生前墓とは
生前墓は文字通り、生きているうちにお墓を建てることを言います。
古来中国では、生前にお墓を建てることが長寿を授かる縁起の良いこととされており、秦の始皇帝をはじめ歴代の皇帝は生前墓を建てていたと言われています。
生前墓は寿陵墓とも言われ、決して縁起が悪いものではありません。
生前墓と相続税の負担軽減とは
相続税対策には各種の方法があります。
相続税対策の中で、あまり知られていないものに生前にお墓を購入する方法があります。
生前墓の購入などがなぜ相続税対策になるのか、どの程度の効果があるのか、また、その注意点などを見ていきましょう。
祭祀財産とは
祭祀財産とは墓地、墓石、仏壇、仏具などのことで、これらは相続財産には当たらないため相続税が課税されません。
そのため、お墓の購入は相続税の負担軽減対策につながります。
祭祀財産は相続財産と区別される
祭祀財産は先祖の供養をするためのものであるため、それによって利益を得たりするものとは異なるという理由で、相続財産とは区別され相続財産には当たらないものとされています。
祭祀財産を承継するのは原則1人
お墓などの祭祀財産を受け継いで管理し、年忌法要を執り行う人のことを祭祀継承者と言います。
相続財産は複数の相続人に分割して与えられますが、祭祀財産は原則として1人の祭祀継承者がまとめて承継し、共同で保有することはできないことになっています。
一般的に親が亡くなった場合は子ども、特に長男が承継するケースが多いのですが、親族や友人も祭祀継承者になれます。
祭祀財産を生前に購入すれば相続税の負担軽減が期待できる
生前に相続財産を減らす方法として検討されるのが、このお墓などの祭祀財産の生前購入です。
生きているうちからお墓を買うなんて気が進まないという人もいますが、現在の財産が基礎控除額を超えている場合には節税方法として検討する意味があります。
相続税対策の基本は相続財産を減らすこと
相続税対策の基本は、相続開始までに相続財産を減らしておくことです。
基礎控除が4,800万円の場合は、被相続人が存命中に相続財産を4,800万円より少なくしておけば課税されずに済みます。
仮に、財産が5,000万円、亡くなった場合の基礎控除が4,800万円の人が、生前に400万円でお墓を建てたとすれば財産は4,600万円まで減り、基礎控除の範囲内に収まります。
生前墓と相続税の負担軽減の現状
相続税の負担軽減のために生前墓を購入する際の注意として、現状では次のような点があります。
お墓のローン購入の注意点
生前に購入したお墓は祭祀財産のため非課税対象になります。
また、一般的に残された家族が債務を相続することになった場合、その債務分は相続税の対象から控除されます。
しかし、お墓をローンで購入していて残債がある場合、その残債は債務控除の対象にはなりません。
お墓を相続税対策で購入する場合は、ローンで購入しないか、したとしても生前に完済する必要があります。
極端に高額なお墓や祭祀財産は、税務調査で認められない場合も
極端に高額なお墓はその必要性を問われるでしょう。
また、仏具は祭祀財産になるため、節税対策として純金の高額な仏具を購入するケースがあります。
仏具の場合は基本的に相続税の対象にはなりませんが、極端に高額であると不自然に思われ祭祀財産として認められないことがあります。
一度に高額なものを購入している場合はもちろんのこと、時間をかけて複数回に分割購入している場合でも、税務調査では過去にさかのぼってチェックされることもあるため、祭祀財産として認められない場合もあります。
生前墓と相続税の負担軽減の今後
生前墓と相続税の負担軽減について、今後に考えられることを見ていきましょう。
生前墓や祭祀財産の金額には限界がある
生前墓の金額と言っても数百万円程度まででしょう。
特に近年ではあまりにも高額なお墓は少なくなってきており、不動産価格を反映した東京都内の一等地以外ではあまりに高額なお墓の金額は現実性がありません。
また、お墓の承継者がいなくなる時代では100万円程度の納骨堂の方が増加している傾向です。
相続税対策では、不動産を使った方法などが効果大
相続税対策では第1に、現金預貯金など金融資産を不動産に置き換えることがあります。
相続税評価額となる不動産の路線価は一般的に実勢価格の7~8割だからです。
第2に、遊休不動産があれば賃貸などの事業用地にすることです。
賃貸アパート・マンション、賃貸ビルなどにすれば貸家建付地としてさらに節税メリットがあります。
高額な相続税課税資産がある場合は、不動産などの対策をした後での複合化を狙う範囲で生前墓を考えるのが現実的です。
ただし、数百万円までの相続税課税資産の軽減対策としては有効です。
生前墓と相続税の負担軽減のための準備
生前墓を相続税軽減のためにと考える場合、どのようなことを準備しておくと良いのでしょうか。
自分自身の相続税の概算計算
自分自身の相続税がいくら位になるかを概算計算します。
そのためには、自分の相続税課税対象となる金融資産、不動産資産をすべてリストアップし、不動産資産については路線価などを調べる必要があります。
次に基礎控除額を計算し、基礎控除額算定では相続人の人数を確認します。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
基礎控除額より相続税課税対象資産が多ければ、基礎控除額と債務控除を引き残額が相続税課税金額とし、相続税の概算計算をします。
相続税課税額があれば、生前墓購入も含めて税金対策の意味があります。
生前墓購入の必要性の検討
生前墓購入の必要性自体があるのかどうかの検討です。
当然家のお墓を継ぐ立場の人は新たに生前墓を購入する意味はなく、家のお墓を継ぐ以外の人にとって検討対象になります。
生前墓購入の問題点はないかの検討
生前墓の節税効果はあったとしても、以下のような問題点はないかを検討しておきましょう。
・生前墓を受け入れていない墓地があること
・墓地(霊園)の規則に注意
・維持費が発生する場合もあること
生前購入の節税以外の意味の検討
お墓を事前に購入して建てておけば、遺族の負担を減らせます。
事前に家族とゆっくり相談することができるというのも、家族にとっては意味があるでしょう。
また、お墓を生前に自分で購入すれば、自分の意向に沿ったお墓を用意できます。
デザインにこだわり、気に入った土地、墓石の素材を選ぶこともできます。
時間があるので、家族と一緒に墓地や霊園を見て回ることもでき、家族がお墓参りしやすい近隣を検討することも可能でしょう。
まとめ
生前墓の購入を考える場合、地元の市営墓地などの公営墓地は、価格も安く近隣で便利なため人気があり抽選となることが多くあります。
しかし、公営墓地では、遺骨を所有していることが条件になっており生前墓を認めないことが一般的です。
公営墓地を検討される方は良く調べておく必要があるでしょう。