エンディングノートで絶対書かなければならない情報とは?

相続

高齢になれば、自分の死を考えるようになります。自分が死んだ後、家族に心配させたくない、家族に伝えたいことがあるなどの思いがあるでしょう。そのために、終活というものが広がり、終活の中でのエンディングノートというものが生まれてきました。

しかし、エンディングノートをいざ書いてみようと思っても、何をどう書かなければならないのか、書かなければならないことはあるのかなどがはっきりしません。そこで、エンディングノートに「絶対書かなければならない情報」とはどのようなものかを紹介します。

エンディングノートとは

エンディングノートは、人生の最期を迎えるのに備えて、家族に自分の希望や、伝えておきたいことなどを書くノートのことです。
たとえば、自分の終末医療に対する考え方や、財産処理に対する考えなどを記録することができます。

エンディングノートを書くとき

人はいつ死ぬか、誰にもわかりません。明日交通事故で死ぬかもしれません。そこで、予め自分の想いや希望についてエンディングノートとして書き留めておきます。

エンディングノートを書き残すことで、自分の想いを家族に託すことができたり、自分の今までの人生を振り返り、今後の生き方を考えるのに役立てたりすることができるといった意味があります。エンディングノートを書くのはいつでも構わないのです。

ただし、高齢になれば認知症などによって自分の意思を家族に伝えられなくなることもあるので、後期高齢者になれば書いておいた方がよいでしょう。

遺言書とエンディングノートの違い

遺言書とエンディングノートの最大の違いは法的拘束力の有無です。

遺言書は、民法で定められた法律文書です(民法第960条)。書く内容や効力についても法律で細かく決められており、要件を満たしていない遺言書は無効となってしまいます。

法的拘束力があるので、遺言書に記載されている内容について、相続人は基本的に従わなければなければなりません。ただし、相続人全員が合意すれば、遺産分割協議をして異なる内容で財産を分けても構いません。

一方、エンディングノートは特に法律で定められたものではありません。あくまでも残された家族のために残すメモのようなものです。従って、何を書いてもよいのですが、そこには何ら法的拘束力はなく、なにか指示が書いてあったとしても相続人がそれに従う義務はありません。

エンディングノートで絶対書かなければならない情報とは

基本的には、エンディングノートに決まった項目はありません。ただし、エンディングノートを書く目的を、自分が死んだ後家族が困らないようにすることに置くならば、やはり書かなければならないことは絞り込まれます。

遺言を書かない場合は、遺産分割に関する考え方は絶対書かなければならない内容でしょう。遺言書があっても、法定分割以外の方法や贈与があれば書くべきでしょう。その他の情報は家系や親族などの情報、家のお墓に対する考え方などは書いておいた方がよい項目です。

あとは、「自分がどうしても伝えたい項目」が書かなければならない情報となります。

自分自身について(基本情報)

まず、自分自身のことを基本情報として以下のような内容を書いておくとよいでしょう。

これは単なる最初の整理の部分です。ただし、本籍地は家族のための確認の意味があります。
・氏名、生年月日、住所
・本籍地、出生地
・血液型

家系図、親族情報、親しい知人情報

・家系図
子どもなどに伝えるのが目的です。自分と配偶者の親、祖父母、曽祖父母、高祖父母などわかる範囲で家系図として整理します。また、それぞれのプロフィールなどわかる範囲で書いておきます。

ルーツやファミリーヒストリーはいつか誰でも知りたくなる課題ですが、親から聞いていないと後から知りたくてもわからない壁にあたります。
できれば戸籍謄本を遡って集め、資料も添付しておくとよいでしょう。相続の作業でする内容でもあります。

・親族情報
家系図に親族の情報も加えて制作します。家系図があると続柄が分かりやすくなります。
また、親族情報のリストがあれば、自分の葬式に呼ぶか呼ばないかも指示できます。
親族リストでは、氏名(ふりがな)、続柄、住所・電話、葬儀の連絡をするか、葬儀後に知らせるだけでよいのか などを記載します。

・親しい知人情報
自分の葬儀の連絡をしてほしい人、年賀状のやりとりがあり、自分が死んだことを伝えてほしい人の情報を整理しておきます。同様に、氏名(ふりがな)、関係、住所・電話、葬儀の連絡をするか、年賀状欠礼の知らせだけでよいのか などを記載します。

