初盆の準備と迎え方

葬儀・仏事

お盆とは、毎年夏に故人やご先祖様が家に戻られるとして祖先供養を行う風習です。家族・親族や知人・友人を招いて故人や先祖の霊をお祀りします。その中でも初盆では、法要も行います。宗派によって相違はありますが、初盆の準備と迎え方について、一般的なしきたりや作法について紹介します。

初盆(はつぼん)とは

初盆は、新盆(あらぼん、にいぼん)とも言われます。故人が亡くなってから四十九日の忌明けを過ぎ、初めて迎えるお盆のことです。通常のお盆よりも念入りに供養の行事が行われます。

多くの場合、遺族や親族以外にも故人と生前親しくしていた友人などを招いて、法要を行います。法要では、住職を呼んで読経をあげて供養をしてもらいます。また、参列者の焼香のあとにお墓が近隣であればお参りし、精進料理などでもてなすこともあります。

そもそもお盆って?

お盆の正式名称は、盂蘭盆会(うらぼんえ)と言い、盂蘭盆はインドのサンスクリット語が語源といわれています。日本では8世紀頃には、夏に祖先供養を行う風習が確立されたと考えられています。

お盆には故人や先祖の霊が帰ってくると考えられています。そのため毎年7月、8月のお盆の時期は先祖の霊を祀って一緒に過ごす時期とされ、盆供養が行われています。旧暦のお盆の「旧盆」に対し、今のカレンダー通りのお盆を「新盆」と呼ぶこともありますが、これは新暦のお盆の略です。

初盆と普段のお盆との違い

初盆と普段のお盆の違いは、法要を行うかどうかです。初盆では親族や友人などを招いたうえで、住職に読経をあげてもらい、故人の供養をします。また、精霊棚(盆棚)と呼ばれる祭壇や盆提灯で華やかなお飾りをして、故人をお迎えします。普段のお盆では親族らを呼ぶことはなく家族のみで行い、住職を招いて読経を上げてもらう法要を行うこともありません。

初盆の時期

初盆とは故人の四十九日の忌明け後、初めてのお盆のことですので、四十九日前にお盆のタイミングを迎える場合は、翌年のお盆が初盆となります。

お盆をおこなう時期は、「旧盆」と「新盆」のいずれです。
旧盆の地域ではお盆は8月15日のため、お盆関連の行事は前後の8月13日から8月16日にかけて行われます。全国的には旧盆地域の方が多くなっています。

新盆の地域では、お盆は7月15日になり、お盆関連の催しは前後の7月13日から7月16日ごろに行われます。新盆を導入している地域は全国的には少なく、東京、神奈川、北海道、石川などです。

お盆の時期が異なるのは、明治時代に暦が変わったためです。地方で月遅れの盆が残ったのは、農業などの時期との関係や慣習が継続したことの影響もあるでしょう。

なお、1周忌がお盆の時期に近いと続けて行うのは負担に無っります。その場合は1周忌を優先してください。1周忌はお寺、お墓で行います。

初盆の準備

初盆を迎える際は、1ヶ月前頃から以下の手順で準備を進めます。

  • ①法事・法要の日時の設定

    初盆では法要を行うため、菩提寺の住職の予定を確認しなければなりません。お盆の時期には、住職の予定も詰まっているため、早めに日取りを決めることが望まれます。

  • ②招待状もしくは電話での案内

    招待をしたい方にも予定はありますので、なるべく早めに招待状を手配し郵送するようにします。家族など近親者だけで人数が少ない場合は電話連絡でも良いでしょう。

  • ③料理の手配

    会食をする場合は、人数と場所が確定したら料理の手配をします。仕出し屋、料理屋からの出前を使うと便利です。

  • ④返礼品の準備

    法事・法要に参列してくださった方々にお礼として返礼品を準備します。

  • ⑤お布施の準備

    お布施は新札で事前に用意します。また、お布施を入れる袋(お布施袋)も用意しておきましょう。

  • ⑥仏壇周辺の準備

    仏壇の細部まで丁寧に掃除をします。故人やご先祖様の霊をお迎えするため、仏壇の前に盆棚(精霊棚)を置き、敷物を敷きます。位牌を仏壇から盆棚の中央に移し、線香、ろうそく、花などを左右に置きます。

  • ⑦精霊馬(しょうりょううま)と精霊牛(しょうりょううし)などの準備

    精霊馬、精霊牛とは、故人やご先祖をお迎えお送りするためにキュウリやナスで作った乗り物のことです。販売しているものもあります。

  • ⑧お供え物の準備

    お供え物には、季節の果物や野菜、供花、お菓子、線香、ロウソクなどを用意します。また、初盆の際にはお団子を準備する場合もあります。初盆の花は、白い菊が一般的です。

  • ⑨盆提灯(ぼんちょうちん)の準備

    盆提灯は、故人・ご先祖様の霊が迷うことなく家に辿り着くことができるように、お盆の間中灯しておく提灯です。盆提灯の代わりに迎え火・送り火の用意をする場合もあります。

