お盆や法要で新しく卒塔婆を立ててみませんか?

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卒塔婆(そとば・そとうば)とは、お墓の後ろに立てられている文字が書かれている板の事を指しています。これには故人への礼儀だけでなく、立てた人の「善を積む」と意味があるとされています。法要やお盆・お彼岸の時期に新しく卒塔婆を立てることもあると思いますので、卒塔婆を立てる意味、立てる時、書かれている言葉の意味、供養方法などにつき紹介します。

卒塔婆とは

卒塔婆とは、塔婆とも言い、故人や先祖を供養する追善供養の目的で立てられる細長い板のことです。卒塔婆を立てることは「善」とされており、「塔婆を立てる=善を積む」ことになり、故人の冥福につながると考えられています。また、塔婆供養は先祖への善だけでなく、自身の善い行いとしても奨励されています。つまり、追善供養になるものなのです。

追善供養とは

追善供養とは、納骨、回忌法要、お盆やお彼岸のお墓参りなど、故人に対して行う供養をさします。追善供養の「追」は、文字通り「追いかける」という意味を持っています。また、「善」は、仏教における善い行いをさします。このことから追善供養は、今を生きている私達が、仏様に対して善い行いを積み重ねることで、故人が極楽浄土へ無事辿り着けるように行うものです。

卒塔婆の起源と形の意味

卒塔婆は古代インドで「仏塔」という意味のサンスクリット語「ストゥーバ」を漢訳したものであり、ストゥーバとは釈迦の遺骨を納めた仏舎利塔のことで、これが五重塔の起源といわれています。

さらに、五重塔をもとに、その後つくられた五輪塔が卒塔婆の起源となっています。卒塔婆は五輪塔が簡略化されたもので、卒塔婆も同じく五輪塔の5つの形の意味を持っています。五輪の形の意味は、上から、宝珠型は「空」、半円形が「風」、三角形は「火」、円形は「水」、四角形は「地」となっています。仏教には、これらの5つの要素で宇宙のすべてが構成されているという宇宙観もあります。

卒塔婆に書かれている梵字

卒塔婆の表には仏教の宇宙観を示す「5つの梵字」が書かれています。上から順に以下のようになっています。

「キャ」は空と青・宝珠型
「カ」 は風と黒・半円形
「ラ」 は火と赤・三角形
「バ」 は水と白・円形
「ア」 は地と黄、四角形

卒塔婆に書かれている文字と内容

卒塔婆には、大まかには次のような項目が書かれています。

  • ①戒名

    戒名は、本来は亡くなった故人が仏の弟子になったという意味で、現在は死後の世界の名前として用いられ、僧侶に授けていただく名前です。

  • ②没年月日

    没年月日は、いわゆる命日のことで、故人が亡くなった日のことです。

  • ③経文

    経文(きょうもん)は、仏教の教えを記した書物である経典に書かれている文章のことです。

  • ④梵字

    梵字(ぼんじ)は、インドから伝わり中国に渡り、6世紀ごろ日本に仏教が伝来したのちは、神秘化され魔除けとして使われている文字です。様々な菩薩名や真言の一部を梵字で記載しています。

  • ⑤施主名

    卒塔婆の作成を依頼した人の名前です。

  • ⑥供養年月日

    お墓に卒塔婆を立てた年月日です。

これら6つの項目のうち、戒名、没年月日、経文、施主名、供養年月日の5項目は卒塔婆の表面に書かれ、梵字は卒塔婆の裏面に書かれることが多くあります。

卒塔婆供養はいつ誰が行う?

