はじめに
家族のようにいっしょに暮らしてきた大切なペットの死は、とても悲しく辛いものです。飼い主がペットを亡くした悲しみから立ち直るためには、後悔しないように供養することが大切です。いつか来てしまうお別れの時に備え、ペットをどのように供養したら良いか考えておきましょう。
ペットを供養すること
少し前までは、ペットが亡くなると庭に埋めるという方法が一般的でした。しかし最近の住宅事情を考えると、亡くなったペットを庭にそのまま埋めることはなかなか難しくなってきました。そのためお寺やペット霊園に埋葬し、供養するという方法が今では一般的になりました。ただし、仏教では人と動物の扱い方が違うこともあり、希望したように供養ができないこともあります。
菩提寺でペットを埋葬すること
自宅の庭や私有地に埋めることができない場合は、まず自分の先祖のお墓がある菩提寺が思い浮かぶかもしれません。しかし、仏教の中にも色々な考え方があり、天台宗・真言宗・日蓮宗は「動物も人間も自然界のすべてのものは死後に仏様になる」と考えられていますが、浄土宗では「動物は人間とランクが違うから、動物のままでは成仏できない。動物界で善い行いをして人間に生まれ変わったのちに念仏を唱えて成仏される」と考えられています。ただし、浄土宗のなかでも「回向(まわりの人の祈り)によって念仏を唱えられない者でも極楽へ行ける」という考え方もあります。
考え方だけでいえば、いずれも動物は成仏し極楽へ行けるということになりますが、実際に境内のお墓に埋葬してくれるかどうかは菩提寺によって変わります。菩提寺の境内にある自分の家の墓にペットの遺骨も納骨してほしいと相談しても断られることもあるのです。ペットの遺骨を納骨すると隣のお墓の人が嫌がるから、という理由がいちばん多いようです。飼い主にとってはかわいいペットでも、動物が苦手な人にとっては自分の家のお墓の横に動物の骨が埋められていることに抵抗を感じることもあるでしょう。また、公衆衛生的な問題でお墓に人の遺骨以外の物を入れることに抵抗を感じて断る菩提寺もあります。
ペット用の霊園や納骨堂
菩提寺での埋葬を断られた場合は、ペットのための霊園や納骨堂を利用するという方法もあります。こういった霊園や納骨堂は宗教や宗派を問わず対応してくれますし、管理や供養をしてくれるところもあります。ただ、管理料やお墓の費用などが高額であることも多いものです。また、先祖代々のお墓とは別になるため、お墓参りや管理なども大変になります。菩提寺での埋葬を断られたり、霊園などにかかる高額な費用を考えたりすると、少しためらってしまうかもしれません。
また、自宅から離れた霊園にペットを埋葬するのは寂しいと感じることもあるでしょう。ペットを室内で飼っていると、日常のいろいろな場面にペットがいます。ご飯を食べるときも寝るときも一緒で、元気がないときにはペットが寄り添ってくれている気がすることもあったと思います。そんなふうにずっと一緒に暮らしていると、ペットを独りぼっちで遠くに埋葬することが寂しく思うこともあるでしょう。
手元供養という方法
埋葬をするための場所が決まらない、埋葬するための費用が高額で用意できない、遠くに埋葬するのは寂しい、といった場合は「手元供養」がおすすめです。
手元供養とは、火葬した遺骨を手元に置いて供養する方法です。手元供養の方法は何種類かありますが、どの方法でも埋葬する場所を必要とせず、費用もさほど高額ではなく、自分の近くでいつでも供養することができるというメリットがあります。手元供養の種類には、下記のようなものがあります。
小さな仏壇
「モダン仏壇」とも呼ばれている小さな仏壇を自宅の好きな場所に安置して、遺骨も小さな骨壺に納めて供養する方法です。小さな仏壇を家具の上に置いたり、壁掛け式の仏壇を安置したりして好きな時間におつとめをすることができます。
仏壇を構えなくても、必要な仏具だけを置いたり、写真にお花やお水を供えたりして、おつとめをすることも立派な供養です。ペットをいつでも身近に感じることができますし、仏壇や仏具は材質などにもよりますがお墓に比べると比較的安価です。