初盆の行事と基本的な流れ

8月13日から8月16日にかけてのお盆の時期に行う、一連の流れは下記の通りです。なお、こちらは最も一般的な場合で、地域や家庭によって日時が異なることもあります。

・13日(盆の入り)
一般的に8月13日(地域によっては7月13日)がお盆の初日で、盆の入りや精霊迎えとも言います。迎え火を焚いて、故人やご先祖様の霊を自宅に招く日です。仏壇を掃除して、位牌を仏壇から取り出し、花やお供え、盆提灯を飾って盆棚(精霊棚)を整えます。

・14日・15日(盆中日)
自宅に遺族・親族・友人・知人などを呼び、住職を招いて法要をしていただきます。法要の後に会食をする場合もあります。お布施を用意し、住職がお帰りになる際にお渡しします。服装は喪服が良いでしょう。

・16日(盆明け)
精霊送りとも言われ、家に迎えた先祖の霊にお帰りいただく日です。夕方になったら、送り火を焚きます。その後、片づけをしましょう。

初盆でかかる費用

初盆にかかる費用には、次のようなものがあります。

お寺へのお布施など 30,000円~50,000円
祭壇や提灯の準備代 5,000円~
料理やお酒代など  1人5,000円~

すでに自宅にある物は不要ですが、お供え物は都度購入する必要があります。また、会食をする場合は料理やお酒代などがかかります。

宗派ごとに初盆の方法は異なる

初盆の迎え方は、宗派によっても異なります。浄土真宗にはお盆に故人が帰ってくるという考え方がありません。そのため迎え火や送り火を焚いたり、精霊棚を整えたりすることはありません。しかし「お盆」は「歓喜会」という日として行います。

真言宗の場合は、初盆ではお墓だけではなく、ご本尊へのお参りも欠かせません。真言宗は追善供養に重きを置き、祭壇へのお供えものも多く、精進料理のお膳も用意します。

初盆の今後

初盆では菩提寺の僧侶により法要を行うのが一般的ですが、家のお墓を継ぐ長男などの場合以外では、初盆や周忌の法要も少なくなってきている現状があります。また、檀家制度も徐々に弱くなってきて檀家数も少なくなってきています。お墓の承継者がいなくなり納骨堂や樹木葬が増えてきていることも背景としてあります。

公営墓地であれば寺院との関係は薄くなり、墓地だけを考えれば寺院の檀家である必要はありません。寺院運営の納骨堂でも最近は檀家加入が義務付けられていないところもあります。納骨堂利用者や樹木葬をした家では盆に僧侶が来ないところも多いでしょう。これらの現状を通して、今後の初盆の形態では住職を自宅に招かずに、親族も呼ばず、家族だけで簡素に行うことが考えられます。

しかし、大切なのは故人や先祖をお迎えする心です。故人や先祖を偲ぶ気持ちは大切ですから、風習の形の維持にも意味はあります。

初盆の心構え

風習としての初盆というよりも、遺族である自分や家族にとっての意味を考えます。四十九日と納骨が終わり、故人が亡くなって始めてのお盆です。故人の思い出が新しいうちに、再会する気持ちで迎えましょう。

お盆は仏教と先祖崇拝が結びついた形態で、古くから行われてきている風習です。亡くなった家族、親族を思う、良き風習と言えるでしょう。

また、身近な祖父母などが亡くなった場合など、お盆をきちんと行うことで子や孫にも死という現実が体験として伝わります。子や孫にとってお盆は、故人や先祖のことを思い出し、また、知らない先祖のことについて知り学ぶ良い機会になります。

まとめ

初盆とは故人が亡くなってから四十九日の忌明けを過ぎ、初めて迎えるお盆のことです。初盆は普段のお盆とは違って、自宅に親族や友人などを招き、住職に読経をあげてもらい供養をします。その時期は「旧盆」の8月中旬と「新盆」の7月中旬のいずれかです。

初盆では法要を行うため、菩提寺の住職や親族の予定を調整し、仏壇周辺を整えるといった準備が必要です。

・初盆の準備と迎え方 3つのポイント

(1) 初盆は故人をあの世から最初に迎える機会
故人の記憶が新しいうちにお迎えする意味があります。

(2) 初盆は住職を迎えて法要をする
住職との日程の調整や親族を招くための調整や、食事を出す場合もあり準備が必要です。1ヶ月前くらいから準備します。

(3) 法要のため多少の費用は必要
お寺へのお布施30,000円~50,000円などがかかります。その他は、すでに自宅にある物は不要ですがお供え物程度は購入する必要があるでしょう。また、会食をする場合は料理やお酒代などがかかります。

故人が亡くなった後は相続税の処理や遺品整理で忙しいものですが、四十九日の納骨で一区切りがつきます。その後にやらなければならないのが初盆と1周忌です。子や孫にとっても先祖について知る機会になるので、大切にしてください。

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