金銭負担軽減のための「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」とは

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はじめに

高齢者の世帯では、介護費や医療費による経済負担の増加が大きな問題になっています。

そのため国は、補助のために「高額介護サービス費」と「高額医療・高額介護合算制度」を制定しています。これは介護の費用が高額になった場合と、介護と医療の費用を合算した場合に、一定の払い戻しを受けられる制度です。

自己負担分はありますが、一定の払い戻しによる補助を受けることができるため、上手く活用することで家計の負担を減らすことが可能です。

「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」とは

高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度とは、どのような制度でしょうか。ここでは、高額介護サービス費の対象者と、精度の対象外になる出費の種類、高額医療・高額介護合算制度の対象者と費用負担などについて説明します。

高額介護サービス費とは

高額介護サービス費は、1カ月の介護保険サービス及び総合事業(介護予防・生活支援サービス)にかかった利用者負担額(1割、2割または3割)の合計額が、一定の上限額を超えた場合、申請を行うことで超過分の払い戻しを受けることができる制度です。

  • ①高額介護サービス費の対象者は、介護保険の要支援・要介護の認定者です。
  • ②介護予防・生活支援サービス事業の一部、施設サービスなどの食費・部屋代など、特定福祉用具購入、住宅改修の費用は高額介護サービス費の対象外となります。
  • ③住民税世帯非課税の方については、施設サービスなどの居住費・食費に関する負担を軽減する制度があります。

高額医療・高額介護合算制度とは

高額医療・高額介護合算制度は、医療保険と介護保険の双方を利用する世帯の自己負担額が限度を超えた場合に、超過分の金額が支給される制度です。

制度を利用するには、医療保険と介護保険の両方使っていないといけないので、1年間で利用したのがどちらか片方だけというケースには適用されません。

  • ①高額医療・高額介護合算制度の対象者

    ・医療保険、介護保険サービスの両方を利用していること。

    ・同一の医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療制度、会社の健康保険など)に属する世帯であること。

  • ②費用負担

    医療保険者・介護保険者の双方が、自己負担額の比率に応じて負担し合う。

「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」の現状

高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度は、現状ではどのようになっているのでしょうか。ここでは、それぞれの制度の現状について説明します。

高額介護サービス費の現状

この項では、高額介護サービス費の現状として、個人・世帯の自己負担上限額、介護保険の介護サービス利用費の自己負担割合、利用の流れ,
申請期限、算出例、介護保険のサービス内容を説明します。

  • ①高額介護サービス費の個人・世帯の自己負担上限額

    ・生活保護の受給者の方など 15,000 円(個人) *1

    ・世帯全員が住民税非課税、老齢福祉年金の受給者の方 15,000 円(個人) 24,600 円(世帯) *2

    ・前年の合計所得金額 *3と課税年金収入額の合計が80万円以下の方、前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円を超える方 24,600 円(世帯)

    ・住民税課税世帯の方 44,400 円(世帯)※2

    ・医療制度における【現役並み所得者、課税所得145万円以上の方】相当の方がいる世帯の方 44,400 円(世帯)

    *1「個人」とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。

    *2「世帯」とは、住民基本台帳の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指します。

    *3「合計所得金額」とは、税法上の合計所得金額(前年の収入金額から必要経費などに相当する額を差し引いた金額で、税法上の各種所得控除や上場株式等の譲渡損失に係る繰越控除などは行う前の金額)から、土地や建物の売却に係る短期・長期譲渡所得の特別控除額を差し引いた金額をいいます。

  • ②介護保険の介護サービス利用費の自己負担割合

    介護サービスを利用したときは、利用者の負担能力に応じて、かかった費用の1割(所得の高い方は2割または3割)を自己負担します。負担割合は、要支援・要介護の認定者に対して交付される「介護保険負担割合証」で確認することができます。

  • ③利用の流れ

    高額介護サービス費などの支給を受けるには、区市町村の役所に申請する必要があります。また、2回目以降払戻しに該当する場合には、原則、初回申請した口座に振り込まれます。

  • ④高額介護サービス費の申請期限

    介護サービスを利用した月の翌月の初日から2年以内と決められていて、それを過ぎると無効になります。

  • ⑤高額介護サービス費の算出例

    ・同一世帯に介護サービス利用者が1人だけ

    同一世帯にサービス利用者が1人だけの場合は、自己負担額から自己負担上限額をマイナスした額が、高額介護サービス費として支給されます。

    (例1) 自己負担の上限が15,000円の方が、1カ月に20,000円の自己負担をした場合

    20,000円(自己負担額)-15,000円(自己負担の上限額)=5,000円

    高額介護サービス費として戻ってくるのは5,000円です。

    (例2) 自己負担の上限が44,400円の方が、1カ月に25,000円の自己負担

    25,000円(自己負担額)−44,400円(自己負担の上限額)=-19,400円

    自己負担額が自己負担の上限以下に収まっているため、高額介護サービス費の支給はありません。

  • ⑥介護保険のサービス内容

    介護保険のサービスには、「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」があります。

    a. 居宅サービス

    ・自宅などを訪問してもらうサービス(訪問介護訪問看護、訪問入浴介護など)

