求められるお墓のバリアフリー化
高齢社会となり、お墓参りに車椅子を使用する人が増えてきました。
従来の墓地は丘陵地に作られることが多く、土地自体が傾斜地であるために階段が多くあり、車椅子には不向きな場合が多くあります。
また、小さなお子さまを連れてベビーカーで参拝する人もいるでしょう。
さらに霊園内の中央の道は舗装されていても、お墓の区画に入る部分は砂利道などが多く、やはり車椅子やベビーカーには不向きな場合が多くあります。
砂利や段差でつまづくことも起こりえるため、これからはお墓のバリアフリー化が求められるでしょう。
この記事では、求められるお墓のバリアフリー化の現状と今後を、永代供養墓を中心に紹介していきます。
バリアフリー型の霊園・墓地とは
霊園は街から少し離れた場所に作られることが多く、山の一部を切り崩した敷地など、足場があまり良くない立地も少なくありません。
若いときには参拝出来ていた霊園でも、高齢になって足腰が弱くなったり、車椅子を利用するようになったりする人には「お墓参りをするのが難しい」という現状が起こります。
そのため近年、霊園・墓地をバリアフリー設計にするところも増えてきており、高齢で車椅子の人でもスムーズにお墓参りができるように変化してきました。
特に、新しい霊園では、公園のような広い敷地の平坦な設計で、最初からバリアフリーを取り入れているところもあります。
では、バリアフリー型の霊園と従来の墓地とはどのような相違があるのかを見ていきましょう。
霊園全体のバリアフリー設計
新しい霊園では霊園全体、すべての区画をバリアフリー化したところが出てきています。
バリアフリー化のポイントは以下のような点です。
・霊園全体の平坦化によるバリアフリー設計
・霊園内のあらゆる道路、通路の舗装化
・道路、通路とお墓の間に段差がないような設計
お墓は外柵に囲まれ2~3段の階段がついているデザインのものが中心です。
車いすでお墓の敷地の前まで行けても、墓地自体には入れない場合が多いのが現状でした。
しかし、お墓の土地を高くせず、道路と平坦な設計をし、前部を外柵で囲わないようにするなどの工夫を取り入れることで、車椅子でも墓前でお参りができるようになります。
・車椅子に座った状態で、花立てや香炉に手が届き、花の交換やお香をあげることができる
墓石の前まで車椅子で入っていくことができれば、車いすに乗ったまま自分でお参りができることになります。
・駐車場から墓地までの平坦な設計
・墓地区画内の通路の幅の拡大
車いすが通れる道幅の確保をすることで、乗り降りしなくてもお参りができます。
・墓地区画内の水はけを良くする
水はけが悪く道が濡れていると滑りやすく、転んで怪我をする可能性があります。
・納骨堂であれば、建物に入る部分、駐車場からのアプローチの平坦化
・納骨堂内部のエレベーターの設置
・緩やかな傾斜地の手すりの設置
霊園の部分的バリアフリーリフォーム化
・墓地区画に入る道が砂利道ではなく舗装した道にする
墓地内の主な道は工事車も入るため舗装されていることがほとんどですが、墓地の区画内の道は砂利道のところも多くあります。
また、寺院墓地であれば規模も小さいところが多く、舗装までされていない場合もあるでしょう。
・墓石のすべり止め
お墓の石は花崗岩などで磨かれたものが多く、きれいではあっても滑りやすい点があり、高齢者や小さい子どもなどの転倒の危険性があります。
そのため、石の段差部分の石材に滑り止め防止加工を行うこともでき、加工時に模様をつけたりし目立つようにすることもできます。
・霊園内のベンチの設置
高齢や車いす程ではなくても長時間立っているのがつらい人のために、霊園内の随所にベンチの設置も望まれるでしょう。
特に、広い霊園は休憩する場所があると助かります。
・バリアフリーの多機能トイレの設置
車椅子に乗ったままの利用や、小さいお子様連れのおむつ替えなど、多機能トイレの設置は必要でしょう。
