お墓の横に建てられる「墓誌」とは?

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墓誌とは

墓誌とは石塔の横などに設置される、お墓に埋葬された故人の名前・戒名・没年月日・来歴・功績などを記録する石碑のことです。

墓誌には、宗旨や宗派、その地域の習わしにより「墓標」、「霊標」、「戒名板」、「法名碑」などさまざまな呼び方があります。また墓誌の設置場所に決まりはありませんが、墓碑の左右に設置してある場合が多くあります。

墓誌の役割

墓誌には、お墓に誰が埋葬されているかを記し後世に残す役割があります。墓碑に、埋葬されているすべての人の戒名などを彫刻できれば、墓誌は必要ありません。

しかし、墓碑に戒名を彫刻するスペースの余裕がない場合や、隣の墓との距離が近すぎて彫刻しても読めない場合には墓誌を建てたほうがよいでしょう。

墓碑・墓石・墓誌の違い

ここで似て異なる3つの言葉の意味を整理します。

墓碑

墓碑は、故人名や戒名、故人をあらわす印象的な言葉などが刻まれた、参拝対象の石塔を指します。一般的なお墓を建てる場合、墓碑は、墓石の一番上に位置します。

墓碑には、戒名や俗名の他、没年月日や略歴などが刻まれることがあります。

墓石

墓石は墓地に建てられる石塔や石板すべてのことです。お参りの対象となる墓碑部分はもちろん、墓誌、土台部分なども、全て墓石の一部です。

墓誌の墓碑との相違

墓誌は前述した意味ですが、墓碑との決定的な違いは、墓碑は参拝の対象になっても墓誌は参拝の対象にはならないことです。墓誌は、石でできた記録版のようなものです。

墓誌の成り立ちと必要性

戦後まもなくお墓や埋葬等の死者の取り扱いに関する法律『墓地埋葬などに関する法律(通称「墓埋法」)』が制定され、自由に埋葬や建墓ができなくなりました。これにともない、墓地も区画整理され、墓地が不足していったために、1つの石塔で先祖代々を祀る家墓が登場します。

墓碑には「〇〇家之墓」などのように家名を刻むものなどです。スペースの関係上個別の戒名は墓碑の両脇に彫刻するようになり、名前が収まりきらず、墓誌が生まれました。現在では、この墓誌を墓碑の横に据え付けるのが一般的なスタイルになっています。

また、墓誌は必ずしも必要なものではないです。墓碑の側面に彫るスペースがあれば、墓誌を建てずそこでも構いません。

墓誌に彫る内容

墓誌には、故人様やご先祖様のさまざまな情報を彫刻します。仏教宗派によって彫刻する内容が異なることもあります。一般的に仏教式の墓誌に彫る内容は4つです。

戒名

寺院により授かった死後の名前です。戒名は宗派ごとの決まりごとがあります。

・真言宗では梵字の「ア」を刻むことがあります。  
・日蓮宗などの法華系に宗派では「妙法」という二字を加えることもあります。
・浄土真宗では戒名ではなく「法名」と呼びますが、教義上戒名とは意味が異なります。墓誌のことも「法名碑」と呼びます。

命日

亡くなった年月日を彫刻します。多くは元号(昭和、平成など)を用いますが、キリスト教のお墓では西暦が用いられます。

行年(享年)

亡くなった年齢を彫刻します。年齢は数え年(実際の年齢に一年を加えたもの)が一般的です。

俗名

故人の生前の名前のことです。宗教による違いでキリスト教では、洗礼名を横書きで彫刻します。

墓誌を建てる時期

墓誌を建てる時期は、次の2つが挙げられます。

新規にお墓を建てる時

お墓を新規に建てる時に合わせて、墓誌を建てます。すぐには使用しなくても、将来的に墓誌を使用することを想定して、お墓の新規購入時に墓誌を建てておく場合もあります。

墓碑や既存の墓誌に彫刻スペースが無くなった時

納骨された人が増えていけば、彫刻を行うスペースが無くなります。スペースが無くなったときに新たに墓誌を建てるというケースです。

墓誌にかかる費用

墓誌を建てるには、墓誌本体の料金だけでなく、墓誌の設置工事費、戒名などを彫刻する費用などがかかります。墓誌を建てる際にかかる費用は主に次の3つで構成されます。

墓誌本体の料金

墓誌の素材となる石材、そして石材の加工費から成ります。墓誌は大きくなればなるほど、デザインが複雑になればなるほど高額になっていきます。また、希少な石材を使用すれば、それだけ費用がかかります。

一般的に墓碑と同じ石材で墓誌を作ることが多くあります。費用は10万円以上からです。

墓誌の設置工事費

墓誌の大きさと墓地の場所や環境が工事費用に影響します。

なお、既存の墓地に追加で墓誌を設置するよりも、新規に墓地を購入するときに併せて墓誌を設置する場合の方が、工事費の負担は軽くなる傾向あります。費用は3万円以上からです。

彫刻費用

文字の彫刻費用です。墓誌で一般的に使用される文字より大きい場合や、常用漢字以外など特殊な文字が含まれる場合には、追加料金を求められることがあります。費用は5万円以上からです。

上記の全体での墓誌を据え付けしてもらう費用は、安価なものでも10万円以上、20万円程度が目安でしょう。

墓誌を建てるための準備

墓誌を建てるか検討する際は、次の2つを考えましょう。

自分のお墓の現状の確認

家のお墓を継ぐ人は墓誌の現状がどうなっているかを確認します。何代前の先祖の名前から記載されているか、墓誌の空きスペースはどうなっているかを確認します。

空きスペースがない場合は新たに墓誌の追加を自分か次の代で行わなければなりません。

家のお墓を継がない立場の人の生前墓の購入検討

家のお墓を継がない立場の人では、子供にお墓の迷惑をかけたくないということで生前墓を購入する人が多くいます。その場合はどのようなお墓の形態を選ぶのかが、現代では重要になってきました。

お墓の承継者がいなくなる時代では、何代も同じお墓を維持していくことが難しくなってきています。夫婦1代か子供までの2代までしか承継の見込みがたたないかもしれません。そのため納骨堂などのお墓の形態が増え、墓誌の必要性も薄くなってきています。

まとめ

墓誌とは石塔の横などに設置され、お墓に埋葬された故人の名前・戒名・没年月日・来歴・功績などを記録する石碑のことです。

墓誌には、お墓に誰が埋葬されているかを記し後世に残す役割があります。後世の人は先祖について知ることができます。ただし、墓石に、埋葬されているすべての人の戒名などを彫刻することができれば、墓誌は必要ありません。

また、墓誌の設置を考える際は、まず現状の確認と今後お墓を継ぐ人がいるのかの2点から考え始めるようにしましょう。