「位牌分け」のタイミングや手順について

仏壇・位牌

位牌とは

まず、位牌とは故人の戒名が書かれた木牌(ぼくはい)のことです。位牌は故人の霊魂が宿っていると考えられており、仏教において大事な物です。発祥は中国と言われており中国の儒教の影響を受け、宋代に中国仏教(禅宗)に取り入れられ、日本には鎌倉末から室町期に禅僧を通じてもたらされたとするのが通説です。日本において位牌は仏教の葬送儀式とともに十六世紀には庶民の間に広まり、江戸時代に入って広く普及しました。

位牌は仏壇の中に置かれます。仏壇は本尊をお祀りする目的と、位牌を安置して先祖を供養する目的があります。本尊は仏壇の中心的存在、位牌はそのそばに置くものとされています。位牌はそういった霊が宿る依代(よりしろ)としての意味合いが強く、位牌がなければ宿るところがなくなってしまうので必要とされています。ただし、浄土真宗では教義が異なります。

位牌には、仮の位牌の白木位牌と本位牌があります。 白木位牌とは葬儀で使用するもので葬儀までに用意するいわば仮の位牌です。葬儀の際に仮の位牌に故人の魂を宿し、四十九日の法要の時に経を読んでもらうことで魂を本位牌に移すとされます。本位牌には、戒名や没年月日、俗名や享年を記します。白木位牌から本位牌に故人の魂が移された後は、仮位牌を残しておく必要はなく、処分可能です。仮位牌は通常のごみとして処分できますが、捨てにくい場合は寺院でお焚き上げをしてもらうこともあります。

位牌分けとは

四十九日法要後、本位牌を複数作ることを「位牌分け」と言います。地域によっては昔からある慣習です。お墓に納骨する際遺骨を分けるのを分骨と言い、これも行われています。遺骨と同様、位牌も分けることができるのです。一般的に、位牌は故人1人に対して1基準備し、本家の跡取りである喪主の家にある仏壇に祀られますが、故人に複数の子供がいた場合、子供それぞれが自宅に位牌を持ち帰り供養する場合などに行われるのが、位牌分けです。

もともと位牌分けは中部地方(特に長野県、山梨県、静岡県)や北関東地方(特に群馬県)などで古くから行われている習慣でした。しかし最近では核家族化や、故郷を離れて都会で暮らす人が増えたこともあり、広く行われるようになりました。

位牌が祀られているお墓を継いだ人の家(本家)から遠いところに住んでいるため、頻繁にお参りができないことが一つの理由です。また、お墓からも遠いのでせめて家で子供として親の供養を行いたい、心の支えとして親の位牌を手元に置きたいという気持ちから位牌分けを行うこともあります。

位牌分けの宗派による相違

位牌分けに関しては、基本的に浄土真宗以外の宗派であれば行うことができます。浄土真宗では位牌を必要としないので、位牌分けという慣習もありません。浄土真宗で位牌を作らない理由は、浄土真宗では、人は阿弥陀如来の導きにより、浄土に往生し仏となるという教えがあります。阿弥陀如来を信じて奉ると決めた時点で、誰もが仏になれることが約束されているという教えです。つまり、故人の魂は亡くなってすぐにこの世を離れ、成仏していると考えるため、魂が宿った位牌を仏壇に置いて供養していく必要がありません。なお、他宗派では、位牌を分ける上での細かい決まりがある場合があり、菩提寺に確認が必要です。

位牌分けの手順について

位牌分けを行うタイミングは、本位牌を作る時です。多くの場合は四十九日の法要の時に位牌への開眼法要(魂入れ)を行いますので、それまでに必要分の位牌を用意します。それ以後の位牌分けも可能ですが、再度開眼法要を住職に依頼する必要があります。

位牌分け用の位牌を人数分準備したら、四十九日法要の時に菩提寺などの住職に開眼法要を行っていただきます。なお、白木位牌の閉眼供養(魂抜き、性根抜き)も行います。位牌には全て同じ文字を記します。位牌を持ち帰ったら、それぞれの家庭で安置し、お祀りします。

位牌分け後の仏壇の用意

自宅に位牌を置く場合、まず仏壇の用意が必要です。仏壇はいわば自宅におけるお寺です。仏壇に祀るのはその宗派の本尊などです。本尊とは、本尊とは信仰の中心として祀られている仏像などで、宗派によってそれぞれ異なります。本尊の形式には、仏像や絵像の掛軸、曼荼羅などがあります。

本尊は、仏壇の中心である須弥壇(しゅみだん)の上に安置します。より丁寧な場合は、その両脇に脇掛(わきがけ)という、宗派で定めている祖師像などの掛軸を安置します。

宗派による本尊は下記の通りです。
・天台宗:阿弥陀如来、釈迦如来
・真言宗:大日如来
・浄土宗:阿弥陀如来
・浄土真宗:阿弥陀如来
・曹洞宗:釈迦如来
・臨済宗:釈迦如来
・日蓮宗:大曼陀羅、日蓮上人像

これらを確認し仏壇店で仏壇と本尊、仏具などを購入します。

位牌分けの費用

位牌分けにかかる費用は、まず位牌代金です。これは1万円台からが相場で、位牌の大きさや材質によって価格が変わってきます。戒名入れには数千円がかかり、入れる戒名の文字数や位によってお布施の金額が変わってきます。開眼供養のお布施は、相場が1万円~3万円程度です。自宅で行う場合は、住職へのお車代として相場5千円〜1万円が必要となってきます

既に仏壇を設置している場合には仏壇の購入は不要ですが、仏壇を持っていない場合は、仏壇および仏具一式を購入することになりますので、上記の費用の他に仏壇・仏具購入の費用も掛かります。

位牌分けの慣習

地域的に異なりますが、位牌分けには下記のような慣習があります。故人の子供たちは、男女、実子、養子、婚出・分家などを問わず、平等に祀り手となることができます。ただし、未婚者は資格がありません。婚姻している場合、夫方の両親、妻方の両親の位牌が祀られます。一家の仏壇には、その家の先祖である父系的位牌と分与された母方系位牌が祀られます。

兄弟姉妹にお墓を継ぐ立場の人(長男など)がいて、他の兄弟姉妹で親などの位牌分けを希望する場合は、親などの入るお墓のある菩提寺の関係も受け継ぐ形になります。親の位牌は菩提寺の宗派の戒名を付けたものとなります。

ただし核家族化、少子化が進み、お墓の継承者が少なくなっている現代では、位牌を作る必要性を感じていない方もいます。家のお墓を継ぐ人は自分の代まで家のお墓に入るかもしれませんが、位牌を作っても祀る人はいません。いずれも位牌分け以前の位牌そのものの必要性が乏しいと言えるでしょう。

まとめ

位牌分けとは四十九日法要後、本位牌を複数作ることを指します。お墓が遠く頻繁に墓参りに行けないため自宅で親の供養を行いたい、心の支えにしたいといった場合に行われます。

ただし、位牌分けは仏教の葬式儀礼の1つです。仏教と関係なく、親を偲ぶだけならば位牌があるかどうかは関係なく、故人の遺影の写真を飾り供養しても構いません。大切なのは先祖を供養したいという気持ちです。

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