家族のために葬儀費用を残す方法

葬儀・仏事

はじめに

終活に取り組む動機の一つに、子供に葬儀やお墓の費用の負担をかけたくないと思う親心があります。お墓については親のお墓に入る場合もありますが、誰でも関係するのが葬儀です。自分の葬儀の費用は自分達で用意しておきたいという人が増えているのです。

葬儀費用の残し方では預貯金以外にもいくつかの方法があり、それらの特徴を相続税対策や注意点も含めて紹介します。

実際にかかる葬儀費用

株式会社鎌倉新書が2020年に発表した「第4回 お葬式に関する全国調査」では、葬儀全体に掛かった費用は、全国平均119万1,900円(火葬使用料及び式場使用料を含む)と発表されています。そのため、平均を参考にすると、葬儀費用を最低でも100万円用意しておくと安心できるということがわかります。

参考「【第4回お葬式に関する全国調査】葬儀とその後にかかる費用のすべて(葬儀・飲食返礼品・お布施・香典・お墓・仏壇・遺言相続・遺品整理・空き家処分ほか)」:https://www.e-sogi.com/guide/29463/#i

近年では高齢化により80代90代での葬儀が増え、同年齢の知人も減ることから葬儀の小規模化が時代傾向となり、家族葬が増えています。葬儀の小規模化と葬儀費用の透明化の動向で葬儀会社間の競争も激しくなり、特に葬儀費用は都市部では安くなってきています。

また故人の相続財産から負担した葬儀費用については、相続税の計算対象となる遺産総額から控除されます。債務控除と同様です。

葬儀費用にも控除されるものと控除されないもの

注意すべきなのが、相続税課税の計算では葬儀費用にも控除されるものと控除されないものがあるという点です。

相続税の計算で控除の対象となる項目 は次の通りです。

・お通夜や告別式など儀式関係の費用
・遺体の運搬費用
・火葬や埋葬、納骨の費用
・参列者全員にお渡しする会葬御礼のための費用
・葬儀中に必要だった飲食代
・僧侶にお渡しするお布施:読経料や戒名料など

次に、葬儀費用で控除の対象にはならない項目はこちらです。
・香典返しの費用
・葬儀後に行われた法事の費用(初七日法要や四十九日法要など)
・葬儀後の故人のお墓に関する費用(永代使用料や墓石代など)
 ただし、故人の生前のお墓(生前墓)の購入は相続財産から控除されます。
・遺体に対する医学的処置の費用
また香典収入も故人の相続財産の加算にはならない点も覚えておきましょう。

葬儀費用を残すための具体的な方法について

本人が遺族に葬儀費用を残す方法では主に以下の4つです。

・預貯金
・信託
・保険
・互助会

それぞれの内容を見ていきましょう。

預貯金による方法

基本的には本人の死亡後も故人の銀行口座は凍結されません。また遺族が死亡届を地方自治体へ提出しても、個人情報は地方自治体から民間金融機関へは連絡されません。そのため遺族は故人の銀行カードと暗証番号、銀行通帳と銀行印を使い預貯金の引き出しは可能です。

また相続法改正されたため、故人の口座預金の一部を引き出せる金額が、相続人1人につき1金融機関で最大150万円まで認められるようになりました。この制度では、相続人全員の同意は必要ありませんが、手続きに必要な書類の準備が必要です。

金融機関によっては必要な書類が異なる場合がありますが、主な必要書類の一例は、下記の通り。

・故人の戸籍謄本
・申出人の戸籍謄本
・申出人の本人確認書類

信託による方法

本人が生前に、葬儀費用を準備し葬儀施行まで指定する葬儀信託と、費用だけを特定の相続人に渡す遺言代用信託があります。

まず葬儀信託とは、葬儀の内容と費用を事前に信託する制度です。信託の流れは、下記の通りです。

・生前に葬儀会社と打ち合わせをし、葬儀内容と費用見積もりに合意します。
・信託会社と信託契約を締結し、費用を信託会社が指定した銀行口座へ振り込みます。
・遺族から契約者が亡くなった連絡を葬儀会社が受けると、あらかじめ決められた内容の葬儀を施行します。
・葬儀施行と内容の確認後、信託会社が預かった金銭から葬儀会社へ支払いを行います。

葬儀信託のメリットとしては、葬儀内容が決まっているので、遺族が葬儀会社に死亡を知らせれば、葬儀施行から葬儀代金の支払いまでできるので、喪主や遺族の負担が減ることです。

対して葬儀信託のデメリットは、信託会社と提携している葬儀会社でないと利用できないため、信託会社と提携し葬儀信託を用意している葬儀会社と打ち合わせしなければならない点です。

次に遺言代用信託とは、本人の死後、指定の金額を、指定した相続人に渡すことができるように作られた信託銀行などの信託会社のサービスです。誰に引き継ぐかは、故人があらかじめ決めておくことができトラブルを防ぎます。

指定された相続人は、死亡診断書や本人確認書などの書類を提出することで、すぐに引き出すことが可能です。

メリットとしては、故人の思うとおりに誰にどのように相続に関するお金を指定できるため相続人間のトラブル回避には有効です。

デメリットとしては、あくまでも葬儀費用に関しての処理であれば、金額も限定され手間がかかります。また、遺言代用信託によって動くお金に関しては相続税がかかり相続税対策にはなりません。

保険による方法

葬儀費用に備える保険としては終身保険と葬儀保険があります。

まず終身保険は、死亡保障が一生涯続く保険で貯蓄型が基本です。保険期間を気にすることなく、いつ死んだとしても保険金を受け取れます。

葬儀費用のためだけに終身保険に加入することはないかもしれませんがあるとすれば、死亡保険金を200~300万円で契約すればよいことになり保険料は低額で済みます。

次に葬儀保険とは、葬儀費用を残すことを目的とした、高齢者でも入りやすい掛け捨ての生命保険で、保障額が比較的小さい保険です。

葬儀保険のメリットは、通常の生命保険で必要な健康告知がない、または告知があったとしても簡単であるため、持病のある方でも入りやすいということです。また80歳を超える高齢の方でも加入できる商品があります。

葬儀保険のデメリットは、掛け捨ての保険であるため、長期間加入していると割高になることです。したがって若い人が長期間加入するのには向きません。

冠婚葬祭互助会による方法

冠婚葬祭互助会とは、本人である加入者が毎月一定額の掛金を前払金として払い込むことにより、遺族により自分の葬儀に対するサービスが受けられるものです。

冠婚葬祭互助会のメリットとしては、本人による毎月の少額の掛け金により葬儀のサービスが受けられ、互助会が葬儀を担うので遺族の手間が減ることがあります。また、互助会自身が葬儀場を持っているところも多く、施設の内容、設備を事前に確認できます。

冠婚葬祭互助会のデメリットとしては、実際にはかけた費用だけでは希望する内容の葬儀が出来ず、追加で支払いが発生することがあることです。結果として費用が割高になる場合があります。また、入会してから利用するまでの期間が短いと、利用の際には未納分を一括で納入する必要がある場合もあります。

まとめ

葬儀費用を確実に残すことでは保険会社の広告が多く見受けられます。子供に迷惑を掛けたくないという親世代の気持ちは共通していると言えるでしょう。

しかし、葬儀の金額はさほど多額なものではなく、家族葬ならではの低価格プランも増えています。また、葬儀費用は相続財産から控除されますので、資産のある人で葬儀にこだわる人でも相続税対策になります。

葬儀費用の残し方をそれぞれ理解し、ご自身に合った方法を実践していきましょう。

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