自分史、それはエンディングノートの重要なテーマ

相続

エンディングノートは人生の終盤期における人生の記録といえるでしょう。エンディングノートを書くメリットはこれまでの人生を振り返ることができることです。人生は必ずしも平たんな道のりではなく、苦しいことや辛いことを乗り越えてきたからこそ現在があります。エンディングノートの人生の記録ともいえる部分は、自分史と言っても良いでしょう。

そんな自分史、つまり自分の生きてきた歴史は、子どもなど家族に伝えるべきことも多いのではないでしょうか。その一方で、なかなか書きづらいのも自分史です。エンディングノートにおける自分史の書き方について紹介します。

エンディングノートにおける自分史とは

エンディングノートとはいずれ訪れる死に備え、自分の情報を記すためのノートのことです。内容には葬儀の希望や遺産についての申し送り事項など、遺された人たちへのメッセージなどを記載しますが、そこに自分史を書く方もいらっしゃいます。

自分史とはその名の通り、自分の歩んできた歴史を描いたもの。人生の終盤期にあたって、改めて自分史としてまとめてみると、残りの人生の生き方も明確になりますし、子どもなど遺された人たちにとっても大いに役立つものになります。

エンディングノートに自分史を書く必要性

エンディングノートに自分史を書いておくと、様々なメリットがあります。自分の歴史ですから、それにまつわる家系のことを遺された人に伝えることができたり、これまでの人生を振り返ってみたことで新たな発見があったりするのです。

家系や親、祖父母のことを子などに伝える。

NHKテレビに、有名人のルーツを探る『ファミリーヒストリー』という番組があります。NHKの調査力を動員して、本人の知らない家系のドラマを伝える興味深い番組です。番組に登場する有名人は自分の家系について親から十分に聞いていない場合がほとんどで、本人も調査結果に驚く場合が多々あります。もちろん有名人ではなく一般の方でも、親が亡くなってから自分のルーツへの関心がわき、親が元気なうちに聞いておけばよかったと思っている人もいらっしゃいます。

多くの場合、家族の伝承が不十分でだんだん家系、ルーツについてわからなくなってきてしまっているのです。つまり、自分の代で分かることを整理し調査し、それを子どもに伝えていくことは、子の代、孫の代と、子孫にとっても大切なことだと言えます。

自分自身の人生の歩みを記録し家族に伝える。

自分史の目的は、自分自身がどのような人生を送ってきたのかを客観的に振り返り、苦労した体験などを人生の教訓として子どもや家族に伝えることです。特別なことを書く必要はありません。

例えば、サラリーマン家庭の場合は親が仕事をしている姿を子どもが見ることはほとんどありません。親も仕事の細かい話は子どもにあまりしていないことがほとんどです。しかし人生の中で「どんな仕事をしていたか」「仕事でどんなものを得たか」という部分は、大きな事柄のはずです。このようなことも自分史で語っておくと、大変意味のあることになります。

自分自身の人生を振り返り総括する。

また、自分史を執筆することは、人生の終盤期にあたって自分と向き合い、死や生きてきた意味を考えるでもあります。簡単に言えば、人生の振り返りと総括です。人生で良かったこと、不満足だったことを振り返り、残された限られた時間をどう生きるかを考えることに繋がります。

これまでに何かやり残したことがあるとわかれば、人生を終えるまでに挑戦すべきだと思えるはずです。これまでの人生で感謝を伝えきれていない人がいれば、感謝を伝えに行きましょう。このように、自分史を書くことで自分自身がより良く生きるための指標をいつけることができるはずです。

人生の終盤期における自分史とは何か

自分史は、年齢と目的により書く意味が異なってきます。大学生の就職の時期には「自己分析」が必要となりますが、実はこれも自分史のようなものです。

就職活動における「自己分析」は自分の進路や就職先の業種、職種を絞り込むため、「自分が何をしたいのか」「何に向いているのか」を探る目的ですが、今まで生きてきた自分の歩みを自分史として整理するものなのです。では、人生の終盤期における自分史はいったいどういったものなのでしょうか。それは以下の通りです。

  • ①自分の両親や祖父母などの歴史、家系を振り返るもの
  • ②子どものころから現在までの自分の人生の歩みを振り返るもの
  • ③人生のエポックとなる時期の時代背景を伝えるもの
  • ④自分の家族、人間関係の歴史や思い出を残すもの
  • ⑤感謝など家族に伝えたいことを残すもの
  • ⑥相続における遺産分割に関する説明、贈与を行った場合の説明

