生活保護受給者が入居できる老人ホームはあるの?

介護

生活保護とは?

生活保護とは、生活困窮に対して生活や医療に関する必要最低限の費用を国や自治体が扶助する公的な制度です。

生活保護の相談や申請は、お住まいの市町村が管轄している福祉事務所で行います。

生活保護の受給条件

生活保護は以下の条件を満たすと受給できます。

最低生活費より収入が少ない

最低生活費とは、国が定めた最低限度の生活費を指します。この基準以下の収入しかない場合は、収入との差額が生活保護費として支給。

収入とは、仕事での収入、また年金収入どちらも当てはまります。

資産が無い

10万円以上の預貯金や株券、不動産や車がある場合は、原則として処分して売却金を生活費に充てることを求められます。売っても大きな金額にならない不動産は、売却しなくても生活保護が受けられるケースも。

自動車も資産価値が低い自動車は売却しなくても良いことが多いですが、資産価値が高い自動車はいかなる理由があっても所有は難しくなります。

借金がない

生活保護費は生活を保障するためのものであり、生活保護費で借金の返済はできないと定められています。借金だけではなく、年金を担保にした借金や、車・住宅のローンも同様です。

生活保護費は税金から成り立っているため、借金がある場合は生活保護を受けることはできません。

働ける状態にない

健康上の理由で仕事ができない、家族の介護などで仕事ができないなどの理由がある場合、生活保護の支給対象となります。

もしも働ける状態にある場合は、申請に行った際に仕事を探すよう勧められる場合もあります。

生活を援助してくれる家族や親族がいない

生活を援助してくれる家族や親族がいる場合は、申請に行ってもまずはその方に援助してもらうよう指示されるケースが多いです。

生活保護で受けられる扶助

次に、生活保護でどのような扶助を受けられるかについてお伝えします。

生活保護で受給できる扶助は以下の通りです。

・生活扶助:食料品や衣類などの購入費、水道光熱費
・住宅扶助:家賃などの費用
・教育扶助:教育を受けるために必要な費用。

子供の学校に支払う費用や教材費、給食費なども含まれます。
・介護扶助:介護にかかる費用
・医療扶助:病院での医療費は全額扶助されます。

そのほか、眼鏡やコルセットなどの購入費も支援されます。
・出産扶助:出産にかかる費用
・生業扶助:仕事で自立するための技能を習得するためにかかる費用
・葬祭扶助:葬儀にかかる費用

これらの扶助にはそれぞれ基準があり、受給者の生活状況に応じて基準額の範囲内で支給されます。

また、生活保護はシニア世代で年金収入があっても受給可能です。その場合は、生活保護の受給額の総額から年金収入を引いた金額を受け取ります。

生活保護受給者でも入れる老人ホームはあるのか

生活保護を受けていると「そもそも生活保護受給者は受け入れてもらえないかもしれない」と思うかもしれません。

近くに介護してくれる家族がいない場合、自分に介護が必要になった時にどうなるのか不安になると思いますが、生活保護を受給していても入れる施設があります。

生活保護受給者の方も入居できる施設は、以下の通りです。

・特別養護老人ホーム
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者住宅

それぞれの施設の特徴などを紹介します。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、公的な介護保険施設のひとつで、要介護3以上の高齢者を対象としています。また特別養護老人ホームを略して「特養」とも呼ばれています。

国や自治体から補助を受けている公的な施設のため、平均月額は8~12万円と比較的安く個人の負担は少ない施設です。特養では所得に応じた負担軽減もなされるので、費用に関する不安はさらに少なくなります。

特養では入浴や食事の介助だけではなくリハビリを受けられます。また、デイサービスに通う利用者とともにレクリエーションや季節の行事を楽しむことが可能です。

ただ、特養は原則として介護保険の要介護認定で「要介護3」以上と判定されている方のみが入居の対象となります。「要介護2」以下の方は、特別な事情がないと入居できません。

また、特養は費用が安く、介護サービスなどの内容も充実しているため人気が高く、なかなか入居できないケースも多いです。

有料老人ホーム

有料老人ホームは、主に介護が必要な人を対象とした介護サービス付きの施設です。基本的に食事や入浴、レクリエーションなど1日のスケジュールが決められています。

有料老人ホームは民間施設ですので、特養よりも費用が高い場合が多いです。また、施設によってサービス内容や費用の差が大きい傾向にあります。

有料老人ホームで支払うのは「家賃・食費・管理費」と、「介護サービスに対する費用」などです。介護サービスを受けた場合、一般の介護保険被保険者は収入に応じて1~3割を支払いますが、生活保護受給者は負担ゼロでサービスを受けることができます。

生活保護受給者の介護サービス費用は、自治体からホームに直接支給。家賃は生活保護の住宅扶助として定められた上限額、生活費は生活扶助として必要な金額が受給者に支給されます。家賃と生活費は、いったん受給者に支給されますので、受給者はそのお金をホームに支払うことになります。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者住宅は、一般的な住宅に住む場合と近い生活を送りながら介護に関するサービスを受けることができる施設です。サービス付き高齢者向け住宅を略して「サ高住」と呼ばれることもあります。

安否確認や生活相談などのサポートを受けられるので、自由に生活しつつ、ご本人もご家族も安心して生活しやすい環境が整っています。平均月額は15万円ですが、高齢者住宅も住宅の設備やサービス内容によって負担額に幅があるので、入居前に必ず予算とすり合わせが必要です。

また、サービス付き高齢者向け住宅は、比較的自立した方を対象としている場合が多いため、介護度が上がると住み続けられないこともあるので注意しましょう。

施設に入居するときの手順

実際に施設に入居する場合、まずは担当のケースワーカーに相談しましょう。相談を受けたケースワーカーが自治体が管轄する地域内で受給者を受け入れてくれる施設を紹介してくれることがあります。その際に、どのような施設に入居したいか、どんな点が妥協できてどんな点が譲れないか、などを伝えるとスムーズに見つけやすいです。

また入居したい施設が別の自治体にある場合、または今いる自治体ではなく親族や家族が住んでいる自治体の施設に入居する場合もあるでしょう。その場合、別の自治体に転居して、転居した先の自治体でも引き続き生活保護を受ける場合は「移管」の申請が必要になります。

ただし、自治体によって生活保護のルールや内容が違う場合もありますので、事前に確認が必要です。

また生活保護で受けられる扶助は、すべての人がすべての地域で同額というわけではありません。受給者の居住地によって受給額や受給の条件も異なります。

転居した先の生活保護支給限度額では、希望する施設の費用が払えない場合もあります。居住地を変えて施設を利用する場合は、転居先の家賃扶助や生活扶助の上限を確認することが大切です。

まとめ

生活保護は生活困窮者に対して必要最低限の扶助を行う公的な制度です。生活保護を受けるためには条件があり、自治体への申請も必要になりますが、生活に困っている場合は誰もが活用できる権利があります。

生活保護を受けていると、将来の介護に関して不安に感じることも多いと思いますが、「特別養護老人施設」「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者住宅」は、生活保護受給者でも入居可能です。

ただし、施設によっては生活保護受給者を受け入れていない施設や、入居する人数を制限していることもありますので注意が必要です。生活保護を受給していても、受けられる介護に制限があるわけではなく、生活保護の扶助額内でまかなえる施設もありますので安心してください。

施設を選ぶときや、違う自治体に転居するときの手続きなど、事前に確認することがありますので、担当のケースワーカーに相談して一緒に進めていくようにしましょう。

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