祖霊舎の祀り方と神棚との違いについて

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はじめに

先祖供養においては、仏壇の中に位牌を祀るのが一般的です。しかし、仏教式ではなく神道式の祀り方もあります。神道では神棚がイメージされますが、祖霊舎(それいしゃ)というものもあります。祖霊舎とはどのようなものか、神棚との違いについて触れ、祖霊舎の祀り方などを含めて紹介します。

祖霊舎と仏壇の相違

祖霊舎とは、神道式の故人や祖先をお祀りするお社が祖霊舎(神徒壇と呼ぶこともあります)です。神道でも祖先の御霊(みたま)は家の守護神となり子孫を守るとされています。

仏壇は「仏様を祀る場所」と「故人や先祖を祀る場所」という2つの要素を持ちますが、神道の場合は「神様を祀るのが神棚」で、「故人・先祖を祀るのが祖霊舎」という様に分かれています。

祖霊舎の中には、仏壇でいう位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。霊璽は故人の霊が宿る依代(よりしろ)で、故人やご先祖が家の守護神となって子孫を守ってくれると考えられています。

神道では、人は旅立った後は子孫を守っていく霊になると考えています。仏教のように「成仏する」という考え方は持っておらず、家に留まり子孫を守っていきます。亡くなった人の魂は子々孫々に受け継がれ、永遠に不滅のものとなると考えます。

祖霊舎と神棚の違い

祖霊舎では個人や先祖を祀り霊璽をお祀りします。神棚では神様と神札を祀り、神具を供えます。祖霊舎と神棚は別になります。

神棚は伊勢神宮などの神様をお祀りし、五穀豊穣、招福、安全、商売繁盛などを祈願しています。

祖霊舎の祀り方

祖霊舎は五十日祭を終えた新しい御霊を祀るものなので、五十日祭までに用意して安置されることが多いです。

また新しい祖霊舎を購入された場合は、五十日祭のときに神社の神職にお願いしてお祓いをして頂き、霊璽を祖霊舎の中に祀ります。祖霊舎には霊璽を祀る奥の内扉がついていますので、その中に霊璽を納めます。祖霊舎の外扉は常に開けておくのが一般的ですが、霊璽を祀る奥の内扉は閉めておきましょう。

祖霊舎は神棚とは別に安置し、神棚の下など神棚より低くなるよう安置します。隣に安置することもあります。

霊璽(れいじ)

霊璽は中央の扉の中に祀ります。「…命(みこと)」という霊号がつきます。

神道では霊璽に故人の御霊を移して、家庭でお祀りすることにより、故人や先祖はその家の守護神となり子孫を守るといわれています。葬儀において仮の霊璽を使った場合は、五十日祭までにきちんとした故人の霊璽をつくりま
す。

霊号(れいごう)

神道では仏式の戒名に当たるものはありませんが、神社の神職から霊号をつけていただきます。霊号は氏名の下に「命(みこと)」の号をつけた「○○○○命」という霊号が一般に多いです。

「命」の前に、男性の場合「大人(うし)」、女性の場合「刀自(とじ)」をつけ「○○○○大人命」「○○○○刀自命」とする場合もあります。子供の場合「彦」「姫」をつけることもあります。

霊璽の形

霊璽はさまざまな形があり、角形の白木に上からかぶせる覆いがついたものが一般的です。

覆いをとった中の白木の表面には霊号を「○○○○命之霊」、裏面には亡くなった年月日、年齢を「平成○年○月○日帰幽 享年○歳」などと記入します。

また霊璽を入れる内扉はつねに閉めておきます。霊号を書いた霊璽は、覆いをかぶせて祖霊舎の奥の内扉の中に祀ってください。

神道では、神は神聖なもので直接目に見えぬものとの考えから、仏教の位牌とは違い、祖霊舎に納める霊璽には鞘(さや)と呼ばれる蓋が付き、人の目に触れぬようになっています。 祖霊舎の扉はつねに開けておきますが、霊璽を入れる内扉はつねに閉めておきます。

神器等の飾るもの

次に神器などの飾るものを確認しましょう。

神鏡(しんきょう)

太陽神を象徴する神鏡をご神体として霊璽を入れる内扉の前に置きます。神鏡は太陽を鏡で指していると言われています。神道では 太陽神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を最上の神として崇め祀ります。

また、この神鏡を乗せる台は通常雲の形をしていて雲形台と言われます。

真榊(まさかき) 

先端に榊葉が飾られ、繁栄の意味があります。向って右側に「鏡」、「曲玉」、左側に「剣」が飾られ、これを三種神器(さんしゅのじんぎ)といい、神様の道具の一つです。どの神様をお祀りされていてもお飾りとして使うことができます。

榊立て(さかきたて)

榊は毎月1日と15日に新しいものに取り換えて飾ります。また、家庭内のお祝い事や、正月、お祭りなどの時にも新しい榊とお供え物をしてお参りするようにします。

お供え物

祖霊舎のお供え物は神棚と同じです。お米、お水、お塩、お酒、榊、ローソクなどが基本的なお供え物になり、これらに加えて故人が好きだったものを祀ることもあります。配置は神棚のお供え物と同じ配置になります。

お参りと方角

神棚と同じように、祖霊舎にもお参りします。お参りの方法は神棚と同様で、お参りする前に手と口を洗って清潔にし、二拝二拍手一拝をします。お参りするときは、先に神棚から行います。

また祖霊舎の置き場所に特に決まりはありませんが、東向きか南向きの明るい方角で、お参りしやすい場所がいいと言われています。東向きか南向きに置けない場合は、他の向きでもかまいませんが、真北に向けて置くことは避けます。

祖霊舎と神棚の祀り方の注意点

ご家庭によっては仏壇と祖霊舎の両方を祀っているケースもあるでしょう。日本においては神仏習合(しんぶつしゅうごう)という考え方があり、神様と仏様を一緒に祀る場合があります。仏教では亡くなった人は仏様、神道では亡くなった人は神様(守護神)になると考えられています。

そのため、神棚と仏壇を同じ部屋に安置しても問題ありません。現在の住宅では部屋数も限られており、安置する場所として、どちらも手を合わせやすく人が集まる場所を選ぶ場合が多いためです。

まとめ

神道式の故人や祖先をお祀りするものが祖霊舎です。神道でも祖先の御霊は、家の守護神となり子孫を守るとされています。神道の場合は、故人、先祖を祀るのが祖霊舎で、神様を祀るのが神棚というように分かれています。祖霊舎の中には、仏壇でいう位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。

神式は日本では出産、お宮参り、七五三、結婚式と慶事に多く行われ、仏式は葬儀とお墓の弔事に多く行われているのが一般的です。宗教的な信仰というよりもやや慣習的なものとなっています。仏式の仏壇と比較し、神式では神棚と祖霊舎というものがあることを知っておくことが大切です。