相続手続きに役立つ家系図

相続

相続手続きに役立つ家系図とは

家系図づくりは、終活でも注目されている分野です。自分の先祖を知ることは、自分のアイデンティティを知ることです。
NHKテレビの「ファミリーヒストリー」という番組は、戸籍にとどまらず、NHKの調査取材体制で、資金と時間をかけて有名人のルーツを調べるので興味がわきます。

相続においては、法定相続人の確認が重要です。そのため、相続の手続きでは戸籍での相続人の確認証明が必要です。
被相続人と相続人の関係を示す家系図を作る目的やメリット、家系図の作成の仕方を紹介します。
相続では、法定相続人の確認が重要です。家系図はどのように役立つのでしょうか。

家系図を作る目的・メリット

ここでは、家系図を作る目的やメリットを考えてみます。

自分のルーツを知るため。

家系図を作る動機には様々なものがあります。自分のルーツを知るため、家族の歴史を子供や孫、その先の子供に引継いでいくため、という動機で作るケースが多いと言われています。

・終活での家系図作り
近頃は「終活」という言葉が定着して、注目を集める機会が多くなってきました。人生の終盤戦に向けて、自分が亡き後に子供が苦労しないように、身の回りのいろいろな物やことを整理してゆき、これまでを振り返って自分の人生をまとめていく作業が終活といわれるものです。

終活の中での新しいアプローチとして、家系図が注目されています。家系というのは、自分のルーツとなる「家」の文化、DNAに直結する大切なものです。人生を振り返りつつ、先祖とのつながりを意識する上でも、家系図作りは重要な作業といえるでしょう。

冠婚葬祭のため

家系図は、冠婚葬祭、特に葬式の時に、親戚関係はどうなっているのか、誰を呼ぶべきかなどの資料になります。遺族にとっては、忙しい葬儀の準備の時に、このような基礎資料が整理されていれば役に立ちます。

相続の時のため

相続で活用する家系図は、しっかりとした調査に基づいて作成しておくべきでしょう。
相続の場面では、自分が死んだ際、遺された家族は遺産相続の作業に取りかからなければなりません。誰が相続するのかという相続人の確定を急ぐ必要があります。そこで事前に家系図を作っておくと、予め相続人を把握でき、役に立ちます。

相続手続きと戸籍確認

相続では、亡くなった人の戸籍の確認が必要です。

死亡したら戸籍はどうなるのか?

人が亡くなると、亡くなった人の親族や同居人などは、その死を知った時から7日以内に地方自治体に死亡届を出さなければなりません。
死亡届が受理されると、亡くなった人は戸籍から除籍されます。

ただし、亡くなった人が戸籍筆頭者の場合は、他に在籍者がいてもその戸籍の筆頭者は変わらず、死亡が記載された上で、戸籍はそのまま置かれます。
在籍者全員が除籍された場合は戸籍自体が除籍され(消除と言う)、戸籍簿から除籍簿に移されます。

相続の発生、相続の効力

相続は、人が亡くなると同時に開始されます。亡くなった人を被相続人と呼び、相続の権利を持つ人を相続人と呼びます。相続とは被相続人の財産上の権利と義務の一切を相続人が引き継ぐことです。

なお、遺言による相続は、法定相続に優先する原則がありますので、遺言書の存在、内容の確認が最初に必要です。遺言書がない場合は法定相続になります。ただし、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議により法定相続とは異なる分割内容を決定できます。

法定相続人と戸籍

民法で定められた相続人のことを法定相続人と言います。相続の手続きの中心は、法定相続人を確認・確定することで、その身分を証明するために戸籍は必須です。

法定相続人の範囲は、被相続人の配偶者及び子、直系尊属、兄弟姉妹ですが、相続権には優先順位があります。なお、配偶者は生存していれば常に相続人になります。離婚して、戸籍上の配偶者でない場合は法定相続人にはなりません。

配偶者以外の親族の相続優先順位は、
第1順位―被相続人の直系卑属。子及び子が相続開始前に死亡している時などは孫(孫が志望している時はひ孫)となり、これを代襲相続と言います。子に関連して養子や胎児の規定もあります。

第2順位―被相続人の直系尊属。第1順位の者がいない場合に適用され、父母であり、父母が死亡している時は祖父母になります。親等が異なる場合はその近い者が優先します。

第3順位―被相続人の兄弟姉妹。第1順位、第2順位の者がいない場合に適用されます。子に関する代襲相続の規定が準用され、兄弟姉妹が死亡している場合はその子(甥、姪)までに限り範囲に含まれます。

