ケアマネジャーとの相性は重要
介護保険を使った介護サービスの利用者にはおなじみの、ケアマネジャー(ケアマネ)は、介護を必要とする人たちのために介護サービス計画書(ケアプラン)を作成したり、介護サービスを提供する事業者との間に入り調整を行ったりします。
介護保険を使う際に、何から始めたらよいかわからない利用者や、その家族に介護サービスを受けるための手続きやサービス内容について説明を行い、利用者が快適にサービスを利用できるようにサポートしてくれるのがケアマネジャーなのです。
そのため、話し合いのために顔を合わせることも多く、長い付き合いとなるでしょう。
頼りにするためには、必然と相性も大切なのではないでしょうか。
この記事では、介護のカギを握るケアマネジャーとは具体的にどんな仕事なのか、またケアマネジャーの選び方や付き合い方について解説していきます。
ケアマネジャーとは
介護サービスを利用するうえでとても頼りになるケアマネジャーは、2000年の介護保険制度スタート時に生まれた比較的新しい職種です。
ケアマネジャー資格試験は介護、福祉関係の資格の中では難関といわれ、さらに年々試験が難化しており、合格率は15~20%とかなり低い傾向です。
かなりの狭き門といえる資格試験を通った人が、ケアマネジャーとして活躍しているのです。
ケアマネジャーは、ケアプラン作成と介護サービス事業者との連絡や調整を行う「居宅介護支援事業所」に所属する居宅ケアマネジャーと、特定の施設に勤務する施設ケアマネジャーとに分けられます。
介護保険法におけるケアマネジャーの定義
介護保険法から抜粋すると、ケアマネジャーの定義は以下のとおりです。
「介護支援専門員とは、要介護者等からの相談に応じ、要介護者等がその心身の状況等に応じ適切なサービス(居宅、地域密着型、施設、介護予防、地域密着型介護予防)を利用できるよう市町村、サービス事業者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門知識・技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたものをいう」(法第七条第五項関係)
つまり、介護サービスが必要な人とサービス提供事業所との橋渡し的な存在と言えます。
サービス事業所に対する要望やクレームが発生した場合も、ケアマネジャーが間に入り、介護を受ける人やその家族と介護を提供する事業所との間を、円滑に保つ役割を担っているのです。
ケアマネジャーの業務
以下でケアマネジャーの具体的な業務を見ていきます。
ケアマネジャーは豊富な人脈と経験、知識を駆使して業務にあたっており、とても頼りになる存在なのです。
ケアマネジャーの業務内容をよく知ることで、一層身近に感じることができるでしょう。
要介護認定業務
市町村からの委託で、要介護申請者の自宅を訪問し心身の状態を確認します。
要介護申請を出すと、申請者の様子を直接確認する訪問調査が行われますが、その調査員としての仕事を委託されます。
ケアプランの作成と管理
介護サービスを受けるためには、まず市町村に要介護申請を提出する必要があります。
申請を行うと、原則として30日以内に認定が下ります。
その次に、認定された要介護度に応じて介護サービス計画書(ケアプラン)を作成する必要があります。
要支援1~2の人は地域包括支援センターに介護予防ケアプランを作成してもらうことになります。
要介護1~5に認定された人のケアプラン作成を担当するのが、ケアマネジャーです。
給付管理
介護保険からの支給額(介護保険で利用できる金額の上限)に応じて、利用者の負担額が違ってきます。
その計算を行うのも、ケアマネジャーの仕事です。
相談業務
介護サービス利用に関するさまざまな相談に応じています。
介護サービスを利用するうえでの疑問、実際サービスを受けてみて不都合なことなどの相談にのってくれます。
利用者本人だけではなく、その家族からの相談にも応じています。
サービス担当者会議とは
さて、ケアマネジャーに作成してもらったケアプランを見ると、さまざまな事業所が関わっていることがわかるでしょう。
例えば、訪問介護(ホームヘルパー派遣)はA事業所、通所介護(デイサービス)はB事業所、ショートステイはC施設、福祉用具貸与はD社などです。
その場合、関わるサービス機関の担当者が一堂に会してケアプランの内容を検討し、情報を共有する会議が開かれます。
これを「サービス担当者会議」といい、利用者の自宅で開かれることもあり、もちろん利用者とその家族も参加します。
この会議の日程調整をして召集をかけ、資料作成をして当日の司会進行を行うのもケアマネジャーです。
今後の介護サービス利用のための重要な会議ですので、利用者とその家族も意見や質問があれば遠慮せずに発言するようにしましょう。
ケアマネジャーの選び方
介護サービス利用のために要介護申請を出し、認定が下りてからケアマネジャーを決めてもよいのですが、申請と同時にケアマネジャーを選んでおくと、後々の手続きなどがスムーズに進められます。
施設に入所する場合は、施設のケアマネジャーがケアプランを作成するため、ここでは在宅で介護サービスを受ける際の居宅ケアマネジャーの選び方について解説します。
居宅ケアマネジャーのほとんどは、介護サービスを行う事業所である「居宅介護支援事業所」に所属しています。
事業所のリストは、市町村の介護保険課や地域包括支援センターでもらうことができ、インターネットで厚生労働省の「介護サービス情報公開システム」で検索も可能です。
介護サービス情報公開制度は、介護サービスを利用しようとしている人の事業所選択を支援することを目的に公開されているのです。
では、以下にケアマネジャーを選ぶ際のポイントを見ていきましょう。
自宅から近い事業所を選ぶ
ケアマネジャーの所属する事業所を選ぶ際に、まず自宅から近いかどうかを確認します。
緊急時に素早い対応をしてもらうためには、自宅から近くの事業所のほうが何かと便利でしょう。
