はじめに
平均寿命の長期化によって誰しもが「人生100年時代」という言葉に当てはまるようになりました。
一方で老後の問題は健康面に限ったものではなく、老後の生活費などお金の問題についてもしっかりと考えなければいけません。
そこで今回は老後の安定した生活に必要な「資産寿命」という考え方について解説していきます。
資産寿命とは
資産寿命とは「老後の生活を営んでいくにあたって、これまで形成してきた資産が尽きるまでの期間」の事であり、2019年に金融審議会市場ワーキング・グループが提出した報告書によって社会的に注目されるようになりました。
この報告書では国が公的年金の限界を認めた上で個人による資産寿命の伸ばし方や必要な心構えなどについて提案を行っている事から、今後の老後生活において資産寿命は欠かせない要素となる可能性があります。
社会を取り巻く環境変化
上述した通り、国は公的年金のみでは老後の生活が安定しない事を正式に認めました。つまり何の対処や方策も取らずに老後を迎えると資産不足によって生活が困窮する可能性が非常に高いという事になります。
これは平均寿命の長期化によって日本人が今まで以上に長い間生きるようになったためであり、それに伴う生活費や介護費などが公的年金ではカバーしきれなくなっています。
また社会保険や年金制度のあり方にも限界が見えてきています。というのも少子高齢化によって社会保険料を払う若者とそれを活用する高齢者の人口バランスが取れていないので、今後は高齢者の負担額も次第に増えていくと予想されています。
資産寿命の重要性
では具体的にどの程度の金額が不足しているかというと、高齢者世帯で夫婦どちらも無職の場合は1ヶ月ごとに約5万円が不足するとされています。
なので老後から20~30年程度の人生が残っているとすると、総額で1,300~2,000万円程度が追加で必要になってきます。もちろん、この数字は平均的なものであり個々人のライフスタイルや寿命などによって変わってきます。
ただ実際に公的年金のみでは安定した老後を迎える事が出来ない事は事実として指摘されているので、しっかりと自分自身で資産寿命を伸ばす事が大切になってくるでしょう。
資産寿命の伸ばし方
資産寿命の伸ばし方については上述の報告書の中で提言されているだけでなく、この報告書を受けて各保険会社や金融機関なども独自の調査や提案を行っています。
家計の見直し
まず資産寿命を伸ばす上で大切となってくるのが、家計の見直しです。
例えば老後は労働による収入が見込めませんが、その状態で以前と同じような生活をしていると出費の方が大きくなってしまいます。なので日々の支払いやお金の管理を見直す事によってなるべく出費を少なくする必要があります。
キャッシュレス決済への移行
家計を見直す際にはキャッシュレス決済へ移行する事をオススメします。
キャッシュレス決済だと利用明細を見ればお金の使途や金額がすぐに分かりますし、ポイントによる還元もあるので現金払いよりもメリットが大きいです。
またキャッシュレス決済はセキュリティによって保護されているので、現金よりも詐欺に対して強いですし、実際の支払いには指紋やパスワードによる認証が必要なので仮に紛失や盗難が発生しても誰かに悪用される危険性は低いです。
格安スマホへの乗り換え
高齢者の方だと大手キャリアのスマホや通信プランを契約している人が多いですが、それをMVNOが提供している格安スマホや格安SIMに乗り換える事によって毎月数千円程度を節約する事が出来ます。
大手キャリアと違いショップでの対応を受けれる所は少ないですが、通話やメッセージなどでしか使用しない場合は問題ないでしょう。
不用品の売却
もし家に普段使わないような不用品がある場合は、フリマアプリや買取業者を使って売却するようにしましょう。
今はフリマアプリを使えば簡単に個人間で売買が出来ますし、そうやって不用品を減らす事によって一時的な収入になるだけでなく、遺品の整理の手間も軽くする事が出来るのでオススメです。
金融商品の活用
資産寿命を伸ばすためには単純にお金を貯めるだけでなく、様々な金融商品を活用する事によって資産構成を多様にしなければいけません。
例えば資産が普通預金のみだとインフレが起きれば資産価値は目減りしますし、株式についても不景気やその他要因によって大きく価値が減る危険性があります。
つまり不測の事態による影響を最小限に留めるためには、自分の資産を色々な所へ分配する必要があります。
外貨預金
普通預金以外の資産構築としては外貨預金があります。
外貨預金は一般的な円預金よりも高金利な事が多いですし、為替を上手く活用すれば為替差益として大きく利益を出す事も十分に可能です。
ただ逆に為替によって損失が出る可能性もあるので、しっかりと相場を見ながら長期的に積み立てていく事が大切です。
つみたてNISA
NISAとは「少額投資非課税制度」の事であり、つみたてNISAの場合は年間40万円まで非課税で投資を行う事が出来ます。
また投資信託を選択すれば実際の投資活動は自分以外の専門家やファンドが行ってくれるので、投資の知識が少なくても問題ありません。
iDECO
iDECOは個人型確定拠出年金という私的年金制度になります。
掛金や運用方法が自分で選べるだけでなく、税制上の優遇も受ける事が出来るので、老後のための資産形成として人気になりつつあります。
こちらもつみたてNISAと同じく、投資信託などによって投資活動を外部委託する事が可能です。
健康寿命の長期化
資産寿命は支援や介護を必要としない期間の事である健康寿命とも密接に関係しています。
というのも支援や介護が必要になれば、その分追加で介護費や施設への入居費などが発生しますし、日常生活にも様々な制限がかかるので出費は増えてしまいます。一方で健康寿命が長くなれば定年後も再雇用やアルバイトとして働く事が出来るので継続的な労働収入が見込めます。
なので健康的な食事や睡眠、適度な運動を心がけて健康寿命を伸ばす事は資産寿命を伸ばす事にも繋がるでしょう。
特殊詐欺への対策
資産寿命の長期化について考える際に忘れてはいけないのが特殊詐欺への対策です。
特に最近は一人暮らしの高齢者が増えている事から、そういった人達に狙いを付けた特殊詐欺が急増しています。また詐欺のやり口も典型的なオレオレ詐欺だけでなく偽造サイトやスキミングのような高度な手法も登場している事から、今まで以上に気を付ける必要があります。
しかし高齢者は「自分は絶対に騙されない」という思考に陥りがちですし、判断力が低下している状態だと詐欺に気が付く事も難しいので周りの人間が代わりにしっかりと注意しなければいけません。
もし自分の親や親戚が一人暮らしをしている場合は、成年後見制度などを上手く活用する事によってお金に関する手続きを自分に委任してもらう事も出来るので一度検討してみると良いでしょう。
まとめ
今回ご紹介した通り、老後の生活を安定させるためには資産寿命をしっかりと伸ばす事が重要になってきます。
そのためには資産構築の多様化や生活スタイルの変化など色々な事に取り組まなければいけませんが、焦って間違った選択をしてしまっては本末転倒なので落ち着いて計画的に進めるようにしましょう。
また専門的な知識を持っていない場合は税理士やファイナンシャルプランナーのような専門家に相談する事をオススメします。