はじめに
「後飾り」という言葉を聞いても、ピンとくる人は少ないかもしれません。「後飾り」とは故人が亡くなって葬儀、火葬が終わり、遺骨になった後、自宅に戻って四十九日の法要まで遺骨などを飾る祭壇です。
基本的には仏式で行われるものです。本記事でも、仏式によるものを中心に「後飾り」の意味、配置、祀り方、処分の仕方などについて紹介します。
後飾りとは
後飾りとは、葬儀、火葬が終わった後四十九日の法要まで、自宅で遺骨などを置く祭壇のことです。「自宅飾り」「後壇(あとだん)」と呼ばれることもあり、中陰檀(ちゅういんだん)と言う場合もあります。
お葬式が終わりご遺骨や位牌が自宅に戻ってきた時点では、故人はまだあの世に旅立っておらず、先祖を祀ってある仏壇とは区別されます。
後飾りは2段もしくは3段の祭壇であり、白木で作られています。それ以外の材質で作られる場合もありますが、その場合は上から白い布をかけるのが一般的です。自宅に仮に置くものでサイズは小さいものです。高さ、幅、奥行きとも1メートル以内です。
四十九日法要まで仏壇の代わりのようなかたちで使われるのが一般的で、葬儀後家を訪れた弔問客の方がいる場合は、後飾り祭壇に手を合わせることになります。
そもそも四十九日とは
仏教では人が亡くなって四十九日の間は、魂がこの世と来世をさまよっていると考えられており、この間に、亡くなった方の魂が次の世でどこにいくかが決まり、あの世へ旅立つという大切な意味を持つ期間です。仏教では、故人は四十九日の間「中陰」(ちゅういん)という期間にいると考えられていて、中陰の期間に故人は閻魔大王の裁きを受けるとされています。
仏教における輪廻転生の考えとして、死後四十九日後次に生まれ変わる先には六道(ろくどう・りくどう)という6種類の世界があるとされています。そして、何度も生まれ変わりながら徳を積んでいき、最終的には浄土にいけるという信仰があります。閻魔大王の裁きは初七日の日から始まり、7日毎に7回あり、この裁きの中で浄土を目指すとされています。
なお浄土とは、いわゆる極楽浄土のことです。欲望や煩悩、また苦しみなどのない世界とされ、仏や菩薩が暮らす清らかな国のことをいいます。また六道には、三善趣といわれる「天道」「人間道」「修羅道」と、三悪趣といわれる「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」があります。
親族が法要を行う理由は、故人が亡くなった後、閻魔大王の裁きを受けて、四十九日に次の行き先が決まる間、故人の生前の罪が軽減され、また、善の行いを支援するためで、これを「追善供養」です。
この特別な四十九日の間に故人を安置する祭壇を、四十九日に故人がいるところはこの世とあの世の間、または陰と陽の間という意味から「中陰」と呼ばれ、中陰壇と呼ばれたのが後飾りの由来です。
後飾りの置き場所
後飾りを設置する場所に決まりはありませんが、ご自宅に仏壇がある場合は仏壇の近くが良いでしょう。
仏壇がない場合には、方角であれば部屋の北側あるいは西側が適当と思われます。また、お参りがしやすい場所になります。ただし、直射日光が当たる場所や水回りの近くは避けます。
後飾りをする時
後飾りは、葬儀・火葬が終わり、自宅にご遺骨が戻った時に設置されます。この後、四十九日法要まで飾られておくことになります。四十九日法要が終わった後に後飾りは撤去することになるため、仏壇がない場合はそれまでに仏壇を用意することが望ましいとされています。
仏式以外では、神式の場合は五十日祭まで、キリスト教式の場合は追悼ミサや昇天記念日までです。
後飾りに必要なもの
後飾りの上に置かれるものは、仏式では次のようになります。なお、宗派によって異なる場合もあります。
ご遺骨
中心となるのはご遺骨です。後飾りは2段ないし3段の棚で作られており、2段であればご遺骨は上段に遺影と並べて置き、遺影の右横に置きます。3段でも最上段に置くのが通常です。
ご遺骨は、骨壺をそのまま裸で置くのではなく、骨壺を包んでいる袋に入れた状態で置きます。
遺影
遺影は故人を偲ぶためのものであり大切なものです。遺影は後飾りの最上段に置かれるのが基本です。遺影は黒のフレームに入れたものをそのまま飾るか、フレームに黒いリボンを掛ける場合もあります。
位牌
四十九日の法要までは仮位牌の白木位牌(しらきいはい)が使われます。白木位牌というのは、その名前の通り、白木のままの位牌です。四十九日の法要後、本位牌に移ります。
