お墓参りの時に使う線香の意味とマナーについて

お墓

お墓参りに行った時には線香をあげます。習慣的に行っている線香あげですが、線香をあげるという行為にはどんな意味があるのかご存知ですか?

また、線香をあげる正式な手順も知っていますか? これまで何となく線香をあげていた方も多いと思います。今回は知っていれば役に立つ、お墓参りの時に使う線香の意味とマナーについて紹介します。

お墓参りの時の線香の意味

線香は仏教におけるお供え物です。仏教では「五供(ごくう)」というお供え物の基本があります。「五供」は「香」「華」「灯」「水」「飲」の五つで、仏様を飾る「華」はお花、仏様の知恵を表す「灯」はろうそくの明かり、「水」はそのままの意味で、「飯」はご飯です。そして、「香」にあたるのが線香です。特に「香」「華」「灯」は「五供」の中心となるものです。線香には故人に捧げるもの、また自身や場所を清めるという意味があります。

線香をあげる意味

線香をあげることには、以下の3つの意味があります。

・食べ物を供える
仏教には、亡くなった方は線香のよい香りを食すという考え方があります。これを「食香(じきこう)」と言います。とくに人が亡くなってから極楽浄土に旅立つ四十九日までは、「線香の火を絶やしてはいけない」と言います。それは線香の香煙があの世に到着するまでの道案内になるとも言われているからです。

・自分の心身を清める。
線香には、線香を上げている本人の「心身を清める」という意味もあります。線香の香りで自分の匂いを消すことで、心身が清められるという考えによるものです。

仏様に拝礼する際に香を焚くことでお参りする本人や周囲の人々の心と体が清められます。線香の香りには場の穢れを祓って清浄にする効果があります。また、線香の香りは供養する人の感覚を鋭敏にします。線香をあげれば、仏様やご先祖様に対するときに邪念を取り除き、厳かな気持ちで手を合わせることができます。

・仏様と故人とつながる。
線香の天に昇ってゆく煙は、天上と現世をつなぐものと考えられます。さらに、その香煙を通じて「仏様とつながることができる」とも考えられています。良い香りを通して仏様とお話ができ、故人とつながることができるのです。

線香の種類

線香には墓参り用と室内の仏壇用があります。墓参り用は煙・香が強いもの、室内の仏壇用には煙・香が控えめなものを選びます。

香りの種類

線香には大きく分けて、「杉線香」と「匂い線香」の2種類があります。「杉線香」煙が多く、匂いが強いため墓参り用として使用します。墓参りでよく使われるため「墓線香」などとも言います。

「匂い線香」は粘着性のあるタブの木をベースに、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)などの香料を加えることで様々な香りを楽しめるもの。現在ではローズやラベンダーといった花の香りや、コーヒーや紅茶、りんごの香りなど嗜好品・食べ物を表現したものも人気です。

形状

最もポピュラーなのは極細の棒の形をしたものでしょう。ですが、実は様々な形状があります。

(1)長尺線香
お寺で用いられることが多い、短寸線香よりも長い線香です。長尺線香の中には70cmにもなるものがあり、燃え尽きるまで数十時間かかります。

(2)渦巻き型
通夜や葬式前に遺体を安置する際に使われることが多いタイプの線香です。長時間燃え続けるので、線香を絶やしてはいけないシーンで利用されます。

(3)円錐型
香りが広がるのが早く、灰が散らばりにくいというメリットがある線香です。

線香立て

線香をあげる際は、線香立て、線香皿を使用します。いずれも、ステンレス製か石製が一般的です。ステンレスと石を組み合わせた線香立や線香皿もあります。

立てるタイプでは香炉タイプ、線香筒タイプ、墓石埋め込みタイプ、外付けタイプ、屋根付き香炉タイプなど多くの種類があります。香炉には、通常中に灰を入れて線香を立てますが、野外で雨に濡れてすぐに固まってしまうという難点があるため、専用の砂が販売されています。また、灰や砂を用いなくても線香が自立できる線香筒が多く用いられています。

寝かせるタイプでは、「線香皿」と呼ばれるものを使用します。線香を立てると燃焼した灰が落ちてしまいますが、寝かせる場合には線香皿の上に灰が落ちるので墓石を汚しません。
線香皿は通常ステンレス製や陶製なので、それだけ取り外して水洗いもできます。浄土真宗や日蓮正宗などでは、線香は寝かせるのが作法です。

