感染症予防や免疫力の強化に役立つ“気道の粘膜の潤い維持”

この記事は約7分で読めます。

感染症予防と免疫力、気道などの粘膜について

新型コロナウイルスで問題となっているのが、免疫力です。免疫力の弱い高齢者や基礎疾患のある人が重篤率や死亡率が高いとされているのは周知のとおりです。
では、免疫力とはどのようなものかというと、よく知られていないのが現実です。新型コロナウイルスに対しても、この機会に感染症予防のために免疫力について知り、特にのどの気道の粘膜での免疫や、免疫力を付けるにはどうしたら良いかなどについて紹介します。

自然免疫と獲得免疫

免疫とは、「疫」=病気から逃れる仕組みのことです。免疫は、「自然免疫」と「獲得免疫」の二つに大きく分けることができます。

体内に侵入してきた病原体に、最初に反応するのが自然免疫です。ここで活躍するのがマクロファージやNK(ナチュラルキラー)細胞などの免疫細胞です。これらは細菌やウイルスを認識して攻撃し、私たちの体を守ります。

そして自然免疫の攻撃を逃れた病原体に対応するのが、獲得免疫です。これらは病原体を認識しその種類を特定し、抗体を産生することで免疫力を発揮します。

獲得免疫は記憶することができるため、ある特定の病気にかかると、免疫ができたから、今後は病気にはかからないという状態になるのです。抗体というものです。新型コロナウイルスでも抗体検査が用いられていますので、最近よく聞く言葉です。

免疫の仕組み

免疫の仕組みは「防御」と「攻撃」の2段階があります。
体には、「ウイルスや細菌を侵入させない」、さらに「侵入したウイルスや細菌と戦う」という、2段階の免疫の仕組みが生まれつき備わっています。

第一段階 防御=「粘膜免疫」

日々の生活で、体内にはウイルスや細菌、花粉などの異物が絶えず侵入しようとします。しかし、これらの異物を侵入させないように私たちの体を守っているのが「粘膜免疫」です。

異物が体内に入り込もうとすると、せきやくしゃみで排出しようとするのもその一つです。鼻水も、気道の粘膜を病原体から守るためのものです。

粘膜が渇いてしまうと、病原体の侵入を防ぐことができなくなってしまうので注意が必要です。
粘膜免疫が働く場所は、目、鼻、口、腸管などの粘膜です。ここで異物が粘膜を介して体内に入るのを防ぎ、体外に排出することで感染を防ぎます。

また、防御機能には粘膜だけでなく、皮脂腺や汗腺からの分泌物や胃酸なども含まれます。

第二段階 攻撃=「全身免疫」

病原体が「粘膜免疫」を突破して体内に侵入し、増殖してしまった状態が「感染」です。体に侵入したウイルスや細菌に対しては、第2段階の「全身免疫」が働きます。全身免疫のシステムでは、免疫細胞が病原体を捕えて排除するよう働きます。

免疫力を高めるための4ポイント

コロナウイルスもインフルエンザと同様、人から人に移るウイルス感染症です。共通しているのは、基本的な予防対策をすることが重要で、感染の拡大を防ぐことにもつながります。

手洗い、うがい、マスクによって、ウイルスや細菌が体内に侵入するのを防ぐことはもちろん、免疫力を整えておくことが何よりの予防になります。

バランスの良い栄養を摂る。

免疫細胞を活性化させるためには、たんぱく質・ビタミン・ミネラルをバランス良く摂ることが基本です。

充分な睡眠

体を守る免疫細胞の中で、ウイルスを退治する主役であるリンパ球は、夜寝ている時間に活発に働きます。睡眠不足は、その働きを乱し、免疫力を低下させます。

ストレスを溜めないこと。

肉体的・精神的な疲れやストレスは、自律神経のバランスを乱し、免疫力を低下させます。
ストレスによってアドレナリン等のストレスに対抗するホルモンの必要量が増えると、肝臓からたんぱく質、ビタミン、ミネラルなど栄養の消費量も多くなります。

運動すること、体をあたためること。

運動によって身体が活性化し免疫力の向上につながります。

また、体温が1°C上がると、免疫力は5倍上がると言われています。温かい飲み物を飲む、風呂に入り(ぬるめのお湯が良い)体を芯から温める、手足のオイルマッサージなどが効果的です。

