後継ぎがいない方にとっての永代供養とは

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はじめに

60歳前後のシニア世代になると、本格的に終活を考える人が増えてきます。終活とはその名の通り「人生の終わりのための活動」を意味します。終活には大きく分けて「準備しておくもの」と「処分しておくもの」がありますが、準備するもののなかで中心となるのが「お墓」です。先祖代々のお墓に入る、新しく建立する、お墓ではなく他の供養方法を希望するなど、今は多くの選択肢があります。
自分が入るお墓は、新規購入するにせよ他の供養方法を選ぶにせよ、かかる費用が少なくないうえに一度決めると簡単には変更できないため、慎重に決めなくてはいけません。
近年、お墓にまつわる問題でよく話題にあがるのが、継承者がいない人のお墓の選び方です。少子化や核家族化が進み、若年層が都市部に集中する傾向があるため、お墓の跡継ぎ問題で悩む人が増えています。幸い、跡継ぎがいない人に向く、継承を前提としないお墓もあります。それが「永代供養」と総称される供養のかたちです。

永代供養とは

従来のお墓は先祖代々受け継がれるもので、親が亡くなったら子が継承し、お墓の管理を行うというものでした。それに対し、お骨を寺院や霊園に預けて管理してもらうのが永代供養です。管理費などの費用は発生しますが、申し込み時に一括で費用を払うことで後々の支払いは
不要になるなど、お墓の跡継ぎがいない人には一考の価値があるシステムです。
永代供養は古くには江戸時代から存在したともいわれていますが、注目を集めるようになったのは比較的最近のことです。1985年(昭和60年)に滋賀県の比叡山延暦寺が、永代供養墓である「久遠墓地」の販売を開始したことで徐々に注目を集め、2000年ころからは永代供養の需要が急増しています。

永代供養が増加した社会的背景

「永代供養」の詳しい内容はわからなくても、言葉だけは聞いたことがあるという人が多いことでしょう。近年、長野県小諸市で、ふるさと納税の返礼品に市営墓地である高峯聖地公園の合同墓の使用権を追加しました。全国初のこの取り組みは各種メディアで紹介され、問い合わせが殺到したとのことです。小諸市の取り組みが人気を博していることからもわかるように、永代供養への注目が高まっています。以下の要因が、背景として考えられます。

  1. 跡継ぎがいない

    もともとお墓というものは、親から子へ受け継がれるのが自然です。ところが、近年の核家族化や少子化で子どもがいても遠方に住んでいる、子どもは娘だけで全員嫁いでいる、海外に赴任して当分帰国できない、という事情の人もいます。また、子どもがいない夫婦や、独身のため跡継ぎがいない人もいます。

    そのような場合、お墓を建ててもそのお墓を継承して維持、管理してくれる人がいません。放置されたお墓は無縁墓となり、景観を損ねるだけではなく周囲の墓地の所有者から苦情がでたり、寺院や霊園に迷惑をかけたりすることになります。そのため、跡継ぎがいない人にとって「永代供養」を選択することは理にかなった方法といえます。

  2. 子どもに迷惑をかけたくない

    終活という概念が一般的になるにつれ、終活の目的のひとつに「子どもに迷惑をかけないため」という声が目立つようになりました。お墓に関しても、子どもに負担をかけたくない、墓守をさせたくない、という理由で永代供養を希望する親世代の人が増加中です。

    親は子を育て、子どもが一人前になったら今度は高齢になった親の面倒をみるのが当たり前、という昔ながらの慣習がしだいに変化してきています。また、お墓は土地と墓石を合わせると高額な買い物となるため、お墓を買うならその金額を子どもに遺すほうがよいと考える親世代の人も増加傾向にあります。少子化や都市部への人口集中により、生活スタイルや価値観の変化が起きていることは確かです。

  3. 婚家のお墓に入りたくない

    お墓の選択肢が増えてきた昨今、「夫と同じ墓に入りたくない」と考える妻が増加中といわれています。いわゆる「死後離婚」も、近年話題になっているトピックのひとつです。

    少し前なら、嫁いだ女性は嫁ぎ先のお墓に入ることは疑問の余地のないことでした。ところが、さまざまな理由で夫と一緒のお墓に入ることを拒否する妻もいます。夫婦が同じお墓に入ることは、慣習として長く続いてきたことであり、法的な定めはありません。婚家のお墓に入りたくない人にも、永代供養は選択肢のひとつとなるでしょう。

永代供養の分類

永代供養にもいくつかの種類がありますので、立地や費用面、利便性を考えて選ぶのがよいでしょう。ここからは主な永代供養のタイプをご紹介してゆきます。

  1. 永代供養墓

    霊園管理者が維持・管理、供養を行うお墓です。他の人と同じお墓に納骨される合祀墓(合葬墓、共同墓、合同墓)が永代供養墓となります。費用面ではもっとも負担が少ないお墓で、5~20万円ほどですが、いったん合祀されると後から遺骨を取り出すことができません。後悔のないよう、慎重に選ぶ必要があります。