そんな卒塔婆ですが、いつ誰が立てれば良いのでしょうか。お墓に立っているのを見たことがある方も多いと思いますが、実際に立てるとなると迷ってしまうかもしれません。以下を参考にしてください。

卒塔婆を立てる人

卒塔婆を立てる目的は、追善供養のためです。生きている人が行った善行は、故人の善行でもあるという考え方があり、善行を積むことが故人の供養へとつながることになります。そのため、誰が立てなければならないという決まりはありません。

基本的には遺族が立てることになりますが、故人と親しい関係にあった人や故人と親しい間柄になくても故人を供養したいと考えている人ならば、誰が立てても問題はありません。

卒塔婆を供えるタイミング

卒塔婆を立てる目的は、追善供養にあります。つまり供養のために立てるものなので、いつ立てなければならないという決まりはありません。ただ、卒塔婆を立てるにふさわしい時期はあります。それは、納骨式、法要(四十九日、一周忌など)をはじめ、祥月命日(命日)、お盆、お彼岸、施餓鬼会といった供養の節目です。

  • ①納骨式

    故人の遺骨を、お墓に納める式です。卒塔婆は基本的にはお墓に立てるものですので、最初に卒塔婆を立てるのは納骨式となります。納骨式は単独で行うこともあれば、四十九日や一周忌などに合わせて行うこともあり、参加人数が多くなる法要です。納骨式に卒塔婆を立てる場合は前もって僧侶に依頼しておきます。

  • ②年忌法要

    年忌法要とは、一周忌から続く年単位の法要を言います。一周忌をはじめとして、三回忌・七回忌・十三回忌・十七回忌となり、弔い上げ(三十三回忌など)まで続きます。

  • ③お彼岸

    お彼岸とは、3月の春分の日と9月の秋分の日を中日として、前後3日間を含めた各7日間を言います。最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸の明け」と呼んでいます。お彼岸のお参りは、仏教にとって大切な行事の一つです。仏教では、私達が生きている世界を「此岸(しがん)」、ご先祖がおられる極楽の世界を「彼岸」としています。春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さが同じであり、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると言われています。

  • ④祥月命日

    祥月命日(しょうつきめいにち)とは、故人が亡くなられたのと同じ月日で、単に「命日」と呼ぶこともあります。祥月命日に行う供養は、年忌法要ほど大がかりなものでなく、仏壇をきれいにしたり、故人が好きだった食べ物や花を供えたり、お墓参りをしたりということが多いです。そのとき、合わせて卒塔婆も立てます。

  • ⑤お盆の施餓鬼法要

    お盆の時期に行われる行事の一つが施餓鬼会(せがきえ)です。本来この施餓鬼会はお盆とは別の行事で、地域によっては5月の連休中や、年忌、百箇日の法要などと合わせて行う場合もありますが、大半の地域ではお盆の期間に行われています。施餓鬼会は、餓鬼道へ落ちた霊に食べ物を施して供養するというもので、追善供養となり、善に繋がることを目的にしています。自分の力で飢えの苦しみから抜け出すことのできない餓鬼にとっては、施餓鬼会が唯一の救いになるとされています。

    この法要は、お盆以外にも他の年中行事と合わせて行われます。ただ、お盆に行われることが多い理由は、もともと「ご先祖と餓鬼と両方にお供え物を供える」というのが、お盆の風習だったからです。施餓鬼会を行い三界万霊を供養することは、その功徳が施主やその先祖まで及び、先祖への追善ともなります。

卒塔婆を下げるタイミング

卒塔婆を下げる時期は、特に決まっていません。ただ、卒塔婆は木製で、お墓は直射日光や雨が直接当たるため劣化が起きてしまいます。劣化が起きる前に新しい卒塔婆を立てるタイミングで古い卒塔婆を下げると良いでしょう。

卒塔婆の本数と施主名

卒塔婆の本数は決まっていません。故人の近親者は個人で立てる場合が多いでが、「兄弟一同」「○○家一同」など、まとめることもできます。作成する際には、供養するお寺などに依頼します。

