楽しい終活ライフ 「思い出作りに子どもと旅するために必要なことは?」

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はじめに

「終活」という言葉が一般的になったのは、10年ほど前からです。残された人たちに自分の意思を伝える「エンディングノート」は様々なタイプが市販され、インターネットからダウンロードもできるようになりました。

終活は、楽しみながら今までの人生を振り返り、少しずつ自分の持ち物や人間関係、情報を整理していくものです。自分が希望する葬儀の形式や入りたいお墓をエンディングノートに書き残したり、家のなかの不用品を処分して生前整理をしたり、終活の内容や順番は人それぞれでしょう。どちらかというと、処分し縮小するものが多いのが終活ですが、増やしていけるのが「思い出」です。

この記事では、シニア世代の方を対象に、子どもとの旅のお勧めプランや、準備したいことを解説します。

親子旅のメリット

子どもが自立して、家を出たり、結婚したりして遠距離に住み、顔を合わせるのは年に数回という方もいることでしょう。一緒に旅行することで、すっかり成長した子どもの姿を見ることができたり、現在の生活や仕事、学業の様子を聞いたり、ゆっくり時間がとれるので、新たな発見があるかもしれません。

また、親子間ならあまり気を遣うこともなく、食べ物の好みなどもよくわかっているので、気楽でリラックスした旅ができます。旅は、プランを立てるところから始まるので、旅行がきっかけとなって、互いの連絡も一層密になることでしょう。

旅の日程を決めよう

子どもと旅行に行きたいと思ったら、はじめに必要なのは日程を決めることです。リタイヤした親世代なら時間の制約はあまりないでしょうが、働き盛りの子世代だと、何日も旅行に充てるのは難しいかもしれません。あらかじめ都合を聞いて、日程は子どもに合わせる方がよいでしょう。

日程は、①日帰り~1泊、②2泊3日程度、③3泊~1週間程度が考えられます。日数を多くとるほど目的地の選択肢は多くなり、もし1週間ほどの日程なら海外旅行も視野に入れることができます。

日程別お勧めプラン

以下、「日帰り~1泊」「2泊3日程度」「3泊~1週間程度」に分けて、お勧めのプランを紹介します。

日帰り~1泊

たとえ日帰りや1泊の短い旅でも、近場の温泉に行ったり、普段は行かない郊外のレストランで食事をしたりして、十分に親子の交流がはかれます。多くの温泉宿には日帰り・デイユースプランがあり、ランチ+温泉+観光のプランなら、朝に出発して夜には帰宅することができるので、忙しい人に向いています。

関東在住の方でしたら、はとバスを利用するのはいかがでしょうか。東京、横浜観光の日帰りコース、半日コース、昼コース、夜コースが充実しています。

また、旅行会社では、各地から出発する日帰りバスツアーをたくさん企画しています。観光バスは、観光スポットを効率よく回るので、自分で移動しなくて済む分、リラックスした旅になります。「希望する出発地 日帰りバスツアー」のキーワードでインターネットを検索すると、見つけることができます。

2泊3日

旅の日程が3日間あると、だいぶ余裕のある旅に出ることができます。季節にもよりますが、冬ならば温暖な九州、四国、沖縄、夏ならば涼しい東北や北海道と、季節に応じて行き先を選ぶのもよいでしょう。冬季に積雪の多いところに行くのも趣があってよいのですが、雪による欠航や運休が出ることがあるので注意が必要です。

3泊~1週間

このくらい日程が取れると、海外も行き先候補に入れることができます。韓国やグアムなら飛行時間も短く、ホテルやレストラン、お土産ショップでは日本語を話すスタッフも多いので、言葉の心配もあまりありません。国内ならば、かなり余裕のある旅程が組めます。

シニア向けの旅行プラン

子どもが小さいころには親もまだ若く、遠距離をハードなスケジュールで旅したことがあるでしょう。しかし、シニア世代の親なら、強行スケジュールはやめて、のんびりした旅をお勧めします。子どもが若くても、親世代はあまり体力に自信がない人が多いかもしれません。

