はじめに
仏壇は家庭の中のお寺と言えるものです。仏壇はお寺の本堂のように、仏さまがおいでになる世界「須弥山」を表しており、上段の中心に本尊がまつられます。また、亡くなられた家族や先祖をまつる場所でもあります。仏壇の形態の種類ではモダン仏壇、金仏壇や唐木仏壇などがあります。ここでは、一般的に広く使われている唐木仏壇の特徴や価格について紹介します。
唐木(からき)仏壇とは
唐木仏壇は、唐木と言われる、紫檀(したん)、黒檀(こくたん)、鉄刀木(たがやさん)、白檀(びゃくだん)、花梨(かりん)などの熱帯地方からの輸入銘木で作られた、美しい木目を生かした重厚な風合いが特徴の仏壇です。もともと中国を経て輸入したことから「唐木」と言われています。しかし現在では東南アジアを中心に輸入されています。
唐木そのものは堅い材質と美しい色合いや光沢から、仏壇以外にも建材、家具、楽器などに重用されてきました。歴史的には遣唐使の頃に輸入され始め、正倉院宝物に当時の唐木細工が多く残ります。
唐木仏壇は江戸時代から100年以上の歴史をもっています。様々な材料・工法で作られておりその違いによって値段や価値が大きく変わります。唐木ではなく縞柿・桑・欅(けやき)・栃・桜などの日本材を使用した仏壇は「銘木仏壇」と呼ばれる場合もあります。
唐木仏壇の素材
唐木仏壇に使われる主な素材には、国内外を合わせ多くの種類があります。主に東南アジア産の唐木銘木(紫檀・黒檀・鉄刀木)をはじめ、国産銘木(ケヤキ・桑・屋久杉・桜)、唐木以外の輸入銘木(メープル・オーク・チークなど)があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
黒檀
カキノキ科の樹木。代表的な唐木材のひとつで、耐久性があり、硬くて光沢があるのが特徴です。水に沈むほど緻密で、耐久性に優れ、虫や菌に侵されにくいうえ、乾燥性がよいという特徴もあります。インドネシア・スラウェシ島産の縞黒檀が有名です。
紫檀
マメ科の樹木で、代表的な唐木材のひとつです。タイ・ラオス・ベトナムなどを原産地とし、古くから重用されてきた木材です。赤みを帯びた木肌で、赤褐色・濃紫色・黒などの縞模様があります。材質は堅くて緻密なところは黒檀と同じです。正倉院御物の唐木細工のなかではもっとも多く見られ、古くから珍重された木材です。
鉄刀木(たがやさん)
マメ科の樹木で、こちらも代表的な唐木材のひとつ。主に東南アジアで産出されます。美しい斑模様が特徴で、心材は紫黒色・黒褐色です。
桑
桑科の樹木で、特に良材とされるのが、伊豆諸島の御蔵島や三宅島で産出される「島桑」です。緻密な年輪と美しい木目が特徴で、国内の銘木の中では最高級とされます。江戸時代から江戸指物などに用いられていました。
ケヤキ
ニレ科の樹木で、日本の代表的な銘木のひとつです。日本国内の多くの地域、台湾、中国などで産出されます。板目が美しく、硬い材質のため、仏壇に向いています。寺院仏具や神棚などにも使用されています。
唐木仏壇の製造工程
唐木仏壇の製造工程は木地、宮殿、彫刻、塗り、組立・仕上げの5工程があり、このうち木地、塗り、組立・仕上げの3工程以上を国内で行った製品が「国産」「日本」の表示となります。
現在の大半の仏壇は芯に別の木材を使い、銘木を張ってつくるようになっています。製品の価格を抑えるという目的のほかに、木材の割れや狂いを防ぐという理由もあります。
芯材には朴の木、マメ科セピター(東南アジア産)、ノボタン科ジョンコン(インドネシア産)、合板、MDFボード(合成木材)などが使われています。