メモリアルジュエリー
遺骨を加工して宝石のような石を作り、その石でアクセサリーを作るのがメモリアルジュエリーです。見た目は普通のアクセサリーとまったく同じですし、デザインや石の色を選ぶこともできます。常に身に着けていても違和感はありません。
メモリアルジュエリーは遺骨を加工して作ることが多いですが、ペットの場合は遺毛を使って作ることもあります。ペットの遺毛をカプセルに入れたり、遺毛を整えてタッセルのようにしたりするのです。いずれにしても、ペットの身体の一部をずっと身に着けることで、いつでも存在を身近に感じることができるでしょう。
手元供養の注意点
手元供養は、比較的安価で管理しやすく、自分の身近にペットを感じることができます。また、自分の好きなときにペットの供養をすることもできます。ただし、気をつけたい点がいくつかあります。
家族の同意を得ること
家族みんなで可愛がっていたペットの供養の仕方は、まず家族できちんと話し合いましょう。大切な家族の死から立ち直ろうとするとき、人によってその形は異なります。自宅で身近に感じながら供養していくことで立ち直る人もいますが、逆に自宅から離れたところに埋葬している方が立ち直れる人もいるのです。
家に安置されている仏壇と違って、お墓や霊園は自宅から遠い「非日常」の場所です。日常のなかで「死」と向き合うのではなく、霊園やお墓に出向いて「死」と向き合う方が気持ちの整理がしやすい人もいます。自宅に仏壇があると毎日ペットを失った現実を突きつけられていると感じ、辛くなる家族もいるかもしれません。いくらかわいがっていたペットでも遺骨を家に置くことに抵抗感を抱く家族もいるかもしれません。
手元で供養したい、遠くで供養したい、どちらの気持ちも否定できることではありませんし、供養したい気持ちは家族みんな同じです。ペットの供養の仕方は家族で話し合って決めましょう。
自分が亡くなった後のことを明確にしておく
あなたが手元供養の仏壇や骨壺に入れた遺骨を管理している場合は、あなたが亡くなった後にそれらの物をどうするか明確にしておきましょう。メモリアルジュエリーを作って身に着けている場合も同様です。
あなたと一緒にペットを可愛がっていた家族の誰かが引き続き供養や管理をしていくのなら問題ありませんが、そうではない場合はあなたの死後にどうするか、あとに残った人が困ってしまいます。手元供養に関するものはあなたの死後、家族にとって「どうしていいかわからないもの」になる可能性があるからです。ペットの身体の一部ですし、仏具など宗教的な要素のあるものだと簡単に捨てるのもためらわれるでしょう。
もし付き合いのある菩提寺がある場合は、仏具や遺骨の取り扱い方について相談してみましょう。少しだけの遺骨ならば、あなたの副葬品としていっしょに納骨できる場合もあります。もし難しい場合は散骨するという方法もあります。僧侶に話を聞いて、自分や家族の宗教観を鑑みて、あなたの死後にどうするかきちんと家族に伝えておきましょう。
手元でできるペット供養のかたち
家族の一員として暮らしてきたペットの死は、とても悲しく辛いものです。ペットロスという言葉も一般的になり、悲しみから立ち直る方法を模索する飼い主もたくさんいます。
悲しみから立ち直るためには、きちんと供養して手を合わせていくこともとても大切なことです。供養のかたちにはいろいろありますが、仏教では人と動物の扱い方が違うこともあり、希望したようにできないこともあります。また、ずっと一緒にいたペットを遠くに埋葬することに対して抵抗を覚えることもあるでしょう。
そんな時はいつでもペットを身近に感じて好きなときに手を合わせる方法として、手元供養をしてみてはいかがでしょうか。小さな仏壇を安置したり、ペットの遺骨や遺毛を使ったメモリアルジュエリーを身に着けることで、供養することが可能です。ペットロスから立ち直るために、後悔しない方法で手を合わせて供養していきましょう。