永代供養、永代供養墓とは
次に、永代供養、永代供養墓という言葉はどのような意味を持つのかを見ていきましょう。
永代供養とは
永代供養とは、お墓参りをしてくれる人がいない、またはお墓参りに行けない人に代わって、寺院や霊園が墓地の管理や供養をしてくれる埋葬方法のことを指します。
寺院や霊園が遺骨を預かり永代にわたって供養します。
一方、類似した用語で、永代使用がありますが、永代使用とは、永代使用料を払ってお墓の権利を取得し、その土地を永代にわたって使用することなので意味が違います。
永代供養墓とは
「永代供養墓」とは、遺族に代わってお寺が供養と管理をしてくれる形態のことです。
そのため、身寄りのない人や子どものいない人、子どもがいてもお墓の承継ができない、費用の工面ができない、などの理由がある人に向いています。
一代のみや個人としてのお墓のあり方を示していると言えるでしょう。
永代の意味とは
永代といっても「未来永劫(永久ではなく、長い年月を意味する)」ではなく、当初個別に納骨された場合でも遺骨の安置期間には一定の期限が設けられています。
一般的には、33回忌までを期限とするところが多くありますが、寺院や霊園によって、17回忌、33回忌、50回忌までと相違があります。
永代の期間が過ぎた後は
上記の期限後は、他の遺骨と一緒に永代供養墓などに埋葬され供養が行われます。
永代供養墓の形態
永代供養墓には、大きくお骨を個別に供養する「分骨型」のものと、お骨を他の方と一緒に供養する「合祀(ごうし)型」の2種類があります。
合祀型の場合は、一度、お骨を納めてしまうと個別に取り出すことができないため、選ぶ際には注意をしなければなりません。
一般墓地、納骨堂など当初個別に納骨され期限後に合祀される形態と、最初から合祀される形態とがあります。
永代供養墓の特長
・年間管理費がかからない
永代供養墓は必要な費用を支払うのは最初のみで、その後は、毎年の管理費は標準的には不要なため、家族や親族に負担をかけることはないでしょう。
合祀型のお墓の場合は、当然墓石代はかかりません。
・自分のお墓の生前購入が多い
「子どもに迷惑を掛けたくない」「負担をかけたくない」と考えるようになる人が近年多くなりました。
そのため、お墓の生前購入が増えています。
・従来の宗教・宗旨・宗派は不問
お墓は今までの宗教や宗派に関わらず、誰でも申し込めますが、寺院墓地の場合は新たな寺院の檀家への加入が必要となる場合が中心となります。
檀家に入る必要がない場合もありますが、その場合は当初の資料で「入檀不要」などと書いてあります。
バリアフリー型の永代供養の現状
バリアフリー型の永代供養の現状は、新しい霊園で見られる霊園全体が最初からバリアフリー設計されたものと、現状の霊園、墓地をバリアフリーリフォームされたものがあります。
また、納骨堂などの場合は、独立した建物や地下室になり、施設内はエレベーター完備されバリアフリー化はされているのが通常です。
しかし、霊園入口、駐車場から施設までや施設入り口部分がバリアフリー化されているか、また、バリアフリー多機能トイレがあるかなどをチェックしておくことが大切です。
そして永代供養墓の形態には以下のようなものがあります。
屋内型
納骨堂と呼ばれるもので、ロッカー型や可動収納型など、さまざまなタイプがあります。
近年、都市部や駅に近く、アクセスしやすい場所にもよく見られるようになりました。
屋外型
地下に遺骨をまとめて埋葬し、地上に慰霊塔、モニュメントなどを設置するものです。
また、樹木葬、花壇葬の形態もあります。
バリアフリー霊園・墓地の今後
高齢社会の到来で高齢者の車椅子でのお墓参りが増え、バリアフリー化は今後も進行することが予想されます。
特に新しい霊園ではそのような傾向が顕著でしょう。
既存の霊園、墓地ではバリアフリーリフォーム化が進むと考えられますが、丘陵地などでは工事が無理な場所も多くあります。