気道の粘膜の潤い維持

大気の乾燥などで上気道の粘膜が乾燥すると、粘膜の防御機能が低下し、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。対策としては、のどをケアする必要があります。

こまめにうがいをする。

うがいにより、のどは洗浄、刺激され、潤されます。うがいには、粘液の分泌や血行を良くする病原体やほこりなどの異物を、粘液と一緒に外に出すといった効果があります。

マスクを着用する。

マスクを着用することで、ウイルスなどを吸いこむことや、口の中の乾燥を防ぐことが一定程度できます。また、自分がウイルスをもっている場合は、他の人への感染を防ぎます。

のどを潤す・部屋を加湿する。

乾燥した環境ではウイルスが空気中に漂う時間が長くなり、感染しやすくなるため、水やお茶などで積極的にのどを潤すとともに、室内が乾燥しないように加湿器を使ったりします。室内湿度を50%以上に保つことが望ましいです。

刺激物の摂取を避ける。

お酒や辛いもの、熱すぎるものは、のどから水分を奪ったり、粘膜を傷つけたりすることがあります。風邪などでのどが敏感なときは避けるようにしましょう。

たばこを吸わないこと。

たばこは、のどや肺に百害あって一利なしです。例えば、気道に炎症を起こし。咳や痰を出す慢性の呼吸器疾患は、喫煙が原因で発症することが多くあります。

その他、のどスプレーの使用の方法もあります。のどのはれや痛みの原因である、炎症を抑える効果がある水溶性アズレンなどが配合されています。

唾液も重要

唾液には、食べ物の消化を助ける酵素のほかに、口に入ってくるウイルスや細菌などの病原体に対する防御因子が含まれており、感染症の予防や全身の健康維持に重要な役割を果たしています。

しかし、口腔内に歯周病菌などの病原菌があると、ウイルスを粘膜細胞に侵入しやすくするので、感染防御には口腔内の環境も重要で、歯磨きで口腔内の衛生を保っておかないとウイルス感染を助長することになります。

新型コロナウイルスの出現で今後どうすればよいのか?

新型コロナウイルスの感染を防ぐためには、免疫力を強化することが効果的です。
以下では誰でも行える免疫力強化の方法について解説していきます。

腸内環境を整える。

ウイルスも口から入り、腸を通って体内に侵入することがあります。その際に体内にウイルスを入れないよう防衛するため、腸にはたくさんの免疫機能が備わっています。腸内環境が悪くなると、ウイルスが体内で増殖して、病気になりやすくなります。

腸内には大きく分けると、善玉菌、悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3種類の菌が存在し、それぞれ増えたり減ったりしてバランスをとっています。腸内を良い環境に保つためには、善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えることが大切です。

善玉菌では、ビフィズス菌や乳酸菌などの菌を含む食品のことです。ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・味噌・漬物などの食品にふくまれます。

タンパク質をしっかりとる。

タンパク質の働きでは、エネルギー源になったり、筋肉や内臓を作ることが知られています。
さらに、タンパク質は免疫細胞の材料にもなるため、不足してしまうと免疫力の低下を招きます。肉・魚・卵・大豆製品、乳製品に豊富に含まれます。

ビタミン・ミネラルをとる。

タンパク質と合わせて一緒にとると良いのが、ビタミンやミネラルです。
なぜなら、ビタミンAやビタミンB6、ビタミンCなどのビタミン類、ミネラルの一種である亜鉛は、免疫細胞を強化し、免疫システムの作用において重要な役割を果たしているかたです。

適度な運動をする。

免疫力を維持するには適度な運動も必要です。ストレス対策にもなります。
身体全体を動かす運動により、血液のめぐりがよくなって、体温と代謝が上がると免疫力が高まります。また、心臓や肺の機能、体力維持にもつながります。

低体温は免疫力の点では良くない。

体温はある程度高い温度を保った方が良いとされています。

その理由の一つが、血流がよくなることです。血液の中には当然、免疫を担当する細胞が集まっている白血球がありますが、白血球が体中のすみずみを巡ることで、免疫力が発揮されるからです。

そしてもう一つの理由が酵素の活性化です。食べ物の消化吸収や細胞の新陳代謝などで活躍するのが酵素で、私たちが生きていくために必須のものです。そんな重要な酵素です。

個人差もありますが、体温が35度台以下は免疫力の低下につながります。免疫力が低下していないかどうかを把握するために、普段から自分の平熱を測っておくことも重要になります。