はじめに
開眼供養(かいげんくよう)の魂入れと閉眼供養(へいがんくよう、へいげんくよう)の魂抜きというのは仏教による儀式ということは分かっても、どのような意味があるのか、必要性はあるのか、また、どのような時に、どのように行われるのかは分からないものです。
仏教特有の儀式ではありますが、浄土真宗では基本的な教義の関係から行われないこともあります。開眼供養の魂入れと閉眼供養の魂抜きの意味や行われる時、準備、流れなどについて紹介します。
開眼供養の魂入れと閉眼供養の魂抜き
開眼供養の魂入れとは、仏壇や位牌を新しく購入した時、お墓を新しく建てた時、もしくは、これらを引越しなどで移動した時に行われる、僧侶を招いての仏壇の本尊や位牌、お墓の墓碑に魂を宿らせ礼拝の対象にする儀式のことです。
僧侶に読経していただく事により、安置している仏壇のご本尊(仏像)や位牌の眼を開くこと(開眼)で、本尊では霊験が宿り位牌では故人の魂が宿ることになります。仏壇の中に安置している本尊や位牌に魂を入れ込む儀式となるため、「御魂(みたま)入れ」「御性根(おしょうね)入れ」「入魂式」などとも呼ばれています。儀式としては慶事になります。
次に、閉眼供養の魂抜きとは、仏壇や位牌、墓石に宿っている先祖の魂を抜く意味を持つ儀式です。仏壇や位牌を処分する場合や墓じまいを行う際に必要な儀式です。閉眼の意味は、仏様の眼を閉じるということで、魂抜きは「お性根(しょうね)抜き」、「御魂抜き(みたまぬき)」とも呼ばれることがあります。
閉眼供養をしないと、魂が入った状態の仏壇やお墓を移動し、処分するということにつながります。閉眼供養の魂抜きをすることによりそこに宿っている魂を抜き取り普通のものに戻さなくてはなりません。
開眼供養の魂入れの由来
「開眼」とは、もともと仏像の眼を開くという意味です。仏像作りでは大部分を完成させ、最後に眼を描き込む事によって彫像から仏像になります。これを儀式化したものが開眼供養で、魂入れをして初めて仏像に霊験が宿るとされています。
日本での開眼供養は、奈良時代に聖武天皇が造立した東大寺の大仏に始まると言われます。大仏の開眼供養では、大仏殿の前での儀式が盛大に執り行われたと言われています。
開眼供養を行う場所・時期
開眼供養を行う場所は、仏壇を設置する場所、お墓、そして位牌であればお寺に持ち込むことも可能です。僧侶がいれば行えます。
また開眼供養を行う時期に決まりはありません。仏壇や位牌では、開眼供養を行う節目となるのは次のような時期があります。
・四十九日法要(本位牌の用意)、一周忌法要
・仏壇を初めて購入した時
・引越しして仏壇の設置場所を移動する時
・同じ屋内で、別の部屋に仏壇を移動する時
お墓の場合は、下記の通りです。
・亡くなった家族のためにお墓を建てた時
・古いお墓から改葬するために新しい墓を建てた時(納骨の際に開眼法要と納骨法要をあわせて行うのが一般的です)
また寿陵(じゅりょう)と呼ばれる生前墓の場合は、お墓の完成時に開眼供養を営みます。寿陵の場合、遺骨がないため墓前で開眼供養だけ営みます。
浄土真宗の場合
浄土真宗では、宗派の考えから位牌はありません。そのため、開眼供養も行いませんが、代わりに「御移徙(おわたまし、ごいし)」や、派によって「入仏法要」、「入仏慶讃法要(にゅうぶつきょうさんほうよう)」などの名称の法要を行います。お墓の場合には、「お墓開き」、「建碑慶讃法要(けんぴきょうさんほうよう)」、「墓所建立法要」などと呼ばれます。
閉眼供養の魂抜きを行う時期
次のような時には本尊、位牌、墓石の「魂抜き」をする必要があります。
・引越しで仏壇を移動する時
・同じ家の中で、別の部屋に仏壇を移動する時
