨は行うには必要な段取りがあります。ここでは山岳散骨の流れを順を追って解説していきます。

家族や親族との話し合い

まずは、家族や親族と山岳散骨について話し合い、了解を得ましょう。散骨の場所や、遺骨をすべて散骨するか、一部のみを散骨するのかなど、後々の食い違いがないよう、確認するとよいでしょう。

とくに「納骨はお墓」と考えは根強くあり、無断で進めると後々に親族間での争いにつながる恐れもあります。

山の所有者を調べる

次に、散骨を考えている山の所有者を調べる必要があります。国有地、私有地などにより対応は異なりますが、許可を取るために届け出を行いましょう。

条例に抵触しないか

市町村の条例もチェックする必要があります。北海道や御殿場市などでは住民運動により町が条例を作り、散骨を実施できなくなりました。現在では陸地での自然葬を禁止する独自条例を設けている市区町村もあります。地域の条例などは必ず確認しましょう。

業者への依頼

所有者や条例などの問題は、信頼できる散骨業者を利用することでクリアにできます。また業者によっては、散骨証明書や写真、散骨位置がわかる資料などが提供されるサービスもあります。

散骨を業者に依頼する際には、書類の準備しましょう。申込書や同意書、火葬埋葬許可証、身分証明書などが必要になります。

また、すでにお墓に埋葬してある遺骨を取り出して散骨する場合、改葬許可証が必要です。改葬許可証は埋葬している墓地で納骨証明書を発行してもらい、納骨証明書を自治体に提出することで受け取れます。

粉骨の依頼

散骨の準備として、遺骨を粉骨しなければなりません。粉骨は業者に依頼するのがよいでしょう。

山岳散骨を行う際の注意点

山岳散骨を行う際は、遺族の心情や法的な問題、周囲への配慮などに注意しなければいけません。

散骨は墓標が曖昧となる

散骨はお墓のような墓標がないため、お参りの場所が曖昧になります。遺族によっては「お墓参りの機会がなくなる」と受け取られかねないので、きちんと生前に理解を得ておくことが大切です。

遺骨のすべてを散骨せず、一部を自宅供養するなど、故人を偲ぶ環境を残しておくのもよいでしょう。

法的にはグレーゾーン

現状、散骨を禁止する法律はなく、法的にはグレーゾーンの扱いとなっています。法務省は非公式ながら「散骨は希望するものが相当の節度をもって行う場合は、処罰の対象としない。今後は社会的な取り決めが設けられる事が望ましい」と見解を示しています。

山岳散骨においては、水源地域や建造物の周辺、天然記念物のある場所などは避けた方がよいでしょう。

また、遺骨とわかる状態で撒いてしまうと死体遺棄罪に抵触する可能性がありるため、必ず粉骨したうえで散骨を執り行いましょう。

散骨当日の配慮

許可を得た場所であっても、環境への影響などを考慮して、花束やお供えものなどは持ち帰った方がよいでしょう。

個人で散骨を行う場合はケアをする部分も多いため、信頼できる散骨業者を利用する方が多いのが現状です。

まとめ

山岳散骨はお墓にかける手間や費用が不要なため、合理的で経済的な供養としても注目されます。

一方で、注意を払うべき問題も多いため、しっかりと準備をしてひとつずつ解決していく必要があります。できるだけ多くの情報を集めて、人に迷惑の掛からないよう努めましょう。

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