線香のあげ方

線香のあげ方は宗派や地域によって異なります。しかし、作法の形よりも、気持ちを込めてお供えすることが第一に重要です。なお、線香を供える前に、墓石に水をかけ、供花を飾り、お供え物を供えるという段取りを行います。

線香をあげる手順

お墓参りで線香をあげる標準的な手順は次の通りです。

  • ①お墓に軽く一礼
  • ②ロウソクに火をつける
  • ③ロウソクから線香に火をつけてお供え
  • ④手であおいでロウソクの火を消す

仏前にお供えする線香の数は宗派によって様々ですが、大体1~3本となっています。基本的に浄土宗、日蓮宗、臨済宗、曹洞宗の場合は香炉の中心に1本、天台宗・真言宗は3本を逆三角形になるように立てます。お線香は立てず、折って寝かせるのが浄土真宗で、折らずに寝かせるのが日蓮正宗です。

宗派によるあげ方の違い

線香をお供えするときの、線香の数や香炉へさす方法などは宗派により異なります。

・浄土宗
浄土宗では、1本から2本の線香を香炉の真ん中に立てるのが基本です。1本の線香を2つに折って火のついている方を左にして寝かせる場合もあります。

・浄土真宗
浄土真宗では、真宗大谷派でも浄土真宗本願寺派でも1本の線香を2つに折り、火のついている方を左にして寝かせます。香炉が小さい場合は、3つに折っても構いません。

・日蓮宗、曹洞宗、臨済宗
日蓮宗、曹洞宗、臨済宗では、1本の線香を香炉の真ん中に立てます。日蓮宗の場合は3本立てる場合もあります。

・真言宗・天台宗
真言宗や天台宗では、3本の線香を香炉に立てます。手前自分側に1本、仏様側に2本を立て、上から見て逆三角形になるように立てます。

線香の向き

線香を横置きにする場合は、右向き左向きについては、特に決まりなどはありません。

ただ、既に火の付いたお線香が置かれている場合はそれに合わせるように置きます。お線香を互い違いにおいてしまうと、見た目が悪いだけでなく両端から燃えてしまいます。

線香をあげる際のマナー

線香に火をつける時は、直接ライターなどで火をつけてはいけません。ろうそくの火を使って線香に火をつけます。

消すときは、必ず手であおいで消します。口で吹き消すのは、線香に限らずロウソクなどでもしてはいけません。これは、人間の口が穢れているとされているからです。口から吹き出す息を仏様や故人の方にかけるのは失礼にあたるのです。

時代と共に変化する線香の形

お墓の形態が多様化し、現在ではお墓の承継者がいない時代を反映して納骨堂や樹木葬などが増えています。一般的なお墓と違い、納骨堂や樹木葬では独自の線香のマナーがあるので注意してください。

納骨堂の場合

室内にある納骨堂では火災の危険性があるため、個別に線香立が付いていない場合があります。多くの場合、お花や線香を立てるための専用の場所が設定されています。また、保存の関係からお花やお菓子などのお供えも置いておくことはできない場合がほとんどです。搬送式で納骨スペースを運んでくる納骨堂も、通常のお墓と同様に線香を立てるのは難しい場合が多くあります。

樹木葬の場合

個別のお墓のスペースがないため、線香を立てるとすれば持ち運び可能な線香立てを持っていき、終われば火を消して持ち帰る方法になります。火を使わないLED線香などを使用すると便利です。LED線香はタイマー搭載で自動消灯したり、香りや煙が出たり、電池式だったりとさまざまなタイプが販売されています。

スイッチ一つで火がついたり消したりできるため、火のつけ方や消し方のマナーはなくなるかもしれません。今後は線香立ての変化に伴い、線香のマナーが変わってくる可能性もあります。

墓参りと線香

お墓参りに行くときは、線香とお花、必要であればお供え物を用意します。掃除が必要な場合は拭くための雑巾なども用意します。お寺や霊園で掃除道具を借りて掃除します。墓地敷地内の掃除、墓石の拭き掃除、草取りなどをします。お墓が綺麗になったら、線香をあげ、お参りしてください。

まとめ

線香をあげることには「故人に香という食べ物を供える」「自分の心身を清める」「仏様と故人とつながる」という意味があります。

線香には煙・香が強い「杉線香」といわれる墓参り用と、「匂い線香」という煙・香が控えめな室内の仏壇用があります。お墓ではろうそくを使って火を付け、消す時は手であおいで消してください。

なお、宗派によって線香のあげ方が異なりますので、経験のある親や親族、年配者、僧侶に聞いておくと安心です。とはいっても作法だけでなく気持ちが一番大切なので、心を込めて線香をあげてください。

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