故人の魂の仮の住まいといえるでしょう。
本位牌とは、四十九日法要以降、故人が成仏した後に仏壇に置くことになる位牌を指します。漆塗りや唐木製といった本格的な仕様のものです。四十九日法要の席で、僧侶により白木の位牌から本位牌へと魂を移す儀式が行われます。(魂抜き・魂入れ、お性根抜き・お性根入れ)
花瓶・生花
花瓶に生花を入れます。白い菊などがよく選ばれますが、故人が愛した花があれば、それを飾るのもよいでしょう。葬儀のときに使われた供花を使うこともあります。
なお、花瓶に入れた生花は祭壇の上に置くのが一般的ですが、祭壇に乗りきらない場合は、両脇の床(もしくは床に置いた台)の上に置く場合もあります。
お供えについて
お供えも後飾りの祭壇に置くことがあります。茶湯器、仏飯器などに入れられた飲み物やご飯のほか甘い物や果物が置かれることもあります。
その他
その他に必要な仏具は、次の通りです。
・香炉
・線香
・線香立て
・ろうそく
・ろうそく立て
・鈴
・鈴棒
・白い布
白い布は、白木素材以外の棚を使用している場合にのみ必要です。白い布は祭壇の上に敷きます。
後飾りの配置
ご遺骨、白木位牌、仏具などの配置は3段の場合次のようなものです。
・上段:ご遺骨、遺影
・中段:白木位牌
・下段:香炉、線香立て、ロウソク立て、花立て、鈴、鈴棒、茶器、仏飯器、焼香台など
2段の場合は、祭壇前に小机のような台を置いて3段目の代わりとするか、3段目に置くべきものを2段目にまとめて飾るのが一般的です。
なお、浄土真宗では亡くなればすぐに成仏するという考え方で追善供養は不要との特徴があり、後飾りの仕方には異なる点があります。位牌も不要としています。
神式の場合
神式では、仏式と同じ階段式になっている祭壇を使う場合もありますが、正式には白木で作られた八足の祭壇を使います。八足の祭壇とは、片足に4本ずつ脚をつけた台のことをさします。なお、後飾りで八足を使う場合、仮霊舎(かりみたまや)の檀を設ける必要があります。
用意するものは、八足の3段の棚以外に次のようなものです。
・ご遺骨
・遺影
・霊璽 ※仏式の位牌にあたるものです
・榊立 ※両端に置きます
・榊
・火立 ※両端に置きます
・ロウソク
・三方
・徳利(両端に置きます)
・水玉(水器)
・皿(洗米と塩用に2枚必要)
神具の飾り方は次のようになります。
上段:ご遺骨、遺影
中段:霊璽、榊立
下段:火立、三方(徳利、水玉、皿を置きます)、玉串
キリスト教式の場合
キリスト教式の後飾りには、特に決まりはありませんが、一般的に、小さなテーブルに白い布を被せて台を作ります。
小さめのテーブルの上に置くもので、用意するものは、以下の通りです。
・白い布十字架
・ご遺骨
・遺影
・花立て
・生花
・ロウソク立て
・ロウソク
・聖書
・皿 ※パンをのせるために使います
・パン
神具の飾り方は、次のようになります。
上段:十字架
中段:ご遺骨、遺影
下段:花立て、ロウソク立て、聖書、皿(パンを上にのせます)
後飾りの準備方法
葬儀会社が主導して後飾りを設置するのが通常です。費用については一式のプランに含まれている場合とオプション扱いになる場合があります。また、後飾りは通販で購入して、自分で設置してもよいでしょう。
業者によって異なりますが、後飾りのオプション費用の相場は下記の通りです。
・葬儀社のオプション料金では2万円~数万円程度
・葬儀社を介さずに、自分で通販などにより「後飾り祭壇」を購入する場合では、5,000円~2万円程度
・葬儀社のレンタル料金では2万~3万円程度(仏具が含まれる場合もあります)
後飾りの処分方法と注意点
後飾りの白木祭壇は、あくまで「四十九日までの仮の祭壇」ですから、四十九日がすぎた後は、ゴミとして処分してしまって構いません。しかし、ゴミとして処分するのも手間がかかります。そのままだと粗大ごみになってしまいますのでばらして可燃扱いとするしかありません。
場合によっては、葬儀社が引き取ってくれるケースもあるので、一度引き取りの打診をしてみると良いでしょう。
まとめ
後飾りとは、葬儀・火葬が終わった後四十九日まで、自宅でご遺骨などを置く祭壇のことです。多くの場合、あと飾りは葬儀社で用意してくれます。費用はセット料金に含まれているのか、オプション料金なのかを確認します。
宗派によって若干異なる部分もあったりするため、葬儀社に相談しつつ進められると安心です。