法定相続人の確定のため、被相続人の出生から死亡までの戸籍をさかのぼる。

出生からの戸籍を遡り、途中の漏れがないように連続した形で親族関係などを調べます。出生からですから、被相続人の親の戸籍から必要になります。

戸籍は、新しく作られたり除かれたりし変動している場合が普通です。また、法律の改正により戸籍の改製もあります。

問題は、新しい戸籍に元の戸籍の記載内容がすべて移し替えられているわけではないことです。結婚で夫婦の新戸籍を作りますが、夫・妻の兄弟姉妹について記載されていません。また、改製後の戸籍では、その時点以前に死亡、結婚などで除籍された人についての記載がありません。

戸籍の見方

戸籍の見方には、次のようなものがあります。

戸籍事項欄

「改製日」と「改製事由」が表記されていれば、法律改正によりその戸籍がいつ作られたかがわかります。それ以前の戸籍も必要で、親の戸籍までさかのぼっていきます。改製になった元の戸籍のことを改製原戸籍と言います。

戸籍に記録されている者

亡くなった被相続人は除籍と表示されています。その他の人の除籍にも注目し、除籍謄本も必要な場合があります。

身分事項欄

亡くなった被相続人の死亡の「届出日」が記載されていて、死亡が確認できます。

法定相続情報証明制度とは

相続の手続きでは、戸籍謄本を始め多数の書類、証明書が必要になります。預貯金では金融機関ごとに同様の書類、証明書が必要で、相続人にとっては大変負担の大きい作業が必要です。このような状況を改善するために、法務省では法定相続情報証明制度を平成29年5月から開始しました。

法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)に出生から死亡までの戸除籍謄本等と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出すことにより、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付するものです。

相続人のその後の相続手続は、法定相続情報一覧図の写しを提出することにより、行政機関、銀行信用金庫などで戸除籍謄本等の書類を何度も出す必要がなくなります。

相続関係説明図

戸籍謄本などを集めて相続人調査をすれば、相続関係が明らかになります。家系図の中でも、法務局や裁判所などで必要となる、相続に関連した部分の家系図は相続関係説明図と言われます。

相続関係説明図とは、亡くなった人と相続人の関係が一覧になってまとまっている表です。被相続人を中心に親や子ども、兄弟姉妹や孫などの関係人を線でつないで記載し作成します。特に、相続関係が複雑である場合、相続人の関係が整理できてわかりやすくなります。

相続手続きに役立つ家系図の現状

家系図作成の第一歩は、戸籍の調査からはじまります。戸籍とは、本籍地や家族関係などを証明するものです。戸籍には、その人の本籍地、生年月日、婚姻日、死亡日、両親の名前、子供の名前などが記載されています。

法定相続人を確認するために戸籍を取る。

相続においては、法定相続人の確認、調査を目的とします。

①戸籍のとり方

a. 戸籍の種類
戸籍には種類があります。謄本(とうほん)と抄本(しょうほん)です。

謄本とは、その戸籍に載っている全部(全員)の情報を記載したもので全部事項証明書ともいいます。それに対し、抄本とは、その戸籍に載っている情報のうち、一部(一人)について記載されたもので、個人事項証明書ともいわれるものです。

相続手続きにおいては、被相続人と相続人との関係などを証明することが目的となるので、謄本を取得するということを基本とします。

b. 戸籍の名称
戸籍には、戸籍(現在戸籍)とともに改製原戸籍、除籍という古いものも含まれます。

民法の改正により、戸籍の記載事項が変更になったり、形式が変更になったりしますが、改製原戸籍とは、法律で改製される前の戸籍のことです。古い情報はそのまま残され、新しい戸籍には移動しない内容が含まれています。

除籍とは、結婚したり、亡くなってしまったり、本籍地を変更したりするとその戸籍から削除されることになり、これを除籍になると言います。戸籍が全員除籍になった場合、除籍謄本となります。

c. 被相続人の死亡時から出生まで遡って戸籍を取る。
亡くなられた人の戸籍を取得するには、死亡時から出生にさかのぼって行います。

死亡時の本籍地の記載のある戸籍から出生へ遡って行います。
また、本籍地自体が不明の場合は、最後の住所地で「住民票の除票」を「本籍地付き」で取得すれば本籍地は判明します。