旅行代理店が提供する、シニア向けの旅行プランをいくつか紹介します。

クラブツーリズムの「ゆったり旅」

旅行に行きたいけれど、長時間歩くのは苦手でゆっくり観光したい、という人向けのツアーをとりそろえています。長い距離は歩かない(1日平均2時間以内)、移動中の休憩は90分に1回、メイン観光地での見学時間を多くとる、宿泊施設での滞在時間を長くとる、などの工夫がされています。

出発は、北海道発、東北発、関東発、中部・東海発、関西発、中国・四国発、九州発で、全国のほとんどの地域からのツアーが選べます。

JTBの「夢の休日」

ゆったりとぜいたくに国内旅行を楽しみたい人向けに用意された、少人数のツアーです。添乗員が同行し、手荷物宅配サービス、JR移動はグリーン車を利用、バス移動の際も休憩をこまめにとるなどの配慮がされています。

出発地は首都圏ですが、前泊、後泊(延泊)、出発地までの往復交通の手配もしてくれます。

エス・ピー・アイの「あ・える倶楽部」

要介護の人でも旅行に行けるよう、トラベルヘルパーが付き添うというもの。「トラベルヘルパー」は聞きなれないことばかもしれませんが、介護と旅行業務の両方の知識を備えた外出支援の専門家です。介護保険外のサービスですが、今まで旅行をあきらめていた人でも、トラベルヘルパーが同行すれば可能になるケースがあります。家族だけでは不安な、旅行中の移動や入浴、トイレの介助などのサービスを提供しています。

JRの「グランクラス」

こちらは旅のプランではなく、新幹線の最上位シートです。

「グランクラス」はJR東日本とJR北海道の東北・北海道新幹線、JR東日本とJR西日本の上越新幹線・北陸新幹線に連結されるゴージャスな車両で、飛行機でいえばファーストクラスに相当するサービスを提供しています。1車両に18席しかないため座席は広く、アテンダントによる軽食、茶菓、飲み物が無料でサービスされます。ブランケットやスリッパ、アイマスクなどのアメニティもあり、非常にぜいたくな時間を過ごすことができます。

グランクラスに乗るだけで、よい思い出になるのではないでしょうか。

グランクラスで行ける旅行先は、東京から東北・北海道新幹線で仙台、新青森、函館北斗方面、上越新幹線で越後湯沢、新潟方面、北陸新幹線で長野、富山、金沢方面です。目的地によっては、飛行機を利用するほうが安くて速い場合もありますが、グランクラスなら、ぜいたくな空間でゆったりした時間を過ごすことができます。

親子ならではのルーツをたどる旅

親子での旅は、行く先がどこであれ、一緒に時間を過ごすだけで楽しいものになることでしょう。

さらに、親子ならではの旅として、「ルーツをたどる旅」はいかがでしょうか。ルーツ(roots)はもともと「祖先」を意味しますが、アメリカでは2000年代の中ごろ以降「ルーツをたどる旅」が盛んになったそうです。

日本でも自分の祖先に興味を持ち、家系図を作る人もいます。改正原戸籍(原戸籍)は相続の際に必要になるものですが、その内容を見ると、自分の祖先の生まれ故郷がわかり、行ったこともない土地で驚くこともあります。

原戸籍がない人でも、親世代、祖父母世代、曾祖父母世代、さらには高祖父母世代がどこで生まれてどんな職業だったのか、代々伝え聞いている人もいるでしょう。
親子で自分たちの家の歴史を調べて語りあい、祖先の生まれ故郷を訪ねてみるのも興味深い旅になるのではないでしょうか。

「ルーツをたどる旅」は、血のつながった親子間でこそ楽しめる旅といえます。

旅の費用について

さて、子どもとの旅について、日程やお勧めのプランについて解説してきましたが、旅の費用をどうするかについて考えてみます。

「終活の一環として思い出作りに子どもと旅行に行きたい」ということであれば、誘う側、つまり親世代が費用を出してあげるのが理想的です。リタイヤ後の親世代なら、退職金があったり、年金収入があったり、家のローンも完済して教育費ももうかからない、という比較的余裕のある人もいるでしょう。反面、子世代はまだ就職したばかりで収入が少ない、結婚して家計費がかかるなど、切り詰めた生活をしている人もいます。

