意外と知られていない介護のための準備/身の回り篇

健康

身の回りの介護の準備は何から始める?

高齢になり身体の衰えが出てきたときに、同居する家族が介護をする場合、どのような身の回りの準備をしたらよいのでしょうか。

どうするべきかわからない場合には、情報収集として、市区町村が出している高齢者向けのガイドブックや資料が役に立ちます。
また、介護保険制度の中でのサービスが多様にあるので、それらを調べておくことも必要となるでしょう。

今回は介護の準備の中でも、身の回りを重点的に解説していきます。

身の回りの介護の準備とは

ここでは在宅介護を中心とした、介護のための身の回りの準備について見ていきましょう。

介護の場所

介護を行う場所は、一般的に最初は自宅で行い、自宅では無理になってから介護施設などへの入居が検討されると考えられます。

同居する家族がいれば違いますが、家族のいない単身者では、介護施設入居が早まる場合もあるでしょう。

介護認定

介護保険の介護サービスを利用するには、要介護認定の申請をして認定を受ける必要があります。
介護認定の通知を受けたら、ケアマネジャー(介護支援専門員)を決め、一緒に支援計画(ケアプラン)を作成して、介護サービスが利用できるようになります。

ケアマネジャーとは要介護者に必要な介護サービスを、総合的にコーディネートする役目の人で、ケアプランの作成などの作成も行います。

介護認定で「要支援1または2」の判定を受けた人が利用できる在宅サービスは「介護予防サービス」と言い、ケアマネジャーは原則として地域包括支援センターの職員が担います。

介護保険の在宅介護サービスの種類

在宅介護サービスという分野では「自宅で受けられるもの」「通いで受けられるもの」「宿泊すること」で受けられるものなどがあります。
以下で見ていきましょう。

●自宅で受ける介護サービス

  • ①訪問介護(ホームヘルプサービス)
  • ②訪問入浴介護
  • ③訪問看護
  • ④訪問リハビリテーション
  • ⑤居宅療養管理指導
  • ⑥夜間対応型訪問介護 ※地域密着型サービス
  • ⑦定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ※地域密着型サービス

なお、利用には要介護度による規定があります。

●施設に通って受ける介護サービス

  • ①通所介護(デイサービス)
  • ②通所リハビリテーション(デイケア)
  • ③認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)※地域密着型サービス

在宅介護での身の回りの準備とは

介護設備・用品には以下のようなものがあります。
まずは各種類をしっかりと把握して、自分たちに必要な品物を選定しましょう。

ベッド

介護度が進むと畳に布団をしいて寝ているよりも、フローリングの床の部屋にベッドで寝た方が衛生的と言えるでしょう。

フローリングの床の部屋があれば移動する、フローリングの床にリフォームする、畳の上にカーペットを敷くなど工夫します。

介護ベッド

介護度が進んだ場合には、介護ベッドの使用も検討されるでしょう。
介護ベッドは介護保険によりレンタルが可能です。

楽な姿勢をとれるように上体を起こす背上げ機能、膝を立てたりする機能などに加え、介護者の負担軽減を考えてベッドの高さを変える機能もあります。

介護用品

介護用品には以下のものが挙げられます。

・体の向きを整えるときに使用するクッション
・床ずれ予防用具(エアマットレス、ウレタンマットレスなど)
・歩行器、歩行車、車いす、松葉づえ
・ポータブルトイレなどのトイレ用品
・入浴用椅子、浴槽用手すりなどの入浴用品
・介護靴、介護靴下

介護用ベッドや車椅子のような福祉用具を使うときにも、介護保険を利用できます。
介護保険を利用すれば、福祉用具を「レンタル」または「購入」するときの費用負担を1~3割で済ませることができるのです。

「福祉用具貸与」あるいは「特定福祉用具販売」と呼ばれる介護保険サービスがこれにあたります。
ただし、購入の場合や要介護度によっては介護保険の対象にならないこともあるためチェックが必要です。