実際に戸籍を取得するためには、その請求を本籍地のある役所に申請します。なお、戸籍の請求は郵送でも可能です。
その際、戸籍係に「出生までの戸籍が必要」と伝えると、被相続人についてその役所で保管されていれば年代の古い戸籍(改製原戸籍や除籍)も取得することができます。

戸籍を取得したら、その戸籍のうちの一番古い戸籍を確認し、その戸籍が被相続人の生年月日より先に作成されていれば、出生までの戸籍の取得ができたことになります。

もし、被相続人の生年月日より後に作成されているものであれば、その戸籍より以前の戸籍を取得し、生年月日より先に作成されている戸籍を取得するまで請求を続けます。
そして、この作業を繰り返し行っていくことで、出生までの戸籍を取得していきます。

d. 戸籍取得の手順
イ. 被相続人の住民票の除票を取得(被相続人の最後の本籍地を確認できます)
本籍地が分かっている場合はロから始める。↓

ロ. 被相続人の最後の本籍地のある役所へ戸籍を請求(出生まで遡って請求)
戸籍作成日が被相続人の生年月日より前であれば、取得完了となります。(入籍日→作成日の順に確認)

e. 郵送で戸籍を取り寄せる方法
郵送で戸籍を取り寄せるには、まず役所のホームページから請求書類を取得します。必要事項を記入の上、身分証明書や返信用封筒等の必要書類と共に郵送します。10日ほどで役所から戸籍謄本が返信されてくる仕組みになっています。

なお、戸籍は自分の直系尊属のみ取得が可能です。法令で決まりがあるので、傍系親族(兄弟姉妹や姪等)の戸籍は取り寄せできません。

家系図を書く。

  • ①家系図のルールと記号

    特に家系図に書き方の決まりはありませんが、一般的なルールと記号の意味について紹介します。

    1. 夫婦は二重線で結ぶ。
    2. 夫婦は夫を右に、妻を左に配置する。(縦系図の場合)
    3. 親と子は単線で結ぶ。
    4. 子が複数なら、右から年長順に並べる。(縦系図の場合)

      (例:鈴木家の父・聡、母・恵、長男、次男の場合)

      聡=恵

       |

      次 長

      男 男

    5. 複数の配偶者がいても二重線で結ぶ(配偶者の順序は古い順に右から左)。(縦系図の場合)
    6. 実子は単線、養子は二重線(縦)で結ぶ。(縦系図の場合)
  • ②縦系図、横系図

    世代の順に上から下へと繋がる家系図を、縦系図と呼びます。尊属(上の世代)が上、卑属(下の世代)が下に来るため、縦系図は直感的でわかりやすく多く用いられています。縦系図には、同じ世代を横並びになるように配置するルールがあります。

    縦系図に対し、古い順に右から左へと系図を伸ばしていく書き方を横系図と呼びます。横系図では世代の相関がわかりにくい点があります。

家系図の今後

親族図を作る場合に載せる範囲、戸籍を集めていく上での限界について説明します。

相続以外の目的での親族図を作る場合

家系図で、相続以外の目的での親族図を作る場合、どの範囲の家族まで載せるのかという問題があります。
・先祖・家族の属性
→載せるかどうかの判断基準が必要

a. 直系の先祖・子孫
→最も重要な関係なので必ず載せる。

b. 直系の先祖の兄弟姉妹
→基本的に載せる。

c. 直系先祖の兄弟姉妹の配偶者・子供
→相続に関係する場合は基本的に載せる。親族関係では直接面識のある同世代の従兄弟は載せたい。

d. 実子と養子
→養子、実親子とも載せるが表記の区別はする。

ルーツ探しで戸籍が追えなくなったら

明治期の戸籍など、古い戸籍は廃棄処分されている可能性があります。

また、戦争で被災し消滅している場合も多くあります。その場合は戸籍以外の方法でルーツ探しをする必要が出てきます。

歴史のある家なら、古文書などの資料を図書館、郷土資料館などで調べます。また、先祖のお墓がわかればお寺の過去帳などで調べることができる場合もあります。

家系図作成のための準備

この項では、実際に家系図を作る場合に必要な準備を説明します。

法定相続人の整理

現状で分かる範囲の、被相続人と相続人の関係を整理しておきます。

戸籍の入手

相続に直面していれば先述したようになりますが、そうでないならば「ルーツ探し」として行うことになります。亡くなった祖父母などから遡って戸籍を調べます。

また、相続では子が親から知らされていなかった相続人の存在を戸籍調査で初めて知る場合もあります。例えば、親が再婚し前の配偶者との間の子どもや、婚姻を経ずに生まれ認知した子どもなどです。

