高齢化のなかで選ばれる墓地霊園
お墓にまつわる問題のなかで、高齢化による影響が大きいのは後継者問題です。そのため、後継者がいない人に合わせたお墓も増えています。このタイプは一般的なお墓と比べて非常に安価で済む一方、将来的に合祀されるため継承はできません。
高齢化のなかで選ばれる墓地霊園について、主にお墓の後継者に焦点を当てて解説していきます。
家のお墓を継ぐ立場の場合
家のお墓を継ぐ立場にある人にとって、お墓と現在の住まいの距離は深刻な問題になりがちです。お墓が遠いために管理やお墓参りが困難な場合、改葬も考慮すべきです。
また、お墓を継ぐにあたり、配偶者の意思も考慮しましょう。昨今は「配偶者側のお墓に入りたくない」という意見も多く、夫婦で樹木葬などの合祀型のお墓を選択することも少なくありません。
自身に子どもがいないなどの理由から次世代の後継ぎがいない場合、自身の代でお墓を閉じる「墓じまい」を行うことも考えなければいけません。
家のお墓を継がない場合
家のお墓を継ぐ立場にない人は、自身のお墓をどうするか考えなければいけません。配偶者や子どもがいる場合はよく相談したうえで、生前にお墓を購入しておくのが一般的です。
お墓を作っても継承する親族がいない場合は、合祀型のお墓や散骨などが有力な選択肢となるでしょう。
一般墓地を購入する場合
新たに一般墓地でお墓を購入する場合のポイントを解説します。
運営主体から選ぶ
運営主体は、地方自治体が運営する公営霊園、民間業者が運営する民営霊園、寺院が運営する寺院墓地などがあります。
公営、民営の霊園は宗旨・宗派不問ですが、寺院墓地はお寺の宗派の檀家になることが条件となります。
一般墓地の購入にかかる費用
主に一般墓地の費用として、永代使用料、年間管理費、墓石料があります。基本的に総額で100万円以上は必要になると考えておくとよいでしょう。
・永代使用料
永代使用料とは、墓地の区画を使用するための費用です。土地代を反映するため、都市部ほど高額になります。
お墓の区画は所有権を得られるわけではなく、土地はレンタルをするイメージになります。ただレンタルといっても、基本的に継承者がいる限りは無期限で使用できます。継承者がいなくなり、管理費が払われなくなると「無縁墓」として扱われ、撤去されてしまう恐れがあります。
・年間管理費
霊園では基本的に年間管理費が必要となります。公営霊園の場合で年間2,000~1万円程度で、寺院墓地・民営霊園の場合で年間1~2万円程度が相場となります。
・墓石料
墓石料は、墓石の大きさや石材、彫刻などによって大きく異なります。全国平均では120~175万円ほどの金額がかかるといわれています。
一般的なお墓を持たない場合
後継者がいない場合、一般的なお墓を持たないことも珍しくありません。高齢化の影響により、現在はお墓を持たない場合の選択肢も多様です。
とくに永代供養墓と呼ばれる継承を必要としないお墓が人気で、納骨堂や合葬墓などさまざまなタイプがあります。
納骨堂
納骨堂はロッカーのような棚に骨壺を納める、都市部で人気の形態です。価格は1人あたり数十万円から納骨できます。1~2人用が主流ですが、家族で利用できる施設もあります。
散骨
散骨は、遺骨を粉末状にして海や山などに撒くことで埋葬とする方法です。海での散骨(海洋散骨)が一般的で、船をチャーターして執り行われます。費用は20~30万円程度で執り行えます。
合葬墓
合祀型のお墓で、低価格で年間管理費も不要なところもあります。有名なお寺が販売する合葬墓もあり、人気を集めています。合葬といっても、遺骨を個別の骨袋などで収蔵して、ほかの方の遺骨と混ざらないようケアしてくれる施設もあります。
お墓を準備する前にすべきこと
お墓を準備する前に、まずは家族や親族との相談が必要となります。そのうえで、具体的な検討に入りましょう。
家族・配偶者との相談
家族、配偶者がいる場合は、一緒にお墓をどうするか考えていきましょう。とくに配偶者の意思によっては、お墓の継承や選択肢は大きく異なります。
親族との相談
家のお墓に関わる親族がいる場合、今後のお墓の継承について相談しましょう。お墓は必ずしも長子が継承するものではありません。例えば、長子に子がおらず、次子には子がいる場合は、次の世代への継承が確実な次子にお墓を任せるといった判断が必要となるでしょう。
お墓の種類の検討
新たにお墓を求める場合は、どのようなお墓がよいか検討します。とくにお墓の後継者がいるかがポイントとなり、自身で墓じまいをする際は散骨や永代供養墓が選択肢に挙がります。。
まとめ
昨今はお墓の選択肢が驚くほど広がっており、とくに高齢化に合わせてお墓の後継者がいない人向けの形態が増えています。お墓の低価格化も進んでいるので、自身の現状に合ったお墓を調べておくことが大切です。
また、高齢化がますます進行するなかでは「お墓は代々守っていくもの」という考え方を変えることも必要です。お墓は自身の代のみと、考えを柔軟にしてみてください。