・本尊、位牌を修理に出す時
・本尊、位牌を買い換える時
・墓じまいする時
魂抜きを行うことで本尊は木の像や絵に、位牌は木の札に、墓石は石に戻り移動ができるようになります。
また浄土真宗では教義の違いから、閉眼法要にあたる儀式のことを「遷仏法要(せんぶつほうよう)」と言います。
そして閉眼供養を行って魂が抜けた本尊、位牌は「ただのモノ」として扱えるので、一般の家庭ごみとしても処理することが可能です。しかし、心情的な理由で菩提寺などに依頼して「お焚き上げ」という焼却処分をしてもらう場合が多くあります。
開眼供養の魂入れと閉眼供養の魂抜きの準備について
開眼供養の魂入れと閉眼供養の魂抜きは逆の意味をもったものです。開眼供養の魂入れが、仏壇や位牌を新しく購入した時、お墓を新しく建てた時、もしくは、これらを引越しなどで移動した時に行われるのに対して、閉眼供養の魂抜きは仏壇や位牌を処分する時、墓しまいをし、墓石を処分する時に行われます。
いずれも僧侶を招いて、仏壇の本尊や位牌、お墓の墓石に、開眼供養の魂入れでは魂を宿らせ礼拝の対象にし、閉眼供養の魂抜きでは逆に宿っている魂を抜き、仏壇や位牌、墓石をただのものにする儀式のことです。
開眼供養の魂入れの準備と流れ
開眼供養は仏教の儀式の中の一つですが、慶事(けいじ)となりますので、通常の法事(法要)は弔事(ちょうじ)となり準備するものが異なります。 準備するものは、下記の通りです。
・仏壇をはじめとした仏具一式
・位牌(四十九日法要を執り行う場合のみ)
・朱ロウソク(開眼供養は慶事となるため、白ロウソクではありません)
・お供え物(餅、赤飯、乾燥昆布、わかめ、乾燥シイタケや栗、果物など)
開眼供養にあたっての準備と当日の流れ
開眼供養にあたって必要な準備については次のようなものです。
・僧侶への依頼および日時と場所の設定
・参列者への連絡および出欠の確認
・会食の手配
・引き物の手配
・お布施の準備
当日の流れ
宗派によって若干の際はありますが、当日の流れは下記のようになります。
・招待客をお迎えします
・僧侶をお迎えします
・僧侶にお茶を出して、少しの時間談笑します
・開眼供養を行います
・参列者にて焼香をします
・席を移動して、会食します
開眼供養のみを行う場合のお布施の相場
お布施の相場は3万円〜5万円です。
僧侶に自宅やお墓まで移動してもらった場合などはお車代として5千円から1万円を加えます。また僧侶が会食しない場合の御膳料は、5千円から1万円ほどが相場です。
閉眼供養・魂抜きの準備
次に、閉眼供養と魂抜きの準備を見ていきましょう。また当日の流れは開眼供養と同様になるので、上記の開眼供養の流れを参考にしてください。
閉眼供養・魂抜きの際に必要なもの
閉眼供養時に必要な物は、宗派やお寺によって準備するものは異なりますが、一般的には次のようなものが必要です。
・仏壇をはじめ仏具一式
・生花(仏花)
・お供え物(故人が好きだったお酒やお菓子)
閉眼供養を行う場合のお布施の相場費用
お布施は地域や宗派によっても異なりますが、3万~5万円が相場と言われています。
僧侶にお墓まで移動してもらった場合などはお車代として5千円から1万円を加えます。閉眼供養の後は、会食などはしないことが一般的です。
まとめ
開眼供養の魂入れとは、仏壇や位牌を新しく購入した時、お墓を新しく建てた時、もしくは、これらを引越しなどで移動した時に行われる、僧侶を招いての仏壇の本尊や位牌、お墓の墓碑に魂を宿らせ礼拝の対象にする儀式です。
また閉眼供養の魂抜きとは、仏壇や位牌、墓石に宿っている先祖の魂を抜き取る意味を持つものです。仏壇や位牌を処分する時や墓じまいを行う際に必要な儀式ということを覚えておきましょう。