また、交通費と宿泊費は親が出し、道中の飲食費は子が出すなどと決めてもいいですし、費用負担を話し合うのも旅行プランの一部で、親子間の会話が増えるでしょう。

JRのお得なきっぷについて

旅行に行く前にぜひ調べていただきたいのが、通常料金よりも安く買える「お得なきっぷ」です。JR(旅客6社)では様々なお得なきっぷを発売しています。

例えば、JR東日本でしたら、フリーエリア内の列車は乗り降り自由の「休日おでかけパス」「週末パス」「東京フリーきっぷ」などがあります。他のJR各社でもフリーパスタイプのきっぷを用意していて、エリア内の移動にきっぷが1枚あれば、その都度きっぷを買う必要がなく、しかも値段も安いというものです。新幹線を利用する場合には別に特急券が必要ですが、通常料金で新幹線代を支払うより、フリーきっぷ+新幹線特急券のほうが安くなることがほとんどです。

その他に、往復で購入すると割引がつくタイプや、早期購入割引がつくタイプなどもあり、かなり豊富なラインアップです。JR各社のサイトの「お得なきっぷ」で検索してみてください。

よく旅をする人ならJRのシニア割を

JR(旅客6社)にはシニア向けの会員制割引プランがあります。全社共通の条件として、50歳以上が入会できる「ミドルエイジ向けプラン」と、男性65歳、女性60歳、または夫婦どちらかが65歳以上で入会できる「ハイエイジ向けプラン」の2種類があります。上手に利用すれば、かなりお得に旅をすることができます。

ミドルエイジ向けプラン

50歳以上の人を対象に、JR各社が独自に特典を設けていて、それぞれプランの名前も違います。入会金や年会費が有料のところと、無料のところがあります。ただし割引率は5%程度のところが多く、年会費が発生する場合は、乗る頻度によりお得感が違ってきます。

ハイエイジ向けプラン

「ジパング倶楽部」はJR(旅客6社)の運賃割引をはじめとする各種サービスが受けられるもので、個人会員は男性65歳以上、女性60歳以上、夫婦会員はどちらかが65歳以上で加入することができます。運賃は最大で30%が割引され、駅レンタカー割引、JRホテルグループの割引などがあります。

年会費が必要で、個人会員がJR東日本・JR北海道は4,364円、夫婦会員は二人で7,458円です。その他のJR(東海、西日本、四国、九州)では個人会員が3,840円、夫婦会員が6,410円となっています。JR東日本とJR北海道は合同プランで一つのエリアとして割引が適用されます。その分年会費が他のJRより少し高く設定されていますが、東京から北東すべてのエリアについて割引対象になるため、30%の割引率でかなり大きな金額が割り引かれることになります。

JRシニア割の注意点は、JRの繁忙期である4月27日から5月6日、8月11日から8月20日、12月28日から1月6日の期間は利用できないことです。

まとめ

「思い出作りに子どもと旅するために必要なこと」というテーマで、お勧めの日程やプラン、旅費の負担について解説してきました。

親子旅行に必要なものは「時間とお金」ということになりますが、もし親子間になにかわだかまりや確執のようなものがあったりする場合は、可能な限り取り除くことが大前提です。旅行をきっかけに歩み寄り、仲直りをするケースもたくさんありますが、それ以前に関係を修復しておかないと、旅行に誘っても応じてくれないかもしれません。

終活の過程では、必要なものと不要なものをわけ、ものを減らし、老後の資金のことを考えたり、葬儀やお墓の準備をしたりすることが一般的です。そのような物質的な整理も必要ですが、「心の整理」も大切です。親子の間は距離が近いだけに遠慮がなく、ちょっとしたことからトラブルに発展することもありますが、「ありがとう」や「ごめんなさい」もいえるうちに言葉にしておくことも終活の一部です。ぜひ、有意義な親子旅をお楽しみください。