知っておきたい葬儀保険の基礎知識

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はじめに

昔から「遺産といえるほどのものはないけれど、口座に自分の葬式代だけ残しておく」と言う人がよくいます。

自分の葬式代を払ったら、自分の財産はきれいになくなる、というのは一種の理想ですが、実際には自分の預金だけでまかなえるか不安なときもあります。葬儀やその他にまつわる費用が結構かかることがあるからです。

そこで最近、加入者が増えているのが葬儀保険です。
本記事では、葬儀保険に関する基礎知識を説明します。

葬儀保険とは

葬儀保険とは、葬儀にかかる費用をまかなうための保険で、残された家族の負担にならないよう生前自分で加入します。
葬儀保険は少額短期保険の一種で、掛金は少額で、保険期間は1年以内の保険です。

近年、葬儀保険に加入する人が増えてきていますが、それはやはり葬儀にかかる費用が高いためだと考えられます。
葬儀には以下のような費用がかかるからです。

葬儀式典代

通夜や告別式に必要な費用です。
式場代、祭壇や遺影、棺や供花にかかる費用のほか、遺体の運搬費用や湯灌代、火葬代などで、費用の相場は120万円ほどです。

飲食接待費

通夜や葬儀後に参列者に振舞う料理や、参列者に渡す返礼品などで約50万円かかります。

僧侶などへのお布施

僧侶や神父・牧師に渡すお布施で、約15~30万円ほどです。

その他の費用

仏壇やお墓を新しく設ける場合は、その費用、病院や介護施設への支払い、遺品や家財道具の整理代などがかかります。

葬儀保険に加入しておくと、これらの費用を保険でまかなうことができます。
自分の葬儀代相当のお金を残しておくという話はよく聞きますが、それでは足りない場合は家族が負担することになるので、保険に加入しておくと安心です。

医療保険や生命保険と、どう違う?

葬儀保険は、加入のしやすさが一般の生命保険と違います。

一般的な保険は、加入するときに医師の診察を受ける必要があります。
持病があると加入できなかったり、年齢制限があったりします。
葬儀保険の場合は、医師の診察は要らないことが多いのが特徴です。

また、死亡保険は加入できる年齢の上限が満65~満75歳である場合が多いのですが、葬儀保険は年齢の上限がもっと上であることが多く、80代でも加入することができる商品もあります。

葬儀保険の種類

ここまで、葬儀保険は、葬儀にまつわる費用をまかなう目的で、自分で加入する短期の保険であることを説明してきました。
葬儀保険には大きく分けて2つのタイプがあります。

・保険料定額タイプ
年齢によって月々支払う保険料の額は増えていきますが、受け取る保険金額は変わりません。

・保険料一定タイプ
年齢が上がると受け取る保険金額は減っていきますが、毎月支払う保険料は一定です。

加入者の年齢が上がると、病気などで亡くなる確率が高くなります。そこで多くの保険会社は、年齢が上がると支払う保険料が高くなるか、受け取る保険金が下がるか、のどちらかにしていることが多いものです。
保険料の負担を考慮しながら、いずれかを選びましょう。

支払う保険料の額が上がっても負担にならなければ、「保険料定額タイプ」で一定の額が受け取れるようにする方がおススメです。
年金生活などで、保険料の支払いが大きな負担になるようであれば、「保険料一定タイプ」で支払う額の負担を減らしていく方がよいでしょう。

葬儀保険の選び方

葬儀保険にもいろいろな種類があることを前項で説明しました。
ここでは、葬儀保険に加入するときに、どのような保険を選んだらいいのか、について考えてみます。

現金をすぐに受け取れる保険を選ぶ

葬儀保険を選ぶとき、一番大事なのがこの点です。
亡くなると、家族はすぐに通夜や葬儀の準備を始めますが、このときに必要なのは、支払いをするための現金です。

葬儀会社によってはカードやローンでの支払いができるところもありますが、現金での支払いや。銀行振込みが一般的です。
また、僧侶に渡すお布施などは現金を包みます。

従って、葬儀代をカードやローンで支払うにしても、口座には現金を入れておく必要があります。
とにかく、亡くなったらすぐに、各種の費用を支払うための現金が必要になりますので、すぐに現金を受け取れる保険を選ぶのはとても大切なのです。

保障の内容で選ぶ

亡くなったときに生じる費用は、葬儀の式典代やお墓代などのほか、遺品の整理にかかる費用や医療費の清算などがあります。
葬儀と墓地に対する費用以外も、保険でカバーするのかどうかも見て選びましょう。

また、商品によっては入院時の保障が付いているものもあります。
入院してからの負担を減らすことができるので、加入時の条件が合うなら、そちらを選ぶのもよいでしょう。

加入のしやすさ

一般の保険と違って、加入しやすいのが葬儀保険です。
条件が自分と合っていて加入しやすい保険や、支払う保険料があまり高くなく、負担にならない保険を選ぶようにしましょう。