もちろんこれらの項目をすべて書く必要はありません。自分と残された家族にとって必要だと思われることを書けばよいのです。

エンディングノートにおける自分史の書き方

エンディングノートに自分史を書く意味がわかってもらえたと思います。とは言っても、実際にどのように書き始めたら良いか分からない方もいらっしゃるかもしれません。

自分の歩んできた人生には、様々な出来事があったはずですし、嬉しかったことも悲しかったこともたくさんあります。それらを幼少期から逐一追っていては、まとまらなくなってしまいます。よりわかりやすく、意味のある自分史を書くためには、以下のポイントに気をつけてみてください。

自分にとって自分史を書く目的とテーマを考える

自分史には書く目的と、そこから導かれるテーマがあります。テーマとしては次のようなものが例として考えられます。

・家系やルーツについて子どもなどに伝える
・自分の両親や祖父母についてどんな人だったか伝える
・自分の人生の歩みを記録化し子どもなどに伝える
・自分の人生の転機になったことを思い起こし人生を振り返る
・自分が進路を決定し、仕事を選んだ動機、キッカケを整理し伝える
・自分の人生で苦労した体験を教訓として子どもなどに伝える
・配偶者との出会いを子どもなどに伝える
・家族への感謝を伝える

これらを要素として、複数の項目を含めて書きます。

自分史の構成を、目次づくりで表す

自分史を書くにあたってはテーマを考え、全体の構成を考えます。構成を考えると言っても難しいので、本の目次の例を参考に、目次づくりから行うと良いでしょう。目次の例としては次のようなものがあります。

  • ①タイトル「私の歩んできた人生」
  • ②目次

    はじめに

    ・エンディングノートにおいて自分史を書いた訳

    第1章 我が家の家系、ルーツ

    ・父方の家系について

    ・母方の家系について

    第2章 両親、祖父母の思い出

    ・父の人柄、思い出

    ・母の人柄、思い出

    ・祖父母の思い出

    第3章 私の人生の歩み

    ・幼児期の思い出

    ・小学校時代

    ・中学校時代

    ・高校時代

    ・大学時代など、時代背景

    ・就職と進路の悩み

    ・就職 A社での仕事と体験

    ・転職 転職した動機、B社での仕事と体験

    ・仕事の喜びと悩み

    ・仕事で身に付けたこと、学んだこと

    ・人生の節目になったこと(病気、事故、仕事の転機とチャンスなど)

    第4章 私の生きがい

    ・趣味について

    ・ライフワークとの出会い

    ・定年後の地域の社会参加

    第5章 人生の終盤期で思うこと

    ・周囲の人のとの関わり方

    ・終末期の医療や介護での希望

    ・お墓についての私の考え

    ・葬儀の希望と理由

    おわりに

    ・家族への感謝

情報の整理、リサーチ

自分史を書き始める前には、まずやらなければいけないことがあります。それは、自分史にまつわる情報を整理することです。これがしっかりできているか否かで、書きやすさが格段に違ってきます。

年表を作る

自分の年表は自分の生きてきた記録であり、自分史の原型です。特に、自分の歩みの中で重要な時期については時代背景や社会環境を重ね合わせみるといいと思います。

戦争の時代に生きてきた人はその時代背景について子どもなどにも伝えるべきでしょう。NHKの朝ドラでも主人の人生の歩みと時代背景がドラマとして組み立てられています。身辺の出来事、国内の出来事、海外の出来事、当時の世相などを織り込んでいくとドラマ性が出てきます。年表を作るには正確な年代・年数を整理する必要があるので、履歴書のような表形式でまとめても良いでしょう。

父母や祖父母、先祖や親戚などについて調べ整理する

父母や祖父母その先祖など、出生から死亡までの年月日や重要な事項と年月日などを整理し、不明な点は調べます。できれば戸籍謄本を取り、祖父母、曽祖父母、高祖父母と分かる範囲で追います。戸籍は明治期以降に制度化されたものなので古いものは廃棄されている場合もありますし、戦争で消滅している場合もありますが、可能な限り追ってみましょう。また、家によっては古文書などでルーツを追える場合もあります。

戸籍は本籍地の役所で、戸籍謄本、除籍簿(亡くなった人の戸籍)、改正原戸籍を取り寄せてください。本籍地に行かなくても、使用目的を書き、返送郵送料を同封して該当役所に郵送すれば入手できます。 家の菩提寺があれば過去帳があるはずです。過去帳とは寺に葬った人の法名、俗名、生没年月日などを記入した帳面で、何代かさかのぼれる可能性があります。