  2. 納骨堂

    都市部を中心に注目を集めているのが納骨堂です。納骨堂とは、遺骨を納める収蔵スペースを持つ建物です。もともと納骨堂は、お墓が出来上がるまでのあいだ一時的にお骨を収蔵する場所として利用されていました。なお、「収蔵」とは、埋葬や埋蔵のように土に埋めるという意味合いはなく「安置する」という意味ですので、納骨堂は「遺骨の安置施設」ということになります。

    近年増加しているのが、参拝するために従来の石のお墓と同様の機能を持ち、遺骨を長期収蔵するタイプの納骨堂です。このような長期収蔵型の納骨堂は、お墓の継承者が不要で、家族や親族の代わりに管理者が供養するシステムです。利用期間は33回忌までなど、施設により異なり、契約期限が過ぎると合同墓や供養塔に合祀されます。納骨堂の代表的な種類として、①ロッカー式納骨堂 ②自動搬送式納骨堂 ③仏壇型納骨堂があります。いずれも屋内で参拝するため、天候に左右されることがありません。

    • ①ロッカー式納骨堂

      コインロッカーのような収蔵棚が並んでいる納骨堂です。普段は骨壺をロッカーに収蔵しておき、参拝時にお骨を参拝スペースに取り出してお参りをします。ロッカー式納骨堂のメリットは、費用が比較的安価なこと、デメリットとしてはスペースの狭さがあげられます。費用は20~50万円で、利用スペースの大きさや利用年数により変わります。

    • ②自動搬送式納骨堂

      近年増えてきているのがこのタイプで、地価の高騰や土地不足が起きている都市部に多くみられます。ビル全体が納骨堂になっており、「ビル型納骨堂」「マンション型納骨堂」ともよばれます。

      建物内に多くの遺骨が収蔵されていて、コンピュータ制御によりICカードをかざすとお骨が自動的に参拝スペースに運ばれてくるシステムです。非常に近代的で設備も充実し、人気を集めています。メリットは立地やアクセスのよさがあげられ、デメリットは費用が高額なこと、機械制御のため停電や故障が発生すると参拝できなくなることです。費用は80~200万円で、地価を反映しますので都心部で駅近であるほど高くなります。

    • ③仏壇型納骨堂

      仏壇型納骨堂の一般的なかたちは、1利用者分のスペースが上段と下段に分かれていて、上段が仏壇、下段が納骨スペースになっているものです。このタイプの納骨堂は、先祖代々の遺骨も収蔵でき、仏壇とお墓の機能を1カ所に兼ね備えている利点があります。

      仏壇側には位牌やお供え物など希望のものをおくことができ、自由度が高い点もメリットとなります。反面、費用が高いというデメリットもあります。費用は50~200万円ほどになります。

  3. 樹木葬墓地

    樹木葬も、近年人気が高まっているお墓のスタイルです。石のお墓ではなく、樹木や草花を墓標とするのが樹木葬墓地です。公営墓地の一角に、樹木葬墓地が用意されているところもあります。樹木葬は自然葬ともよばれ、自然志向の高い人に特に人気があり、お墓の継承者も不要で、宗旨・宗派も問われないため今後さらに需要が高まると思われます。

    また、費用面でも比較的安価で、一度費用を支払えば以後、年間管理料も不要になります。お墓にあまり費用をかけたくないと考えている人にとっても選択肢のひとつになります。

    樹木葬墓地には、継承者を必要としない、費用が比較的安価というメリットはありますが、自然のなかに作られる里山型には、都市部からアクセスが悪い墓地もあります。

  4. 散骨

    遺骨を細かく粉砕し、海や山に撒くのが散骨です。散骨もお墓の継承者がいない人に選ばれることが多いのですが、日本ではまだメジャーな供養方法ではありません。散骨にはいくつか注意点がありますので、個人で行わず散骨を取り扱う業者に依頼するのがよいでしょう。散骨には規定する法律が今のところありませんが、一定のルールというものは存在します。

    まずは、散骨にあたり遺骨だとわからないまで細かく粉砕することが第一条件です。遺骨を形が残っているまま散骨すると、遺棄とみなされて刑法190条の死体損壊・遺棄罪に問われる場合があります。

    遺骨を細かくすることを「粉骨」といいますが、遺骨をパウダー状にするには専用の道具が必要ですし、心情的にも身内の骨を粉砕する作業は負担が大きいため、できれば専門の業者に依頼することをお勧めします。散骨を行うには環境に配慮することが不可欠で、当然ながら他人の私有地、海水浴場、養殖場などには撒くことができません。粉骨から散骨まで個人で行うこともできますが、ガイドラインに沿って良識のある散骨を行うには、やはり専門業者に依頼するのがよいでしょう。費用は個別散骨で20~30万円、合同散骨で10万円前後、業者による代行散骨で5万円前後となります。

まとめ

跡継ぎがいない人の墓地霊園の候補として、継承を必要としない永代供養への注目が高まっています。いずれも生前に契約が可能で、予算や立地を考慮したうえで好みの供養方法を選ぶことができるでしょう。人生最後の住居となるのがお墓ですが、以前は選択の余地があまりありませんでした。今は多くの選択肢があるため、情報を収集しつつ終活の一環として希望の供養方法を決めるようにしましょう。