戸籍調査の注意点

戸籍は、1948(昭和23)年を境にその記載方法が大きく変わりました。

それ以前の相続は、家督相続制度でした。家督相続とは、次に戸主となるものが単独相続するという制度です。つまり、子や兄弟の人数に関係なく、戸主となるもの(主に長男)が家の財産すべてを引き継ぐということです。

そのため、戸籍の記載方法も、「母」「姉」「弟」等というように戸主を中心に記載されていました。また、戸主の欄に「~に因り家督相続〇年△月日受附」「~分家届出○年△月□日受附」などの記載があり、その日付がその戸籍の作成日となります。

その後の民法の改正により家督相続制度が廃止され、1948年に戸籍法の改正も行われ、戸籍の記載方法が現在のように「一つの夫婦、及びこれと氏を同じくする子」となりました。

家系図をパソコンで作成する方法

自分でもパソコンで家系図を作ることができます。無料で配布されているテンプレートもあります。

まとめ

この記事で説明した、家系図づくりのメリットについてまとめます。

家系図づくりのメリット

家系図を作ると、相続を始め、冠婚葬祭、自分のルーツ探しの資料として役に立ちます。また、子や孫へと伝えていく重要なツールとなります。家制度はなくなっても、血がつながってきた歴史は自分自身のアイデンティティを知る上で重要です。

相続での家系図は相続人の整理に役立つ。

相続では、まず相続人の確認が必要です。また、特に相続人が多い場合や、複雑な家系の場合は整理が必要で、家系図があると一目でわかるメリットがあります。

相続人の確認のため、戸籍を被相続人の出生まで遡ることが必要なこと。

被相続人の相続人が誰かを確認するために、被相続人の出生の時までの戸籍を遡ることが求められます。遡るためには、戸籍では現行のもの以外に、古い戸籍の改製原戸籍、除籍まで調べる必要があります。

相続に関連した家系の1種に、相続関係説明図というものがあること。

法務局や裁判所などで必要となる相続に関連した部分の家系図を、相続関係説明図と呼んでいます。相続関係説明図の利用目的は、相続手続き上の手間を省くためです。

また、相続手続きの中で相続関係説明図を添付すると、提出した戸籍謄本の原本を還付してもらえ、再度別の目的のため使うことができます。

家系図づくりの一般的なルールや記号

家系図づくりの方法に特別の決まりはありませんが、一般的なルールや記号はあります。それらを使ってまず手書きで整理し、パソコンなどを使って清書するのが良いでしょう。パソコンで使う家系図づくりのテンプレートもあります。

相続手続きに役立つ家系図作成の3つのポイント

相続の手続きの際に役立つ家系図を作るために大切なポイントを3つ挙げます。

家系図は、親族関係を整理するもの

家系図は、親族関係を整理して子や孫に伝えるツールであり、相続や冠婚葬祭の際に役立ちます。

相続では相続人確認のため、被相続人の戸籍を出生まで遡ることが必要です。

被相続人の戸籍を出生まで遡ることは、複数の戸籍を取り寄せることが必要で、かなりの手間がかかります。まず、被相続人の本籍地の役所から戸籍謄本を取るところから始めます。本籍地が遠隔地の場合は、郵送で取り寄せることができます。

家系図は縦にまとめる縦系図が中心

家系図には縦系図と横系図があります。夫婦、親子関係を示す記号の書き方があり、それさえ知れば簡単にまとめることができます。

先祖を遡って見るには縦系図が見やすく、夫婦、親子、兄弟姉妹などの関係を示す書き方を知ればまとめやすいでしょう。

また、パソコンのテンプレートも活用すると良いでしょう。

戸籍は、兄弟姉妹が多い場合、父母の兄弟姉妹が多く、自分から見ればおじ・おばが多い場合、兄弟姉妹が亡くなって代襲相続がともなう場合、親が再婚で前配偶者との間に子がいる場合、婚外子がいる場合などは、人間関係が複雑で、家系図の意味が大きくなります。

もちろん、離婚や再婚がともなう場合は、一般的な家系図では書きにくいと思いますが、戸籍での相続人確認では必要です。

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