住まいの環境の整備

介護度によりますが、自立して歩ける段階では、近い将来に自立歩行が危なくなることを想定します。
廊下や階段の手すりや、トイレや浴室の手すり、室内・玄関の段差などが対象となるでしょう。

ベッド回りやトイレなどにレンタルの手すりを設置するだけでも、本人の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく上げたり、家族の介護の負担を減らしたりすることができます。

住まいのバリアフリー化の場所

廊下や階段、また、トイレや浴室内には手すりの設置が必要になるでしょう。

工事の不要な物で、置くだけで使用できるものでは、低段差解消のつまずき防止スロープがあります。
また、玄関の外部分用の手すり付き大型スロープもあります。

工事が必要なものでは、各室の出入り口、玄関、浴室、トイレなどでの段差部分がバリアフリー化の対象になります。
また、引き戸など使いやすい扉への取り替えもあると良いでしょう。

玄関やトイレなどは引き戸に変更することが多いのですが、浴室に向いているのは、3枚引き戸や折り戸で、介護者にとっても便利です。
内側に開く扉を、外側に開くものに取り替えることもできます。

玄関のバリアフリー化

玄関のバリアフリー化は、高齢者や介護者が安全に外出するために欠かせません。
門から玄関までのアプローチの見直しが必要となります。

トイレのバリアフリー化

和式から洋式トイレなどへの便器の取り替えは重要です。
洋式トイレにすることで、足腰への負担は軽くなり、さらに温水洗浄便座を設置すれば、入浴ができない際も清潔さを保つことができて衛生的です。

温水洗浄便座は、便器の取り替えと一緒に取り付ける場合のみ、補助金の対象内となります。
個別でそれだけを設置する場合は含まれません。

浴室のバリアフリー化

浴室は滑って転倒すると、大けがにつながるおそれがあります。
床だけでなく、浴槽の底に滑り止め加工を施すことも必要でしょう。

介護保険制度で受けられる「補助金」の概要

介護保険制度には、居宅介護(介護予防)住宅改修があります。
リフォームについて、決められた条件を満たせば補助金が支給されます。

補助金受給の対象

補助金の受給ができるのは、要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定されている介護保険の被保険者となります。
補助金の対象となる住宅は「介護保険被保険者証」に記載されている住所の住宅です。

補助金の上限

補助金の支給は、被保険者1人につき改修費用20万円までと決められています。
そのうち自己負担分(1割~3割)の費用を負担します。

補助金の利用

原則として補助金の給付は被保険者一人につき1回ですが、20万円を数回に分けて利用することができます。
例えば、1回のリフォームで10万円しか使わなかった場合、次にまた10万円で他の工事を行えるということです。

介護保険外の設備

高齢になると心配ごととして考えられるのが、調理の際の火災の危険性です。
そのため、ガスでの調理をやめてIH(電磁調理機器)が安全です。

ただし、IH(電磁調理機器)は介護保険の適用外となってしまいます。

緊急時の備えも必要

介護でも自動化やIT化、ロボット化が進み始めていますが、さらなる本格化が今後の課題と言えるでしょう。

地方自治体行政の緊急法システム

行政の単身高齢者向けの緊急通報システムがあり、地方自治体により異なります。

都内のある区のシステムを例にあげると、急病時にペンダント型の救急ボタンを押した場合や、センサーによる自動通報で受信センターに通報されると救急車(火災の時は消防車)を要請するとともに、現場派遣員も駆けつけ救助を行います。

安心センサーでは、赤外線のセンサーが一定時間人の動きを感知しないと自動通報します。
また、火災センサーもあり、煙を感知すると自動通報されます。

対象者は、区内に住所を有する65歳以上の高齢者のみの世帯で、慢性疾患があるなど常時注意を要する方(慢性疾患がある方、慢性疾患がなくても身体状況や生活状況から在宅生活に不安があり、緊急時に適切な対応ができない可能性のある方)です。