卒塔婆の種類

卒塔婆の種類は、全部で5つあります。それぞれの特徴を説明します。

  • ①板塔婆

    もっとも一般的に見られる卒塔婆で、長さ60~200cm程度、厚み1cm程度の細長い板状のものです。主にお墓の後ろ、もしくは、周辺に立てます。長さに幅があるのは、地域の風習などによって大きさが違ってくるためです。

  • ②角塔婆

    角塔婆は、四角い柱型の塔婆です。墓石ができあがるまでの間、墓石の代わりにお墓の目印として使われるほか、寺院のお堂の完成時に行う落慶法要で立てられたりするケースも見られます。

    長さは120~210cmほど、厚さは10cmほどあり、先端が尖っています。これは、卒塔婆がもともと五輪塔の代わりとして使われた名残となっています。上から宝珠型や半円型などの形状で構成されていて、梵字が記されるのも同じく五輪塔の名残です。

  • ③経木塔婆(きょうきとうば)

    板塔婆よりも小さいサイズの卒塔婆です。経木とは、スギやヒノキを薄く削ったものをさし、弁当や菓子を入れる箱として使われています。塔婆の素材に使われる木材はいろいろありますが、経木は素材の名前でなく薄い木の板を指しますので、卒塔婆の名前としてつけられたとされています。

    経木塔婆は、供養のために水に浮かべたり川に流したりすることがあるため、別名で水塔婆と呼ばれることもあります。長さは27~36cmほど、厚みは1mmほどです。

  • ④七本塔婆

    七本塔婆は、初七日から四十九日法要まで7日ごとに営む七日参りで使う、文字通り7本の卒塔婆です。

    板塔婆を縮小したような形で、長さ30~40cmほどの大きさです。形状はいろいろで、1本ずつ立てるよう卒塔婆立てに入っているものや、扇状になっているもの、連板のようにくっついているものなどがあります。

  • ⑤梢付き塔婆(うれつきとうば)

    三十三回忌や五十回忌など、年忌法要の締めくくりにあたる弔い上げに立てられる卒塔婆です。枝や葉っぱがついたままの生木をそのまま使うため、「生木塔婆」と呼ぶこともあります。

    使う生木は、神聖な木と称される杉が多いですが、他にも松や柳を使うところも見受けられます。また地域によって、弔い上げの場合でも板塔婆を用いる場合もあります。

これからの卒塔婆供養

近年、お墓を持たず納骨堂を持つケースが増えています。納骨堂では卒塔婆を置くスペースがありません。そのため個別の納骨堂のスペースでは卒塔婆は立てられません。

また、同様に樹木葬も増えています。お墓の承継者がいなくなる時代ではお墓を永代供養の合祀墓とするニーズが増え、遺骨が土に還る樹木葬が拡大しています。樹木葬でも個別のお墓のスペースがなく、卒塔婆も立てません。

卒塔婆供養と宗教、宗派

卒塔婆供養を行うのは仏教の場合だけです。キリスト教、神道では行いません。また、仏教でも浄土真宗では教義の上から行いません。追善供養を行わないため、卒塔婆だけでなく位牌も必要としていません。

浄土真宗では亡くなってからすぐ浄土に往生する「他力本願・他力念仏」の考え方を取りますので、追善供養は行わないことが基本となります。浄土真宗の教えでは、亡くなった人はみな阿弥陀仏のおられる極楽浄土で仏さまになられるという教えです。ただし、地域やお寺によっては、宗派に関わらず卒塔婆を立てることもあります。

まとめ

卒塔婆を立てる意味は、追善供養のためです。生きている人が行った善行は、故人の善行でもあるという考えに基づいており、善行を積むことが故人の供養へとつながることになります。故人のためだけでなく自分にとっても意味があります。

なお、卒塔婆をいつ立てなければならないという決まりはありません。ただし、供養の節目となる、納骨式、法要(四十九日、一周忌など)をはじめ、祥月命日(命日)、お盆、お彼岸、施餓鬼会などで立てることが多くなっています。また、卒塔婆供養は誰が行っても問題ありません。