もし離壇しなければならなくなった時、その方法とトラブル回避について

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はじめに

檀家とは、特定のお寺に所属している家のことをいいます。檀家は所属する寺に、葬祭、法要、お墓などをお任せし、かわりにお布施をもってお寺を支える関係になっています。最近は「跡継ぎがいない」「菩提寺が遠方で墓参りができない」「墓じまいをしたい」などの理由で檀家を辞める方が増えています。もし離壇しなければならなくなった時、その方法とトラブル回避について説明します。

檀家を離れる「離檀」について

檀家制度とは、江戸時代の寺請制度がその始まりと言われています。家単位で特定のお寺に所属し、葬祭や供養などの仏事一式を任せ、お寺にお墓を持ち、お墓の管理をしてもらい、これらの代わりにお布施や寄付によりお寺の経済的支援を行う制度です。

寺請制度は江戸幕府が全国民のほとんどが仏教徒であることを利用して、お寺による人民統制として、日本人は必ずどこかのお寺に所属しなければならないということを決めたものです。現代では100%の日本人が仏教徒ということはありませんが、この寺請制度の名残で、多くの家がお寺に所属し、檀家になっています。

その檀家を離れることを、「離檀」と言います。寺の所属をやめる、菩提寺との付き合いをやめる、ということです。お寺の管理地にお墓を置いている場合は、檀家をやめるとお墓も撤去・引っ越しする必要があります。

離檀の背景

近年檀家を、やめる人、あるいはやめたいと思う人が増えています。この理由はいくつかあります。まずはお墓が遠くなったことです。現代では、生まれた土地に住み続けるという人が減ってきました。地方出身者は東京、大阪といった大都市に就学や就職のために転居し、そのまま住み続けることが増えています。こうなると、菩提寺は自分の住んでいるところから遠隔になってしまうため、お墓参りをすることがなかなか難しくなります。お墓の引越しをし、今までの檀家を離れて自分の住んでいる近隣の霊園などにお墓を移そうという考えになるわけです。

また、仏教はしきたりにより法要が長期に渡り必要です。これが負担になってしまうことも理由です。最近では葬儀や法要もできれば簡単に、回忌法要もあまり長い間したくない、という傾向があります。毎年のお墓の管理にもお寺へのお布施が必要なため、金銭的な負担が大きいのです。そして少子化でお墓の承継者が減ってきていることも影響しています。お墓を改葬して、永代供養の合祀墓にする場合が増えています。

離壇の方法

お寺側にとって檀家やめられてしまうことは、固定客を1軒失うことであり、お寺は基本的に檀家が離れることを歓迎しません。そのため、お寺側の了解を得ずに勝手に檀家を離れようとすると、もめる可能性があります。場合により、高額な離檀料を請求されてしまうこともあり得るでしょう。まずは事情を丁寧に説明して、お寺の承諾を得ることが必要です。以下に、離檀の方法について説明しますので参考にしてください。

  • ①菩提寺の住職への相談

    事前の相談は離檀において最も重要なステップと考えてください。日頃お墓のお世話をしてもらっている感謝、あまり顔を出せていないことの謝罪、やむを得ず墓じまいをすることになった理由を説明します。そして、基本的に住職が了解してくれるかどうか反応を見ます。

  • ②離檀の申し出

    反応がはっきりしない、もしくは、やや難色を示している場合は、離断の申し出をしてけじめをつけます。離檀したい旨をお寺に申し出るのですが、口頭で伝えるだけでよい場合と文書で離檀届けを提出する必要がある場合があります。まず、お寺との決まりごととなる契約書があるのかどうかを確認します。先祖代々古くから寺院にお墓がある場合であれば、ほとんどの場合契約書は存在しないでしょう。最近の新しい寺院などであれば契約書を用意しているケースもあります。

    そもそも契約書がないのであれば、離檀料を支払う義務はありません。離檀に関する取り決めがなければ離檀料は成立しません。離檀料を請求されてしまったら、契約書がないため支払う義務がないと伝えます。

    お寺が遠隔地で普段の付き合いもない場合は、手紙で離檀の相談をします。最初から離檀の申し出をするというよりは、墓じまいの相談をするという言い方が住職の感情を害することが少ないでしょう。手紙を書く場合も、どうしてもお墓参りができず先祖に申し訳ないので離檀するしかない、という理由と、今までのお世話に感謝することを述べ、最後には離檀の希望を伝えます。

離檀のトラブルを回避する方法

離檀にともない墓じまいをしなければならず、墓じまいをして新しい墓地に遺骨を埋葬するためには、墓地管理者(お寺)の許可印がいるため、その際のお布施を払うことを確認し、区切りをつける旨を話してお寺の同意を得ます。

契約書があり離檀料の取り決めがあれば、今までの菩提寺への感謝をお金で表すために離檀料を支払わざるをえません。離檀料の支払いは法的な義務ではないので、絶対に払わなければならないということではありませんが、契約があればその内容に従わざるをえません。また、契約書がなくてもお寺から離檀料の要求があれば金額を聞きます。