警備会社の緊急通報システム

セコム、アルソックでは、家庭向けの警備員派遣型のホームセキュリティサービスをやっています。
テレビのコマーシャルなどでも見られ、高齢単身者には安心と言えるでしょう。

家庭用ナースコール

工事なしで簡単に利用出来る無線式ナースコールで、在宅介護や在宅治療に便利です。
戸建て住宅、マンションや2世帯住宅でも導入できます。

無線機のようなイメージで、親機と子機を電波でつなぎ相互通話を可能にします。
基本的には親機から見通し100M以内なら、呼び出し可能な場合が多いです。

自宅外へ連絡する家庭用ナースコール

電話回線で指定した電話へ通知し、外部にいる家族や介護職員へ連絡を入れることが可能です。
家庭用ナースコールの中にはセンサーと連携できるものがあり、例えばトイレで人が入ってから「長時間動きがなかった場合」や「徘徊」「火災を知らせる」ということができます。

マッスルスーツ

介護ロボットは高額なため個人では導入は不可能ですが、施設では導入されているところもあります。
ところが、使い勝手ではまだ今後の課題があるようです。

しかし、在宅介護で個人が購入できるものにマッスルスーツがあります。
マッスルスーツとは、介護者が在宅介護で使用するもので、電気ではなく、人間が空気で動かしてパワーアップし、介護者の腰部への負担を軽くするものです。

筋肉をサポートしてくれるため、重いものを持つときに腰にかかる負荷を軽減できるものです。
大手通販会社で販売されており、価格はおよそ15万円です。

身の回りの介護準備~まず何から始めるか?

ここでは身の回りの介護準備で、まず何から始めるかを解説していきます。

本人の介護度を確認

介護認定を受けていなければ、介護認定を申請し介護認定を受けます。
要支援1・2の段階なのか、要介護の1・2の段階かなどを確認します。

また、介護認定とならず、受けられない場合もあります。

介護認定を受ければ居宅介護支援でケアマネジャーと相談

介護認定を受け要介護となれば、ケアマネジャーと打ち合わせし本人や家族の希望も伝え、ケアプランを作成してもらいます。

その際に介護用品などについて相談しても良いでしょう。
要支援であれば地域包括支援センターと相談できます。

本人の身体状況で自宅のバリアフリー化を検討

介護認定を受けていなくても、足腰の弱りがある場合は、自宅内でも転倒の危険性を考えなくてはなりません。

廊下や階段に手すりがない場合は、将来も見据えて手すりを付けた方が良いでしょう。
また、玄関・部屋・風呂場・トイレなどの出入り口の段差は大変危険です。

簡単に取り付けられるスロープもあり、本格的なものにするには、工事が必要となります。

介護初期に必要な身の回りの設備や用品の検討

介護認定に関わらず、足腰が弱くなってきている場合は、転倒防止のために室内でも介護靴や介護靴下を履くのが良いでしょう。
スリッパは転倒の危険性があるため、避けた方が無難です。

また、自立歩行できても足元が危なくなってきたら、買い物のときには歩行車などもあると良いでしょう。

医療情報などの整理

掛かりつけ医などを調べまとめておくことも大切です。
また、認知症が出てきている場合は、名前や連絡先、家族名などを書いた名札やメモを持たせることもあります。

買い物に出かけて帰り道が分からなくなる場合や、徘徊の危険性が出てくるために、警察の人などに見てもらうために持たせるものとなります。

まとめ

介護のための準備は、在宅で行うのか、介護施設に入居するのかで状況は全く異なります。
身の回りの準備が必要なのは在宅介護の場合です。

介護の度合いが重くなれば在宅介護のケアプランも変化し、在宅介護であれば訪問介護が行われヘルパーさんが来て世話してもらう場合もあるでしょう。
そのため、身の回りの準備はケアマネジャーや介護サービス会社と相談して選ぶのが良いでしょう。

介護保険の適用が受けられるかどうかはケアマネジャーが把握しているため、相談していくことが大切です。

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