相続での賢い節税方法②「相続財産の評価額を下げる不動産活用」

この記事は約7分で読めます。

節税対策「不動産」

相続税対策には「不動産」「生前贈与」「生命保険」の3つの主な対策があります。
中でも大きく財産の評価額を下げたいのであれば、不動産の有効活用が考えられます。

相続では、現金は相続が出来ても評価額はそのままです。
しかし、不動産については、土地および建物それぞれに税の評価減の仕組みがあります。

今回は、これらの不動産に関する相続税の節税対策を紹介します。

相続財産の評価額を下げる不動産活用とは

相続対策では不動産活用が有効で、まとまった現金がある人は、不動産を活用して相続税評価額を下げることが可能です。

新たに賃貸経営用の不動産を購入する不動産投資も、更地を持ちその土地に賃貸用の建物を建て不動産賃貸事業を行うのも、いずれも有効な相続税対策になります。

ただし、不動産は節税効果のある物件の要件があるため注意が必要です。
また、相続財産の中で多額の資産である不動産には、金融資産と異なる大きな特殊性があります。

土地の評価方法の特殊性

不動産価格の中心を占める土地の価格の評価方法については次の4つがあります。

1物4価と言われる、実勢価格、公示価格、固定資産税評価額、相続税評価額です。
相続税に関わるのは相続税評価額で路線価方式が中心となります。

実勢価格

実勢価格とはいわゆる時価で、土地の実際の売買の際の相場の価格です。
売主や買主の都合、その他市場の状況などが総合的に反映されて実勢価格を形成します。

公示価格

公示価格とは、国土交通省が公表する土地の価格です。
これは税金を計算する際や売買取引を行う際の参考となる金額です。

固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、毎年1月1日に土地の所有者に対して市町村より課税される固定資産税の計算のもととなる金額です。

相続税評価額(路線価など)

路線価とは、相続税を計算する際に使用される道路の金額です。
国税庁が毎年7月頃に公表している土地の価格で、市街地の道路に面した土地の1月1日時点の価格です。

土地の相続税評価額は、路線価による「土地価格=路線価×面積」でおおよそが計算できます。
路線価は一般的に、取引価格の相場である実勢価格の約70~80%と言われています。
つまり、手元の現金預金を使って土地を購入することで、相続税評価額を20~30%圧縮することができることになります。

路線価がない場所もありますが、この場合は倍率方式というもので計算し、固定資産税に対して各税務署で設定している一定の倍率をかけて計算します。

建物の評価方法

建物については、固定資産税評価額に基づいて計算されます。
築年数等にもよりますが、建築費のおよそ60~70%程度となるのが一般的です。

つまり、建物を建てることで、現金預金として資産を持っている場合と比べて約30~40%、相続税評価額を圧縮することができることになります。

相続財産の評価額を下げる不動産活用とは

不動産を活用して相続税評価額を下げる方法は以下の通りです。

現金預金を不動産に変える

相続財産にまとまった現金預金がある場合は、土地やアパート、マンションなどを購入し不動産化することで相続税評価額を下げることができます。
相続税評価額を算出する路線価は実勢価格の70~80%になるため、現金を不動産・土地に換えることで評価を圧縮することが可能です。

建物を貸家にする

相続財産に更地がある場合は、その土地にアパートやマンションを建てることで貸家建付地となり、土地の相続税評価額が下がります。

また、通常であれば建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じ金額ですが、所有している建物を賃貸物件として第三者へ貸し出している場合「借家権割合」分が減額されます。
この借家権割合は全国一律30%と決まっているため、賃貸物件である建物は自用の相続税評価額から30%下がります。

建物を貸家として活用することで、固定資産税評価額に借家権割合分がさらに減額され、貸家の土地・建物の相続税評価額は時価よりも大幅に下がるというわけです。

小規模宅地等の特例を利用する

小規模宅地等の特例とは、故人が居住していた土地、事業用の土地、貸していた土地において一定の面積までの部分について、相続税の課税価格に算入すべき価額の一定の割合を減額する制度です。

被相続人と一緒に住んでいた土地の相続であれば「小規模宅地等の特例」が適用され、330平方メートルまでは相続税評価額が80%減額されます。
ただし、対象は土地のみです。

特例の対象となる土地は「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」の4つです。

不動産投資の現状

不動産を活用した相続税対策の中で新たに賃貸用不動産を購入する不動産投資があります。
不動産投資では、多額の資金を用意し相続税の節税対策のためだけに物件購入してしまうと、賃貸経営では空室率が上がるとインカムが減り、融資を受けて投資する場合は危険性が出てきます。

