知っておきたい終活で直面する贈与税について

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終活と贈与

終活ではお金の整理も大きなポイントになります。
特に相続や贈与といったお金を残していける部分については、できるだけ多くして負担を少しでも軽くしてあげたいものです。

しかし、どちらにも税金が関係してくるため、しっかりと準備する必要があります。
お金のことを心配しながらの生活は心苦しいものですので、きちんと納得のいく計画をたてておくことが大切です。

贈与税の基本情報

贈与税というのは、その名前からわかるように「贈与」をするときに発生する税金のことです。
贈与税には法律の取り決めが細かく設定されており、違反をすれば法的に罰則を受けることにもなるため、正しい知識を持って正確に行動をしましょう。

そこで、贈与税の基本的な事項をまとめて解説していきます。

基礎控除額は110万円

贈与税は110万円以下の場合には発生しません。
贈与税の対象になる項目は多数ありますが、金銭に見積もることができるものであれば全て計算をすることになります。

例えば200万円の贈与を受けた場合、110万円を差し引いた90万円に課税が行われることになります。

税率

贈与税の税率は金額が増えていくにつれて一定額ごとに税率が上がっていく「累進課税」となっているので、多額な人ほど大きな負担となります。

一般贈与財産の場合、200万円以下の10%が最小で、300万円以下は15%、最大は3000万円以上の55%です。
基礎控除額に加え税率15%以上では10~400万円の控除も存在します。

例えば一般贈与で500万円の場合、500-110=390で課税される範囲を計算し、390×0.2=78で税率20%を適用し、そこに25万円の控除を差し引きした53万円が贈与税になります。

一般贈与財産と特例贈与財産

贈与税の計算方法には一般贈与財産と特例贈与財産の2種類が存在し、税率の決まる金額が違うので注意しましょう。

一般贈与財産は、直系卑属以外の親族からの贈与でなおかつ受贈者が贈与を受けた年の1月1日の時点で20歳未満の場合か、他人からの贈与を受ける場合に適用されます。
特例贈与財産は、直系卑属からの贈与を受け、受贈者が贈与を受けた年の1月1日の時点で20歳を超えている場合に適用されます。

贈与税の現状

贈与税の税率や基礎控除額などは法改正によって変化をしてきていますが、現在はどのような設定になっているのかを詳しく紹介します。

一般贈与財産

一般贈与財産の税率と控除額は、以下のとおりです(金額・税率・控除額)

200万円以下・10%・なし
300万円以下・15%・10万円
400万円以下・20%・25万円
600万円以下・30%・65万円
1000万円以下・40%・65万円
1500万円以下・45%・175万円
3000万円以下・50%・250万円
3000万円超・55%・400万円

特例贈与財産

特例贈与財産の税率と控除額は、以下のとおりです。

200万円以下・10%・なし
400万円以下・15%・10万円
600万円以下・30%・30万円
1000万円以下・30%・90万円
1500万円以下・40%・190万円
3000万円以下・45%・265万円
4500万円以下・50%・415万円
4500万円超・55%・640万円

臨時特例

贈与税や相続税は、理由があり予測していないときに行わなければいけない場合には、対策が不十分で必要以上の負担を強いられてしまうことになります。

近年の日本でば東日本大震災のように、未曾有の天災による被害が発生した場合には、特に大勢の人がそういった事態に陥ってしまいます。
政府は適宜臨時特例という形で、そのような人たちを救済することがありますので、いざというときのために覚えておくといいでしょう。

非課税財産とみなし贈与

贈与税の対象にならない財産と、直接贈与したわけではないけれど贈与とみなして課税対象になる財産が存在するため、よく知っておく必要があります。

扶養義務者とその対象間での、生活費や教育費が最もよくある非課税対象です。
専門家とよく相談しながら決めると良いでしょう。

贈与税の今後

贈与税はこれから先どうなっていくのか、今の時点で予想されることなどを紹介します。

まずは法的な決まりが最優先

贈与税の税率や課税対象といった基本事項は法律によって決定されるため、法改正が発生しない限り大きな変化は発生しません。

贈与税が一般贈与財産と特例贈与財産の2種類になったのは2015年で、基礎控除額が110万円になったのは2001年であるように、近年も大きな変化があることから、ずっと現状の制度のままということは予想しにくいでしょう。

