はじめに
香典は葬儀や法事に参列する際には必ず持参するもので、すでに何度か包んだ経験を持つ人も多いでしょう。香典にはいくつかのマナーがあり、袋の選び方から中に入れる金額、渡し方まで、知っておくべきポイントがあります。
不祝儀は突然やってくるものですから、いざというときにあわてないためにも、香典にまつわるマナーについてあらためて確認しておきましょう。
香典とは
香典は、もともと仏式の葬儀で、故人にたむけるお香を持参する代わりにお金を包んだものです。
本来は葬儀に「香」を使用しない神式やキリスト教式の葬儀でも、不祝儀袋の表書きをそれぞれの宗教に合わせ、香典として持参するのが日本では習慣となっています。
葬儀を挙げるには相応の金額がかかるため、香典には喪家の出費を考慮する相互扶助の意味合いもありました。葬儀費用だけでなく遺族の今後の生活を考え、かつては不祝儀には金額を厚くする風潮がありましたが、現在では祝い事よりも少なめの金額が普通になっています。
金額の目安
香典の金額は、故人との関係により大きく変わってきます。地方の慣習によっても違いがありますが、一般的には故人と近しい関係であるほど金額が大きくなります。
一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)では、香典に関するアンケート調査を実施しています。平成28年度版の集計結果から、金額を見ていきましょう。
故人との関係別の香典の最多回答額と平均額を同協会の集計結果より、故人との関係、最多回答額(平均額)の順にご紹介します。
・祖父母:10,000円(17,280円)
・親:100,000円(62,318円)
・兄弟姉妹:30,000円(39,518円)
・おじ・おば:10,000円(17,063円)
・職場関係:5,000円(5,447円)
・取引先関係:5,000円(6,897円)
・友人・その家族:5,000円(5,972円)
・隣人・近所:5,000円(4,810円)
参考:一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会「香典に関するアンケート調査」:https://www.zengokyo.or.jp/activity/report/search/funeral-gift/result/
不祝儀袋の種類
香典を渡すためには専用の袋に入れる必要があり、その袋を不祝儀袋といいます。仏式の葬儀が多い日本では仏式の香典袋が多く市販されていますが、神式、キリスト教式では仏式とは違う袋を使いますので注意が必要です。
以下に一般に市販されている不祝儀袋の種類と用途を挙げておきます。
全宗教共通「御霊前」
仏式、神式、キリスト教式のいずれにも使えるのが「御霊前」の表書きです。宗教や葬儀の形式がわからない場合には「御霊前」の袋を使うのが無難です。
ただし、蓮の花が印刷された袋は仏式にのみ使われますので、宗教がわからない場合は無地の「御霊前」を選ぶようにします。
仏式「御香典」「御香料」「御仏前」
「御霊前」のほかに「御香典」「御香料」はほとんどの宗派で共通して使われます。
「御仏前」は四十九日以降の法事用ですが、浄土真宗では亡くなってすぐに仏様になると考えるため、葬儀でも「御仏前」を使います。
神式「御玉串料」「御榊料」「御神饌料」
神式での霊祭(法事)では「御神前」が使われます。神式の葬儀においては、「御玉串料」「御榊料」「御神饌料」のいずれかを記載します。
キリスト教式「御花料」「御ミサ料」(カトリックのみ)
キリスト教式の表書きは「御花料」とし、カトリック、プロテスタント共通です。「御ミサ料」はカトリックでのみ使われます。
不祝儀袋に関するよくある疑問
ここで不祝儀袋に関する疑問についてお答えします。
お札の入れ方に決まりはあるかどうか
お金を入れる向きを気にする人は多いのですが、それについて厳密な決まりはありません。ただ、ほとんどの人は袋の表に対してお札を裏にして入れています。お札の表裏とは肖像が印刷されている側が表で、1万円札であれば福沢諭吉の肖像があるほうが表です。
香典袋に入れるときは、袋の表に対してお札の裏が来るようにし、さらに肖像が袋の下にくるように入れるのが一般的です。中袋があるタイプ、ないタイプの両方で共通の入れ方になります。
連名で香典を出す場合の表書きはどう書くか
連名で香典を出すときの表書きの名前は、3名までは全員の氏名を書きます。4名以上では代表者氏名の隣に他一同とし、職場などの組織・団体からの香典なら団体名と社員一同(職員一同、スタッフ一同など)と書きます。
家族や夫婦で香典を出す場合は、香典は家族単位で出すものですので、夫など世帯主の名前だけでよいのですが、夫婦ともに故人と親しかった場合には連名で書くほうがよいでしょう。また、親子の場合は、子どもが独身で同居している、別居していてもまだ学生である場合は連名で、子どもが独立している場合は別々に出すほうがよいでしょう。
表書きは薄墨を使うべきかどうか
薄墨には「涙で墨が薄まった」「突然のことで墨をする間もなく駆け付けた」などの意味があるとされています。印刷された香典袋を使うとしても、自分の名前は薄墨で書くのが一般的です。
しかし、地方によっては薄墨を使わないところもありますので、不安な場合は周囲の人に確かめてみましょう。市販されている薄墨の筆ペンで十分です。
香典の渡し方
不祝儀袋はバッグや礼服のポケットなどに直接入れず、袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが正式なスタイルです。袱紗(ふくさ)には慶事用と弔事用があり、弔事にはグレー、紺、緑、茶色など寒色系の無地ものものを使います。濃い紫は慶弔どちらにも使えるため、一枚持っていると便利です。
渡し方の一般的な流れは以下のとおりです。
受付で香典を出す
式場に着いたら受付に向かい「このたびはご愁傷さまでございました」など、簡潔な挨拶をして香典を渡します。渡すときには香典袋を袱紗(ふくさ)から取り出し、先方に向けて差し出します。
記帳する
受付には、会葬者名簿が用意されています。喪家にとっては後々貴重な資料となるものですので、必ず記帳しましょう。香典を渡したら、その名簿に記入します。住所は番地まで、氏名もフルネームでていねいに書きます。会社関係なら社名、部署名も記載しましょう。
まとめ
通夜・告別式に持参する「香典」について、解説してきました。この記事では、一般的に受け入れられるマナーについて紹介しています。地方の慣習によっては、全国共通のマナーとは異なる部分もあるかもしれません。その場合は、その土地の慣習に従いましょう。
冠婚葬祭のマナーのなかでも、お金に関わることは非常に悩む部分です。年配者に聞く、一緒に参列する人に相談するなどして、ある程度周囲と合わせることも必要になります。