金仏壇の特徴と価格について

仏壇・位牌

仏壇と一言に言っても、伝統的な仏壇から現代風の仏壇まで種類は様々です。現在、仏壇の形態上の種類は大きく分けて「唐木仏壇」「モダン仏壇」「金仏壇」の3種類です。中でも歴史の古いものが金仏壇ですが、現在では一般家庭であまり見かけられなくなってきたため、普通の仏壇と金仏壇の違いが分からない方も多いと思います。金仏壇は主に浄土真宗を中心に発展してきた仏壇ですが、金仏壇の特徴、形態や価格などについて紹介します。

金仏壇について

金仏壇は仏壇の形態の種類のひとつで、金箔や金粉が施されている伝統的な仏壇のことを指します。全体は黒の漆塗りで仕上げられているため「塗り仏壇」とも呼ばれています。蒔絵、彫刻、錺(かざり)金具などの日本古来の伝統工芸の技法が集約されており、技巧による豪華さが特徴です。伝統的な金仏壇の内部は、各宗派の本山寺院の本堂(内陣)を模していて、そのため宗派により造作が異なります。

特に浄土真宗では、金仏壇が推奨されます。江戸時代初期以降、各地の浄土真宗の道場の多くは本山から寺号を授与されて寺院化し、本尊の阿弥陀如来立像を安置していますが、個別の信徒の家庭においては、阿弥陀如来の名号あるいは絵像を本尊として安置する仏壇が置かれるようになりました。浄土真宗では、他宗における位牌を仏壇に置かず、阿弥陀如来の礼拝の施設であることを確認する意味で仏壇を「お内佛」という語を用いもします。ちなみに、浄土真宗の本山・寺院や仏壇(内仏)に金箔や金粉が多く用いられるのは、阿弥陀如来の浄土の荘厳さを象徴的に示すものです。

金仏壇の特徴

伝統的な金仏壇は、全ての工程を一人の職人が受け持つのではなく、木地、塗り、蒔絵、金箔押し、彫刻、錺金具などの各工程において、木地師(きじし)・彫刻師・塗り師・箔押師(はくおしし)・蒔絵師(まきえし)・彩色師(さいしきし)・錺金具師(かざりかなぐし)・仕立師など、多くの職人の手を必要とします。職人の中には、無形文化財に指定された人もおり、金仏壇は、日本の伝統技法を集約している伝統工芸品のひとつです。

金仏壇の工法

金仏壇の特徴は工法にあります。伝統的な金仏壇はどのような作業工程があるのか見ていきます。

  • ①木地

    仏壇の材料になる木材のことを木地といい、木地を使って仏壇の堂組・天井・柱を作る職人を木地師(きじし)と言います。木地には檜、松、杉、欅などが複合的に使われます。

  • ②塗り

    木地の表側に漆を塗ります。塗る回数が多いほど耐久性が良くなり、価値も上がります。また、漆などの塗料を塗る職人のことを塗り師と言います。漆塗りは金仏壇の見栄えに大きく影響する大切な工程です。

  • ③下地

    下地の良し悪しは仕上がりを左右します。牡蠣や帆立などの貝をつぶした胡粉に膠(にかわ)を加えた膠下地が有名です。

  • ④金箔(きんぱく)・金粉

    金箔を押す職人のことを箔押師と言います。金箔には様々なランクがありますが、箔押師が一枚一枚丁寧に貼り付けた仏壇はやはり高価になります。伝統工法では細かな工程を繰り返して金箔を作ります。

  • ⑤蒔絵(まきえ)

    蒔絵というのは、漆で描いた紋様に金粉・銀粉・色粉を付着させる技法で、日本の伝統工芸の一つです。蒔絵を施す職人を蒔絵師と言います。蒔絵師が丁寧に描いた蒔絵は高価な金仏壇に使われていますが、最近ではシルクスクリーンの蒔絵やシールの蒔絵など、安価な蒔絵風のものも使われるようになっています。一般的な蒔絵は「平蒔絵」で、漆で文様を描き、その上に金粉・銀粉などを乗せます。蒔絵の上から漆を塗り研ぎ出す「磨き蒔絵」、文様を肉上げする「高蒔絵」の技法もあります。

  • ⑥彩色(さいしき)

    仏壇に色をつけることで、濃い色つけの極彩色と淡い色つけの淡彩色があります。

  • ⑦彫刻

    欄間や柱飾りなどの彫刻で、彫刻をする職人のことを彫刻師と言います。彫刻には花や唐草、菩薩、鳥などの模様があり、細かい彫刻を付け足す付け彫りと一枚掘りという技法があります。

  • ⑧錺金具(かざりかなぐ)

    仏壇の扉などに取り付ける装飾金具・補強金具のことを錺金具といい、金具を取り付ける職人のことを錺金具師と言います。金具師が鏨(たがね)という道具を使って金属を加工し手打ちをする伝統工芸はその分高価なものですが、最近では機械が用いられるようになってきました。

伝統的な金仏壇は、以上のような工程を専門職人の手により1つ1つ丁寧に作りあげていきますが、現在は各工程を機械化し、化学品を使うなど、機械的な工法で作られている金仏壇が多いのが現状です。

金仏壇の形状

仏壇には扉が付いていますが、これは寺院の山門を見立てたものと言われます。仏壇内部は基本的に三段になっており、最上段の中央の檀を「須弥壇」(しゅみだん)と呼び、須弥山をかたどったものとされます。須弥壇の上は「宮殿(くうでん)」と呼ばれ、本尊(絵像・木像)をまつります。各宗派の本山寺院の内陣を模して造られるため、宗派によりつくりが異なります。その左右には、名号(掛軸)などをまつります。浄土真宗では、位牌を置かず、法名軸を左右側面に掛けます。