そのため、全ての霊園や墓地にバリアフリー化が進むわけではないでしょう。
バリアフリーリフォームの対象となる箇所は次のような部分です。
・舗装されていない園内の道路(土、砂利の道)の舗装化
・園内道路とお墓の間に段差の解消
・墓地区画内の通路の幅の拡大(車いすが通れる道幅の確保)
・墓地区画内の水はけを良くする(水はけが悪く道が濡れていると滑りやすく危険)
・墓石のすべり止め
・緩やかな傾斜地の手すりの設置
・霊園内のベンチの設置
・バリアフリーの多機能トイレの設置
・納骨堂であれば建物に入る部分、駐車場からのアプローチの平坦化
永代供養墓の今後
今後もさらに少子高齢化が進み、お墓の承継者がいなくなることや、お墓への考え方の変化から、永代供養墓は拡大していくと思われます。
バリアフリー化との関係からは合祀型の樹木葬、花壇葬などの伸長が予測されます。
樹木葬、花壇葬は当然個別の墓石はなく、道路からお参りする形態が標準であるため、当初からバリアフリー設計されている場合が多くあるのです。
バリアフリー型の永代供養準備墓を検討する際の準備
新たに霊園、墓地を生前購入する場合は下記の点などを検討していくとよいでしょう。
場所からリサーチする
自分が便利な場所、気に入った場所の霊園、墓地の中でバリアフリーを取り入れているところをリサーチします。
バリアフリー化と言っても完全なものか、部分的なものかをリサーチし、自分の求める内容のところを絞り込みましょう。
そして、インターネットのサイトなどを見て必要に応じ資料請求をします。
屋外型か屋内型(納骨堂型)を絞り込む
・バリアフリーの視点では
樹木葬も含めた屋外型であれば、道路、墓地区画、通路と墓石の間などのバリアフリー化がポイントになります。
屋内型は納骨堂型で室内はバリアフリーとなっている箇所が多いでしょう。
そのため、駐車場から納骨堂までが平坦か、納骨堂入口部分に段差がないか、施設内のエレべーター、車いすトイレが完備されているかなどがポイントでしょう。
・永代供養を考えたお墓の形態での視点では
お墓の承継者がいなくなることを想定したお墓の形態の選択では、屋外での合祀墓にするか、または樹木葬にするかなどが挙げられます。
また当初は屋内の納骨堂を選び、合祀時期が来たら屋外などの合祀墓に入るのかなど、情報に基づき判断します。
・家族への相談
リサーチした情報をもとに、自分の考えをまとめ家族と相談することが重要です。
家族の考え方がまとまれば準備を進められるでしょう。
・ お墓の見学
実際にはどうなっているのか、行ってみないとわからない場合が多くあるため、リサーチした霊園や墓地を自分の目と足で確かめることが大切です。
・霊園、墓地などとの打ち合わせ、質問
具体的な条件や説明を詳しく聞き、納得したうえで決定し、手続きをしましょう。
まとめ
高齢化は今後ますます進展すると思われ、車椅子でもお墓参りができるニーズは拡大するでしょう。
そのため、これからの霊園・墓地の購入を考える場合は、バリアフリー仕様のところを選んでおく方がよいと考えられます。
バリアフリー型の霊園・墓地の選択は、高齢者の車いすだけではなく、ベビーカーにとっても必要で孫やひ孫にもお墓に来てもらうためには意味があります。
また、今後はさらにお墓の承継者がいなくなると予想され、寺院に供養を委託する永代供養が必要になり、永代供養墓の選択がテーマになってくるでしょう。
少子化の時代の流れは容易に変わることはないとされるため、永代供養墓は今後のお墓の形態を示すものとされます。
さらに、子どもや残された家族に迷惑を掛けたくないという配慮から、自分のお墓を生前購入する人が増加しています。
お墓の承継の心配を無くすために永代供養のお墓にすることを真剣に考える時代になりました。
後悔しないためにも生前購入する場合は、リサーチを元に家族と相談して、実際に出向いて決める必要があるでしょう。