意外と知られていない「喪主と菩提寺の間で生じやすいトラブル」について

葬儀・仏事

はじめに

葬儀や法要のときには菩提寺の僧侶に来てもらい、お経をあげてもらいます。僧侶と揉めることなどないだろうと思われがちですが、実際にはトラブルがいくつか生じるケースもあるのが事実です。

そこで本記事では、どのようなトラブルが生じるのか、トラブルを避けるにはどうしたらよいのかについて紹介します。

菩提寺とは

まず、本記事で重要となる菩提寺について触れておきます。

菩提寺とはその家が檀家となっているお寺のことを指します。そのお寺の境内には先祖代々のお墓があり、そのお寺の僧侶に供養や法事、月命日のおつとめなどをお願いするのが一般的です。

菩提寺がある場合は、家族が亡くなると菩提寺の僧侶を呼んで戒名を受けた上で葬儀を執り行います。

菩提寺とのトラブル例

普段からお付き合いをする菩提寺ですが、家族が亡くなったときに喪主と菩提寺との間でトラブルが生じることがあります。

そこで、実際によく起こると言われているトラブルの一例を見ていきましょう。

菩提寺への連絡に関するトラブル

家族が亡くなったら葬儀に関する打ち合わせをして実際に葬儀を執り行うのが一般的です。しかし、葬儀日程や葬儀会場が決まってから菩提寺に連絡するとトラブルになることがあります。

葬儀は僧侶が主体となって行うものですので、葬儀の日程や葬儀会場が決まってから僧侶に連絡するのは良くないとされています。葬儀の日時などを決めるときは、まず僧侶の都合を確認しましょう。

戒名をめぐるトラブル

菩提寺がある場合は、そのお寺の僧侶から戒名を受けて読経してもらうのが基本です。

仮に、現在住んでいるところから菩提寺が遠い場合でも、家族が亡くなったらまず菩提寺に相談しまましょう。遠方でも僧侶が来てくれる場合がありますし、都合がつかない場合は同じ宗派の別の寺院を紹介してくれることもあります。

家族が亡くなった時点では菩提寺がどこか知らず、別のお寺で戒名を受けて葬儀すると、後々トラブルにつながります。葬儀の後に菩提寺があることがわかっても、別のお寺で戒名を受けた場合は菩提寺で納骨してもらうことはできないからです。

その場合は、戒名を受け直したり葬儀をやり直したりすることになるため、多大なお金がかかることになります。そのため、事前に菩提寺の有無を確認することが大切です。

お布施の金額をめぐるトラブル

戒名や葬儀、葬儀の後の法要など、菩提寺にはその都度お布施を納めます。お布施には相場がありますが、そのお布施が高いと感じ、納めるのが困難と感じることからトラブルになるケースもあります。

そもそもお布施とは気持ちの表れであり、もともとは「お礼の気持ちを自分のできる範囲で施すもの」でした。そのため、高いお布施を払えない場合は、菩提寺や僧侶に直接相談しましょう。

菩提寺にとっては高いお布施を要求して関係が悪くなるよりも、無理のない額のお布施を受け取って、長い付き合いを続けることのほうが大切です。

もし、お布施の額について相談しても高い額のお布施を要求されたり、渡したお布施の額に不満を言われたりするようでしたら、その菩提寺との関係を見直す必要があります。

直葬をした時のトラブル

近年は、通夜や葬儀をせずに火葬だけを行う「直葬」が増えています。しかし、火葬の後に菩提寺に遺骨を持って行くと、僧侶を呼ばなかったことに対して僧侶から不満を言われる場合があります。

葬儀をするためのお金が無く、やむを得ず直葬を執り行うこともあるかもしれませんが、その場合にも亡くなったら一度菩提寺に相談することが大切です。

菩提寺とのトラブルを回避するためには?

近年は菩提寺との関係が薄くなってきています。祖父母世代や親世代が菩提寺との付き合いをしてきても、その子ども世代になると日々の生活が忙しくなり付き合いがおざなりになることは多いでしょう。

しかし、家族が亡くなったときにまず菩提寺に知らせる必要がありますので、事前に菩提寺がどこなのか確認するのはとても大切です。同時に、菩提寺の場所や連絡先、僧侶の名前なども把握しておきましょう。

また、菩提寺は葬儀や法要などでお世話になるところです。普段から折々で話をしたり相談をしたりしていると、葬儀の内容や進め方についてもスムーズに決められます。また、お布施の額に関しても相談しやすくなります。

菩提寺とのトラブルが解消できないときは?

親交を深めようとしたり、いろいろと相談したりしても、菩提寺とのわだかまりがどうしても解消しないこともあります。

また、特にトラブルがなくても菩提寺とのお付き合いに時間を使えなくなったり、お墓や仏壇の管理が難しくなったりすることも出てくるかもしれません。

先祖代々お付き合いしている菩提寺がある場合は、自分の理想とするオリジナル葬儀ができないことがありますし、好きな霊園に埋葬することもできません。菩提寺があることで、葬儀やお墓に制約が生じることも。

これらの理由で菩提寺との関係を断ちたいと考える人も増えてきています。その場合は、檀家をやめる「離檀(りだん)」をすることになります。

離檀の流れ

離檀をする際は、まず菩提寺の僧侶に今までお世話になったことのお礼と、離壇をする理由を伝えます。

離檀する際の理由として無難なものは以下の通りです。

・親が亡くなったため、家や仏壇を引き継ぐ人がいなくなった
・実家や仏壇を引き継ぐ人はいるが、遠方に住んでいるため管理が難しい
・結婚し、嫁ぎ先の宗派に変更するため

一方、菩提寺側に引き留められる可能性があるため、なるべく言わないほうがいい理由は以下です。

・宗派や宗教を変えたい
・無宗教になりたい

また菩提寺によっては、これまでお世話になったお礼として「離檀料」を求める場合もあります。離檀料の有無は菩提寺によるため、必ず確認しましょう。

まとめ

葬儀や法要など、普段とは違う場面で関わることになるのが菩提寺です。

菩提寺の僧侶は大切な儀式や節目に立ち会う存在ですので、トラブルが生じると後々まで尾を引く可能性があります。そうならないように菩提寺とは普段から良い関係を築いていくことが大切です。

ただし、どうしてもトラブルが解消できない場合や、付き合いを続けられない理由ができた場合などは檀家をやめるという選択肢もあります。菩提寺との関係を断つ時は、音信不通になって関係を自然消滅させるのではなく、菩提寺に話をしてお礼と理由を伝えてからにしましょう。

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