重要視されやすい「相続税」との関係

終活で贈与を考える人が多いことも事実であるように、贈与税と相続税は切っても切れない関係にあります。
基本的に相続というタイミングが限定されていることと、贈与はいつでも任意で行えるということもあって、負担は「相続税<贈与税」のバランスになります。

しかし、2003年度に「相続時精算課税」という制度が設けられました。
これは贈与税と相続税の隔たりを少なくする法改正で、形としては「贈与税が相続税の前払いになる」といったものです。

こういった取り組みが進むことで、相続税対策のための贈与の考え方が変わってくることが予想されます。

共済制度などの関係

心身障害者への共済制度のように、他の制度との兼ね合いで贈与税の異課税対象となる財産は現在も存在します。

こういった関連法との関係性まで考えておくと、今後贈与税が変化する可能性というのは少なくないことがわかってくるため、計画を立てている最中の人は、最新情報を幅広くすると同時に、敏感になっておくといいでしょう。

贈与のための準備

贈与を実際に行う予定の場合、節税という意味でも入念な準備をしてから行うのがいいでしょう。

お金のことですから、過剰に租税をしてしまえばもったいないことになってしまいます。
実際にどういった準備をしたらいいのが、具体的にいくつか紹介します。

資産価値の計算

贈与税の基本となる金額は「いくら贈与するのか」ですので、そこを間違えてしまうとすべての計算が狂っていまいます。

正確な計算のためには税理士や鑑定士のような専門家の協力も必須ですが、贈与する資産となりうるものを購入する時点から、あらかじめ節税になりやすいように考えるといいでしょう。

保険金は特に注意

生命保険金は金額の大きさもさることながら、課税に関する決まり事が複雑なため、安易に進めてしまうと大きな負担になってしまう可能性も高いです。

もちろん保険金という特性上、受け取るタイミングなどによっては相続税になることも考えられるため、相続税と贈与税の双方の知識も必要になります。

贈与税は受け取った人ごとに計算

贈与税は受け取った合計金額から計算するため、2000万円を1人から贈与されるのと、5人から合計2000万円を贈与された場合だと、支払う金額は同じになります。

これは相続税とは異なる考え方ですので、混同してしまわないようにしましょう。
逆を言えば複雑な贈与と授与の関係があったとしても、最終的に授贈者が受け取った合計金額から計算すればいいだけという考え方をすれば、簡単だともいえるでしょう。

終活で贈与を考えている人への提案

近年では、終活を考えている人も増えているため、相続と贈与の関係性についてよく知っておく必要があります。

相続と贈与

終活ということから、自分の死とお金のことを併せて考えている人にとって、相続と贈与の2つのキーワードは悩みの種になりがちです。

基本的には相続税の方が負担は軽く、贈与は税の負担が大きい代わりに任意のタイミングで行うことができます。
この差をまずは理解した上で、適切な方を選べるようにするといいでしょう。

葬儀関係は非課税が基本

相続税の非課税対象にお墓が入っているように、葬儀に関するお金の多くは非課税対象になります。
贈与税の非課税対象になる葬儀関連のお金は、見舞金や香典などです。

事前にお墓を購入するなどの非課税対象となるものを購入することや、事前に支払いを済ませておくことで贈与することになる財産を減らしておくというのは、節税の基本的なテクニックの1つです。

授贈者とよく相談を

贈与を考えている相手との相談も欠かさずに行うことが重要です。
贈与は贈与する側とされる側が存在する以上、片方の考えだけを尊重してうまく収めることは難しいですし、それは後々の後悔につながる可能性にもなります。

満足のできる選択を行うために、関係者全員でよく相談をすることが大切です。

まとめ

終活で贈与を考えているという人の多くは、節税のための生前贈与を考えているというパターンでしょう。
単純に相続税と贈与税の基礎控除額や税率などを比較すると、圧倒的に相続税の方が負担は軽いですが、上手に他の関連制度などを利用することで、生前贈与を節税に使うことは不可能ではありません。

素人の知識ではとても難しいので、よく専門家と相談をして進めていきましょう。