また、同じ地域にある事業所であれば、地域の介護サービス施設についても詳しいので、同一市町村内の事業所に所属するケアマネジャーが良いでしょう。
キャリアで選ぶ
ケアマネジャーは保健、医療、福祉の分野で5年以上の実務経験を持つ人が資格の取得ができます。
そのため、前職が何かを知ることでそのケアマネジャーの得意分野がわかるとも言えるでしょう。
元のキャリアの例としては、看護師、介護福祉士、社会福祉主事、社会福祉士などが挙げられます。
例えば、医療ケアに重点をおいた介護サービスを受けたい人は前職が看護師のケアマネジャーを選ぶなど、専門分野に注目して選ぶ方法もあります。
人柄で選ぶ
一口に人柄といっても、一度会って話しただけではわからないでしょう。
また、利用者や家族の好みも千差万別で「若くてハキハキした人がいい」という人もいれば「少し年配の落ち着いた人がいい」という人もいるでしょう。
直感で「この人は自分や家族に合いそう」と思う人が、結果的に長く付き合えるケアマネジャーだったということが多いです。
おすすめのケアマネジャーはこんな人
ケアマネジャーはどんな人がいいか、利用者や家族と意見が分かれることもありますが、一般的におすすめできる人を見ていきましょう。
情報の引き出しが多い人
何かを相談した際に、選択肢を多く提案し、利用者やその家族が複数の中から選べるようにしてくれるケアマネジャーは優秀と言えます。
経歴が長いケアマネジャーは情報量が多く、他の介護サービス事業者とのつながりも密であることが多いのでおすすめでしょう。
説明が丁寧でわかりやすい人
利用者や家族にとって介護に関する専門用語はわかりにくく、制度についても一度に飲み込めないことがほとんどです。
質問しやすい雰囲気を持っていて、わからないことを簡単な言葉で説明してくれるケアマネジャーは、利用者や家族にとって非常に助かります。
専門家であるケアマネジャーにとっては当たり前の知識でも、利用者にとっては理解しづらいことが多いでしょう。
素人目線で語れる人は優秀なケアマネジャーです。
利用者の好みを理解している人
利用者本人がどんな生活をしているか、趣味や好き嫌いなどを把握し、それに合った介護サービスを提供できるケアマネジャーは優秀でありおすすめだと言えるでしょう。
注意すべきケアマネジャー
次に、このようなケアマネジャーの場合は少し注意が必要、というケースを挙げてみます。
独立開業したばかりの人
ケアマネジャーは、資格を取得してすぐに独立することができます。
自分で事業所を開業することもできるのですが、最初は所属するケアマネジャーがその人だけ、というケースもあります。
その場合、そのケアマネジャーが病気や不測の事態でも代理がいないのは大きな問題です。
必ずしも独立開業したばかりの人を避けたほうがいいということではありません。
しかし、安心して任せるためには、何かのときに代理を務める人がいるのかどうか、確認するのがよいでしょう。
新人や経験の浅い人
誰にでも新人時代があり、初めからベテランの人はいません。
ただ、資格を取得したばかりの新人ケアマネジャーが経験を積んで成長していくまで、待っている余裕がないのが介護の厳しい現状なのです。
新人には、経験豊富なケアマネジャーによるサポート体制があるかどうかを確認するべきでしょう。
専門用語を多用する人
介護保険は使ったことのない人にとっては複雑で、一度に理解できるものではありません。
現在利用している人たちでさえ、わからないことがあるものです。
そのような利用者や家族に対して、介護の専門用語や法律用語を並べる人は、利用者の立場に立っているとは言えないため、避けるほうがよいでしょう。
ケアマネジャーとの付き合い方
介護サービスを利用するうえで、ケアマネジャーとはプライバシーにも関わる付き合いをすることになります。
利用者側も以下の点には気をつけて、良好な関係を築いていきましょう。
任せっぱなしにしない
ケアプランの作成は、ケアマネジャーにすべて任せるのではなく、利用者やその家族も自分たちの希望や好みをはっきり伝えましょう。
例えばデイサービスを利用するのに、どんなことに重点をおくか、レクリエーションなのか食事なのか入浴なのか、または体操など体を動かすことなのかなどを伝えることで、より希望に沿った介護サービスを受けることができます。
礼儀をわきまえる
人付き合いのマナーを守るのは相手がケアマネジャーであれ、誰であっても当たり前のことですが、親しくなるにつれ、頼りすぎたり過剰に期待したりする利用者もいます。
例えば、移動中や他の利用者の対応中で、電話連絡がつかない場合など、そのことに苦情を言うのは避けましょう。
一人のケアマネジャーが担当する利用者は30人前後といわれ、多忙な仕事であるのが現状なのです。
そのような状況を理解し、質問事項はあらかじめまとめておくなど、ケアマネジャーの時間を独占しない配慮も必要です。
ケアマネジャーの変更について
経歴や人柄を充分考慮して、決めたケアマネジャーでも、途中で合わなくなることもあり得えます。
そのような場合、お互いに歩み寄ることが大切ですが、どうしても関係が修復できそうにないときには、ケアマネジャーの変更も可能です。
ケアマネジャーの変更方法は、以下の3通り挙げられます。
- ①現在のケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の、別の人に変更する
- ②事業所そのものを変更し、別の居宅介護支援事業所と契約する
- ③市町村の介護保険課や地域包括支援センターに相談する
ケアマネジャーや事業所が変更になっても、現在利用中の介護サービスは継続して受けることができます。
まとめ
介護の分野で重要な役割を果たすケアマネジャーについて、仕事内容や選び方、付き合い方について解説しました。
現在介護サービスを利用している人、今後の利用を検討している人にとっては欠かせない存在のケアマネジャーです。
ケアマネジャーとよい関係を作り、協力しあって快適な介護サービスを受けられるようにしましょう。