年齢が上がっていくと、葬儀保険以外の生命保険などの保険料も上がっていきます。
年金などで生活していて、生活が保険料の支払いで圧迫されては大変です。
加入しやすく、無理なく払える保険に加入するようにしましょう。

葬儀保険の利点

葬儀保険に入ると、どのような点がよいのでしょうか。ここでは、実際に加入した場合の利点を説明します。どの保険に加入するか、検討する際の参考にしてください。

家族の負担を減らせる

葬儀保険の最大の利点はこれです。
「口座に葬式代だけを残して死ぬんだ」という話はよく聞きますが、葬儀によっては高額になる場合もあります。
口座にいくらか残しておき、さらに保険にも加入しておくと、自分の死後に、残された家族の負担をぐんと減らすことができます。

遺産として渡すことができる

遺言を残していないと、遺産の扱いをめぐって遺族がもめることがあります。
その点、保険は受取人を指定できるので、指定の人物に遺産として渡すことができるのです。

ただし、葬儀保険は受け取った保険金に税金がかかります。
契約者と受取人の関係によって、課税される税金の名目は変わりますが、葬儀保険の保険金を受け取ると課税の対象となります。

加入しやすく保険料が割安

一般の生命保険や死亡保険と比べて、葬儀保険は加入の条件がゆるいので、とても加入しやすい保険です。
葬儀保険は少額短期保険ともいわれていて、支払う保険料は少額で、保険期間も1年以内です。

加入しやすくて支払う保険料も少ないため、負担にならないようなら、加入して損はない保険だといえます。

葬儀保険に加入するときに気をつけること

先述の通り、加入しやすく続けやすい葬儀保険ですが、加入に際して気をつけるポイントもいくつかあります。
責任開始期や、契約した保険会社の破綻、告知義務などについて確認しましょう。

責任開始期を確認すること

「責任開始期」とは、保険会社が保険金や給付金の支払いを開始する時期のことです。
葬儀保険は、この責任開始期が一般の保険と違うことがあるため、気をつける必要があります。

・一般の保険
保険に加入するときは、必要な書類を揃えて保険会社に申し込みます。
申込内容や書類に不備や問題がなければ、保険会社から承諾通知と口座振替案内用紙が届き、申込者が保険料の振り込みをします。
そして、1回目の保険料の支払いが完了した時点で、支払った月の1日から保障が開始されます。

・葬儀保険
契約が成立した日の、翌々月の1日から保障が開始されます。
つまり、契約が成立した日から保障が開始されるまでの間に1カ月ほど時間が空くのです。
そのため、責任開始期が来る前に亡くなった場合は、保険金が下りないこともあります。

亡くなった日によっては保険金を受け取ることができないこともある、ということを覚えていてください。

保険会社が破綻しても保護されない

一般の保険は、保険契約者保護機構によって保護されています。
保護機構が保険会社に代わって一定の保護をしてくれるため、一般の保険は保険会社が破綻しても継続します。
しかし、少額短期保険である葬儀保険の場合は、保険契約者保護機構の対象になっていませんので、保険会社が破綻しても保険は継続されません。

告知義務違反をしないように気をつける。

「告知義務違反」とは、保険加入時に虚偽を記入したり、大事なことを報告しなかった場合などに、保険の契約が解除されたり、保険金が支払われなかったりすることをいいます。

一般の保険は、医師の診察や診断書が必要だったり、それなりに審査が厳しかったりします。
しかし、葬儀保険は一般の保険に比べて審査が厳しくはないため、適当に申告しても大丈夫ではないかと思う人も多いそうです。

確かに審査は厳しくありませんが、だからといって適当な申告をしたり、虚偽の内容を記入すると、それは告知義務違反になります。
告知や書類への記入は正確にしましょう。

葬儀保険に加入したら

葬儀保険に加入したら、その旨を家族にきちんと伝えるようにしましょう。
家族が葬儀保険に加入していることを知らなかったら、保険に加入した意味がありません。

あなたが亡くなったあと、保険金を受け取る手続きをするのは残された家族です。
葬儀の準備や親族への連絡で慌ただしいなか、保険会社に連絡して必要な書類を揃えることになります。
スムーズに手続きをするために、保険証書などの必要な書類はひとまとめにして、すぐに取り出せるところに保管し、その場所を家族に伝えてください。

もし葬儀保険に加入するときに告知義務違反がある場合は、家族が申請をしても保険金が下りないことがあります。
保険金で葬儀代を支払おうと思ったのに、あてが外れることになりますので、そうならないために加入時の申告は正確にしましょう。

まとめ

自分の葬儀の内容をすべて決めた場合は、かかる費用も把握できますが、そうでない場合はいくらかかるのかよくわからないものです。
思った以上にお金がかかった場合、残りはすべて残された家族が支払うことになります。

自分である程度お金を残したとしても、不安がある場合は、生前に葬儀保険に加入しておくと安心です。
葬儀保険は支払う保険金が少額で、加入も厳しくありません。
大きな負担にならないようなら、加入しておくことを勧めます。