備忘録としても使える便利なエンディングノート

相続

「エンディングノート」の二つの役割

いつかは誰しもが訪れる人生の締めくくりを視野に入れ、早くから終活をスタートする人が増えてきました。
身近な終活では、断捨離などもその一つでしょう。

そして最近は、終活と言えば「エンディングノート」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

エンディングノートとは、本人の意思を伝える日記のようなもので、あらかじめ多くの項目が用意されており、自由に書き込むことができます。

エンディングノートが役に立つのは、亡くなった後と思いがちですが、それだけではありません。
生前にエンディングノートを作成した本人が、突然意識を失う、または認知症になるなどで、意思疎通ができなくなることもあるでしょう。

そのようなときに、自分の考えを伝える手段となります。

そしてもう一つの役割は、元気なときから備忘録として利用ができることです。
エンディングノートは、亡くなった後だけではなく生前にも使用ができる「二つの役割」を持っていると言えます。

## 備忘録としてのエンディングノートのすすめ

連絡先の一覧や金融機関情報などに加えて、生活に必要な多くのパスワードもまとめて記録をしておくと、あなただけのエンディングノートが完成します。

今回は、備忘録としてのエンディングノートの書き方や注意点を解説していきます。

### 元気なうちに書くことが大切
エンディングノートの内容は、備忘録のようなものとも言えます。
「何を書けばいいのだろう」と考える必要はなく、あらかじめ用意された項目の中で、自分が書きやすいと思うものを自由に書いていけばいいのです。

いざ、取り掛かろうとすると、久しぶりに宿題が出来たようで、熱中して根を詰めてしまうかもしれません。
書いておきたいことを挙げてみると、意外とたくさんあるものなのです。

ぜひ、気力も体力もあるうちに、エンディングノートの作成に取り掛かることをおすすめします。
興味をもった今が始める時期かもしれません。

パソコンでの入力もおすすめ

パソコンで入力すると、仕上がりもよく、見る側にとっても読みやすいでしょう。
手書きよりもパソコンを使用することに慣れている人にはおすすめです。

一度、記入して大体の形ができていれば、2~3年ごとに見返し、必要に応じて修正したり加筆したりするだけでいいので、管理は簡単と言えます。
手元に置いて見たい場合には、印刷しておけばいいので大変便利です。

### では、いったい何から始めればいいのか?
何から始めればいいかわからない場合は、実際に中身を見てみることが大切です。

参考までに、終活ライフのエンディングノートを見てみましょう。

下記のように、大きく項目が分かれています。
• 基本情報
• 家族・親族の連絡先
• 友人・知人の連絡先
• 葬儀
• お墓
• 処分・継承
• 相続・遺言
• 医療・介護
• 資産
• 保険
• ペット

まずは、 基本情報や連絡先は飛ばして【葬儀】の項目を開いてみましょう。
◆「葬儀が必要か、不要かの選択 ➡ 葬儀の形式を選択(家族葬、密葬、一般的なもの、お別れ会、家族に任せる、その他)」

例えば「葬儀は派手にしたくない」という気持ちを、あなたが子どもに話していたとします。
「派手」のレベルは人それぞれで、基準がありません。

お金をかけすぎない普通の葬儀なのか、それとも家族葬を望んでいるのか、子どもから親に聞くことは、なかなか出来ないものです。
そのため、エンディングノートで選択をしておくと、かなり絞られた形で残された人に伝わります。

さらに、項目が続きます。
◆「用意している葬儀費用、喪主、使ってほしい遺影、➡あるならば写真の保管場所」

遺影は、いつまでも残る最後の一枚です。
しかし、急な葬儀だと慌てて写真が見つからず、望む写真を使ってもらえない可能性が高いです。
残った人が困らないためにも、元気なうちに、お気に入りの写真を選んで準備しておきたいものです。

このように、各項目を開いていくと“気にはなるけれども、自分の意思が及ばない内容”が多いことに気づくでしょう。

なかには自分では思いつかないような項目もあり、自分以外では決めにくいものもあります。
しかし、エンディングノートを作成しておくことで、それらの項目に対するあなた自身の考えを、残された人に伝えることができるのです。

備忘録としてのエンディングノートの役割

エンディングノートの重要な役割の一つは、パスワードや連絡先の備忘録です。
先にエンディングノートの項目を紹介しましたが、実際に記入し始めるときには、備忘録としての各種情報の項目から始めるといいでしょう。

家族が把握できていない情報や、自分でもすぐに答えられない情報をひとまとめに管理しておくと、今後の生活にも大いに役立ちます。

次では、どのような内容を書いておくべきか細かく見ていきます。

カルチャースクール・親しい友人の連絡先

いざとなったとき、家族が通っていたカルチャースクールや所属団体の、友人の連絡先はすぐにわかるでしょうか。
カルチャースクールなどの休会や退会の手続きをすることも考えられます。

また、友人は知っているようでしらないものです。
連絡する必要があるかもしれないので、出来る限り友人の連絡先も書いておくといいでしょう。

親族の情報

夫婦であっても、お互いの叔父叔母や従妹の名前、連絡先などは意外に把握できていません。
できる範囲でいいので、家系図を書いておくとわかりやすいでしょう。

携帯電話、パソコン、スマートフォン、タブレットの情報

年配の人でも、携帯電話、パソコン、スマートフォン、タブレットの、いずれかを利用されている人がほとんどでしょう。
それらのIT機器は、個人情報の観点から、全てがパスワードで管理されています。