芯材の上に銘木の突板を張り合わせる工法は「突板張り」とか「練り工法」と呼ばれるものです。表面材には黒檀や紫檀などの銘木を、芯材には天然木材や人工木材を使用したリーズナブルな価格の仏壇です。
また、芯材に木目を印刷したフィルムや塩ビシートを張り合わせたプリントの仏壇もあります。木目調プリントという工法です。天然の銘木を使ったものより安価なつくり方で、最近増えてきている中国製の仏壇にはこのタイプが多く見られます。
唐木仏壇の産地
唐木仏壇は伝統的様式の仏壇で、江戸時代に培われた工芸技術が生かされています。有名なものは東京唐木仏壇と大阪唐木仏壇です。大阪唐木仏壇は16世紀ころ東南アジアから唐木を直接輸入していたころから、日本でも有数の唐木仏壇製作の産地となっています。
東京唐木仏壇
東京都や埼玉県で製造される唐木仏壇です。桑・ケヤキ・屋久杉などの国内銘木、黒檀・紫檀・鉄刀木などの唐木銘木が主な材料です。あっさりとした外観が特徴です。
大阪唐木仏壇
大阪府で製造される唐木仏壇です。主な特徴は、仏壇内部が三方金であること、両脇の金紙が板ガラスによって保護されていること、胴板が桟木によって固定されていること、桟木を外すと胴板が取り外せることです。
徳島仏壇
個性豊かな高級唐木仏壇の中でも、徳島仏壇は特に際立った存在です。もともと徳島は家具や鏡台の一大産地でした。大阪唐木仏壇の製造技術の伝来により、独自の進化を遂げた徳島仏壇が生まれました。
静岡仏壇
静岡は、1945年代後半~1955年代にかけて正宗仏壇(創価学会)の産地として躍進を遂げた地域です。その後、八宗(仏教の全宗派)仏壇の産地としても発展し、国内有数の唐木仏壇の産地となりました。これまでに、唐木の杢張り(突板)など、多くの普及品を製造してきましたが、近年では高級仏壇も扱っています。
関東仏壇
北関東を中心として製造されている仏壇です。4枚のガラス組子引き戸を持ち、下台が和家具風となっているのが特徴です。ケヤキが主材料として使われています。
唐木仏壇の価格
仏壇の価格に関わる要素は2つあり、1つは「仏壇に使われている材料」、もう1つが「仏壇をつくるのに費やす手間と技術」です。唐木仏壇の相場は上置き仏壇で10万円〜50万円、台付き仏壇で50万円〜150万円程度になります。唐木仏壇は、仏壇の大きさ、木材、工法によって値段が大きく左右されます。
仏壇を購入する時の注意点
家族が亡くなり仏壇を新たに購入する場合は、四十九日の法要までに求めましょう。購入する前には仏壇を安置する場所の高さ、巾、奥行などをきちんと測っておきます。仏壇の扉は両側に開く観音開きですので、本体の寸法だけでなく幅も多少必要です。
なお、仏壇は「北向きは避けたほうがよい」と言われることがありますが、それは風通しや日当たりの具合から言われていることですので、基本的に方角はいずれでも問題ありません。家族揃ってお参りしやすい場所に安置されることに意味があります。ただし、湿気が多いところ、火気の近くなど仏壇が傷んでしまう場所は避けましょう。
まとめ
唐木仏壇は、唐木と言われる、紫檀、黒檀、鉄刀木、白檀、花梨などの熱帯地方からの輸入銘木で作られた、美しい木目を生かした重厚な風合いが特徴の仏壇です。浄土真宗以外の多くの宗派で用いられています。
様々な素材、製法で作られていますが、相場は上置き仏壇で10万円〜50万円、台付き仏壇で50万円〜150万円くらいです。最近では製法を合理化した、安価な海外製品も増えてきています。
仏壇は値段が高ければいいというものではありません。先祖を供養する思いこそが大切なので、家族がお参りしやすいもの、家族の負担にならないもの、そして心の拠り所にしやすいと感じるものを選ぶことが大切です。