財産や債務の状況

自分のもっている財産の内容を一覧にしておきます。どのような財産があったのかを知らせておかないと、亡くなった後の相続手続きが非常に面倒になります。相続税の申告が必要な場合には、すべての財産の情報が必要です。

特に最近多いネット銀行やネット証券については、郵送による通知がないことが多いので、存在に気づきにくく注意が必要です。
書いておきたい財産の情報は以下のようなもので、詳細な記述が必要です。

a. 金融関係の財産
ア. 預貯金(金融機関、支店名、預金の種類、口座番号、金融印など)*暗証番号は別途管理
イ. 有価証券(金融機関、支店名、証券及び金融商品名など)
ウ. 生命保険の加入状況(生命保険会社、加入保険名、保険金などの資料) *保険契約書の写しなど
エ. 損害保険の加入状況(生命保険会社、加入保険名、保険金などの資料) *保険契約書の写しなど
オ. クレジットカード(カード会社名、カード番号) *暗証番号、ID、パスワードなどは別途管理
カ. 貸金庫(銀行名、支店名、鍵・カードの場所、貸金庫の開け方説明書)*暗証番号は別途管理

b. 不動産(詳細な地番名など) *登記簿や権利証があればその写しなどの資料

c. 借金、ローン
ア. 金融機関ローン(金融機関、支店名、ローン名、金額、残額など)
イ. 個人的借金(借入先、連絡先、借入額と残額など)

負債の内容を書くのに気が引ける方もいるかもしれないですが、借金も相続の対象でマイナスの財産となり相続税計算では控除されます。書いておかないと、残された家族が後々困るので、必ず書くようにします。

d. 貸付金
人にお金を貸している場合はその相手先、連絡先、金額など

クレジットカードの番号やキャッシュカードの暗証番号などは、流出すると大変なので特に書く必要はありません。クレジットカードや口座の存在がわかれば、相続後に手続きは可能です。

相続に対する考え方、形見分け、遺品整理のこと

遺言書を書いた場合は、その説明の必要があれば書いておきます。また、自筆証書遺言書の保管場所などについても必要に応じて書いておきます。

また、相続上あまり問題にならない貴金属品やコレクション、思い出が詰まった品をどのように分けるかを記しておきます。もらっても困るようなものは、処分の方法を記します。

「家族は興味を示さないが、愛好家には人気があるもの」や「資産価値はないが、歴史的に貴重なもの」がある場合は、それらの譲渡希望先も決めておくとよいでしょう。

契約情報など

自分が使っているパソコンやスマホ、運転免許証などの個人情報について、わかる範囲で一覧(IDやログインパスワードなども)にしておくとよいでしょう。

a. スマホ *契約資料など
b. インターネットのプロバイダー *契約資料など
c. SNSなど(ID、パスワードなど)
d. 運転免許証
e. パスポート
f. 年金(年金基礎番号、年金の種類など) *年金証書
g. 健康保険証(保険の種類、被保険者番号) *健康保険証、後期高齢者医療制度証
h. 介護保険証
など

延命措置などについて

家族が判断を迫られたときに、判断するのが難しい延命措置などについては、書いておくべき優先順位の高い項目です。
書いておいたほうがいい内容としては、以下のようなものがあります。

a. 終末期医療(延命措置など)に関する意向 □内にチェックを入れる。
□ 延命治療をしてほしい
□ 延命治療はやめてほしい
□ 快復の可能性があれば続けてほしい

b. 癌などの難病や不治の病と診断された場合
□ 病名を告知してほしい
□ 告知しないでほしい

c. 臓器移植について
□ 臓器移植に同意します
□ 臓器移植はしたくありません
□ 家族に任せます

葬儀について

どのような葬儀をしてほしいのかを家族に伝えておきます。

a. 葬儀自体を行うのかどうか
葬儀を行わないでよいという場合もあります。火葬のみ行う直葬という場合です。これは本人の意思でなければ、遺族は行いにくいものです。

b. 葬儀の規模、形態について
小規模な家族葬を希望するなど

c. 葬儀に呼んでもらいたい人
特別親しい人など

d. 葬儀の演出について
自分の好きな音楽を流してほしい、棺に好きな絵を入れてほしい、など

お墓について

家のお墓や、自分が生前購入したお墓がある場合は、そこを指定すれば問題ないでしょう。
しかし、その他の場合は書き残しておくことが必要です。

お墓の継承者がいなくなることを心配して、永代供養が可能な納骨堂や樹木葬を希望することも増えています。

また、自然葬を希望する人もいます。海洋散骨にしてほしい、飛行機で空から散骨してほしいなどです。海洋散骨ではどこの海がよいとかの希望も書いておき、また、自分で調べて詳しく指定することがよいでしょう。