まずは自分が使用している携帯電話の、マイページにログインできる情報を記録しておくことをおすすめします。
また利用機器がスマートフォンだけなのか、タブレットもあるのか、などの情報も合わせて書いておくといいでしょう。

このサイトの【処分・継承】項目には、スマートフォンなどの機器について、必要項目をリストアップしてあります。
何が必要なのか考える必要はなく、それらの項目を入力すれば完成です。
※注意※ パスワードや、アカウントには、数字やアルファベット、大文字、小文字の判別が必要です。
パソコンやスマートフォンで入力することにより、手書きの場合に起こりやすい文字列の判別ミスを避けることができます。

### 銀行口座、証券口座の有無や情報
どの銀行に口座があるのか、また金融機関は一箇所だけなのか、他にもあるのか、などを記載することが大切です。
一緒に住んでいて、何となくわかっているようでも、正しく把握しているとは限りません。

別居の場合、連絡をこまめにとっていても、それらの情報や連絡先の把握となると難しい問題でしょう。
さらに、インターネット口座となると、完全にお手上げ状態です。

昨今、問題になっているのは、銀行口座や証券口座が、残された人にすぐわからない事例が増えていることです。
それはインターネットの普及に伴い、金融機関の口座管理を、インターネット上で行う人が増えてきた現状にあります。

スマートフォンで、自分の口座にログインすると、入金、出金、振り込みなど、ほぼすべての取引が行えるからです。
また、WEB通帳に切り替えて、紙の通帳を持たない人も増えてきています。

さらに、一部のインターネットバンキングでは、キャッシュカードの発行もありません。
この場合、残された人はクレジットカードを見かけることもないため、口座の存在に気づくことができないままです。
(一万円以上残高がある口座は、10年の間、一度も取引がないと登録住所に通知がくるようになっています。
もし転居などで通知が届かない場合は休眠預金となり、その預金は国が民間公益活動に利用します)

そのため、金融機関名、支店名、口座名義などの情報は、記録しておくことが大切です。

SNSアカウントの情報

長い間、 SNSを利用していないと、悪用される可能性もあります(Instagram、Twitter、Facebookなど)
パスワードを破り、アカウントを乗っ取る被害が現実に起こっているのです。

それでは本人だけではなく、つながりがある人にも迷惑がかかってしまいます。
アカウントがつながっている人に、削除を希望する場合には、ID・パスワードも記録しておきましょう。

エンディングノート終末期医療の項目について

ここまで、主に備忘録としての重要性を、紹介してきました。
次は、終末期医療に関してです。
これは、エンディングノートの性質が、従来の遺言や遺書と、大きく異なる点です。

遺言(主に財産や所有権についての法的な書類)も、遺書(ありがとうの気持ちや、お詫びなどを書き残すお手紙のようなもの)も、死後に公開されて有効となります。
しかし、エンディングノートは、生前に公開を必要とするケースがあります。

生前に必要とする場合の項目は、終末期医療に関する部分です。

本人が意識をなくしてしまった場合や、余命宣告を受ける状態になった場合に、その対応についてあなたの希望を書いておくものです。

◆がんなどの場合に死期が近づいたとき、余命の告知を受けたいか
◆自分が余命の告知を受けたくない場合は、誰に知らせて欲しいか
◆重篤な状態で意識がなくなった場合は、誰に知らせて欲しいか
◆病状がよくなることが見込めないまま、人工呼吸器や心臓マッサージなどが必要とされる場合、それらの延命治療を受けるか

これらの項目を入力しておくことで、あなたの意思を伝えることができます。

もし、あなたが元気なときに、あなたの希望を誰かに話していたとしても、その希望が変わらないかどうかは、あなた以外にはわかりません。

特に、延命治療などは家族や親族の意見が一致しないことも多々あります。
あなたのことについて、家族や親族が揉めることは避けておきたいものです。

「そのときの状況によるから決められない」と、今のあなたが思うのであれば”必要なときには、自分の代わりに判断を一任する人”を、指名しておくこともできます。
判断を任された人が後悔して苦しまないように”どのような結果になろうと、変わらない感謝と信頼が伝わる言葉”も、忘れずに書き添えておきましょう。

ここまでは、備忘録の項目を中心に、エンディングノートの重要性を紹介しました。

一つずつ、内容を埋めていくことで、最終的にはあなただけの素晴らしいエンディングノートが出来上がります。

実際に、60代独身女性が「エンディングノートを書き終わると気持ちが軽くなった!」という例がありました。
エンディングノートを書くことで、自分の心の中にもやもやした不安があったことに気づき、人生に対しての義務を果たしたような、また、爽快感も得られるのです。

まとめ

エンディングノートは、自分のためでもありますが、残された人のためでもあります。

書き残したことが、残された人の負担にならない配慮も必要です。
そのため、何かの選択をしなくてはならない場合、そのように決めた理由も、一緒に書き残すことが理想です。

二者択一ばかりではない状況で、家族が判断に迷ったとき、理由がわかっていると選択がしやすくなるでしょう。

そして、あなたの言葉とその心遣いで、残された人は気持ちが救われます。
人生の集大成でもある、エンディングノートは、あなたらしさを形にして残すヒントがたくさん詰まっているのです。

残された人へ、そして備忘録として「エンディングノート」を有効に使用していくことが大切です。

タイトルとURLをコピーしました