檀家をやめる際の離檀料の相場は、3~20万円です。これまでお世話になった感謝のお布施として、妥当と思われる場合は支払う場合もあります。地域やお寺、これまでのお付き合いによって異なります。

墓じまい

離檀の目処がついたら、墓じまいの準備をします。墓じまいとは、遺骨を取り出し、お墓を撤去し、墓地を更地にして返還することです。

墓地に立ち入れる業者は、多くの場合指定されています。指定業者がいると解体費用も言い値になってしまうので、費用は高くなる傾向にあります。指定業者に頼むとしても必ず事前に見積もりを取り、あまりに費用が高額であればそのまま受け入れるのではなく交渉してください。場合によっては相見積もりを取り、見積もりが妥当なのかを調べます。

業者が決まったらお墓がある自治体の役所に届け出て、「改葬許可証」を発行してもらいます。改葬許可証が出ると、遺骨を墓地から移動することができます。なお、遺骨を取り出すときには「閉眼供養」という法要が必要になります。お寺と打ち合わせて、お墓の解体の前に供養してもらいます。この際にお寺へのお布施は必要です。後は業者に遺骨を取り出してもらい、解体工事をして墓地を返還すれば墓じまいは終わりです。

離檀トラブル発生の背景

寺院の経営は、お墓の年間管理費や檀信徒の葬儀法要のお布施収入などで成り立っています。小規模なお寺の場合、固定客である檀家の減少は影響が大きくなります。また、地方では過疎化で檀家の減少が著しい場合もあります。

こういった理由から家族経営規模の小さな寺院では、住職や副住職に直接交渉しなければいけないため、多少の不満があってもなかなか切り出せるものではなく、離檀を認めてくれない恐れがあります。

離檀料については、法律上の規定はありません。そのため、支払いの義務はないと考える方の方が圧倒的に多くなっています。過去には数百万円の離檀料を請求された人が裁判を起こし、判決として離檀料を支払う義務がないという結果が出た場合もあります。ただし、お墓を撤去する場合閉眼供養(御霊抜き)はしきたりとして必要なので、これに対してはお寺へのお布施は必要です。

離檀トラブルの具体例

離檀に際してのトラブルで最も多いものは、「離檀させてもらえない」というものです。墓地から遺骨を移動する場合、自治体の役所から「改葬許可証」を発行してもらう必要がありますが、これを申請する用紙には墓地管理者の署名・捺印が必要になります。しかしこれに押印をしてもらえないことがあります。寺院側が離檀を認めない限り、結局遺骨が取り出せないという事態になってしまいます。

この場合、役所に相談をすることで改葬許可証を発行してもらえることがありますが、お寺が墓地管理者の署名・捺印を拒否し、離檀を妨げるようなことがあれば寺院側に違法性があり、弁護士を立てて要求するなどの方法が必要になってきます。

離檀は認められても、その代わりに数百万円もの離檀料を要求してくるお寺がごくたまにあります。離檀料でトラブルになった場合は弁護士に相談し、お寺との間に入って交渉してもらうことになります。

実際にトラブルになってしまったら

まずは、お寺と冷静に話し合うことが大事です感情的にならずに、離檀料は法的に義務ではないこと、お墓を無縁にしてしまうとお寺に迷惑をかけてしまうことなどを穏便に根気よく伝えます。どうしても当事者間で解決できない場合は、そのお寺の宗派の本山に連絡します。本山とは、お寺の本社のようなものです。

改葬許可に必要な書類をお寺に用意してもらえない場合は、役所に相談すれば改葬許可を出してもらえる場合があります。改葬許可が出れば遺骨を墓地から出すことができます。遺骨の取り出しは石材店に依頼します。

どうにもならない場合は弁護士に相談します。弁護士に依頼すれば費用もかかりますが、離檀料が高額な場合は意味があるでしょう。離檀料の法的規定がないこと、判例なども含めてお寺の正当性が認められる可能性は低く、裁判に至らずお寺が要求を取り下げる可能性があります。

まとめ

離檀とは檀家を離れるというで、寺の所属をやめる、お寺との付き合いをやめる、ということです。お寺の管理地にお墓を置いている場合は、檀家をやめる場合は、お墓も撤去・引っ越しする必要があります。

離壇するには菩提寺の住職へ、日頃お墓のお世話をしてもらっている感謝とともに理由を説明し、了解してもらわなければいけません。しかしお寺にとっては檀家の減少はそのまま経営状況の悪化に繋がるため、あまりいい顔はされないでしょう。

万一「離断を認めない」といったトラブルに発展してしまっても、法的には離檀料の請求権はお寺にはありません。最終的には交渉は有利に進められるはずです。しかし、なるべくなら感情的にならずに、墓じまいの閉眼供養のお布施は払うなどの方法で、妥協点を見つけられればベストです。

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