エンディングノート以外での情報管理

金融関係の暗証番号やパスワードなどの情報はエンディングノートでは書かずに別の方法で家族に伝えます。万一エンディングノートが紛失、盗難にあったときのリスク管理です。ただし、忘れないようにしなければなりません。

エンディングノートには、自分のもっている預貯金口座の番号などを書きますが、キャッシュカードの暗証番号は書かないようにしましょう。
万一の場合でも、最終的には正式な相続人であれば、相続発生後に預金を解約したりできます。

エンディングノートの管理

金融関連の情報の管理

金融関連の情報の管理は、絶えずしておくことに意味があります。銀行預金であれば、通帳、カード、印鑑が物としてあり、情報としては、銀行名、支店名、預金の種類、口座番号、カードの暗証番号などがあります。

ネットバンクであれば、物としての通帳がなく、情報としてIDやパスワードが加わります。暗証番号やID、パスワードは別としてその他は書いておいた方が万一のために家族に役に立つでしょう。

契約情報の管理

パソコンやスマホなどの情報も、契約書とともにわかる場所に整理しておいた方がよいでしょう。
また、年金(年金基礎番号、年金の種類など)、健康保険証、介護保険証などの置き場所は決めておきます。

まとめ

・ エンディングノートとは
エンディングノートは、人生の最期を迎えるのに備えて、家族に自分の希望や伝えておきたいことなどを書くノートのことです。

・ 遺言書とエンディングノートの相違
遺言書は、民法で定められた法律文書であり、書く内容や効力についても法律で細かく決められており、法的拘束力があります。一方、エンディングノートには法的拘束力はありません。

・ エンディングノートに絶対書かなければならない情報とは
エンディングノートを書く目的を、自分が死んだ後家族が困らないようにすることにするならば、やはり書かなければならないことは絞り込まれます。

相続に関連する財産の情報、遺産分割に関する考え方の説明、個人情報の管理、契約情報の管理、終末期の医療に対する考え方、葬儀・お墓に対する希望などは、絶対書かなければならない情報となるのではないでしょうか。

・ 任意の情報でも個人により、家庭により異なってくる場合も
一般的に絶対書かなければならない情報ではなくても、個人により、家庭により、内容は異なってきます。
特に家族関係が複雑であったり、相続ではなく贈与があったりすれば、それらの記述は重要な内容をもってきます。争いを防ぐためにも、遺言書の整備やエンディングノートでの説明も必要になってきます。
また、人により趣味のコレクションの管理や形見分けが重要な場合もあります。

・ エンディングノ-トも更新と確認の必要性があること。
内容に変更があれば、エンディングノートも更新の必要性があります。また、内容の確認の年月日も記載しておく必要性があります。

エンディングノートで絶対書かなければならない情報3つのポイント

・ エンディングノートを書く目的
エンディングノートを書く目的は、人生の最期を迎えて家族に自分の希望などを伝えることです。

・ エンディングノートと遺言書は別物
遺言書は法的拘束力があるものですが、実際に書く人はそう多くはありません。手続きや規定が面倒だからです。また、法定割合の分割であれば遺言書を書く必要も相対的には低くなります。そのため、エンディングノートの意味があります。

・ エンディングノートに絶対書かなければならない情報
相続に関連する財産の情報、遺産分割に関する考え方の説明、個人情報の管理、契約情報の管理、終末期の医療に対する考え方、葬儀・お墓に対する希望などは、絶対書かなければならない情報と考えられます。

エンディングノートも普及してきました。書き方の講座もあり書籍もあります。しかし、実際に書き始めるのはおっくうになり、書けないものです。一度に書くというよりは、できるところからまとめていくのがやりやすいでしょう。

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