また、物件選択で誤ると不動産の資産価値そのものが下がります。

ワンルームマンション投資

賃貸用ワンルームマンションは、時価と相続税評価額の差が大きい財産のため相続税の節税効果があります。
交通のアクセスのよい場所、利便性のある場所や立地を考慮する必要がありますが、相対的に少額投資から可能です。

また、分譲マンションは区分所有方式のため、一棟の建物の中の1部屋という位置づけとなり、土地の所有権割合が低く相続税の評価額が減額されます。

アパート・マンション建設

更地を所有している場合に、賃貸用のアパート・マンション建設をして賃貸経営を行います。
貸家建付地となり、土地の相続税評価額と建物の課税評価額も貸家となり下がります。

小規模宅地等の特例効果を活用

小規模宅地等の特例が適用できる場合、330㎡まで80%も土地の評価を減額できるため、節税効果を最大限に活かすことができます。
路線価があまり高くない郊外の自宅に住んでいる人が都心部等の路線価が高い地域に引っ越しをし、小規模宅地等の特例を最大限に生かして相続税を節税することもできます。

小規模宅地等の特例の適用には要件が必要です。
小規模宅地等の特例は配偶者・同居相続人などが自宅を守るための特例で、主に以下の3つの要件のいずれかに該当すれば適用対象となります。

  • ①配偶者が相続すること
  • ②同居している相続人が相続すること
  • ③配偶者も同居人もいない場合に、借家に3年以上住んでいる相続人が相続すること

相続財産の評価額を下げる不動産活用の準備

相続財産の評価額を下げるために、不動産活用の準備に何をを行っておくべきかを見ていきます。

現在保有している不動産がある場合の税額確認

まず、固定資産税の確認をしておく必要があるでしょう。
税務署からくる固定資産税・都市計画税の納税通知書で不動産課税評価額を確認します。

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0をかけたものとなるため、建物の相続税評価額=固定資産税評価額です。

また、相続税路線価の確認も必要です。
所有する土地の路線価図は国税庁のホームページで確認します。

国税庁のホームページより目的の地域の路線価図を探すことができたら、実際に対象の土地がある場所を探し、その土地が面している道路を確認します。
道路ごとに1㎡当たりの路線価が設定され、金額は千円単位の数字で示されています。
路線価方式の土地価格計算方法は「路線価×面積」となります。

相続対策の基本の検討

相続対象の遺産総額から、非課税財産や被相続人の負債などを差し引き、現金・預貯金・有価証券などの遺産総額の概算を大枠で把握します。

次に相続税が発生するかどうかですが、正味の遺産総額が、基礎控除額の金額以下であれば相続税は発生しません。
しかし、基礎控除額よりも高い場合には、遺産総額から基礎控除額を引いた残りの金額(課税遺産総額)に対して相続税が課税されます。

相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
相続税が発生する場合には、相続税対策を検討する必要性が出てきます。

土地を所有している場合の不動産有効活用の検討

土地の中に更地がある場合は、その土地にアパートやマンションを建てることで貸家建付地となり土地の相続税評価額が下がるため、土地の面積、立地などから賃貸用の物件として活用できるかどうかを検討します。

面積により戸数が設定され、立地条件も含めて賃貸住宅としての経営の可能性を検討します。
必要に応じて、アパート建設メーカーや不動産会社の見積り、収支計画資料を取ります。

不動産投資物件購入を新たにする場合

マンション投資などに関する基礎検討をし、固定資産税や相続税の評価についても知っておく必要があります。
特に物件の選択について検討が必要です。

小規模宅地等の特例の検討

所有する物件に小規模宅地等の特例が活用できるかどうか検討します。
小規模宅地等の特例が適用には、配偶者が相続すること、同居している相続人が相続すること、配偶者も同居人もいない場合に、借家に3年以上住んでいる相続人が相続することのいずれかの要件適合が必要です。

まとめ

相続税対策で、大きく財産の評価額を下げる場合、不動産の有効活用が挙げられます。

しかし、不動産投資では賃貸アパートなどの建設が有力ですが、建築の老朽化に伴う空室率の上昇も考えなくてはなりません。
マンションの購入投資の方がやや老朽化リスクは少ない面がありますが、空室化のリスクは絶えずあるでしょう。

不動産賃貸経営も需給バランスから簡単ではない時代だと言えるため、節税対策としては慎重に行うべきでしょう。

終活と相続のまどぐち