自分自身や家族の記録に関する資料を整理

学生時代の思い出や友人との写真、仕事でどのような成果を残してきたかという資料なども自分史に盛り込むと良いでしょう。あわせて父母や祖父母などの写真などを整理しておくと役立ちます。プライベートでも結婚の際の資料、子どもが誕生した際の資料も集めておきます。どのような人が結婚式に参列してくれたか、子どもが生まれたときの産院や出生時体重なども、自分史を彩る情報になります。

人生の終末期に関する希望に関する情報収集

また、終末期医療に関する延命措置に関する希望も記載しておきましょう。それに伴い、医療についての情報収集も必須です。お墓や散骨などの希望と具体的資料もあると、遺された人が安心して死後の対応ができるようになります。

執筆

自分史は、構成案の目次に従い書きやすいところから書いていきましょう。難しく感じるかもしれませんが、一発で仕上げようとせず、まずは日記を書くような気持ちで取り組んでみると良いかもしれません。なお、執筆の際は以下を心がけると、読みやすくなります。

・文章の調子
文章は、「ですます調」か「である調」を決め、一貫してどちらかで書きます。

・段落の設定と長さ
文章を読みやすくするには段落の設定が必要です。段落の長さは、ワープロですと標準で1行40字になっていますので1段落は数行から10行以内でしょう。文字数でいうと、200字から400字程度になります。段落の最初の1文字は1字下げ段落が変わったことを示します。

・5W1Hの記述
基本として、When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(なにを)、Why(なぜ、どんな目的で)、How(どのように)を頭に入れて文章を書きます。なお内容により5W1Hのすべてを書かなくても構いません。

・事実の記述
自分史というのは、自分の人生を題材にした歴史なので、事実を記述していきます。自分の人生で実際に起きた出来事・感じたことだけを記述していきます。自分を大きく見せたいがための嘘は書かないようにしてください。自分史を書く意味は、自分の人生をありのまま、あるがままに直視することにあります。

こんなときは?

エンディングノートに自分史を残すと決めても、迷ってしまうことがあるかもしれません。子どもがおらず後に遺す人がいない場合や、家族関係がうまくいっていない場合などです。ですがそのような場合でも、自分史を残す意味はあります。

伝える人がいない場合

生涯独身の人や子どものいない人もいます。エンディングノートで伝える家族がいない場合には、子孫に伝えるという意味でのエンディングノートを書く必要はないかもしれません。しかし、自分と向き合うこと自体にも意味があ理ますので、自分史の執筆をおすすめします。また、インターネットのSNSやブログで情報発信をし、知人や友人、また他者と交流し自分史を活かすこともできます。自分史を自費出版する人もいらっしゃいます。

親子関係や家族関係がうまくいっていない場合

親子関係や家族関係がうまくいっていない場合は、自分史の執筆が難しいかもしれません。自分史の執筆をきっかけに、人生の終盤期での最後の仕事として関係修復を目指してみるのも良いかもしれrません。

まとめ

・エンディングノートにおける自分史とは
エンディングノートにおける自分史は自分自身の人生の記録であり、メッセージです。

・エンディングノートにおける自分史部分を書く必要性とは

  • ①家系や親、祖父母のことを子などに伝える
  • ②自分自身の人生の歩みを記録し家族に伝える
  • ③自分自身の人生を振り返り総括する

などです。

・人生の終盤期における自分史の内容、テーマ
人生の終盤期における自分史とは

  • ①両親や祖父母などの歴史、家系を振り返るもの
  • ②子どものころから現在までの自分の人生の歩み
  • ③人生の歩みの中でエポックとなる時期の時代背景
  • ④自分の家族、人間関係の歴史や思い出
  • ⑤人生の終盤期にあたって家族に伝えたいこと、家族への感謝
  • ⑥相続における遺産分割に関する説明、贈与を行った場合の説明

です。

・自分史の構成を、目次づくりで表す。
自分史を書くにあたってはテーマを考え、全体の構成を考えます。構成は目次づくりから行います。

・情報の整理、リサーチ

  • ①年表を作る
  • ②父母や祖父母、先祖や親戚などについて調べ整理する

等の作業から始めます。

エンディングノートにおける自分史の書き方3つのポイント

(1) エンディングノートにおける自分史部分を書く目的を明確にする
(2) 自分が残りの人生を有意義に過ごすための観点を持つ
(3) 次世代につなぐ自分の使命だと意識する

エンディングノ-トにおける自分史は、遺言書では書かない、書けない部分です。形式も内容の制限もありません。ただし遺言書と違って自分史は読んでもらえる保証がないので、最後には家族にその存在と場所を知らせておくものです。

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