自分自身で判断するのが困難な人のための「日常生活自立支援事業」

介護

「日常生活自立支援事業」とは

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な人が地域において自立した生活が送れるよう、福祉サービスなどを行うものです。都道府県と指定都市の社会福祉協議会が、利用者との契約に基づき福祉サービスの利用援助などをします。

高齢者など自分自身で判断するのが困難な人が、毎日の暮らしの中で、不安や不便、困ったことが生じた場合に、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理の手伝いをして安心して暮らせるようにサポートしてくれます。

日常生活自立支援事業の対象者

日常生活自立支援事業の対象者は、次のいずれにも該当する人です。

・判断能力が不十分な人
・認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人
・事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人

日常生活自立支援事業の実施主体

日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県と指定都市の社会福祉協議会ですが窓口となるのは、市町村、特別区の社会福祉協議会です。

社会福祉協議会とは、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織で社会福祉法人です。民間組織ではありますが地方自治体と一体となって福祉実務を行う公益的な団体です。

実務は各地域の社会福祉協議会で働く「専門員」「生活支援員」が担い、契約者のもとを訪問して契約者をサポートします。

日常生活自立支援事業のサービス内容

日常生活自立支援事業のサービスを利用する際には、専門員が利用希望者を訪問し、困りごとや悩みごとについて相談を受けます。

そして、本人の希望をもとに適切な支援計画を作成し契約。また、契約内容・支援計画にそって生活支援員が定期的に訪問し、福祉サービスの利用手続きや預金の出し入れなどをサポートします。

主なサービスとして次のものがあげられます。

福祉サービス利用の支援

福祉サービスとは、介護保険制度などの高齢者福祉サービス、障害者自立支援法による障害福祉サービスなどを指します。

高齢者福祉サービスでは、ホームヘルプサービスやデイサービス、食事サービス、入浴サービスなど、障害者福祉サービスでは、就労支援や外出支援サービスなどがあります。

これらに対して、安心して利用するための具体的支援は以下の通りです。

・福祉サービスの利用に関する情報の提供、相談
・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

生活に欠かせないお金の出し入れの支援

お金の出し入れの支援では次のようなものが含まれます。

・福祉サービスの利用料金の支払い代行
・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また預金の解約の手続き

日常生活に必要な事務手続きの支援

日常生活に必要な事務手続きの支援は、次の通りです。

・住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
・住民票の届け出等に関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度など)の利用手続き

通帳や証書などの保管支援

利用者の希望に応じて、大切な通帳や証書などを安全な場所で預かってくれます。預かってもらえるものは以下の通りです。

・年金証書
・預貯金通帳、銀行印、カード
・証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)
・実印
・その他実施主体が適当と認めた書類、マイナンバーカードなど

また、預かってもらえないものは次のようなものです。

・宝石、貴金属類
・書画、骨董品
・株券、小切手

日常生活自立支援事業の利用手続きの流れ

日常生活自立支援事業を利用するためには、まず、市町村・特別区の社会福祉協議会に連絡します。手続きの流れは次の通りです。

相談・打ち合わせ

まず利用希望者は、実施主体に対して申請(相談)を行います。

実施主体は、利用希望者の生活状況や希望する援助内容を確認するとともに、本事業の契約の内容について判断し得る能力の判定を行います。

契約書、支援計画の作成

実施主体は、利用希望者が本事業の対象者の要件に該当すると判断した場合には、利用希望者の意向を確認しつつ、援助内容や実施頻度等の具体的な支援を決める支援計画を策定し、契約が締結。

なお、支援計画は、利用者の必要とする援助内容や判断能力の変化等利用者の状況を踏まえ定期的に見直されます。契約が無事に終わると、サービスを利用できるようになります。

日常生活自立支援事業の利用料

実施主体が定める利用料を利用者が負担します。各地区の社会福祉協議会により価格は異なりますが、1回あたり利用料・平均1,200円(1時間程度)で交通費別途、資料保管費・年間3,000円程度です。

ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については、無料となっています。

日常生活自立支援制度利用のための準備

制度を利用できる人は、先述した、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人、および、事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人です。

障害者手帳や認知症に関する医師の証明などはなくても構いません。実際に利用する際は、以下の準備をしましょう。

市町村または特別区の社会福祉協議会の連絡先を調べる

市町村または特別区の社会福祉協議会の連絡先を調べます。窓口は市町村または特別区で都道府県の社会福祉協議会ではありません。

社会福祉協議会は全国すべての市区町村に設置されており、連絡先は各社会福祉協議会のウェブサイト等に掲載されています。

社会福祉協議会への相談

窓口の社会福祉協議会に連絡します。本人以外でも、家族など身近な方でも構いません。

相談・打ち合わせは、専門的な知識を持った担当者(専門員)が自宅や施設、病院などを訪問し相談に乗ります。相談にあたっては、プライバシーに配慮し秘密は守られます。

契約書、支援計画の作成

専門員から困っていることや希望を聞かれ、その後、契約内容・支援計画を提案され契約書が作成されます。

まとめ

社会福祉協議会は、社会福祉法に基づきすべての都道府県・市町村に設置され、地域住民や社会福祉関係者の参加により、地域の福祉推進の中核としての役割を担い活動を行っている非営利の民間組織です。

日常生活自立支援事業は、都道府県社会福祉協議会が市区町村社会福祉協議会と連携して実施しているものです。市区町村社会福祉協議会は、高齢者や障害者の在宅生活を支援するために、ホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスをはじめ、さまざまな福祉サービスを実施。地域の多様な福祉ニーズに応えるため独自の事業に取り組んでいるので、状況に応じて活用しましょう。

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