卒塔婆とは
卒塔婆とは、お墓に祀られる故人や先祖の冥福を祈って、供養のために立てる細長い1~2メートルの細い板のことです。木でできており、塔婆とも言います。先祖への供養とは、追善(ついぜん)供養と言われ、生きている人が亡くなった人に対して行う供養のことです。追善とは、生きている人が善行を行うことによって亡くなった人の善行にもなり、それがまた自分に戻ってくるという考え方です。卒塔婆を立てることが善を積むことになるのです。
卒塔婆の起源
卒塔婆は古代インドのサンスクリット語(梵語)で、仏塔・仏舎利塔を意味する「ストゥーバ」を漢訳したものです。仏舎利塔とは釈迦の遺骨を納めた塔です。その後中国を経て日本に仏舎利塔が広まり、これが五重塔の起源といわれています。
卒塔婆は五重塔や五輪塔の持つ意味と同様に、地、水、火、風、空の5つをかたどっています。卒塔婆に刻まれた形で、宝珠型は「空」、半円が「風」、三角形は「火」、円は「水」、一番下の四角形は「地」を示しています。
卒塔婆に書かれている言葉の意味
卒塔婆の表には仏教の宇宙観を示す5つの梵字(サンスクリット文字)が書かれています。各文字に意味があり、形の地、水、火、風、空に沿った字が書かれ、上から順に「キャ・カ・ラ・バ・ア」と呼ばれます。その下に、戒名・没年月日(命日)・経文・回忌・施主名・供養年月日などが記されます。回忌とは、三回忌・七回忌などの供養回忌を記載します。施主名とは、卒塔婆を立てた人の名前です。
戒名の例
戒名とは、仏門に入った人の名前で、僧侶に付けてもらった故人の名称です。宗派により天台宗や真言宗、浄土宗、禅宗では戒名と呼ばれ、浄土真宗では法名、日蓮宗では法号と呼ばれています。天台宗・曹洞宗・臨済宗では、戒名の上に「道号(どうごう)」をつける場合があります。
××△△信士 (××が道号)
浄土宗では、「誉号(よごう)」をつける場合があります。つける場合は戒名の上に「○誉」という形で入ります。
###●●院○誉△△居士
浄土真宗では、戒名ではなく法名(ほうみょう)といいます。法名の上にお釈迦様の「釋号」をつけ位号は用いません。
●●院釋△△
真言宗では、一番上に梵字を記して、本尊である大日如来(だいにちにょらい)の弟子になったことを表します。
◎ ●●院××△△大姉 (◎が梵字)
日蓮宗では、法号(ほうごう)といいます。戒名の下に「日号」をつけ、「日○」とすることがあります。
浄土真宗と卒塔婆供養
浄土真宗では基本的には、卒塔婆を用いません。浄土真宗では、亡くなった後すぐに浄土へ往生する他力本願・他力念仏の考え方を取りますので、卒塔婆を立てて故人の往生を念じる塔婆供養(追善供養)を行わないことが基本となります。
阿弥陀信仰により、亡くなられた先祖も、また今生きている人も阿弥陀さまの功徳の中にあるとし、阿弥陀さまを信じ、感謝をしていくのが浄土真宗の法事のあり方です。この世の人が阿弥陀さまよりもすぐれた善根を積めるのならば、追善ということも考えられるのでしょうが、凡夫の身でありながら追善を考えることはおこがましいという考え方です。
卒塔婆供養の時期
卒塔婆供養は、納骨のときに行うのが最初で、その後、年忌法要、お盆、お彼岸、お施餓鬼法要の時期に行います。年忌法要とは、一般に法事と呼ばれているものです。亡くなった翌年が一周忌、その翌年の2年後が三回忌です。三回忌からは亡くなった年も含めて数え、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌と追善供養の法要を営みます。
お施餓鬼法要とは、お盆の時期に行われることが多い仏教行事の一つです。餓鬼(がき)とは、生前の悪行によって亡者の世界に落とされた魂や無縁仏となっているような霊のことを言い、常に飢えと乾きに苦しんでいるものを指します。施餓鬼とは、そういう餓鬼と言われる人たちに食べ物や飲み物などの供物を施す供養を行うことです。
卒塔婆の用意
卒塔婆は、法要の施主以外でも、親族でなくても立てることができます。また、家族一同や兄弟一同などのように、共同で立てることもできます。
卒塔婆供養をする場合には、事前に寺院に依頼して、卒塔婆を準備してもらって立てます。卒塔婆は墓石の背面の塔婆立という専用の台に立てます。本数の決まりはありません。
卒塔婆供養の費用の相場
卒塔婆料の相場は、1本につき、3,000円から10,000円程度です。
地域や法要によって異なるため、詳細は寺院に確認しましょう。御塔婆料は、施主に渡して、施主から僧侶に渡します。また、一般的には別途お寺へのお布施も必要です。卒塔婆は戒名や施主名、亡くなった日などの情報を記載するので僧侶に書いてもらうことになるためです。ただし、普通は法要と一緒に卒塔婆を立てるため、法要のお布施に含めてもよいでしょう。
法要のお布施の目安は明確ではありませんが、参考相場としては、一周忌3万円~5万円、初盆3万円~5万円、三周忌1~5万円、お彼岸1~3万円くらいです。
卒塔婆の管理
卒塔婆は、納骨から年忌、お彼岸、お盆のごとに立て替えるのが一般的ですが、いつまで立てて置かなければならないといった決まりはありません。古くなれば寺院や墓地管理者にお願いし、お焚き上げなどの処分をしてもらいます。なお、合葬墓・合祀墓では個人別の卒塔婆は立てられません。納骨堂も、スペースの関係で卒塔婆は立てられないです。また、樹木葬では卒塔婆自体が立てられません。
まとめ
卒塔婆を立てる意味は、故人や先祖の追善供養です。て卒塔婆を立てることは善を積むことになり、それは故人の善行にもなるという考えです。
卒塔婆には戒名・没年月日(命日)・経文・回忌・施主名・供養年月日など、故人を供養する内容が書かれています。納骨、その後、年忌法要、お盆、お彼岸、お施餓鬼法要などに、卒塔婆供養を行ってください。卒塔婆は1本につき3,000円から10,000円程度、それと別にお寺へのお布施が一定額必要です。