    ・施設を利用するサービス(通所介護、通所リハビリテーションなど)

    ・介護をする環境を整えるサービス(福祉用具貸与、福祉用具購入費の支給など)

    b. 施設サービス ※要介護と判定された人のみ利用できます。

    ・介護老人福祉施設・介護老人保健施設など

    c. 地域密着型サービス

    ・小規模多機能型居宅介護 ・認知症高齢者グループホームなど

高額医療・高額介護合算制度の現状

高額医療・高額介護合算制度について、医療保険では別途高額医療費制度があり、医療の側では「高額介護合算療養費」という用語が一般的なので、以下それを用います。

  • ①高額介護合算療養費の計算対象となる自己負担限度額

    制度を利用できる自己負担限度額は、年齢や世帯の所得によって細かく決められています。後期高齢者医療制度と介護保険の自己負担を合算した額の場合は、所得が一般区分で、年額56万円が基準目安になっています。

    医療保険各制度や所得・年齢区分ごとの自己負担限度額を踏まえて細かく設定されています。

    参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0724-1b.pdf

  • ②高額介護合算療養費の利用方法

    ・高額介護合算療養費の算定期間

    算定期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの期間で、7月31日時点で加入している医療保険に対して申請します。

    ・申請方法

    高額介護合算療養費制度の申請には、「申請書」と「自己負担限度額証明書」を担当の区市町村役場窓口に提出することが必要です。

  • ③高額介護合算療養費の計算対象にならない費用

    高額介護合算療養費で計算対象とならない費用には、以下のようなものがあります。

    ・医療保険―月単位で支給される高額療養費

    ・介護保険―入院入所時の居住費や食事負担、差額ベッド代など

    医療費と介護費を合算して計算する高額介護合算療養費制度は、同じ世帯の家族でも同一の医療保険に加入していないと合算の対象にはなりません。たとえば、祖母が後期高齢者医療制度に加入し、その娘・息子が会社の健康保険にそれぞれ加入している場合には合算できないので注意が必要です。

「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」の今後

自己負担額や収入基準などの規定は今後変更される可能性は高いので、区市町村が提供している介護保険や医療保険の資料を定期的にチェックする必要があります。

特に介護保険は、各自治体により内容が大きく異なるため、自分が住んでいる自治体のHPなどにはしっかり目を通すようにしましょう。

「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」利用のために必要なこと

高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度を実際に利用する際は、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは、申請の手順や必要な書類を説明します。

(1) 区市町村の窓口と必要書類の確認
高額介護サービス費及び高額介護合算療養費の支給を受けるには、区市町村の役所に申請する必要があります。そのため自分が住んでいる区市町村の窓口を調べ、資料を集める必要があります。

自治体により必要書類が異なる場合がありますので、各自で確認してください。

(2) 高額介護サービス費と介護認定
お住まいの区市町村で介護認定を申請し、要支援や要介護の認定を受ける必要があります。

(3) 介護保険介護サービス費の自己負担割合の確認
介護サービスを利用するとき、利用者の負担能力に応じて、かかった費用の1割から3割を負担します。負担割合は、要支援・要介護の認定者に対して交付される「介護保険負担割合証」で確認することができます。

(4) 高額介護サービス費の上限額の確認
高額介護サービス費の上限額を、自分の収入基準に合わせて確認します。

(5) 高額介護合算療養費の計算対象となる自己負担限度額の確認
高額介護合算療養費を利用できる自己負担限度額について確認します。金額は、年齢や世帯の所得によって細かく決められています。

まとめ

ここまでの「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算制度」についての説明の要点をまとめます。

(1) 高額介護サービス費とは、1カ月の介護保険サービス及び総合事業(介護予防・生活支援サービス)にかかった利用者負担額(1割、2割または3割)の合計額が一定の上限額を超えた場合、申請を行うことで超過分の払い戻しを受けることができる制度です。

(2) 高額介護サービス費では、収入により個人・世帯の負担上限額が決められています。住民税課税世帯の方、医療制度における現役並み所得者相当の方がいる世帯の方では44,400 円(世帯)などの自己負担上限額が決められていますが、上限額を超えた支払い額が高額介護サービス費として支給されます。

(3) 高額介護合算療養費とは、医療保険と介護保険の双方を利用する世帯の自己負担額が限度を超えた場合に、超過分の金額が支給される制度です。

(4) 高額介護合算療養費の対象者
・医療保険、介護保険サービスの両方を利用していること
・同一の医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療制度、会社の健康保険など)に属する世帯であること

(5) 高額介護合算療養費の計算対象となる自己負担限度額制度を利用できる金額は、年齢や世帯の所得によって細かく決められています。