宗派に依る金仏壇の相違

浄土真宗では、教えを広めるために金仏壇を推奨していると言われます。他の宗派でも金仏壇を選ぶことはありますが少ないのが現状です。他宗派の金仏壇には特に決まりはありませんが、浄土真宗では宗派により形や作りが違います。本願寺派(西)と真宗大谷派(東)では、以下のような違いがあります。

・浄土真宗本願寺派(西)
屋根は一重の破風(はふ)屋根、外柱は金箔張りです。これは西本願寺の阿弥陀堂を模したもので、仏壇の内部も基本的にすべて金色です。

・真宗大谷派(東)
宮殿の屋根は二重の瓦吹き屋根、外柱は黒漆塗りです。二重屋根は東本願寺の御影堂(大師堂)を、黒柱は阿弥陀堂を模したものです。

金仏壇の産地

現在、日本国内で販売されている金仏壇の約70%が海外産となっています。海外の中でも、中国が最も大きなシェアを持っています。国内産と海外産を見分けることは困難で、違いは価格と経年劣化に関することになります。

国内では、江戸時代からの歴史を持つ金仏壇の産地は全国各地にあります。山形仏壇、新潟・白根仏壇、三条仏壇、長岡仏壇、飯山仏壇、名古屋仏壇、三河仏壇、金沢仏壇、七尾仏壇、彦根仏壇、京仏壇、大阪仏壇、広島仏壇、八女福島仏壇、川辺仏壇の15の産地の物が経済産業大臣から伝統的工芸品の指定を受けています。各産地では古くから伝えられた独特な形式の金仏壇が作られています。国内産の場合でも、全工程を職人の手で施される金仏壇と量産型の金仏壇があります。

金仏壇のサイズと相場

金仏壇の大きさは、サイズには幅があり、仏間に安置する大型のものから、タンスの上に安置することができる小型のものまであり、設置場所に合わせて選ぶことができます。仏壇の扉には前開きと三方開きがあり、前開きは1回手前に開くタイプ、三方開きは手前に1回開き、さらに左右に開くタイプとなります。

金仏壇の相場価格は80万円〜130万円位で、価格は仏壇の大きさや、金箔・金粉の使用量、彫刻や蒔絵の施しにより変わり、上限にはきりがありません。ただし、最近は、量産型の海外産のものが低価格で出回っています。

金仏壇の場合、金箔と漆の品質が大きく価格に影響します。金箔は純度と厚さにより値段に大きな差が出ます。金箔には、細工をほどこせるよう、わずかな量の銀と銅が混ぜられており、金の純度が高いものが価格も高く、一般に赤みの強いものが上質です。また、厚さについても、厚いものの方が当然高価になります。

漆は国産か外国産で品質が異なります。色むらがなく、何度も塗り重ねられたものの価値が高いと判断できます。なお、漆を使わずに化学染料を使い吹き付け塗装で作られている価格の安いものもあります。

価格差が出る表面仕上げ

価格差が出るのは、表面仕上げです。表面仕上げの種類には次のようなものがあります。

  • ①漆仕上げ

    最も高価なのが漆仕上げです。相当量の漆を配合した塗料を用いたもののみが漆仕上げと呼ばれます。耐久性が高く美しい艶が出る漆仕上げは熟練の職人の手作業で行われているため、高価な金仏壇に多く用いられています。

  • ②カシュー漆

    カシュー漆は漆よりも低価格ですが、漆と変わらない性能を持つと言われます。漆よりも簡単に乾燥させることができるため、現在ではよく使われるようになってきています。漆仕上げのように手作業ではなく吹き付け塗装が可能なので、その分安く仕上げることができます。

  • ③ウレタン仕上げ

    ウレタン仕上げは、ポリウレタン樹脂塗料を表面に塗って仕上げたものです。表面にポリウレタンの薄い膜を張ることで水が染み込みにくくツルツルとした手触りになります。木材は時間が経つごとに反りや割れが起こってしまうこともありますが、ウレタン仕上げは木本来の調湿作用を失わせるため、反りや割れがほとんど起こらなくなります。

  • ④セルロースラッカー仕上げ

    セルロースラッカー仕上げは、セルロースラッカーという塗料を表面に塗って仕上げたものです。速乾性が高く作業効率が上がるため、大量生産される安価な仏壇に用いられています。

まとめ

金仏壇は仏壇の形態の種類のひとつで、金箔や金粉が施されている伝統的な仏壇のことを指します。全体は黒の漆塗りで仕上げられているため「塗り仏壇」とも呼ばれています。金仏壇には蒔絵、彫刻、錺(かざり)金具などの日本古来の伝統工芸の技法が集約されており、技巧による豪華さが特徴です。伝統的な金仏壇の内部は、各宗派の本山寺院の本堂(内陣)を模していて、そのため、宗派により造作が異なります。

特に浄土真宗では、金仏壇が推奨されます。浄土真宗の本山・寺院や仏壇(内仏)に金箔や金粉が多く用いられるのは、阿弥陀如来の浄土の荘厳さを象徴的に示す理由です。また、浄土真宗内でも宗派により形や作りが違います。本願寺派(西)と真宗大谷派(東)では、異なります。

地方では浄土真宗の盛んな北陸地方などの本家筋の家では、仏間に豪華な金仏壇がある場合が多くあります。地域の文化でもあり、石川県の金箔の伝統工芸文化や北陸地域の漆塗りの伝統工芸文化も背景にあるでしょう。仏教の文化だけではなく伝統工芸技術を支えてきたものとしても価値があるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました